シエンプレ × FICCで、ブランド価値を「守る」「伝える」。 炎上リスクに振り回されず、本質的なブランドメッセージを伝えるためには

SNSのユーザー数の増加とともに、近年増えている「炎上」リスク。

ブランド側がそのリスクを気にしすぎるあまり、本当に伝えたいことが伝えられなくなったり、クリエイティブがすぐに取り下げられたり、担当者が過度なストレスや不安に晒されてしまうケースが増えています。

そんな課題を解決するため、FICCはデジタル風評被害対策を行うシエンプレ株式会社と協業し、「リスクコントロールド・ブランドコミュニケーション」というサービスを開始しました。

炎上リスクに振り回されず、本質的なメッセージを伝えるためのブランドコミュニケーションとは? そしてそれを実現するために必要なこととは?FICCのメディア・プロモーション事業部の田崎・水川が、シエンプレの桑江さんとともに語り合います。

社会不安や意見対立とともに増えている「炎上」

今回FICCが協業するシエンプレ株式会社は、日本で唯一の「デジタル・クライシス&サイレントクレーム対策会社」。6000社超の企業との取引実績を持ち、過去5回にわたり警察庁からサイバーパトロール業務を受託するなど、デジタル被害・リスク対策を専門とした企業です。コンサルタント部門の責任者を務める桑江さんは、自社についてこのように話します。

桑江:シエンプレのメイン業務は2つです。1つは炎上を起こさないための予防対策。社内のシンクタンクで炎上がどんな原因で発生するのかを研究し、その結果を元に講習や研修を行っています。もう1つは、炎上が発生したあとの沈静化のための対応支援。どのタイミングでどんな行動や発言をすべきなのかなど、企業が行うべき対応をご提案しております。

事業を始めて10年以上経つというシエンプレですが、近年ではネットでの炎上はどれくらい増えているのでしょうか?

桑江:まず弊社の研究レポートでは、「炎上」の定義を「SNS上で100件以上の言及があったネガティブな事象」としています。これを2019年から2021年5月まで見てみると、どんどん増えてきているんですね。2020年は前年比15%増、1日平均3.9件。2021年になると、1日平均5件に増えています。

2020年は4月が最多で、単月で230件超の炎上が起こっています。その月は、日本で2020年から本格的に流行を始めた新型コロナウイルスに対し、初めての緊急事態宣言が出て、社会的不安が高まった時期。外出できないためSNS利用率が上がったことに加え、ストレスや不安から生じる発言が多くなった時でした。

2021年現在も、コロナワクチン接種やオリンピック開催など意見が対立するトピックスが多くあり、同時にジェンダー、人種差別など世界的な潮流の変化も相まって、SNS上で議論が巻き起こっている状態です。議論ならまだ良いですが、それが攻撃に変わると炎上が増えます。

近年では誹謗中傷に関する法律が改定されましたが、それでも炎上は減りません。なぜなら当人は「自分は正義だ」と思っているから。そこから過度な攻撃が生まれ、炎上が減少しないのではと考えています。

本質的なブランドメッセージを、生活者に届けるお手伝いがしたい

今や社会問題とまでなっている炎上リスク。それに対し、FICCはどのように感じていたのでしょうか。FICCの二人が、協業までの経緯とともに語ります。

田崎:私が所属するメディア・プロモーション事業部では、主にブランドと生活者のコミュニケーション設計を行っています。中でも近年は、時代によって変わる社会の価値観や文脈をどう捉え、ブランドメッセージを生活者にどう翻訳し、より良い体験にしていくかを重視しているのですが、それと同時に、価値観の変化によってブランドコミュニケーションが難しくなっていると感じていました。

昨年、世の中の広告トレンドを読みとくために「時代の変化とコピーの関係」というテーマで社内研究をしたんです。その中で、特に社会不安の大きかった「東日本大震災後の3年間」、そして現在の「withコロナまでの3年間」を比べ、どんな変化があるかを調査しました。

すると、震災の頃は大衆に向けた力強いメッセージが目立ったのに比べ、近年では「あなた」「君」と一人ひとりに呼びかけるような、より身近でパーソナライズされたコピーが増えている傾向にあることがわかったんです。

その理由としては、価値観の多様化とSNSの普及で、炎上リスクが上がったことが背景にあるのではと考えています。だから価値観を決めつけずに受け手に委ねるような、柔らかいメッセージが増えてきている。一方で広告主にとっては、多様化する価値観に対して、生活者にどうコミュニケーションをとっていいのかわからず、リスクに対する懸念、生活者の顔色をうかがう部分が大きくなってきているのではないか。

結果、耳触りのいい言葉だけになり、「本質的なブランドメッセージがシャープに伝えられない」という課題も出てきているのではないか、と感じました。

弊社はこれまで、メッセージやコミュニケーションの中身について掘り下げて考えることを得意としてきましたが、そういった炎上リスクに対するフィルターは持っていませんでした。シエンプレさんと取り組むことで、そのリスクをクリアにできれば、ブランド側がより安心してコミュニケーションできる、新しい価値提供になると考えたのです。

水川:広告発信は、ブランドアクションのひとつだと考えています。でも、発信されるメッセージとブランド側の実態にギャップがあり、それが原因で、炎上が起きてすぐにクリエイティブを取り下げるという事例を見かけることがあります。

伝えるべきことをしっかり伝えるためにも、「そのメッセージは本当にそのブランドが言うべきことか」から、「そのメッセージはクリエイティブの中で表現しきれているか」までちゃんと精査しなくてはいけない。そこにシエンプレの視点が加われば、ブランドの言葉、クリエイティブの質、ともに前もって担保しておくことができます。

