「2020年からは行動の10年」すべての企業はSDGsを軸としたパーパス・プロフィットマーケティングが求められる

※ スライド内の画像は国連が公開している動画より引用

2020年1月、ブランドマーケティングを専門とするFICC 代表取締役 森 啓子より、全社に向けた新年のスピーチが行われました。

2020年を迎え、国連が発表しているSDGs(持続可能な開発目標)の達成期日である2030年まで残り10年となりました。「Decade of Action(行動の10年)」のスタートとともに、日本企業がいかにビジネスによって社会価値を創出するか、世界からも注目を集めています。

今回、森による年頭スピーチより、あらためて日本におけるSDGsの現状からパーパス(社会価値)とプロフィット(経済価値)を創出したイノベーション事例の紹介、そして企業がパーパスとプロフィットの両軸で本質的な戦略やアクションを開始していくことが重要である理由について紹介いたします。

日本のブランドに求められるのはパーパスとプロフィットの両立

日本が世界から注目を集める2020年。
私たちは地球規模の問題を解決していかなければならない

森啓子: 2020年は年始からカルロス・ゴーン氏のレバノン逃亡、トランプ政権によるイラン情勢の激化と、世間を賑わすニュースが飛び交いました。そんな2020年は、日本が世界から注目される一年でもあります。

東京オリンピックの開催はもちろん、2020年4月には京都で「国連犯罪防止刑事司法会議」という、国連最大規模の国際会議が50年ぶりに日本で開催。また12月には「国際栄養サミット」が東京で開催されるなど、多くの国際的なイベントが日本で開催されます。

一方で、昨年末に開催されたCOP25にて「脱石炭」を示せなかった日本は化石賞という不名誉な賞を受賞しました。いまや二酸化炭素排出は国境を超えたグローバルな問題で、今後日本がどのような地球温暖化対策を提示するのか、という点でも注目されています。

そして、国連は地球上の共通目標としてSDGsを掲げており、2030年を達成期日として、2020年からの10年間を “Decade of Action”(行動の10年間)として全世界に呼びかけています。
二酸化炭素問題含め、平和問題、栄養の問題といった課題を地球規模で本格的に解決していかなければならない時代に突入しているのです。

企業はCSRだけでなく、サスティナブルにビジネスを大きくしていく「攻めの姿勢」が重要

森啓子: SDGsとは、貧困・飢餓・教育・ジェンダー平等・環境問題などといった、地球上に存在する多くの課題を放置することなく、地球上に生きる、一人ひとり、全ての企業、全ての国が責任を持つべきゴールとして設定されています。
そして17のゴールと169の具体的なゴールが設定されているのですが、いまだに多くのゴールにおいて、2030年までに達成できるペースをはるかに下回っている状況だと報告されています。

SDGsのランキングが2019年時点で162か国中15位である日本においても、いまだ達成できていないチャレンジが多く残っています。例えば「ジェンダー平等」。121位と後進国並みの順位となっているんです。

数字で見てみると、企業の管理職における女性比率は世界平均が27%に対して、 日本は12%。企業の役員における女性比率も世界平均が23%に対して日本は3.4%ですし、政治における女性比率も世界平均24%に対して日本は10%しかなく、どれも世界平均を半分以上も下回っているというのが現状で、ドラスティックな成長が求められている分野の1つです。

またSDGsのゴールの1つである「つくる責任・つかう責任」も日本では大きなチャレンジ領域となっています。特にフードロス(食品ロス)は非常に深刻な課題で、年間643万トンの食品が日本では廃棄されています。これは、世界中で飢餓に苦しむ人々に向けた世界の食糧援助量の1.7倍にあたると言われているんですね。

日本のフードロスには様々な原因があるのですが、日本では流通のルールに「3分の1ルール」というのがあり、これがフードロスに大きく影響しています。
3分の1ルールとは、製造日から「賞味期限」までの合計日数の3分の1を経過した日程までを「納品可能期限」、3分の2を経過した日程までを「販売期限」と設定されており、これらの期限を過ぎた食品は廃棄され、また各家庭においては「賞味期限」を過ぎた食品が捨てられていっています。
少しずつイノベーションが起こっているものの、流通の仕組みや商習慣など、まだまだ課題が山積みの状態です。

そしてSDGsには「守り(リスク削減)」「攻め(イノベーション)」「土台(経営戦略・ブランド戦略)」と3つの考え方があり、どれも重要です。
特に負の要素をなくしていこうという守りの姿勢だけでなく、社会的意義を持って、サスティナブルにビジネスを大きくしていこうという攻めの姿勢。クリステンセンが唱える「無消費」、すなわちまだ開拓されていない市場に対して、SDGsを軸としたイノベーションを起こしていくことが大切です。

また戦略自体に社会的意義を組み込んでいるか、という土台も重要なわけですが、こうした攻めの姿勢、土台づくりまでできている日本の企業はまだ多くはないと言われており、CSR的な活動に留まっている企業も多いのが現状です。

