リベラルアーツに魅せられた経営者が紡ぐ、未来へのストーリー

ブランドマーケティングエージェンシー・株式会社エフアイシーシーの代表取締役社長 森 啓子は、自らの経験をもとに企業経営における「リベラルアーツ」を重視しています。一見するとビジネスと直結しないように思えますが、なぜ重要視するのか。彼女のストーリーから、その真意をひもときます。

古代文明にまでさかのぼる学問の源流・リベラルアーツとは

古代ギリシャで生まれた学問・リベラルアーツ。

言葉にかかわる文法・修辞学・論理学の3科目と、数学にかかわる算数・幾何・天文・音楽の4科目を合わせた「自由七科」は、神学、哲学に続き“人を自由にする学問”とも呼ばれています。

紀元前にまでさかのぼる古典的な学問が、現代においてどんな意味を為すのか?

そんな疑問を抱く人は少なくないでしょう。

そこには、日本における「リベラルアーツ(=一般教養)」という誤った認知がかかわっていると考えられます。

リベラルアーツを定義すると「専攻を持たない」という意味で考えられる傾向がありますが、世界的には名門として名をはせるリベラルアーツカレッジは少なくありません。

また、近年では日本でもリベラルアーツを主体とした学部を立ち上げる大学が増えてきました。

とはいえ、そうしたアカデミックな学問が、ビジネスとどのようにつながっていくのか──。

その答えは、思いがけないかたちで存在しています。

「FICCは、データに基づく論理的なマーケティングによってブランドのビジネスの課題を解決する、マーケティングエージェンシーです。インフォメーションテクノロジーやデータを活用し、ブランド戦略やマーケティング戦略、デジタルプロモーションの実行まで、幅広く事業を展開しています。

この企業経営において最重視しているのが、リベラルアーツの考え方と実践です。先人の教えや過去の知識を大切に、今日や未来の社会課題や消費者の理解をデータドリブンに行い、マーケティングをさらに進化させていきたいと考えています」
FICCは、デジタルマーケティングのプロフェッショナル。

ロジカル、効率性の追求といったイメージと、リベラルアーツは一見するとかけ離れているように見えるかもしれません。

「リベラルアーツの本質は、多様な価値観を共有するなかで学びや思考を育んでいき、人を理解すること。それは、デジタルマーケティングという新たな領域で事業を展開する当社にとって非常に重要なイノベーションを生み出すプロセスに近いものであり、同時に人を理解するというマーケティングそのものだと考えています。

むしろ、学問と企業が分断されているような状態は、日本の社会課題でもあると感じています。リベラルアーツの理解を深めるとともに、ビジネスとシームレスにつながることを発信していきたいと考えています」
学問の本質ともいうべき源流にまで立ち返り、企業のトップとしてFICCを経営する森のこのスタンスには、彼女自身が歩んできた経験が如実に反映されていました。

リベラルアーツの本質に繋がる、明確でぶれない両親からの教え

兵庫県出身の森ですが、幼少期にアメリカ・ノースカロライナ州で生活していた時期がありました。

初めての海外生活が、その後の人生に大きな影響を及ぼす最初のターニングポイントになったのです。

「4歳くらいでしたが、その時の記憶は今でも鮮明に残っています。幼稚園でクラスメイトと一緒に過ごしているのですが、私は英語を話せなかったので、当然発言できない。だから、最初は『Keikoは声が出ない子なのかもしれない』って、周りから思われていたんです」
子どもの言語習得能力は驚くべきスピードで発達するもの。

やがて英語で話せるようになると、日本人や日本文化について話すなど「それこそ日本では得られない貴重な経験ができた」と、森は当時を振り返ります。

「誰かと話したりコミュニケーションをとったりすることが、自分にとっては冒険でした。人種も多様でしたが、そもそも子どもなので“誰とでも仲よくしよう”というピュアなマインドが息づいていたのもありがたかったです」
海外生活と同じく、森にとって大きな影響を与えたのが両親の存在です。

