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ワンページメモを用いたシンプルで説得力のある提案書の書き方

荻野 英希 /

提案書のライティングはマーケティングやコミュニケーションの仕事に携わる人が一番に学ぶべきスキルです。情報を整理し、相手に正しく伝え、説得をする事が出来なければ、私たちの仕事は勤まりません。特に組織をまたぐ、大きなチームでの仕事は様々な局面で合意形成を必要とし、情報伝達の遅延やミスがプロジェクトの失敗につながります。

※2016年3月4日追記 : ワンページメモの最新版記事を公開しました。

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提案書はパワーポイントではなく、必ずテキストのアウトラインから作成します。資料に含まれる全ての情報を書き出し、分類・整理し、相手の説得に必要な論理展開を確立します。アウトラインの段階では、相手が提案を受け入れやすい順番に情報が整理されているか、正しい判断を行うための情報が正確に(抜け落ちや間違いがなく)表現されているか、そして無駄や矛盾点がなく、要点を簡潔に伝えることができているかを確認します。 情報を正しい順番に整理するためには、ワンページメモというシンプルなフレームワークを使用します。このフレームワークを繰り返し使用することで、誰でも自然な論理展開や、説得力のある提案ができるようになります。ワンページメモでは提案の相手、提案書の目的、提案の背景、提案、提案の具体的内容、提案の根拠、そしてネクストステップの順に情報をまとめていきます。

提案の相手

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提案は相手に論理的だけでなく、感情的にも受け入れてもらわなければ、通ることはありません。そのため、提案を行う相手のことを知らなければ、説得をすることは困難になります。どんなに正しい結論も、相手が不愉快に感じたり、理解ができなかったりすれば、受け入れられる事はないでしょう。 論理的に、感情的に受け入れられ提案書を作るためには、先ずは相手を定義し、その好み、意識している課題、そして専門用語に対するリテラシーを明確にしましょう。

提案書の目的

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提案に含まれる情報が多いほど、相手から疑問を指摘される可能性が増えます。提案書には目的を達成するために必要最低限の情報を含めるようにしましょう。提案書の目的を事前に定義しなければ、不要な情報を残したり、必要な情報を入れ忘れたりする可能性があります。 例えば、上司にマーケティング活動に対する投資金額を承諾してもらう事が目的であれば、提案書はその費用対効果のみにフォーカスすべきでしょう。後に修正可能なクリエイティブの詳細などを含めた場合、その不要なディテールで提案を拒否される可能性があります。提案するプロジェクトの目的ではなく、提案書自体の目的を定義するのはこのためです。

提案の背景

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人は現況を改善するよりも、目の前の課題を解決するために積極的に動きます。相手に提案を受け入れさせ、アクションを取らせるためには課題を認識させる必要があります。このために提案の背景を客観的な事実として、相手にインパクトのある「WOWファクト」のカタチで伝えます。ポイントは客観的なデータを含め、何か別の事実と比較し明確に課題を伝えることで、相手に不信感を持たせたり、無関心にさせたりしないことです。 例えば、「自社のWebサイトのトラフィックはわずか月間30万セッションである」と伝えても「わずか」の基準が主観的であり、相手は強い関心を示さないでしょう。それを「競合A社のWebサイトのトラフィックは月間150万セッションであるが、自社のWebサイトはわずか30万セッションである」と伝えれば課題は明確であり、相手も関心を示すでしょう。背景は提案の具体的な手法までを正当化させるために必要なだけ列挙しましょう。

提案

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背景を理解した相手は既に課題を感じています。次にこれから説明する提案に対し、好感を抱いてもらうことで、前向きに検討をしてもらいます。ここでは実施する内容と、得られる結果を一文で明記し、詳細を理解してもらうより良い印象を与える事にフォーカスします。 「◯◯を実施し、◯◯を達成する」というように「アクション→結果」の順番で書くと、他のアクションの可能性が想起されにくく、より強い印象を与えられます。もちろん、提案の内容は先程の背景に基づいて論理的である必要があります。

