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優れた仕事のために必要な6つのビジネススキル

荻野 英希 /

優れた仕事のためにはたくさんのスキルを習得する必要はありません。目標を達成し、成果を出すために必要なスキルはどんなビジネスにも共通します。例えば、私たちのように専門的なサービスを提供するエージェンシーでも、商品を販売する事業会社でも、同じように情報を収集し、提案し、プロジェクトを管理し、改善することが求められます。一緒に働くチームのためにも、ビジネススキルの習得は重要です。異なる専門性を持った仲間同士が共通するスキルを持つことで、チーム内の「摩擦」が減り、業務の品質や効率が大きく改善されます。

1. オブジェクティブ(目的を問う)

あなたのチームには目的を意識していない行動がどれだけあるでしょうか?以前から、皆そうしているから。そういう決まりだから。クライアントに言われたから。目的が理解されていない行動の多くは無駄だと言えます。何のために、どれだけのリソースを費やし、何を得ようとしているのか?目的を正しく理解することができなければ、全ての業務において重要である「投資」対「効果」の関係を見ることができません。よほど運が良いか、または競争の無い業界でなければ、資金や時間などの貴重な資源を戦略的に配分する必要があります。しかし、残念なことに目的を問わずに、手法の実現をゴールとしたプロジェクトは多くの企業で後を絶ちません。判断に困ったときは必ず「本来の目的は何か?」と問うようにしましょう。

明確な目的は戦略的な行動を可能にするだけでなく、チームの意識を1つの方向にまとめます。全員が効率的な達成方法を意識し始め、リソースの配分の最適化が行われます。そのため、目的はできるだけ具体的であり、数値目標を含むなど、異なる解釈の余地がないよう設定されるべきです。また、目標は複数ではなく、必ず1つに集中しましょう。複数の目的は判断に迷いを生じるだけでなく、貴重な資源の効果を薄めてしまいます。数値目標は過去の実績から推計を行うのではなく、今持ちうる資源の最適な配分を行った際に得られる理想の結果を定義し、設定しましょう。

2. タイムマネジメント(時間の管理)

ツールなしで時間を正確に管理できる人はいません。そして、自身が業務に使える時間の少なさを正確に把握している人も決して多くはありません。業務において最も重要な資源である自身の時間の有限性を理解せず、感覚的に管理することは、目的を理解せずに仕事をするのと同じくらい無能なことです。時間を正しく管理するためには「タスクの分解」を習得する必要があります。プロジェクトに必要な時間を割り出すためには、内包される全てのタスクを、工数が明確になるまで分解する必要があります。例えば「企画書を作成する」というだけでは何時間かかるかがわかりません。しかし、「リサーチをする」「リサーチ内容をまとめる」「アウトラインを作る」「テキストを書く」「チャートや図形を作る」「スライドの体裁を整える」「確認する」というタスクに分解すれば、おおよそ何時間の作業が必要であるかを理解することができます。

タイムマネジメントを怠ると、チーム全体が外部からの影響を受けやすくなり、プロジェクトが失敗しやすくなります。本来外的要因でプロジェクトが失敗することはなく、時間の管理不足など、効果的な戦略の欠如が原因である場合がほとんどです。時間の管理を徹底し、最短のスケジュールで物事進めることも、リスク回避につながります。パーキンソンの第1の法則は「仕事の量は完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する」とあります。プロジェクトに費やす時間の最小化を意識的に実施し、管理しなければ不測の事態を回避するためのバッファを生み出すことはできないのです。時間を削減するためには、常に実現すべき目的を正確に理解し、最小限での達成に挑戦しましょう。

仕事に「待ち」を作ってはいけません。次のタスクが何であるかを必ず自ら理解し、積極的に実施しましょう。相手にボールがあったとしても、「待ち」を許すことはチーム全体の損失となるボトルネックを生み出してしまいます。リマインドや確認を徹底し、チームとしての時間のロスを最小化しましょう。チームリーダーにとってタイムマネジメントは最も重要なスキルだと言えます。同僚や外部の協力者の時間も貴重な資源です。リーダーは先ず自身の時間の管理を徹底し、チーム内のボトルネックの解消と、予期せぬ時間や資源の不足に対応する計画を持つことが求められます。

5分でタスクを最適化するタイムマネジメントの6プロセス : https://www.ficc.jp/blog/time-management-in-5-minutes/

3. リサーチ(情報収集)

