【第1回】働く上で自分の「興味」とどう向き合うべきか。リベラルアーツの視点から考える

学びを再考するための7つのアイデア

人はなぜ学ぶのか── 学生時代は、学ぶことに対して「合格」といった明確なゴールがありました。しかし、学校を卒業して社会人になったいま、学ぶことに「合格」といった明確なゴールはありません。なにか仕事に必要な資格を取得することを除けば、日常の生活において100点満点のテストを受けることはありませんし、1日中先生の講義を受けるといったこともないでしょう。

それでも、心のどこかで学び続けることが大切であると感じていませんか? 学びのモチベーションは、「出世のためにもスキルアップが必要だから」「新しい自分を見つけたいから」など人それぞれですが、学ぶことに対してあらためて考えてみると、また新しい発見があるかもしれません。

クライアントへ価値を提供するデータドリブン・マーケティングエージェンシーとして、FICCのメンバーは、マーケティング、統計学、心理学、人文科学、社会科学、コミュニケーション、デザインなどさまざまな分野の知識が求められます。そして変化の激しい時代において、これらさまざまな分野の知識を融合し、新たな価値を創造することが重要です。

そこでFICCでは、価値創造を軸とする上で「リベラルアーツ」の考え方を重要視しています。このリベラルアーツは、 “理想の学び” として知られ、世界で活躍するリーダーの多くが経験しています。
では、一体リベラルアーツとは一体どういった学びなのでしょうか。今回、FICCの実際の取り組みや考え方を伺い、リベラルアーツの考え方を理解し、あらためて「学び」について再考するための7つのアイデアを全4回にわたって、ご紹介いたします。

アカデミック環境のみならず、「働く」環境においても重要なリベラルアーツの本質とは

日本において “リベラルアーツ” とは、一般教養であるとか、分野と分野を掛け合わせることだという表面的な理解に留まっているように思えます。しかし、オーストラリアや米国のリベラルアーツ教育の環境下で学んできたFICCの代表取締役である森啓子は、自身の経験から「リベラルアーツが伝えているのは、より本質的なものであり、私たちの生き方や思考そのものである」と語ります。

そこでまず、リベラルアーツの起源である「自由七科」とは何か、世界でのリベラルアーツに対する認識を理解し、リベラルアーツの本質を紐解いていきます。

1. 「人を自由にする」のが学びである

人間にとって自由に生きるとは「自由な思考を行える」ということ

リベラルアーツの起源である「自由七科」とは、言語に関わる3科目(文法・修辞学・論理学)と数学に関わる4科目(算術、幾何、天文、音楽)から構成され、専門職を学ぶ前に、必ず学ぶべき学問として定義されていました。その時代、「自由七科」の上に哲学があり、その上に神学があるとされ、「自由七科」はこの世界を学ぶために必要な学問として生まれたのです。

そして、「人を自由にする学問」として生まれたリベラルアーツは、12世紀のヨーロッパでは大学誕生の際にも重視され、17世紀にイギリスからアメリカに移住した開拓者(ピューリタン)たちにより、アメリカへと広まりました。
ピューリタンたちにより創設されたハーバード大学などのアイビーリーグと呼ばれる大学も、リベラルアーツ・カレッジとしてスタートし、総合大学に変化した今でもなお、リベラルアーツ教育を重視しています。また、アメリカでは、アイビーリーグと同じく高いレベルで評価を受けている「リベラルアーツ・カレッジ」の名門校もあります。

このように、「リベラルアーツ教育」は世界に広がり、今では世界で理想的な教育とされ、グローバル社会で活躍する多くの著名なリーダーは「リベラルアーツ教育」の環境下で学びを行ってきた人たちです。

日本ではよく、理系、文系といった分け方がされますが、この世界を理系、文系のどちらかだけで、本当に理解することができるのでしょうか。なぜ、古代ローマの哲学者は言語と数学に関わる七科目全てを「人を自由にする学問」として定義したのでしょうか。なぜ、私たちは右脳と左脳の両方をそもそも持っているのでしょうか── そう考えたとき、その答えは明確です。