これからは「ビジネスを通じて社会貢献をしている」ブランドを選択する時代

森啓子: このように、インフラが整って世界的にも豊かと言われている日本であっても、いまだSDGsで解決できていない課題がたくさんある状況です。

そして、マーケティングをやっていく中で意識しなければいけないのが、「Z世代」の存在です。Z世代は、2020年に10〜25歳の世代、すなわち10年後の2030年には20〜35歳になる世代です。
彼らは、ただ社会貢献しているかどうかでブランドに共感をするのではなく、 “ビジネスを通じて” 社会貢献をしているかどうかでブランドを選ぶと言われています。

これまではパーパスがなくとも、消費者に選ばれるマーケティングが可能であったかもしれません。しかし、これからはメインの消費者となるZ世代の存在や世界的な動向、そしてSDGsの「行動の10年」として、企業やブランドがCSRに留まってはならないのです。

つまり、これからは未来のため、そして企業、ブランドが存続し成長し続けるためにもパーパスとプロフィットの真の両立が必須なのです。

『社会的意義を持つブランド』を増やし、そのブランドの成功を通じて社会に貢献する

森啓子: FICCも、2020年からの10年は「アクションの10年」です。そして、これからの10年を見据え、FICCに求められるのはパーパス・プロフィットマーケティングの啓蒙と、パーパスとプロフィットの両立をクライアントと実現していくこと。
そのためFICCのパーパスは “『社会的意義を持つブランド』を増やし、そのブランドの成功を通じて社会に貢献する” と定めています。

しかし、パーパスとプロフィットの両立はもちろん容易なことではありません。多くの企業が「守り」の姿勢に留まっているのも、そこに理由があります。
パーパスとプロフィットを両立するためには、イノベーションを起こす「攻め」の姿勢、そして社会的意義を戦略に組み込む「土台」が重要であるため、クライアントがパーパス・プロフィットマーケティングの推進のために、抱えている課題やハードルを、クライアントと同じ視点に立って共に考え、理解し、語り合える本質的なクライアントリレーションが大切なのです。

あらためて、これからの10年はFICCにおいても「アクション」がキーワードです。そしてFICCは一人ひとりの思い、学びがブランドと共に、パーパスとプロフィットの創造につながる会社を目指していきます。

そのためにも、社会価値、経済価値の創出についての学びを多様性から実現し、学際的リベラルアーツにより価値創造を行う組織として、FICC自体がSDGsのロールモデルとなる会社を目指して、共にアクションを起こしていきましょう。

おわりに:SDGsのロールモデルとなる企業を目指して

今回、森からの年頭スピーチの後、全社員にてスピーチを受けてどう思ったのか、今後どういったアクションをしていきたいかといった意見交換を行うワークショップを開催しました。
実際にワークショップで出た社員の意見を、一部ご紹介いたします。

無消費へのイノベーションについては、今まで以上に視野、視点をシフトさせていく必要がある。無消費の制約を捉えるためにも、しっかりと概念や本質を理解したアクションを導き出すのは、面白いチャレンジだと思う。

キャリア・業界・社会に対して一社員としてのアクションは、やはり大義に基づくマーケティングを世間に浸透させること。その中で私はデータドリブンでデータに基づく公平なジャッジができるデータの取得、分析ができるよう努めていきたい。

広告業の従事者として、特に企業やブランドの “つくる責任・つかう責任” への理解を深め、クライアントへ有用な提案が行えるよう準備していきたい。

森からもあった通り、SDGsのロールモデルとなる企業を目指しているFICC。現在企業の管理職における女性比率は世界平均が27%に対して日本は12%であると上述いたしましたが、FICCは現在世界平均と同じ27%の比率となっています。

そして、FICCがさらに目指していくのは、女性や男性などの枠ではなく、学際的リベラルアーツを企業文化の中心とし、「人」としてのサスティナブルな学びと価値創造の環境を実現すること。その結果、サスティナブルな企業成長が実現されるということを、FICCが体現し証明し続けます。

FICCが考える学際的リベラルアーツについて詳しく読む

【第1回】 働く上で自分の「興味」とどう向き合うべきか。リベラルアーツの視点から考える
【第2回】 「ありがとう」を生み出すには相手への理解が重要。人生を豊かにする学びとは
【第3回】 知識ではなく、人に提供する知恵こそが「価値ある学び」である
【第4回】 変化の激しい現代において「働く」ことを通じて、いかに人生を豊かにするのか

FICCについて

LEADING BRANDS AND PEOPLE TO PURPOSE

  • 持続するブランド
  • 市場を創るマーケティング
  • 共創がつづくクリエイティブ
  • 存在意義の共創

ブランドマーケティングの実績と哲学

ブランドの社会的意義による新たな市場を創造する「ブランドマーケティング」の考えと、10年以上にわたる戦略とクリエイティブの実績、人の存在意義による共創を通じて、企業のブランディングやマーケティング活動の支援や、さまざまな企業やセクターの方々と未来のビジョンの実現に向けた取り組みを行っています。