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「ブリーフィング」技術習得のため、理解すべき11の項目:ブリーフの書き方の基本

荻野 英希 /

効果的なマーケティングは、明確なブリーフからはじまります。ブリーフィングは、ビジネスを左右するマーケティングの決め手となる、マーケターのもっとも重要な仕事のひとつです。しかし、ブリーフィングの文化に乏しい日本では、十分なスキルを持つマーケターが少なく、戦略が曖昧なオリエンばかりが行われています。

ブリーフに正しい形式はありません。しかし、必要項目を網羅した汎用性の高いフォーマットを作ることはできます。今回は、WPPグループの主要エージェンシーのブリーフフォーマットから、共通する構造を抽出してみました。マーケターがこれらの質問に答えられなければ、エージェンシーから精度の高い提案を期待することはできません。エージェンシーもまた、マーケティング戦略やプランの改善に貢献するために、効果的なブリーフの構造を理解する必要があります。

ビジネス課題・機会

いかなるビジネスドキュメントも、まずは目的を定義することからはじめます。ブリーフは、相手が目的と背景を十分に理解できるよう、マーケティング施策が対処すべきビジネス課題や、機会を明確にすることが重要です。

  • マーケティング施策の実施が必要とされる理由は何か? 対処すべきビジネスの課題や、機会は何か?
  • 対処すべき課題や機会と消費者、市場動向、競合、現行のマーケティング施策の関係は何か?

ビジネスゴール

マーケティングROIを向上させ、ビジネスの推進に貢献するためには、定量的なゴールを設定する必要があります。ゴールはマーケティング施策と収益成長の因果関係を描き、解釈の余地がないものであるべきです。

  • マーケティング施策に求められる収益はいくらか? ROIは?
  • マーケティング施策はどのように収益に影響を与えるのか?(トライアル購入、リピート購入、購入頻度、購入量など…)
  • 効果をどのように測定するのか?

予算と期間

予算と期間はマーケティング戦略を大きく左右するため、プランニングに先立って定義する必要があります。的外れな提案や、無駄な工数を省くため、マーケターはビジネスゴールの達成に適切な予算と期間を算出できなければなりません。

  • マーケティング施策に割り当てれる予算は? その額がビジネスゴールに対して適切である理由は?
  • マーケティング活動に割り当てられる期間は? 計画、実行、効果測定など、各マイルストーンの期限と期間は?

収益源となる競合

企業にとって、唯一の収益源は競合です。有限な消費者の資金は、必ずどこからか獲得しなければなりません。収益源は、同じカテゴリーの直接競合である場合も、まったく異なるカテゴリーの間接競合である場合もあります。競合は、ターゲット消費者の決定要因となる、マーケティング戦略の起点です。競合の選定には、収益源として十分な市場規模と支出額があることがポイントとなります。

  • 収益源となる競合は何か? 同じカテゴリーの直接競合か? カテゴリーの異なる間接競合か?
  • 競合の価格と市場規模は? 収益源として十分か?

ターゲット消費者

ターゲットは、マーケティング施策に反応し、競合から獲得可能な消費者を指します。ターゲットに適したコミュニケーションを設計するためには、デモグラフィック属性だけでなく、潜在的な競合への不満、求めるベネフィットやニーズなど含めて定義する必要があります。

  • 影響を与えたいターゲット消費者は誰か? どのような属性を持っているか?
  • ターゲットが競合を選ぶ理由は何か? 競合に対する不満、又は物足りなさを感じるポイントは何か?
  • 購買判断を行うのは誰か? 購入者は誰か? 使用者は誰か? これらは同一人物か、別人か?
  • ターゲット消費者が解決したい問題は何か? 商品やサービスの購入時に何を期待するのか?
  • ターゲット消費者は自分自身がどうありたいと思うのか? 社会的な役割は何なのか? 他人からどう思われたいのか?
  • ターゲット消費者がお金と時間を使う対象の優先順位は何か?
  • ターゲット消費者の商品やサービスの購入を妨げているものは何か?

