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ソーシャルリスニングを活用したマーケティングに役立つ分析方法

アメリカでは早くからマーケティングに「ソーシャルリスニング」という手法を用いていますが、日本でも近年この方法が注目を集めており、消費者の声を有効活用しようという動きがあります。しかし、日本ではこれまで現場担当者の「経験」をもとにマーケティングが行われてきたこともあり、データの具体的な利用方法がわからず、宝の眠るデータの山を持て余す光景もよく見られます。ソーシャルメディアが日本でも浸透するなかで、これらのデータを使用しないことは、競合ブランドに対して遅れをとる可能性があります。

1. ソーシャルリスニングの活用法

ソーシャルメディアで人々が発信しているテキストや画像情報を大量に集め、それを基に分析していくことを「ソーシャルリスニング」といいます。

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情報収集を行うソーシャルメディアには、TwitterやFacebook、Instagramのほか、以下のような”消費者が口コミを書ける媒体”はすべて対象と考えられます。

  • ソーシャルメディア : Twitter、Facebook、Instagram等
  • Q&Aサイト : Yahoo知恵袋、教えてgoo等
  • レビューサイト : 価格com、@cosme等
  • ブログサービス : アメーバブログ、ライブドアブログ等
  • ECサイトのレビュー : Amazon、楽天等

マーケティングにおけるソーシャルリスニングの活用法として、これまで弊社では戦略立案時に行う消費者インサイトの発見や、ターゲットユーザーとなるペルソナ構築といった定性的なリサーチに活用する手法をご紹介してきました。今回は大量のデータを機械的に分析し、ブランドイメージ調査やマーケティング施策の効果測定に利用する手法をご紹介します。

2. ブランドイメージ調査&施策の効果測定

ブランドイメージ調査やマーケティング施策の効果測定ではアンケート調査を行うことが一般的ですが、ソーシャルリスニングを利用することで、比較的安価に継続的な調査を行うことができます。また、ソーシャルメディアではユーザーの生の声を取得することで、アンケート調査と比較してユーザーの本音を知ることができる強みもあります。

ソーシャルリスニングは定量・定性の両面から分析を行うことが理想であり、元となるデータ量が多いほど正確な結果を導くことが可能になります。そこでまずは多くのデータを集め、それを「定量分析」するところから始めましょう。
しかし、人の手で収集できる情報量には限りがありますので、より多くのデータを自動的に取得する有料の「ソーシャルリスニングツール」の導入をお勧めします。最近では様々なツールが公開され、各サービスによってTwitterのデータが100%取得できるものや、過去のデータから投稿を取得できるもの、テキストマイニングツールが付属されているものや、デモグラフィック属性が分析できるものなど、様々な違いがあります。

ツールの選定は、下記の分析方法を参考とし、分析の目的を明確にした上で、各ツールの特性を導入前にしっかりと見極め、欲しいデータが抽出できるサービスを選択してください。

2.1. 分析方法 基本編 : 数値分析

では、実際の分析方法を見てみましょう。今回の分析では最も多くのデータを取得しやすいTwitterのみを使用して分析を行っていきます。

以下の項目を、日別や月別にグラフ化し、前月・前年といった時系列での比較、競合ブランドや商品カテゴリとの比較をしていきます。データ全体を見て大きく数字が変化している部分に注目し、原因を特定することで今後の施策に活用できる情報を得ることができます。

①2.1.1. 投稿数

まずは対象ブランドのキーワードを含んだ投稿を取得します。この膨大なデータを単純に、投稿の数から追ってみましょう。

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青色が対象ブランド、緑色が競合ブランドのキーワードを含んだ日別投稿数

こちらは対象ブランドと競合ブランドの投稿数を日別に記録したものです。大きく数字が動いた日を見てみると、新規のCM放送開始日だったことが判明。CM効果の高さがうかがえました。

2.1.2. リーチ数(投稿したユーザーの合計フォロワー数)

続いて投稿したユーザーの合計フォロワー数であるリーチ数を算出し、こちらも時系列で並べ替えてみましょう。リーチ数が突出している部分を見つけて投稿を確認することで、どんな話題がどれほど多くの人にリーチ(目に触れている)しているかを知ることができます。投稿数では多くの人が話題にしている要因を、リーチ数では多くに人の目に触れている要因を突き止めることができます。

2.1.3. ポジティブ・ネガティブ割合

多くのソーシャルリスニングツールでは収集した投稿データを分析し、「ポジティブ」な投稿か「ネガティブ」な投稿か判断することができます。このポジネガの割合をトラッキングすることで、ブランド好意度を知ることができます。

