社会問題への取り組みを顧客との関係強化のために適切に活用できているブランドはどれほどあるのでしょうか。本連載ではFICCが独自に研究した「顧客関係強化の触媒としての社会問題」というテーマを全6回の記事にて読み解いていきます。ブランドが向き合うべき社会問題とはどういったものなのか、なぜ必要なのか、どう取り扱えばいいのか。そのような課題を解決するためのヒントが得られる内容となっております。
※2020年9月に知識向上を目的として作成した社内報を、社外の皆さまにもお役立て頂けるよう連載記事として公開しています。
第1回目では「顧客関係強化の触媒としての社会問題」を研究するに至った目的と背景、日本におけるCSR活動の歴史を振り返っていきます。
【第2回】日本社会において社会問題を「顧客視点」で捉えるメリットとは
【第3回】「顧客視点」の実行にあたり必要な3つの“2”とは
【第4回】「2つの障害の特性」と「2つの価値のシナリオ」とは
【第5回】日本国内におけるケーススタディ
【第6回】自分たちのブランドを今よりもお客様にとって価値あるものにするために
「顧客関係強化の触媒としての社会問題」を研究するに至った目的と背景
このSTUDYは、コンシューマー向けのブランドビジネスにおいて、既存ブランドの成長ドライバーとして「社会問題」をどのように捉え、取り扱うべきかというアジェンダに対する一つの考察を作ることにあります。
このテーマを考えるに至った背景
本連載の主な問題意識は、ブランドビジネスにおける社会問題の扱われ方の多くが、「主語」を問題そのものであったり企業などの構造体においており、顧客が脇に置かれているケースが見られることにあります。
社会問題の解決そのものを目的とするソーシャルビジネスにおいてはその限りではないと考えますが、多くのブランドビジネスは顧客が持つニーズを解決するものであり、そのニーズは必ずしも社会問題にカテゴライズされるものではありません。贅沢を言わなければ十分に生活していける日本において、社会問題という大きなテーマは、自分自身に経験として持っていなければ自分ごととして捉えにくいものだと思います。
しかし、広告業界において数年前からトレンドとなっているソーシャルグッドのようなアプローチがもてはやされているがゆえに、多くのブランドがプロモーションの一貫として、社会問題に安易に飛びついているような潮流があるように思われます。
その結果生まれるブランドアクション的活動が悪だと言いたいのではありません。真にブランドと顧客の関係の中で「社会問題」というものが果たす役割を明確にしなければ、ブランドは競争環境の中で無意味な投資を続ける状況に陥ってしまうことを避けたいのです。
概略:3つの”2”に着目する
ブランドが「社会問題」を取り扱う場合には、あくまで「ブランドの便益を最大限享受するために顧客が抱える障害」と読み替えて考えるべきと私たちは考えます。
そのために、「2種類のターゲット」「障害の2つの特性」「2つの価値のシナリオ」という3つの「2」に着目してブランドと顧客の関係を見ていきます。
本連載記事の流れ
お読み頂く方々と我々の視点を揃えることが、本旨を正確に理解する上で大切なことだと考えています。
そのため本連載では、やや迂遠ではありますが、そもそもの問題意識から始まり、幾つかの事例を通して我々の考える重要なポイントを示唆として提示する流れをとっています。
日本社会における社会問題の捉え方・新たな視点を見つける
日本国内でブランドの社会的責任、CSR活動が盛んになり、20年以上が経とうとしています。その歴史を踏まえた上で、今後も発展していくであろうCSVを更にドライブさせるため、今一度、社会全体を分析することで新たな視点を見つけていきます。
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〈分析概要〉
- 日本社会 CSR-CSVの歴史
- 欧米社会と日本社会の違い、欧米社会の国民/構造
- 欧米社会と日本社会の違い、日本社会の国民/構造
- 日本の社会問題の変遷(コンテキスト)から見える新たな視点
CSRーCSVの歴史
社会問題への取り組み、社会的責任については1990年後半にブランドの信頼が問われる事件(三菱自動車のリコール隠し/日本ハムの牛肉偽装)が多発したことから始まりました。メディア、行政、国民から企業の構造、信頼への糾弾が行われることで2000年代にはリコーなどの先進ブランドはいち早くCSR経営に転換し、
2003年にはCSR経営元年と呼ばれるようになりました。
2011年には、マイケル・ポーター教授から「CSV(共有価値創造)」が発表され、事業を通して経済価値と社会価値も同時に追求することで得られる競争優位の重要性について語られました。
CSV導入の課題を浮き掘る
CSV(共有価値創造)論文発表から8年以上が経ち、日本国内でもCSVへの取り組みは進んでおります。しかし、CSV事例として世界へアピールできるような社会価値と経済価値を両立しているものはまだ少ないのが現状となっております。
日本国内でCSVが浸透しづらい理由を分析するため、欧米社会との比較や国民性から読み解いていきます。
次回、「【第2回】日本社会において社会問題を「顧客視点」で捉えるメリットとは」では欧米社会と日本社会の違いを国民や構造から分析し、日本において考慮すべき視点を考えていきます。
ブランドと顧客の関係を強化する戦略立案をサポートしています
FICCのメディア・プロモーション事業では、社会問題を媒介としてブランドと顧客の関係を強化する戦略立案からプロモーション立案・実行まで一貫してサポートしております。サービスの特徴や事例について詳しく知りたい方は下記リンク先ページをご覧ください。