ブランドが安心して質の高いメッセージを発信できるようになるために、協力したい。そんなFICCの二人の想いを受け、桑江さんもご自身の想いについて語ってくださいました。

桑江:弊社では今年の2月、「ジャパン・デジタル・コミュニケーション・アワード」という賞を設立しました。これはデジタル・コミュニケーションにおいて優れた対応を行った企業を表彰する企画なのですが、その裏にあるのは「リスクだらけで不安やストレスを感じ続けている企業側の担当者様に、少しでもスポットライトをあてたい」という想いだったんですね。今回はノミネートを辞退されましたが、批判を覚悟の上でブランドとしての主張をした、アパレルブランドも候補に上がっていました。

我々がやりたい本質の部分は、そういうことなんです。ブランドが本来持つメッセージを、ちゃんと消費者に届けるお手伝いがしたい。ですが、不安やリスクを抑えるための支援だけでは、そこまでできないのではという危惧もありました。

そんな中でFICCさんと縁があり、我々が抱えていた想いを解決できそうだと感じました。ブランドメッセージを考えコミュニケーションを行うFICC、リスク対策専門のシエンプレ、2社が組むことで安心して「自分たちのブランドはこうです」と伝えられるお手伝いができるのではないかと。それは非常に意味のあることだと思っています。

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「批判ゼロ」はありえない、だからこそリスクの先のクリエイティブを

そんな背景のもと、2社協業で立ち上がった「リスクコントロールド・ブランドコミュニケーション」。このサービスの内容は、どういったものなのでしょうか。

田崎:「リスクコントロールド・ブランドコミュニケーション」とは、FICCが実施するブランドプロモーションやコンテンツ制作に、シエンプレさんの「クリエイティブリスク診断」をかけ合わせたものです。

弊社は普段、ブランドの資源、生活者の価値観、世の中の情勢などを汲み取った上でメッセージやコミュニケーションを考えるのですが、そこにシエンプレさんのクリエイティブリスク診断をフィルターとして加えます。

例えばプロモーション用の動画を作る際、企画書の段階でどんな炎上リスクがあるのかをシエンプレさんに相談し、想定リスクや、それを回避するためのアドバイスをいただく。その後調整しながらコンテンツを具体化し、さらにまたシエンプレさんにチェックをしていただき、制作する、という流れです。

このプロセスを経ることで、想定外のリスクを回避しつつ、本来伝えたいメッセージをシャープに伝えられる。そんなコンテンツ制作をイメージしています。

桑江:「クリエイティブリスク診断」とは、約80のリスクチェック項目をもって、炎上リスクの発生を3段階で診断するサービスです。手掛けようとしているクリエイティブがどんなリスクを含んでいるのか、海外ではどんな類似事例があるのかなど、様々な視点からアドバイスを行います。

最近増えているのは、過度にリスクを恐れすぎて、本来やりたいことができないというケースです。だからと言ってリスクを無視すると、これまで築いてきたブランドの信用が一瞬で崩壊することもある。その両面をしっかり認識した上で、安心して主張できる。その状態を多くの企業に実現してほしいと思っています。

そもそも批判がゼロということは起こり得ません。でも我々が支援することで、想定内の批判に抑えることはできます。顕在化したリスクを踏まえて、どう表現を変えていけばいいのか。FICCさんと組むことで、その先まで一緒に考えていけるサービスにできたのは嬉しいことですね。

ブランドと生活者の関係を「主従」から「共創」へ

最後に、全員に今後の展望について語っていただきました。

田崎:FICCがブランドの価値の構築を、シエンプレがリスクヘッジの支援を行うという、「構築と支援」の両輪でサポートできるのがこのサービスの価値だと思っています。ブランドマーケティングの専門家と、リスクヘッジの専門家が組むことで、本質的なメッセージを貫けるブランドを増やしていきたいです。

社会不安が広がっている中、そういったブランド側の姿勢は受け手の方たちをエンパワメントしていけるはずです。そうしたコミュニケーションを通し、ゆくゆくはブランドと生活者の関係を「主従」ではなく「共創」にしたい。ブランドだけではなく、生活者も自分の目でメッセージを判断できる社会にできたらと思っています。

水川:僕個人としても、この頃は特にSNSで発信することが怖いと感じることがあります。ブランドも人の集合体なのでその気持ちは同じはずですし、その上大きなリスクも背負っている。そこに対して、できる限りのフォローができたらと思いますね。

桑江:水川さんのおっしゃる通り、ブランドや企業の中には人がいます。過度な攻撃をしてしまうのは、その「人」が見えていないから。でも我々は、企業の広報担当者がいかに傷つき悩んでいるのか、よく知っています。ですので個人的には「担当者さんを守りたい」という気持ちが強くあるんです。

広報担当の方を誤解や攻撃から守り、自信を持ってコミュニケーションをしてもらいたい。そして仕事にやりがいを感じてほしい。そう強く願っています。

ブランドを炎上リスクから「守る」シエンプレと、メッセージを「伝える」FICC。

それぞれの得意分野でそれぞれのカバーできない領域をフォローすることで、より本質的なブランドメッセージ、ブランドコミュニケーションを生み出したい。FICCとシエンプレは、そんなゴールを描いています。

本質的なメッセージが少しずつ世に増えた時、生活者の目は、社会の雰囲気はどんなふうに変化していくでしょうか。不安の大きな時代だからこそ、まずはブランドから元気になるように。そんな願いを込め、新たなサービスがスタートします。

執筆:土門蘭 / 撮影:後藤真一郎

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