利用できる有益な情報を無視して業務を進めることは、愚かで、無責任なことです。ビジネスにおける判断の大半は感覚的なものですが、正しい判断の裏には必ず根拠となるデータや情報があるはずです。質の高い業務は常に綿密であり、たくさんの情報を必要とします。活用できる情報を収集せずに判断を急げば、高い確率で失敗を招くでしょう。

今や大掛かりな調査を行わなくても、市場、ターゲット、競合などの情報は簡単に入手することができます。Googleアラートに自社や競合のブランド名を設定すれば、常に最新情報を受信することができます。Yahooリアルタイムでは消費者の声を聞くことができ、AdWordsのキーワードプランナーや、Googleトレンドではニーズや動向を知ることができます。ほんの少し費用をかければSurveyMonkeyでアンケートを実施できたり(Google Driveなら無料)、SimilarWebで競合サイトのトラフィックを分析することも可能です。また、インターネット上には公共機関や企業が公開しているたくさんの調査結果やデータが存在します。特に競合の動向はこちらの戦略に影響を与えることが多いため、見逃さないようにしましょう。情報収集に必要な労力は、誤った判断の修正に比べれば微々たるものです。繰り返し実施するためにワークフローを最適化し、ルーチンを確立しましょう。

4. プロポーザル(相手を説得する提案)

どんなにすばらしいアイディアも、実現しなければ意味はありません。アイディアの実現には必ず資源が必要であり、多くの場合、自分だけでそれをまかなうことはできません。自分のアイディアを実現し、成果を得るためには、権限を持った人物の説得が不可欠です。相手を説得する提案には、情報を正しい順番で伝える効果的なフォーマットがあります。人は自身が合理的であると信じたいため、受けた提案を却下することが非合理的であると感じさせることができれば、説得できる可能性が格段に上がります。提案を行う際は必ずその目的、提案の背景、提案と具体策、根拠、そして実施すべきアクションを提示します。成功の可能性が高く、経済的利益につながり、相手の戦略に合致するよう作られた提案は、それが最善の選択肢であると思わせることができれば却下されることはありません。

ワンページメモを用いたシンプルで説得力のある提案書の書き方 : https://www.ficc.jp/blog/one-page-memo-for-persuasive-proposal/

5. メジャーメント(数値目標の設定と効果測定)

私たちは数値目標を設定しなければ、それを達成することができません。また、定期的にパフォーマンスを測定をしなければ、細かい行動を修正し、継続的に改善をし続けることができません。効果測定を行わなければ、目標を達成するために投下すべきリソースも、行うべき行動も、その優先順位も知ることができません。大きな目標を達成するためには、目標を分割する必要があります。1つのゴールを追うのではなく、時間やチーム、プロジェクト毎のマイクロゴールを設定し、高頻度な効果測定を徹底しましょう。マイクロゴールを設定することで初めて、その達成に必要な施策やリソースを理解し、的確な判断や軌道修正を行うことができます。パフォーマンスや進捗はチーム全員がリアルタイムで見れるようにし、それぞれが自主的に軌道修正を行えるようにしましょう。ビジネスの様々な問題を解決するためには、細かいマイクロゴールの設定と、効果測定を通じて問題を特定し、適切なアクションを見出す必要があります。確実に成功する方法は、高頻度な効果測定を通じた、細かい軌道修正しかありません。

6. レビュー(成功要因の理解と共有)

「知識は力なり」といいますが、組織の力となる知識は、レビューを通じてプロセス化され、個人からチームへと共有されたものだけです。成功事例は再現できなければ単なる偶然であり、意味がありません。レビューを通じた正しい成功(又は失敗)要因の理解と共有がなければ、組織に価値のある知識が蓄積されることはありません。全てのプロジェクトでは、単に成功したか否かだけではなく、しっかりとその理由を分析する必要があります。また、成功や失敗に解釈の余地が無いよう、全ての施策を時間や資金などの資源に対するインパクト(コスト)と、そのリターンによって分析するようにしましょう。

レビューを行わず、プロセスを構築することができなければ、組織は何度も同じ間違いを犯したり、同じ問題を解決しようと努力し、資源を無駄にします。このような無能な組織では、失敗が連続することは言うまでもありません。プロフェッショナルとは、成功や失敗要因の分析から構築された確実なプロセスを通じて、繰り返し成功を提供できる人物や組織を指します。様々な事態を想定し、将来的な失敗を回避するためにもレビューとドキュメント化は不可欠です。

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