さまざまな価値観を知りニュートラルであり続ける。ひとつの出会いから広がる未来の可能性

今回インタビューしたのは、FICC京都オフィス 事業部長の村松 勇輝です。現在FICC京都は「誰もが夢中になれるブランドを作り、確かな希望を実感できる社会へ」というチームビジョンを掲げ、さまざまなブランドと向き合っています。

2020年から日本各地に出向いてさまざまなブランドの課題解決に取り組むなか、これまでに掲げていた「地方の活性化」というビジョンに違和感を持ったそうです。その後、メンバーと対話を重ねて現在のビジョンにたどり着きました。そこで、さまざまな取り組みを通じて得た気づき、ビジネスにおいて大切なことについて話を聞きました。

大先輩から教わった「百見は一触にしかず」。2022年に見た景色とビジョンに対する違和感

2022年は、林業・農業・職人の技術など初めて触れる業界でいろんな体験をし、仕事を通じて自分の幅が広がった一年でした。京都オフィスのある共創自治区CONCONの自治会で毎月入居者が集って、「みんなで何かをやりたいね」という声が挙がり、はじめて夏祭りも開催しましたね。そこで違う会社の人たちとも仲間になれたし、真面目な相談もできるようになって、会社の枠を超えた共創プロジェクトも生まれました。

キックオフを山登りからスタートしたプロジェクトもあったし(笑)。いい意味で、「こうしなければいけない」という仕事の「型」が外れていった気がします。

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なかでも一番印象に残っていることは、「愛媛県ワーケーション」。社会見学と仕事を混ぜた内容で、林業について深く知る初めての体験でした。実際に山で木を切らせてもらって、世の中にはまだまだ知らないことがたくさんあると思ったし、目には見えない人の想いや歴史的な背景も含めて理解することが大切だと気づきました。

つい最近ご縁をいただいた、人生の大先輩の方に教えてもらった「百聞は一見にしかず」ならぬ、「百見は一触にしかず」という言葉。実際に触れて体験してみないと本当の意味で知ったことにならないということは、ここ数年で一番大きな収穫かもしれません。新しく誰かと出会うことはかけがえのない価値であると感じられた一年でした。

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一方で、これまで「地方を活性化」という言葉にこだわってきたチームのビジョンに違和感が出てくるようになり、このままでいいのだろうかと考えるようになりました。

大切なのはみんなが夢中になれていること。メンバーそれぞれの自由な発想から得た気づき

ビジョンへの違和感から、2023年はメンバーみんなが納得する自分たちのビジョンを考えたいと思いました。オンラインで集まって決めるという選択もできたけど、みんなでビジョンを決めるために必要なことはなんだろうと考えてたどり着いたのが、「ume,yamazoeで合宿をすること」でした。

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ume,yamazoeは、自分たちがブランディングを支援し続けてきた大切な場所であり、「誰もがフラットになれる場所」というオーナーの梅守さんの想いを形にしたお宿です。だからこそ、年齢や立場にとらわれることなく、ひとりの人間として対話ができる場所だと思いました。仕事仲間という枠を超えて、お互いの「命」と向き合いたいと思ったんです。

その合宿でワークショップをして、それぞれの「やりたいこと」を聞いた後、みんなでビジョンを考えることにしました。

ume,yamazoeにて合宿の様子

ワークショップで出たそれぞれの意見は、自分の想像をはるかに超えてバラバラでした(笑)。これまでに掲げていた「地方を活性化」は一体なんだったんだと思うくらい、こんなにも「やりたいこと」が自由なのかと思いました。その自由な感じがとても心地よかったんですよね。もし、同じことを考え、似たような発言がみんなから出た場合、すごくつまらないものになったんだろうなと。お互いの存在を認めあえたような時間でした。

その時、関わる人たちみんなが「夢中になれていること」って大事なんだと気づいたんです。いろんな場所に行って知らないことがたくさんあると感じ、何かに限定したものの見方について疑問を感じていたので、この合宿ではハッとさせられましたね。

すべてのビジネスをワクワクするビジネスに変えていく

今、僕たちは、みんながワクワクできるビジネスの「やり方」自体がとても大切だと改めて感じています。自分たちと仕事をすることで、クライアントの仕事がワクワクするものに変わる。そのためには、関係者全員の楽しさを見出すような、きっかけとなる何かが重要だと思うんですよね。知らなかったことを知ってもらうのもひとつ。

例えば、撮影現場ではどのように撮影が行われているのかというプロセスも共有する。普段の仕事では体験することのできない体験をする。そういったきっかけから、目の前の仕事が違ったものに見えてくる。一見、関係のない専門的な知識や情報だったとしても、いつかその先の人生で役に立つことがあるかもしれない。対話することがお互いの世界に一石を投じることになって、何かが生まれそうな感じがしてくる。そんなワクワクする時間が、僕らの仕事だと言えるようになりたいですね。人間はワクワクしているとポジティブになるので、素敵な未来に向かうアイデアが出やすいと確信しています。

ただ、ワクワクという気持ちだけではビジネスは続かないので、どうやって経済価値をつくるのかについても同時に考えます。この経済価値を生むのに必要なことのひとつとして、「いろんな価値観を知っていること」が挙げられると思います。

例えば、超富裕層向けサービスのブランディングのお手伝いで、京都の伝統技術を取り入れたブランドブックを作りました。素晴らしい技術ではあるものの、伝統的な用いられ方の中では価値が低かったものが、違った用いられ方をすることで高い価値に変化するという面白さと、普段出会うことのない人たちの接点をつくれたことは、とても嬉しい経験でした。

自分がつくる経済価値には、ひとつの分野にとらわれず、さまざまな物事に直接触れていろんな価値観を理解しておくこと、そして自分がニュートラルな状態にあることが必要だと考えています。大都会と田舎、資本経済と地域通貨、歴史と革新、伝統工芸と先端技術、高齢者と中高生みたいに、一見交わらないようなものが交わること。それをプロデュースすることが僕のやりたいことです。

さらに活動の幅を広げ、生涯学び続ける豊かな生き方がしたい

人生100年時代、最近特に意識をしているのが、『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)―100年時代の人生戦略』という本に書かれている、「ポートフォリオ・ワーカー」という生き方です。仕事・趣味・ボランティア、なんでもいいから全然違う活動の場を複数持っていて、生涯学び続けて豊かな人生を送るという考え方で、いろんなことをやっている人として生きていきたいと思っています。

町内会に入って河川敷の掃除をしたり、地蔵盆を企画したり、地域の人とのつながりも楽しんでいると、町内会長からマーケティングの相談を受けたりもするし、ヨガの先生をしているワイフのビジネスを支援していると、思いもよらないご縁がたくさん生まれたりもする。FICCの仕事だけじゃなく、「自分が力になれそうなことはなんでもやろう」と気持ちが変わってきました。

その「ポートフォリオ・ワーカー」が集合しているチームといえばFICC、になれたら面白いなと今は思ってます。実際、いろんな専門性を持つメンバーが揃っていて、それぞれに活動もしていますしね。

そして、これから挑戦したいのは「グローバル」。日本を愛しているからこそ、世界に目を向けた方がより大きな広がりが生まれると思っています。あんまり海外は行かないタイプだけど、旅好きなメンバーの話を聞くと面白そうだなと思い始めてきましたね。何事も「百見は一触にしかず」、これに尽きる。この言葉を教えてくれた人生の大先輩から古民家活用の相談を受けているので、近々会いに行こうと思っています。

執筆:黒田洋味(FICC) / 撮影:徳永陽介

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