提案の具体的内容

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この時点で相手は課題を解決してくれる提案に興味を持っています。しかし、メリットばかりを伝えられても提案は承諾できません。Amazonで買い物をする人はネガティブなレビューを読んだ後に商品を購入した経験があるでしょう。これはネガティブなレビューに書かれた内容が許容範囲内であることを確認できたため、購入しているのです。 何かを購入した、又は提案を承諾したということは、そのコストやデメリット、リスクなどを許容したということです。提案の具体的内容では、その実施方法においてこれらが全て許容できるものであり、最善の選択肢であるということを伝えなければいけません。コストに対し、十分なリターンが期待できる。確実に発生するデメリットよりも大きなメリットが存在する。リスクに対し、十分な回避策やバッファ想定されている。十分な数のオプションを検討した結果、最適な提案である。提案を受ける相手はこれらの情報を確認することで、初めて提案を承諾することができます。

提案の根拠

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人は自らが合理的な判断をしていると信じています。そのため、自ら非合理だと思う発言はなかなかできません。提案の根拠は断る事が非合理であると感じさせ、「NO」と言えなくするものです。 ワンページメモのフォーマットでは提案に対し、3つの根拠を記載します。その根拠の内容にガイドラインはありませんが、効果的なものはあります。一つ目は「相手の戦略への合致」です。そもそも自分がやりたいと言っていたことを否定すれば自己否定となってしまいます。提案している内容は相手が前から求めていたものだと客観的に伝えることが出来れば、断る事は難しくなります。二つ目は「成功事例」です。過去に同じ内容で成功した事例があり、成功する見込が高ければ、断る事は非合理的です。三つ目は「経済的利益」です。実施することで大きな経済的利益を得られるのであれば、これを断る事も非合理的です。

ネクストステップ

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ここまで論理的に提案を進めても、相手が結論を持ち帰ってしまえば提案が承諾される可能性は低下します。可能な限り、その場での承諾を得るために、「担当者をアサインする」など、相手がその場で行うことができる「簡単なタスク」をから始まる2〜4のネクストステップを「短い期日」を含めて提示します。ポイントはその場で相手のアクションを促し、自らの行動からプロジェクトに勢いを与えることで、後戻りをできなくすることです。 相手からその場で承諾を得る方法は他にもあります。例えば、「この提案で目的達成が可能か」「この提案は実施する価値があるか」というような目的達成に対する合理的な質問に対して「YES」を得れば、「では実施して宜しいですね?」というフォローを入れ、提案の承諾を得ることができます。「プランA、プランBのどちらが目標達成に最適か」という選択にどちらかの返答を得られれば、同じく簡単に承認を得ることができます。ポイントは相手に自身の返答が合理的であると感じさせること。提案書の内容に加え、相手が持っている知識や情報をベースに判断できる選択を与えましょう。更に、将来的な実施に対する条件に承諾してもらうことも可能です。例えば、提案内容より小規模なテストを行い、ある目標値を達成したら全体を実施するという承諾を得れば、あとはその目標値を達成するだけです。

プレゼンテーション資料の作成

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ネクストステップまでのアウトラインをワンページメモの形式でまとまれば、プレゼンテーション資料の作成を開始することができます。提案の具体内容のボリュームにより、大幅に増えてしまうこともありますが、できるだけ少ないスライド数でまとめるように心がけましょう。重要なのはそれぞれのスライドで相手に最も「理解して欲しいこと」「感じて欲しいこと」を事前に明確にすることです。 その情報を基に、スライド毎のコンテンツに強弱を付け、整理します。目的に適したヒエラルキーとなるよう、適切な文字のフォントやウェイト、カラー、装飾を選択し、サイズやレイアウトを調整します。また、スライド毎の要点はイメージや表、グラフなどのビジュアルを加えて強調するようにしましょう。

簡略化

最後に不要な言葉や要素を削り、理解しづらい表現を修正します。相手に考えさせずに、自然と情報を受け入れてもらえるよう、不要に疑問を感じる可能性のある要素を排除します。提案相手に近いリテラシーの人物に対して練習を重ね、少しでも疑問を感じる箇所を1つずつ潰していくと良いでしょう。