属性と機能

ブランドの選択基準を定める属性と、ベネフィットの享受を可能にする機能は、消費者の購買行動を大きく左右します。独自性の強い属性や機能が消費者に求められることで、競合から収益を獲得することが可能になります。

  • 消費者が商品やサービスに求める属性は何か?
  • ベネフィットの提供を可能にする機能は何か?
  • 競合に対して独自性のある属性や機能は何か?
  • 競合が、自社に対して独自性のある属性や機能は何か?

行動変容・態度変容

マーケティング施策がその目的を達成するためには、ターゲット消費者の行動や態度(ブランドに対する気持ち)を変化させる必要があります。期待する変化を正確に伝えるためには、マーケティング施策による影響を受ける前と、受けた後の状態を定義すべきです。消費者の行動と態度は、パーセプション(知覚・認識)によって左右されるため、パーセプションフロー・モデリングという管理手法が効果的です。

  • 消費者の現状の態度と行動は何か? マーケティング施策の影響受ける前のパーセプションは何か?
  • 望ましい消費者の態度と行動は何か? マーケティング施策の影響受けた後のパーセプションは何か?
  • 行動と態度の変化はどのように測定するのか? 変化を示す指標は何か?

刺激・メッセージ

消費者の行動や態度の変化を促すには、購買行動の段階に合わせた刺激やメッセージが必要になります。直接的に情報を伝えるのではなく、気づきを与えることが効果的です。

  • 行動や態度の変化を実現するために、どのような刺激・メッセージが必要か? 問題提起か? ベネフィットか? 属性か機能か? 具体的な効果か? 使用方法か? RTB(信頼できる理由)か? リピート購入のメリットか? 離反のデメリットか?
  • 直接的に伝えるのではなく、気づきを与えるために適切な刺激やメッセージは何か?
  • 他のマーケティング施策や、刺激・メッセージの影響・兼ね合いをどのように考慮すべきか?

トーン&マナー

消費者の共感を得るためには、ブランド独自の人格や価値観を伝えなければいけません。このような人間的な特徴を伝えるには、一貫性のあるトーン&マナー必要になります。ターゲット消費者の自己概念や価値観を理解することで、ブランドは自己表現に最適なトーン&マナーを見つけることができます。

  • ターゲット消費者はどのような人とつながりを持ちたいと思うのか?
  • その人の人格はどのような特徴を持っているか?(現代的、伝統的、楽観的、真面目、先進的、保守的、友好的など)
  • ブランドはどのような理想や価値観を重んじるべきなのか?
  • ターゲット消費者に疎外感を感じさせないためには、どのようなコミュニケーションを行うべきか?

メディア・チャネル

マーケティングプランはメディアやチャネルを起点とせず、コミュニケーションに合わせて選定されるべきです。目的のコミュニケーションを効率的かつ効果的に実現し、データの収集や測定が可能なメディアやチャネルを選ぶことで、購買行動全体の管理と最適化行うことができます。

  • ターゲット消費者はどのような状況で、刺激やメッセージを受容するのか? 態度や行動を変化させるためにもっとも効果的なメディアやチャネルは何か?
  • どのメディアやチャネルがもっとも安価に刺激やメッセージをターゲットに届けられるか?
  • データ収集や効果測定が可能なメディアやチャネルは何か?

必須要件

ブリーフに必須要件が少ないに越した事はありません。しかし、プランニングの前には必ずマーケティング施策に関するすべての必須条件(技術的要件、法的要件、文化的要件など)を網羅しなければなりません。

  • マーケティング施策のプランニングと実行において、検討しなければならない要件は何か?

マーケターは決して、ブリーフに求められるプロフェッショナリズムを過小評価してはなりません。優れたブリーフがマーケティング施策の成功を約束する訳ではありませんが、粗末なブリーフは大抵失敗をもたらします。ブリーフの精度が低ければ、見当違いな提案や、主観的なフィードバックが発生し、貴重な時間と資金のロスにつながります。ブリーフは、エージェンシーに指示を伝えるだけでなく、マーケターの思考整理にも大きく役立ちます。ブリーフによって固められた仮説は、ラーニングとなりマーケティング組織の強化につながるのです。ブリーフィングの技術を習得は、マーケティングの成功を決定づけるものになるでしょう。

※本記事はDIGIDAYに寄稿したコラムを転載しています。