「一言で表すなら、枠にはめない育て方。父の教えは本当にシンプルで『人間力をつけなさい』。母は『決して他者を否定せず、常に優しい心でありなさい』。ルールが明確で、ぶれないんです。両親が信じている思想を、自分も同じように信じて生きたい、と。

ただ、シンプルであるがゆえに余白もたくさんあって、その部分はいろいろな学びや経験を自分で探しながら、人生を歩んでいかないといけません。そこにどんな選択をするかは自分次第だ、というのが両親のスタンスでした」
こうした教えのなかに、森はリベラルアーツとの共通項を見出していました。

多様な考えや価値観を認めあい、人を自由にする学問。

自由であり続けるために、誰かを否定することなく受け入れ、人間力を高めていくことが、リベラルアーツの本質にもつながっていくのです。

成長に伴い、今度は自らの意志で森はオーストラリアやアメリカへの留学を決意します。

出生も人種も多様な人たちが集い、ユニークな思想を互いに尊重しながら、学びを深めていく日々を送りました。

FICCの企業経営にも、彼女自身のこうした経験が大いに生かされています。

ストーリーを紡ぎ、語れるか。焦点はあくまでも“人”の心にある

リベラルアーツは、古代ギリシャ・ローマを起源とし、12世紀のヨーロッパで大学が誕生したときにもその学びは重視され、17世紀にイギリスからアメリカに移住した開拓者(ピューリタン)たちにより、アメリカへと広まり、そして数百年の時が流れるなかで世界中へ波及していきました。

過去から未来へつながるもの。

数々のストーリーを紡ぎながらパスしていくもの。

森は、リベラルアーツの思考をもって人、企業、社会を豊かにし、そして未来につなげていくのが自分のミッションだ、と考えています。

「私は神戸女学院という中高を卒業後、大学は米国のリベラルアーツカレッジとして歴史あるマウント・ホリヨーク大学に進学したのですが、実は、日本にリベラルアーツ教育を広めるべく、神戸女学院を設立したのがその大学出身の宣教師の先生方であったことを大人になってから知りました。

このことから、古代ギリシャ・ローマから始まり、ヨーロッパ、アメリカ、日本へと大陸を渡ったリベラルアーツの歴史をより実感したのです。

そして、私がFICCの役員に就任し経営にリベラルアーツを取り入れはじめていたときのことです。父が長年勤めていた大学から神戸女学院へ移り、院長としてリベラルアーツ教育の強化に取り組んでいたんですが、その取り組みの中に、建築家であり伝道師でもあったヴォーリズの建築が多く残る神戸女学院のキャンパス全体の重要文化財認定があって。

実は自分の祖先はその昔、ヴォーリズの生徒であったことを知るという経験がありました。

自分が選んで来たこと、父や祖先との繋がりに、自分がリベラルアーツの歴史に導かれているような、使命というような感覚を感じずにはいられませんでした。

古代ギリシャ・ローマから人類が時と大陸を超えて紡いできたストーリーのなかに、私は自分の人生の意味を感じたんです。過去から渡されたこのバトンをしっかりと、未来にパスするんだ、と」
紡がれるストーリーは、必ずしも過去から未来につながるだけではありません。

FICCでは、マーケティングの本質は“人”を真摯に見つめることだと考えています。

進化を遂げるAIやテクノロジーは、成功確度を高める有用な手段。

しかし、真の価値を生み出す源泉は人にこそあり、消費者の心を理解し、ストーリーを育み語ることの価値を重視しています。

「再現性のある形式としての知識がScience(サイエンス)の領域。一方、人を理解し、語るべきストーリーを紡ぐのがArt(アート)です。これらを両立するために、Ars & Science、リベラルアーツの考え方が大切になるのです。