2.2. 分析方法 発展編 : 投稿&アカウント分析

「基礎編」でまとめたデータに以下の項目を掛け合わせて見ることで、より詳細な分析ができます。

2.2.1. 頻出キーワードを洗い出す

投稿数が多いTwitterは、1投稿の文字量が限定されているため分析しやすいことが特徴です。ソーシャルリスニングツールによっては形態素解析などを利用し、頻出キーワードを見ることができます。この頻出キーワードを自社ブランドに関連する投稿のキーワードだけではなく、ポジティブ投稿の頻出キーワード、月別の頻出キーワードを出し、期間・競合・カテゴリで比較すると興味深いデータが浮かび上がります。

例えばポジティブな投稿に「限定」というキーワードが多く出てきた場合、「限定」で行ったプレゼントキャンペーン等が、消費者のプラスの感情を引き起こしたことがわかります。キャンペーンの効果測定を、「感覚」ではなく「数字」で裏付けられ、消費者に愛されている点、または改善が求められている点を浮き彫りにすることができます。

2.2.2. インフルエンサー・リツイートをランキング化する

基礎編で出したポジティブ投稿の中から、インフルエンサー(フォロワー数の多いユーザー)やリツイートされた投稿をランキング形式などで出してみます。
インフルエンサーのプロフィールを目視で確認したり、リツイートされた投稿の傾向を見ることで、インターネット上でバズを生み出しやすい傾向を見つけることができます。

2.3. 分析方法 応用編 : セグメント分析

基本編・発展編で得たデータを、以下の2つの切り口でさらに細かく分類していきます。

  • カスタマージャーニー
  • タッチポイント

2.3.1. カスタマージャーニーの各段階別にデータを分類する

弊社では以下の図の通り、「関心・興味・購入・リピート・推奨」というカスタマージャーニーに基づいて分析しており、集めたデータをカスタマージャーニーの各段階に分類することで、単なるポジティブ・ネガティブ分析だけではわからなかった事象が見えてきます。
商品名に加えて「買った」といったキーワードが含まれていれば購入段階、「おすすめ」といったキーワードが含まれていれば推奨段階に分類することができます。

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マーケティング施策の立案時には認知を増やすことや、購買に結びつけることなど、カスタマージャーニーをベースに目的を設定することが多いと思います。これらの目的に実施したマーケティング施策が寄与しているかを検証するために、カスタマージャーニーの各段階別で頻出キーワードをチェックしてみましょう。

購入を目的としたキャンペーンを実施した場合、キャンペーン名など特徴的なキーワードを確認します。購入段階に振り分けられた投稿から先ほどのキーワードが多く発見することができれば、施策は成功していると言えますが、関心段階で多くキーワードが発見されてしまった場合は、当初の目的からは失敗していることになります。

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投稿を各カスタマージャーニー別、さらにポジネガ別に振り分けてグラフ化

また、各段階別の投稿数を毎月トラッキングし、競合ブランドと比較することで、自社ブランドのユーザーがどの段階に多く存在するのか知ることができます。

2.3.2. タッチポイント別にデータを分類してみる

近年のマーケティング施策では様々な媒体を利用し、複数のキャンペーンなどが同時に進行することも多く、これらの効果測定をすることは非常に困難となってきています。こちらもカスタマージャーニーと同様に予めタッチポイント毎のキーワードを設定し、投稿を分類することで、ある程度可視化することが可能です。

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タッチポイント別の切り口でみることにより、消費者はどの媒体に接触して、どれだけ反応しているかがわかります。これをさらに月別・日別・時間別で分析することで、広告出稿の際の目安とすることもできます。

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赤色がテレビ、青色がラジオ、緑色が雑誌の時間別投稿数

例えばテレビCMを時系列で分析し、CM出稿の時間帯と相関性を見ることで、効果を見ることができます。また、特定のタッチポイントから始まった話題が、他のタッチポイントに拡大していく様子などを見ることもできます。

3. まとめ

ソーシャルリスニングを利用したモニタリングは継続的に実施することが重要です。対象ブランドの過去データや競合ブランドのデータなどと比較することで、対象ブランドの優位性や改善点、顧客心理をより深く知ることができ、自社の優位性をいかすマーケティングを行うことができます。

定量分析では、「何かが起こっているという事実」を見つける事が目的です。分析したデータから突出した部分を発見し、実際の投稿を目視で確認して原因を突き止めることで、今後のマーケティング施策に活かせる情報を発見できます。最終的には人の目で定性分析を行うことになりますが、理論の裏付けをして相手を納得させるためにも、「数値化されていること」が重要です。

ソーシャルリスニングでは膨大なデータを取り扱いますが、あまり難しく考えず、知りたい情報に必要なデータだけを利用してレポーティングすることで、マーケティング部門だけではなく、営業部門など、社内全体で利用することができる有効な情報を得ることができると考えています。
まずは簡単な基礎編からソーシャルリスニングを始めてみてはいかがでしょうか。

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