ume,yamazoe

パーパスを体現したプロジェクトから業界を超えた共創へ。ホテルのリブランディング施策

創業時大切にした想いを紐解くリブランディング

四季折々の自然に囲まれた里山に望む、ume,yamazoe(撮影:西岡潔)

ume,yamazoe(以下、ume,)は、奈良県山添村にある3組宿泊限定のホテルです。2020年3月の開業直後、コロナ禍にもかかわらず「サウナのある古民家」として一躍予約が取れない人気宿へと急成長しました。ビジネスが好調である一方で、オーナーの梅守志歩さんは「ume,としてやりたいことが本当に実現できているのだろうか」と、ブランドのあり方に違和感を覚えたといいます。

そこで、FICCでは、ume,が創業時大切にしていた想いを紐解き、リブランディングを支援。さらに、ブランドパーパスを体現する取り組み『障がいや病気のある方のための宿泊招待 HAJIMARI』の企画立案、実行、戦略PRを行いました。

具体事例について

売上と想いを両立するブランドコアを設計し、ブランドブックを作成

ume,は、「障がい、病気、性別や宗教、年齢にとらわれることなく”いろんな人”が、心穏やかに、優しくなれる場所」をつくりたいという想いから開業しました。コロナ禍の2020年オープンにもかかわらず、併設のフィンランド式サウナが話題を呼び、一躍人気ホテルに仲間入りします。その一方で、梅守さんはume,が「サウナのある古民家」というイメージがついていくことに違和感を覚えます。

サウナも宿の魅力のひとつであり、売上にはつながっているが、「サウナのある古民家」のブランディングでいいのか?事業を始める上で、伝えたかったことが伝わっているだろうか?と考えるようになったそうです。

そこでFICCは、創業当時からume,が持つ想いを紐解き、ブランドのビジョン・ミッション・バリューを定義しました。同時に、これまであったブランドブックを刷新。ume,にとってサウナは「優しい感覚になれる場所」であり、ume,を構成する大切な要素のひとつと言語化しました。また、ume,が大切にしている想いが伝わるように、「サウナを作った理由」や「コンセプト」を作成し、ブランドブックにまとめました。

ブランドブック

共感と広がりを生むビジョンに接続したアクション・PRで、メディア掲載やSNSシェアを多数獲得

ブランドコアが明確になったタイミングで、パーパスを体現するアクションとして「障がいや病気のある方やそのご家族や大切な方をご招待し、旅の時間をプレゼントするプロジェクト案」がありました。これは、障がいや病気のあるご家族がいらっしゃる梅守さん自身の原体験から、「障がいや病気があっても、旅や余暇を当たり前の選択肢にしていきたい」という強い想いで企画されたものでした。

そこでFICCは、プロジェクトの立ち上げからPRまで一貫して支援。「訪れる人にとって、なにかのきっかけになる、”はじまり”の時間になるように。そしてume,にとっても新しい挑戦、”はじまり”になるように」そんな意味をこめて、『宿泊招待HAJIMARI』とプロジェクトを名付けました。

宿泊招待『HAJIMARI』の様子

また、どれだけ意義のある取り組みをしようとしても真意が伝わらないと、障がいや病気がある方やそのご家族を傷つけたり、「人気の宿がいいことをしようとしているだけ」と、ume,にとってネガティブに受け取られる可能性があります。そのため、プレスリリースにおいては「なぜume,が『宿泊招待HAJIMARI』をやるのか」をume,のビジョンと合わせ、丁寧に伝えることに注力しました。

PR TIMES プレスリリース
障がいや病気のある方とその大切な方たちに、特別な一日を。
ume,yamazoeが障がいや病気のある方を対象とした無料宿泊ご招待「HAJIMARI」をスタート
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その結果、リリース後の反響は大きく、SNS投稿のシェアは100件以上にのぼり、いいね!の数は約1,400件。そのほか多くの新聞・メディアにも取り上げられ、『HAJIMARI』には定員を超える100組以上の応募が集まりました。

さらに、以前は障がいや病気のある方の宿泊がほぼない状態でしたが、リリース後は1〜2週間に1件のペースで予約されるようになりました。「サウナのある宿」から「いろいろな人が集まる、優しい感覚になれる場所」という本来のブランドイメージが世の中に定着していくと同時に、ホテルの集客も向上。ブランディングとマーケティングのどちらにも良い影響があり、リブランディングによって想定していた以上の結果につながりました。

ひとつのホテルのブランドパーパスを体現したプロジェクトから、業界を超えた共創へ

元々はひとつのホテルのブランドパーパスを体現する取り組みとして始まった『HAJIMARI』プロジェクト。アクションの結果、お客様はもちろん、同業者や他業界からも想像以上の大きな反響を受け、ホテルの枠を超えたゴールを目指したいと思うようになったそうです。

そこで、任意団体「HAJIMARI」を設立。「障がいや病気がある方の旅などの余暇の選択を増やす」という、旅行・余暇業界の新しい文化をつくるため、様々な事業にチャレンジしています。小さな山奥のホテルから始まった『宿泊招待HAJIMARI』プロジェクトは、多くの人々の共感を生み、業界を超えさまざまな共創を生み出すプロジェクトへと発展しています。

お客様の声

「サウナのある宿」から「いろいろな人が集まる、優しい感覚になれる場所」という本来のブランドイメージが広がりつつあることを、身をもって感じています。「なぜうちがそれをやるの?」ということを、丁寧にアウトプットしてくれたおかげで、想いに深く共感してくださるお客様が増えている実感もあります。

売上とブランディングの両立は日々大変ですが、FICCさんは、普段の集客からume,の未来の事業まで一緒に考えてくれる心強い存在です。一緒にお仕事ができること、とても嬉しく思います。ー ume,yamazoe オーナー 梅守志歩様

クライアントインタビュー
予約が取れない宿ume,yamazoeのリブランディングの裏側。 障がいや病気のある方の宿泊招待『HAJIMARI』が生んだ可能性
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ブランドの社会的意義による新たな市場を創造する「ブランドマーケティング」の考えと、10年以上にわたる戦略とクリエイティブの実績、人の存在意義による共創を通じて、企業のブランディングやマーケティング活動の支援や、さまざまな企業やセクターの方々と未来のビジョンの実現に向けた取り組みを行っています。