あなたは、デジタルキャンペーンやWebサイト制作をする際のターゲット像はどのように設定していますか?「20代女性」や「F1、M1層」といったデモグラフィックだけでは不十分と感じながらも、詳細なペルソナを設定するには時間と労力がかかるため、大まかなターゲット像で妥協する場合も多いと思います。
しかし、マーケティング施策を成功させるためには詳細なターゲット像が不可欠です。実は、この詳細なターゲット像はソーシャルメディアから簡単に導き出すことができます。なぜならば、ソーシャルメディアでは多くの人が消費活動以外の個性を感じさせる情報を発信しているからです。これらの情報を分析することで商品のマーケティングに最適なターゲット像を割り出すことが可能です。
そこで、私が時間をかけずターゲットの人物像を導き出す時に使っている、ソーシャルメディアからデモグラフィックやサイコグラフィックといったターゲットの詳細な人物像を描くリサーチ方法(私はペルソナリサーチと呼んでいます)をご紹介します。
デモグラフィックとサイコグラフィックから見えるインサイト
今回紹介するペルソナリサーチのゴールは、キャンペーンの対象となるユーザーのデモグラフィックとサイコグラフィックを作成することです。デモグラフィックとは年齢や性別、職業や学歴、年収といった人口統計学的属性。サイコグラフィックは趣味や価値観、購入動機といった心理的な属性のことをいいます。
このような細かいターゲットの情報を得ることができれば、コミュニケーションに活かせる「インサイト」を導き出すことが可能になり、ターゲットユーザーに響くキャンペーンを企画することができます。弊社でのインサイトの定義は「思考」と「購買行動」の因果関係です。
ペルソナリサーチのプロセス
では、具体的なペルソナリサーチのプロセスを紹介していきます。今回は例としてスポーツドリンクブランドをクライアントとし、競合のスポーツドリンクブランドからユーザーをブランドスイッチさせるデジタルキャンペーンを依頼されたとしましょう。 この場合、必要なのは競合であるスポーツドリンクを愛用しているユーザーの人物像です。
ペルソナリサーチではFacebookやTwitterといったソーシャルメディアを利用するので、まずはTwitter検索やYahooリアルタイム検索などの無料ツールを使用して競合ブランドの製品名を検索します。
ここで注目したいのは次のような書き込みです。
- 「疲れたから今日も〇〇を買っちゃったよー!」
- 「俺はスポーツドリンクの中では〇〇が一番好き」
- 「〇〇がない生活なんて考えられない!」
このような書き込みをしているユーザーは、競合のスポーツドリンクが好きなユーザーであると考えることができます。
続いて、このような書き込みをしているユーザーを抽出し、それぞれのユーザーのプロフィールをチェックしましょう。Facebookであれば学歴や友達の人数、「いいね!」をしているFacebookページなどから興味・関心なども公開されている範囲で確認することができます。また、Twitterなどのタイムラインを追うことで、趣味や価値観、不安に感じていることなど、ある程度の人物像を描くことが可能となります。
こうしてユーザーを抽出し、それぞれの情報を並べていくと、ユーザーの共通点が見えてきます。経験的に、30人ほど抽出するとユーザー像がはっきりとしてきます。例えばこのような感じです。
- 15歳から22歳の学生
- 部活やサークルでサッカーをしている人が多い
- 2リットルのペットボトルでスポーツドリンクをまとめ買いしている
- 日本のロックバンドが好きでライブにも行く
より細かくユーザーを見ていくことで、ある程度の収入や毎日の行動での共通点も見えてきます。さらに競合ブランドだけではなく、クライアントのブランドも同じようにリサーチすることで、それぞれのユーザーで違いを見ることもできます。
よりターゲット像を明確にする「I am Statement」
これらの箇条書きにしたデモグラフィックとサイコグラフィックからでも、かなりターゲット像に近づくことができますが、もうワンランクアップしたターゲット像を描きたいときは一人称の視点からターゲットの心理を描いた文章を作る「I am Statement」が効果的です。
先ほどの情報から簡単なI am Statementを作成してみました。
私は大学でサッカーサークルに入っている。サッカーは小学生の頃からやっていて、高校では都大会でベスト8にも入ることができた。サッカーをする時に欠かせないのが◯◯のスポーツドリンクだ。何度飲んでも飽きない味と、疲れた体の水分補給には〇〇が一番だと思っている。
学生でお金は節約したいので、スポーツドリンクはドラックストアで安売りしている時に2リットルのペットボトルをまとめ買い。練習には水筒に入れて持って行く。冷たいほうが美味しいので水筒は必需品だ。
サッカーと同じくらい好きなのが日本のロックバンド。夏フェスには毎年参加しているくらい大好きだ。汗を大量にかくライブでも◯◯のスポーツドリンクは欠かせない。私の人生でスポーツドリンクの〇〇は無くてはならないものだと思う。
このように簡単なI am Statementでも、「何度飲んでも飽きない味だから競合のスポーツドリンクを選ぶ」「節約のために2リットルのスポーツドリンクを買う」「スポーツの時だけではなく、ライブでもスポーツドリンクを飲む」といったターゲットの心理・行動を読み取ることができます。I am Statementを作る際にもソーシャルメディアのタイムラインから読み取った情報が活きていきます。
ここから見えるインサイトは「飽きない味で十分だと思っているからスポーツドリンクを買う(より美味しいものにブランドスイッチしようとは思わない)」です。 よって美味しさをアピールするキャンペーンではなく、値段をアピールするキャンペーンのようなアプローチが必要になります。
ユーザーを抽出 → それぞれのユーザーの情報を書き出し → 共通点からデモグラフィックとサイコグラフィックを作成 → I am Statementを作成…の4ステップだけでも、かなり細かいターゲット像に辿り着くことができました。
ペルソナリサーチはターゲットの立場から考えるリサーチ方法
ここまでペルソナリサーチのプロセスをご紹介しましたが、手法自体はとてもシンプルではないでしょうか。時間をかけず、簡単にターゲット像を導き出すことができるのがペルソナリサーチの最も大きなメリットです。
また、ペルソナリサーチは実際の個人の投稿からリサーチをすすめるため、客観的なリサーチをすることができ、自分の思っていたイメージよりも正確なターゲット像を描くことができます。私自身、何度かこのペルソナリサーチを使ってきましたが、自分やクライアントの想像していたターゲット像と違う特徴をもった人物像になったことがあり、驚いた経験があります。
一方で、この方法はソーシャルメディア上の投稿からターゲット像を導き出すため、話題にされることの少ない製品には適していないというデメリットがあります。ですので、消費財や食品飲料のようなユーザーからの投稿が多く見込まれる製品には適していると言えるでしょう。
ペルソナリサーチに加えてアンケート調査やヒアリング調査を行うことができれば更に正確性の高い人物像を導き出すことができますが、ペルソナリサーチのみでもデジタルキャンペーンやWebサイト制作をする際の参考にすることが十分可能です。
リサーチとしては社内のリソースを圧迫することも少なく、簡単に行うことができるので、ぜひ一度試してみてください。