つまり、「人を自由にする」というのは「自由な思考を行える」ということ、と言い換えることができるのです。

「興味がある」「興味がない」の2択とは限らない

“自由な思考を行う” と聞くと、「普段から自分は自由に物事を考えている」と思われるかもしれません。しかし、それは本当でしょうか。
何か新しい物事に出会ったときに、たとえば新作の映画や新しい人と出会ったとき、「興味がある」「興味がない」の2択で思考をしていませんか? 自由な思考とは、そこに「未来の自分は興味を持っているかもしれない」という可能性を持つことです。

言い換えれば、「思考が自由になる」というのは「新たな自分の興味を発見する」ことでもあります。教科書や書籍に書かれていることは、ただの情報でしかありません。それらの情報に自分の興味を掛け合わせることで、新たな興味へと繋げていくこと。そして新たな興味の発見は、「自分はこういったことにも興味を持てるのだ」と自分自身を再発見することでもあるのです。

また、リベラルアーツは「人を自由にする学問」と上述しましたが、“学び” を分野の枠だけで捉えるのではなく、自由に融合させ新しい発見や価値を見出していくことがリベラルアーツの本質であると森は考えます。

社会人であっても「興味」に素直になれる環境が必要

たとえば、人生において多くの時間を費やす「働く」という行為に対して、もしも不自由さを感じているのであれば、それは仕事に対して興味を持てていないからかもしれません。たとえば新しい仕事を任されたとき、それが自分の興味のないことであったら仕事へのモチベーションは上がらないでしょう。

しかし、大切なのは自分の興味のある仕事を見つけるという思考ではなく、自分の興味のあるテーマや分野を仕事に掛け合わせるという思考です。
興味ある仕事の分野はあくまで ”枠” であるのに対して、自身の興味を仕事に掛け合わせるという思考は、可能性を広げ、新たな未来の発見や価値創造に繋がる思考です。さらに、その思考によって、自分の興味に対して興味を持ち、自分自身より深く知ることに繋がります。

リベラルアーツ教育の環境下で学んできた森は、「自分の興味に興味を持つこと」「学び自体を自ら創造すること」が重要であると考えます。そしてこれらはアカデミック環境に限ったことではなく、人生において多くの時間を費やす「働く」環境においてこそ重要です。
仕事に自分の興味を掛け合わせることで、仕事に対して主体的になり、どんな仕事からも学びを得ることができるようになるのです。

そのため、忙しいとつい目の前のタスクをこなすだけになりがちであったり、仕事の内容に対して興味があるかないかという思考になりがちですが、そうではなく、一度立ち止まって自らの興味に耳を傾け、その興味のフィルターを通じて、目の前の仕事に思いを巡らすことができれば、仕事が自分ごと化され、主体的に取り組めるようになるはずです。
そして「自分はどんなことにも興味と学びを見出すことができる」ことを知るプロセスこそが、学びなのです。その学びの思考を習得した人は、さまざまな学びから価値を創造することができる人と言えるでしょう。

人が人であり続けられるための意義と環境の実現に向けて

FICCではより社員が興味に対して素直になり、興味から生まれる行動を促進できるよう、個々の興味を大切にし、自由研究的な活動を行える環境や、興味から追求した研究内容を共有し合える環境を常に目指していると言います。

「ただ与えられた仕事をするだけでなく、興味をかけ合わせた学びを通じて、誰かの価値になる仕事を自ら生み出せる人になって欲しい」 ── そういった考えがリベラルアーツの原点である「人を自由にする学問」として生まれた自由七科の哲学でもあり、人生において多くの時間を費やす「働く」環境において、人が人であり続けられるための意義と環境の実現に繋がると、FICCは信じているのです。

── 第2回は、「多様性」「価値創造」というテーマでご紹介いたします。

学びを再考するための7つのアイデア 全4回

【第1回】働く上で自分の「興味」とどう向き合うべきか。リベラルアーツの視点から考える
【第2回】「ありがとう」を生み出すには相手への理解が重要。人生を豊かにする学びとは
【第3回】知識ではなく、人に提供する知恵こそが「価値ある学び」である
【第4回】変化の激しい現代において「働く」ことを通じて、いかに人生を豊かにするのか

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