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FICCのデジタルマーケティングブログ

デジタルマーケティングの「本質」とは何か?:求められるデータドリブンな側面の理解

荻野 英希 /

デジタルマーケティングは、「デジタルメディアを通じたマーケティング」ではありません。デジタルメディアのインタラクティブ性(反応を収集し、記録する特性)を活かした、「数値化されたデータに基づくマーケティング」と定義すべきです。ターゲティング精度が高く、粒度の細かいコミュニケーションが可能なデジタルマーケティングでは、データに基づく継続的な軌道修正と改善が効果的です。しかし、多くの広告主は、いまだこのデジタルマーケティングのデータドリブン的な側面の理解に至っていません。

インタラクティブ性と、高精度なターゲティングは、特定ターゲットの広告反応を計測可能にします。得られた反応データをもとに、コミュニケーション設計やメディア運用を改善すれば、継続的なマーケティング効果・効率の向上が見込めます。いまや、この考え方はダイレクトレスポンスだけでなく、ブランドマーケティングにも適用できます。しかし、パフォーマンスの向上に役立つデータを得るためにはまず、マーケティング施策を得たいデータに合わせて設計しなければなりません。

オーディエンスの分類

データ取得が可能な属性(年齢や興味など)によって、オーディエンスを分類することで、マーケターはターゲットごとの反応に意味を見い出せるようになります。もしターゲットが分けられていなければ、得られる反応データはひとつの無意味な塊となり、属性ごとの違いが見えません。何人が目的を達成したか、ということだけがわかり、それがどのような人物であるかを知る事ができないのです。ターゲットを広く設定することは構いません。ただ、その反応データは必ず属性ごとに収集し、分析可能にすべきです。

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コミュニケーションの設計

デジタルマーケティングの利点は、粒度の細かいコミュニケーションが可能なことです。元P&Gの音部大輔氏が考案した”パーセプションフローモデリング”という手法を使えば、生活者が購入に至るまでの段階的な態度変容と、必要な刺激からコミュニケーションを設計できます。そして、DAGMAR(広告効果測定のための広告目標の定義)という広告効果管理のアプローチを採用すれば、段階ごとの広告接触と、その態度変容効果の測定が行えるのです。

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ターゲットのニーズが異なれば、フローも分岐されます。しかし、フローの分岐は実施と管理の工数を肥大化させるため、最小限に抑えましょう(画像クリックで拡大)。

広告の反応データは、さまざまな方法で収集することができます。しかし、マーケターはデータを収集をする前に、その意味を正しく理解しなければなりません。動画視聴、ページビュー、スクロール深度、クリックなどの行動データは、広告との接触や、接触時の反射的行動を計測しています。心理的な反応を計測し、態度変容や購買行動の有無を確認するためには、ブランドリフトサーベイと呼ばれる、アンケート調査が必要となります。行動データとサーベイデータが互いを代替することはなく、広告接触と心理効果の関係を理解するために補完し合わなければならないのです。

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マーケティング活動へのフィードバック

リアルタイムな行動データと、定期的なサーベイデータの分析は、マーケティング活動にフィードバックすることができます。オーディエンスのなかから購入に至り易いターゲットを見つけ出し、広告予算を集中すれば、マーケティング「効率」が向上するのです。ブランドの成長には、コミュニケーションの改善を通じたマーケティング「効果」の向上が欠かせません。ターゲットが購入に至る比率自体を上げなければ、広告費のROIは、すぐに頭打ちになります。

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データからコミュニケーションを改善するためには、まずは改善すべき箇所を特定し、ターゲットと同様にコミュニケーションの「分岐」を作ります。コミュニケーションの分岐は、クリエイティブのバリエーションを必要とするため、事前に制作費の費用対効果を考慮しなければなりません。新しいクリエイティブによってマーケティング効果の向上が期待できるのは、広告が視聴されていながらも、十分に態度変容が起きていない(行動データの量的な反応が高く、サーベイデータの質的な反応が低い)箇所です。このように心理的な歩留まりが確認できる箇所で、かろうじて反応しているターゲットの属性を特定し、新しいコミュニケーションの仮説を導き出し、その効果を検証します。効果的なコミュニケーションは、ターゲットごとに異なる可能性もあります。分岐されたコミニケーションの効果は、ターゲットごとにも検証をすべきでしょう。

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デジタルマーケティングは、膨大な量のデータ収集を可能にします。しかし、マーケティング施策が必要なデータを収集するように設計されていなければ、集められたデータは何の役にも立ちません。DMPを設け、データマネジメントの重要性を掲げる広告主は増えました。しかし、そのデータは本当にマーケティングの改善に役立てているのは、そのなかでもほんのひと握りなのではないでしょうか。“Garbage in / Garbage out”(ゴミのようなデータを分析しても、ゴミしか得られない)と言われるような結果を防ぐために、私たちは数値化が可能なマーケティングに挑み続けなければならないのです。

※本記事はDIGIDAYに寄稿したコラムを転載しています。