ですから、当社のメンバーには、異なる考えや価値観を決して否定せず、共有し学ぶことで新たな価値を生み出して欲しいと考えています」
志を同じくする仲間として、ビジョンを共に見据え、価値創造における個々の興味や思考に多様性や幅を許容するのがFICCのスタイル。

たとえば毎月実施している全社会も、“答えの共有”ではなく“問いに対して向き合う場”としています。

職種も専門性も異なるメンバーが集って新たなイベント開催につながったり、共有から得た学びをそれぞれがFICCならではの価値として発信したり。

ビジネスとリベラルアーツの融合が、イノベーションへ。

「学びから価値が生まれ、ビジネスの成功を引き寄せる。私は、当社のスタッフにそんな成功体験をたくさん積み上げてほしいし、その先にはきっとより良い社会、未来につながるはずだと信じています」
FICCは、興味や共感、受容のスタンスからさまざまな領域を掛け合わせ、新たな価値を生み出すイノベーターなのです。

リベラルアーツとビジネスを掛け合わせた先に豊かな未来を見つめて

企業の代表取締役という立場にあって、当然ながら森はビジネスにおいて結果を出していかねばなりません。

「リベラルアーツに基づく経営と表現すると、それは単なるパーパスのように響くかもしれません。でも、それだけじゃない。パーパスであり、経営資源でもあります。

真の意味でパーパスとビジネスの両輪を回していくには、これらが経営資源としても機能すべきです。つまり、FICCでは、スタッフひとりひとりの興味や想いを、ビジネスを成功させる資源でもあるととらえているのです」
リベラルアーツの方法論として、幅広い分野の学問を学び、幅広い視点から”問い”を見据え、対話により視点や思考をかけ合わせていくことが推奨されています。

海外のリベラルアーツ教育現場では、2つ以上の専門分野の学びが必須となり、異分野の人たちとの発想の掛け合わせも行われます。

選択に余白を残した自由のなかで、互いの価値観や興味を尊重しあいながら、新たな可能性を探っていくこと。

それはまさしく、さまざまな人種や職種や世代のひとたちが集い、成果を生み出していくビジネスの手法に他なりません。

「FICCのビジョンに対して、メンバーそれぞれが抱く興味と、それぞれの専門領域を掛け合わせてビジネスの成果を出していくこと。全員が主役として輝ける環境を提供していくこと。これが、経営者としての私が掲げる最大のチャレンジです。

同様に、クライアントに対してもFICCは単なるマーケティングの手法を提案するのではなく、人や学びの本質を見つめてイノベーションを起こす存在でありたい。その結果として、ビジネスの成果や社会へ良い影響を生み出していきたい。そんな姿勢に共感いただけるクライアントとこれからも共にビジョンを見据えていきたいと思っています」
両親の教え、海外での経験からリベラルアーツとの出会い。

そして、その発想を生かした企業経営の実践。

森が紡ごうとしているのは、企業経営の枠を飛び越えて、社会課題の解決や経済の発展、より良い未来の創造にまでつながっていく壮大なストーリーです。

リベラルアーツを核として、デジタルマーケティングの領域に改革を、イノベーションを引き寄せるために。

ですがあくまでも“人”を見つめ、“人”に寄り添うスタンスは揺らぐことはありません。

これからも彼女はリベラルアーツの理解を深め続け、リベラルアーツはビジネスとシームレスにつながることを発信しながら経営を行います。

FICCについて

LEADING BRANDS AND PEOPLE TO PURPOSE

  • 持続するブランド
  • 市場を創るマーケティング
  • 共創がつづくクリエイティブ
  • 存在意義の共創

ブランドマーケティングの実績と哲学

ブランドの社会的意義による新たな市場を創造する「ブランドマーケティング」の考えと、10年以上にわたる戦略とクリエイティブの実績、人の存在意義による共創を通じて、企業のブランディングやマーケティング活動の支援や、さまざまな企業やセクターの方々と未来のビジョンの実現に向けた取り組みを行っています。