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マーケティング組織のデジタルトランスフォーメーション

荻野 英希 /

日本企業の大半は、依然としてデジタルマーケティングに対応できるチームを持っていません。アドビの調査によれば、デジタルマーケティングのROIを理解していない日本の経営者は63%までに上り、アジア太平洋地域の中で最低水準の理解度であることがわかります。消費者のデジタルなメディア接触は4割を超えているにも関わらず、日本のインターネット広告費は未だ10%台を推移しています。このまま、企業がデジタルへの投資を怠っていては、消費者に対する後れを取り戻せなくなってしまいます。

市場の変化に柔軟に対応し、デジタルなタッチポイントを使いこなすためには、常に最新の専門知識が必要になります。既存のチームや、エージェンシーの体制だけでは不十分です。将来的にブランドの競争力を維持するためには、理想の顧客体験に基づく組織構造、マネジメント層の理解とサポート、そしてリターンを得るために十分な予算を確保し、マーケティング組織自体のデジタルな改革(トランスフォーメーション)を推進しなければいけません。

理想の顧客体験に基づく組織構造

本来、マーケティング組織は理想の顧客体験像(カスタマージャーニー)に基づいて構成されるべきです。しかし、ほとんどの場合は逆に、不完全なマーケティング組織によって顧客体験が定義されしまいます。これでは、理想の顧客体験を実現することは不可能です。企業はデジタルマーケティングチームの機能や構造を考える前に、消費者の購買行動を徹底的に理解する必要があります。購買行動に確実な影響を及ぼすポイントを理解し、態度変容を実現するために必要なテクノロジーや、人的リソースを割り出します。既存の組織構造からではなく、顧客中心的に投資先を見極めることで、リターンの見込めないWebサイトや、ソーシャルメディアなど、不要なデジタル施策への支出を抑え、効果的な組織構造を作ることができます。

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経営者の理解とサポート

デジタルマーケティングの推進を掲げる経営者の大半は、求められるコミットメントを十分に理解していません。技術的な知識が無いことを理由に、あらゆる判断を実務者やエージェンシーに任せてしまうのです。経営者がリーダーシップを示し、組織全体のサポートを実現しなければ、デジタル施策は断片的なものになり、多額の予算を注ぎ込んでもビジネスインパクトを生むことはありません。マーケティング組織のデジタル改革を推進し、効果的なデジタルマーケティングを実現するためには、経営者自身が現状を正しく理解し、改革のビジョンを描く必要があります。

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上記の表は、カーネギーメロン大学のCMMI(能力成熟度モデル統合)を基に、デジタルマーケティングの成熟度を5段階で表したものです。組織の現状をこの表と照らし合わせることで、経営者はデジタルマーケティング能力の獲得・開発に向けて、現場に何を求め、どのようにサポートすべきかを理解できます。

十分な予算の確保

アメリカのデジタルマーケティング支出は2016年に766億ドルまでに成長し、広告費の35%以上を占める見込みです。多くの企業は専任のデジタルマーケティングチームを抱え、既にマーケティングの中心的役割を担っていることも珍しくありません。しかし日本では、専任のチームどころか、担当者すらいない企業も少なくありません。いくらデジタルマーケティングの推進を掲げても、十分な予算が与えることができなければ、組織の改革は一向に進みません。

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デジタル投資には、①人件費、②設備投資、③運用コスト、④アウトソーシング費、⑤メディア費の5つが含まれます。理想の顧客体験を実現するために必要な①~④の投資額から、コストのカバーに必要な収益成長の目標を設定します。顧客ごとの平均利益金額と、顧客獲得単価がわかれば、損益分岐点に達するために必要なメディア費を計算することが可能になります。

デジタルで消費者を追いかけるカタチとなった日本の企業は、いち早く戦略的な投資を実現し、後れを取り戻す必要があります。最小限のリソースで、実験的なデジタル施策を重ねていても、ビジネスの成長にはつながりません。更なるテクノロジーの普及により、マーケティングの中心的役割がデジタルへとシフトしたとき、デジタルトランスフォーメーションを遂げたマーケティング組織こそが企業の競争力となるはずです。

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