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デジタルの役割を明確にするパーセプションフローモデリング

荻野 英希 /
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十分な理解と協力が得られない

デジタルマーケティングが期待される成果を出すためには、他部署との綿密な連携が必要になります。そのためには、同僚や上司の理解とサポートが欠かせません。しかし、多くの組織では、デジタルの役割とその重要性に対する共通認識がなく、十分な協力が得ることができていません。

エージェンシーが上手く連携できない

デジタルマーケティングの担当者は、広告やWeb、ソーシャル、メールなど、多くのチャネルを管理しています。それぞれ個別のエージェンシーが業務を担当する状況で、施策毎の役割が明確に定義されていなければ効果的な連携は不可能です。

このような状況では、デジタルがビジネスに貢献することはありません。予算は削られ、ブランド担当や営業のサポートを単発的に行うだけになります。結果、メディア接触時間の4割を占めるデジタルのタッチポイントを戦略的に活用することができず、マーケティング効果のさらなる低下を招くことでしょう。

FICCでは、マーケティング活動全体の中でのデジタルの役割を定義し、社内や、エージェンシー間の連携を可能にするために、消費者の購買行動の全貌を描く、パーセプションフローモデリングという手法を採用しています。

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購買行動のマッピング

まずは、購買行動を関心(Attention)・興味(Interest)・購入(Purchase)・リピート購入(Loyalty)・クチコミ(Advocacy)の5段階に分けます。私達は消費財のマーケティングを専門としているため、このような段階になります。段階ごとに、ターゲットとなる消費者の思考(Perception)・行動(Behavior)・刺激(Driver)・接点(Touchpoint)を1つずつ定義することで、施策やチャネル毎の役割を、詳細に理解できるようになります。

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起点となるインサイト

パーセプションフローを描き始めるには、インサイトが必要になります。インサイトはターゲット自身が意識していない、思考と行動の因果関係であるため、アンケート調査やグループインタビューなど、対話を伴うリサーチからは見えにくいものです。また、消費者への影響を最小化するエスノグラフィー調査は、十分な柔軟性がなく、多くのコストと時間がかかるため、現実的ではありません。FICCでは、この課題を解決するために、ソーシャルデータのマイニングから、インサイトの発掘を行っています。

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ソーシャルメディア、特にTwitterには、特定の商品やカテゴリーの購買動機を含んだ発言が多く存在します。数千件単位の発言を目視で分析し、購買動機毎に分類をすることで、その傾向や、競合との違いなどを発見できます。さらに、特定の購買動機を持つグループを詳細に分析することで、ターゲットを見つけることができます。

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上記の例では某アイスクリームブランドのユーザーが「ご褒美」「幸せ」「癒し」「贅沢」などの理由で購入をしていることがわかります。これらの製品機能とは無関係な購買動機を持つユーザーは、おそらくマーケティングの影響を受け、ブランドと何らかのつながりを持っています。ターゲットは、「広告に反応し、十分なビジネスボリュームと、継続購入の見込みが高い人物」と定義するため、これらのユーザーが該当する可能性は十分にあります。

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ターゲットとなるユーザーのソーシャルメディアアカウントを選定し、過去3~6ヶ月の発言を目視で分析します。FICCでは、それぞれに共通するデモグラフィック、行動(購買行動)、嗜好、課題、願望、価値観から、一人称の文章で、一人の人物像を描く「アイ・アム・ステートメント」という手法を採用しています。ペルソナのように箇条書きではなく、心理的要因(サイコグラフィック)を詳細に書き出すことで、インサイトを理解し、定義することができます。インサイトは必ず「◯◯と思うから、◯◯を買う」のように、思考と行動の因果関係を描き、本人が意識していないものにします。

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先ほどの、「ご褒美」「幸せ」「癒し」「贅沢」などの理由でアイスクリームを購入しているユーザーを分析し、共通点をまとめると、上記の忙しく、自分の時間がないユーザー像になり、「自分の限られた時間を少しでも楽しみたいから、ハーゲンダッツを買う」というインサイトが見えてきます。

商品特性をインサイトと結びつけることで、ベネフィットを定義することができます。このアイスクリームの場合、ベネフィットは「限られた時間を楽しめる」になり、競合と差別化する特性を結びつければ、効果的なコミュニケーションを設計できます。

態度変容を起こす刺激

インサイトからはパーセプションフローの起点となる、関心(Attention)の段階の思考(Perception)と行動(Behavior)を定義することができます。この場合は、「限られた時間を楽しみたいと思っている」「プレミアムアイスクリームを買う」となります。

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続けて、新たな商品に興味(Interest)を持つ段階の思考(Perception)・行動(Behavior)と、態度変容に必要な刺激(Driver)を定義します。

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適切な刺激は購買行動の段階ごとに異なります。消費者に商品への興味を持ってもらうためには、その商品がなくては満足できない状況を作ることが効果的です。アイスクリームの例では、「既存のプレミアムアイスクリームでは十分に限られた時間を楽しめていない」状況を作り上げれば、新しい商品に興味をもってもらえます。

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この段階毎の刺激の適性を踏まえ、購入(Purchase)・リピート購入(Loyalty)・クチコミ(Advocacy)の段階で、同様の作業を繰り返します。インサイトに基づき、パーセプションフローを埋めていくことで、購買行動における態度変容の全体像が見えるようになります。

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刺激を与えるタッチポイント

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態度変容の全体像が見えれば、活用すべきタッチポイントも見えてきます。まずは現状を理解するために、ブランドとの接触が見込めるもの(オンライン、オフライン、コントロールできるもの、影響を与えられるもの、コントロールできないもの)をすべてリストアップします。

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それぞれのタッチポイントの特性に合わせ、接触が期待できる段階に割り振っていきます。例えば、検索やWEBサイトなどは、興味を持った段階での接触が期待できるタッチポイントです。

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次に、ユーザーの行動データやアンケート調査結果などから、メディア接触の視点でターゲットの一日を描きます。DILO(Day in the Life of)という手法で、いつ、どれくらいの時間、何の目的で、どのメディアと接触しているかを、時系列で書き出します。DILOでユーザーの行動を表現することで、タッチポイントの影響や、優先順位などが見えてきます。新たに発見したタッチポイントや態度変容に与える影響から、タッチポイントの優先順位をフローに加えます。

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段階毎のタッチポイントが明確になれば、それぞれの現状を分析し、課題を見つけることができます。パーセプションフロー上の理想と、現状とのギャップアナリシスを行い、ユーザーがネガティブな体験をしている箇所や、接点を作れていない箇所を洗い出します。これらのポイントを強調し、パーセプションフローを完成させます。

パフォーマンスを改善するKPI

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パーセプションフローは様々なマーケティング施策の指針となるドキュメントですが、あくまでも仮説です。マーケティング効果を高めるためには、段階毎に適切な指標を立て、施策の効果を測定し、改善を行う必要があります。購買行動がオンラインで完結しない場合、段階ごとに連動する正確なデータを得ることはできません。リアルタイムに得られるユーザーの行動データや、アンケートなどから得られる指標を組み合わせ、各段階の効果測定を行います。

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マーケティング施策の管理がチャネル毎に分断されている大規模な組織では、デジタルマーケティングに必要な連携は難しく、担当者は大きな課題を抱えています。パーセプションフローモデリングは、購買行動の横断的な管理と、共通認識を与えてくれます。デジタルに課題を抱える組織はまず、購買行動を理解し、描くことから始めてみましょう。