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【第3回】「顧客視点」の実行にあたり必要な3つの“2”とは

稲葉 優一郎 /

社会問題への取り組みを顧客との関係強化のために適切に活用できているブランドはどれほどあるのでしょうか。本連載ではFICCが独自に研究した「顧客関係強化の触媒としての社会問題」というテーマを全6回の記事にて読み解いていきます。ブランドが向き合うべき社会問題とはどういったものなのか、なぜ必要なのか、どう取り扱えばいいのか。そのような課題を解決するためのヒントが得られる内容となっております。
※2020年9月に知識向上を目的として作成した社内報を、社外の皆さまにもお役立て頂けるよう連載記事として公開しています。

「顧客視点」で社会問題を捉えるとは、一体どのようなことでしょうか。
第3回目では、ブランドビジネスの遂行にあたり、本連載で紹介する考え方の核となる問い「ブランドの便益を最大限享受するために顧客が抱える障害はなにか?」と、これにまつわる「3つの2」の詳細なアイデアを見ていきます。

<第2回>はこちら

3つの”2″に着目することで、顧客関係強化の触媒としての社会問題の取り扱いを実現する

日本社会独自のコンテクストに合わせ、顧客視点で社会問題を取り扱うことで、ブランドは顧客に対しより共感性の高い活動を行うことができると考えてきました。この考えを元に実際に活動を行う際、最初に問うべきことは、「ブランドの便益を最大限享受するために顧客が抱える障害はなにか?」です。この問いをさらに実行可能性の高いものとするために、本資料が着目する、ブランドが社会問題を取り扱う際に重要となる3つの「2」が以下です。

マーケティングターゲットと社会貢献ターゲットを区別し捉える

顧客を起点として社会問題を捉えようとするとき、そのブランドの顧客全員がその価値を受けるのではなく、全体の一部の顧客により享受されるものであると想定されます。この社会価値を享受する対象となる一部の顧客と、全体顧客を分けて考えることで、その影響の範囲をより正しく理解し、戦略に活かすことができると考えます。

MTとPTの定義
本資料では、”戦略的ソーシャル・マーケティングの基礎概念としての交換概念の再検討”(芳賀,2014)に習い、顧客をマーケティングターゲットという意味でMT(Marketing Target)、社会貢献活動の対象をPT(Philanthoropy Target)と呼びます。

社会問題を「ブランド視点」ではなく、「顧客視点」でとらえる

社会問題を機会としてとらえる際、ブランド視点で社会問題からとらえると(MT⊆PT)、
顧客にとってその社会問題が顕在的な課題となっていないため自分ごと化されず、結果ビジネスバリューに繋がらないという現象が発生します。
そこで、社会問題をブランド視点で捉えるのではなく、顧客視点で捉え直し、MTの中の特定の顧客セグメントPT(PT⊆MT)を捉えていきます。
ブランドからの貢献活動により交換関係が発生し、PTはブランドに対し愛着や好意度、ブランド・ロイヤリティを有するようになります。
さらに、PTがもつ共感性の高い社会問題を捉えたエピソード資源を作り、MT全体へ認知することするPTからMTへの波及効果を狙うことが可能となります。

なぜそのブランドが、この社会問題を解決しようとするのか

出典:STARBUCKS

顧客を起点として社会問題を考える際、もう一つ必要不可欠な視点が「なぜそのブランドが、この社会問題を解決しようとするのか」という理由です。顧客との信頼関係を築く上で、この動機の部分とブランドの根底にある理念は、一貫して保たれる必要があります。
解決しようとする社会問題と、ブランドとの関連性・妥当性が弱いと受け取られることで、「社会問題を安易に捉えている」として批判につながる可能性もあります。例えば、スターバックスの2015年の事例。各店舗で働くバリスタたちが、カップにRace Togetherと書いて渡す取り組みを行いました。米国内における人種や民族の関係のあり方について、会話を促そうという気持ちを伝えるための取り組みでしたが、結果として、「同社の上級管理職がほぼ白人であったこと」や「朝のコーヒーを飲む時間に人種問題について語りたいわけがない」などの指摘の声が上がり、批判の的となりました。
例え善意のもと企画されたものであったとしても、その内容が顧客が普段からブランドに対して感じている価値とかけ離れていると感じられれば、疑念の声が上がるでしょう。ブランドは、顧客にどのような価値を提供しているかという点に立ち返り、その延長上にある「ブランドの価値提供から顧客を阻害するもの」としての社会問題を見つけ出すことが、顧客にとっての価値となり、信頼関係を築く礎石となるでしょう。

次回、「【第4回】「2つの障害の特性」と「2つの価値のシナリオ」とは」では、この記事で登場した2種類のターゲット、”フィロソフィターゲット”から”マーケティングターゲット”への波及効果を最大化させることに必要な視点を、事例を確認しながら考察していきます。

ブランドと顧客の関係を強化する戦略立案をサポートしています

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