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現代の「市場ダイナミクス」を理解する、3C+1分析 とは?:3Cモデルに社会的側面もプラス

荻野 英希 /
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パーセプションフロー・モデリングの依頼を受ける際、そもそもマーケティング戦略の策定や、策定に必要な現状分析が十分に行われていないことがあります。実行する施策だけでなく、戦略までも代理店に任せていては、成果に対する責任の所在がわかりません。良い実行は必ずしも成功を約束しませんが、戦略の欠如は間違いなく失敗を招きます。効果的な戦略を導き出すために、十分な現状分析を行うことはマーケターの責務です。客観的なデータの収集や、マーケティング調査の知識を要するからと言って、盲目的に他者に任せるべきものではありません。

大前研一氏によって考案された3Cモデルは、Company、Competitor、Customerの相互関係から市場ダイナミクスの分析を可能にします。しかし、現代市場はこの3要素の相互関係で表せるほど単純なものではありません。現代の消費者は互いに影響し合い、無数の共同体に帰属しているため、その行動を大きく影響する社会的要素を無視することはできないのです。3Cに「Community」を加えることで、社会的側面からも現代の複雑化した市場ダイナミクスを理解することができるはずです。

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現状分析には、明確な手順はありません。それぞれの要素の相互関係を分析するため、各要素の間を行き来する必要があります。適切な分析には情報収集が欠かせないため、まずは自社を示す「Company」からはじめるのが良いでしょう。

Company (自社ブランド / 製品・サービス)

  1. 自社のビジョン・理念は何か?
  2. 自社ブランドが提供するベネフィットは何か? 消費者はブランドを購入・使用することでどのような人物になれるのか? またはどのような人物であると主張できるのか?
  3. ベネフィットと自社のビジョン・理念の整合性は保たれているか?
  4. 目標とするビジネスゴール(売上 / マーケットシェア等)は何か? 現状との差異は?
  5. 自社のブランドや、製品・サービスを競合と差別化する機能や属性は何か? 同質化する機能や属性は何か?
  6. 自社のブランドや、製品・サービスはターゲット消費者にどのように認識されているのか? どのような属性・キーワードを保有し、連想させるのか?
  7. 競合に対して自社のブランドや、製品・サービスの価格はどのように設定されているか?
  8. 自社のブランドや、製品・サービスの品質を担保・保証するものは何か?
  9. 自社のブランドや、製品・サービスはなぜユーザーのロイヤルティーを得ることができるのか? ブランドが提供するベネフィット以外の理由はあるか?
  10. 他部署との連携における制限は何か? 不足する資源や能力は何か?

マーケティングにおいては、市場を「競合との競争環境」と定義することがあります。しかし、直接的な競合が存在しない、又は直接的な競合との競争が好ましくない場合があるため、「Competitor」という表現は誤解を招き、市場を限定してしまう可能性があります。消費者の支出は有限であり収益は必ず何かからでなければならないため、私たちはソースオブビジネス(収益源)という言葉を使います。

ブランドは、成長のために製品やサービスのカテゴリー外にソースオブビジネスを設定することができます。競争相手となるソースオブビジネスの特性や、自社ブランド / 製品・サービスとの違いを正確に把握することはマーケティング活動の成功に決定的な影響を与えます。

Competitor(競合 / 収益源)

  1. 同じ製品・サービスカテゴリー内の、直接的な競合ブランド(カテゴリー競合)は何か?
  2. 同様の便益を提供する、製品・サービスカテゴリー外の間接的な競合(ベネフィット競合)は何か? 自社のブランドや、製品・サービスが入手できない場合、既存顧客は何を代替として検討するか?
  3. 競合の競争力となる特性や優位性は何か?
  4. 競合を自社のブランドや、製品・サービスと差別化する機能や属性は何か? 同質化する機能や属性は何か?
  5. 競合の価格は? 保有する市場規模は?
  6. 消費者は競合に対してどのような未充足(または過充足)の不満を抱えている可能性があるのか? 継続に対する懸念や、物足りなさを感じ得るポイントは何か?
  7. 競合はなぜユーザーのロイヤルティーを得ることができるのか? ブランドが提供するベネフィット以外の理由はあるか?
  8. 競合のマーケティング戦略を方向づける、または制限する要因は何か? 事業や投資、経営体制などの公開情報はあるか?

ターゲットとなる消費者や顧客を含む「Customer」は、マーケターによってもっとも単純化されてしまう傾向があります。現代の消費者はそれぞれ固有のライフスタイルを持ち、メディアの消費に時間と場所の制約を受けません。ライフスタイルによる欲求やニーズ、メディア消費行動による接点は購買行動に大きな影響を与えます。断片化された現代市場において、必要とされるのはマーケティングROIを左右するターゲット属性の理解です。

Customer(ターゲット消費者・顧客)

  1. 製品・サービスカテゴリーにおいて、ターゲット消費者が優先的に求める属性は何か?
  2. 自社のブランドや、製品・サービスが保有する属性に対して、ニーズや欲求の要因となるターゲット特性は何か?
  3. ターゲット消費者の購買判断やブランド選択に対する影響要因は何か?
  4. ターゲット消費者による商品やサービスの購入が見込める場所(買い場)はどこか?
  5. 広告に反応し、購買に至る(リスクを許容する)要因となるターゲット特性は何か?
  6. 高いライフタイムバリューの要因となるターゲット特性は何か? ロイヤルティの高いユーザーと、そうでないユーザーを分ける要因は何か?
  7. ターゲット消費者にもっとも効率的な接触が見込めるタッチポイントは何処か?
  8. ターゲット消費者はどのような状況で広告やメッセージを受容するか?

消費者行動に決定的な影響を与えながらも、従来の3Cモデルに含まれていないのが「Community」の概念です。社会的動物として、私たちは本質的にコミュニティ(共同体)への帰属を渇望します。共同体のなかで自身がどう捉えられているか、または自身をどう捉えているかは、購買行動の原因となる欲求を創り出します。また社会における他者の価値観も、遵守すべき社会規範として私たちの行動を大きく左右します。現代の消費者は互いに大きく影響しあい、無数の共同体の影響を受けています。3Cモデルに「Community」という社会的側面を追加することにより、マーケターは市場ダイナミクスをより正確に把握することができるようになります。

Community(共同体 / 社会環境)

  1. ターゲット消費者が帰属(または羨望)する集団や共同体は何か? 集団や共同体と共有する価値観は何か?
  2. ターゲット消費者が関係を重視(または優先)する相手は誰か? その関係をどのように改善(または維持)したいのか?
  3. ターゲット消費者は相手にどのように思われたいのか? どのように思われることを避けたいのか?
  4. 景気による市場全体の購買意欲への影響は?
  5. 製品・サービスカテゴリーの消費に間接的な影響を与える(間接費となる)市場は何か? その動向は?
  6. 世間が関心を持つ社会問題は何か? 新しい文化(社会全体が正とするもの)になりつつある新しい価値観は何か?

現代の消費者は情報や商品を自由に選択し、互いの購買行動に影響を与え合っています。市場ダイナミクスを社会的側面から理解することができなければ、ブランドが持続的な成長を実現することは難しいでしょう。効果的なマーケティング戦略を導き出すためには、社会的側面を含めたモデルを用いて、市場ダイナミクスの理解に取り組みましょう。

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※本記事はDIGIDAYに寄稿したコラムを転載しています。