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サイトリニューアルの成功に必要なクライアントリレーション

荻野 英希 /

サイトリニューアルの開始時にはクライアントもWeb製作者も同じ方向を向き、1つの目標を達成しようとしています。しかし、公開直前にもなれば様々な衝突や想定外の問題から、両者の足並みは崩れていることがあります。最後までクライアントリレーションを維持することが出来なければ、プロジェクトは成功しません。Webサイト全体のリニューアルでも、小さな改善施策でも、成功するためにはクライアントと共にプロジェクトを円滑に進めるスキルが必要です。クライアントリレーションは多くのWeb製作者を悩ませる問題ですが、対応ができなければダイレクトな仕事に取り組むことはできません。次のプロジェクトを開始する前に、想定される問題とその対処法について考えてみましょう。

プロジェクトスコープを守る

クライアントはWeb制作の専門家ではないため、設計プロセスを想定してプロジェクトを進めることはできません。制作過程の中で初めて課題や可能性に気づくため、提案に対するフィードバックを通じてプロジェクトの軌道修正を求めます。これはクライアントにとっては当たり前の事ですが、Web製作者にとってはプロジェクトのゴールを変え、達成を困難にするリスク要因となります。しかし、クライアントとの衝突を恐れ、多くのWeb製作者はこれらの要望を無条件に受け入れてしまいます。結果、制作リソースが圧迫され、仕事のクオリティが下がり、プロジェクト開始時に想定していた目標をも達成することができなくなります。

私たちは制作過程でプロジェクトのスコープを守らなければなりません。そのためにはプロジェクトをフェーズを切り、スコープを変えてるようなクライアントのアイディア(思いつき)を後に対応を検討する要件としてリストに記録します。この時点でアイディアの実施を判断する必要はありません。プロジェクト、又はフェーズ終了後にリストの内容をレビューし、その有効性と実現可能性によって実施を検討しましょう。

この対応プロセスをクライアントと事前に共有しておくことで、Webサイトに継続的な改善が必要であることを受け入れてもらいます。また、制作過程での検討を回避することで、無駄な議論を省き、労力を削減することができます。クライアントもプロジェクト途中での軌道修正はタイムリーな進行の妨げになることを理解し、新しいアイディアに執着しなくなります。結果、Webサイトを期日通りに納品することができ、お互いの時間を有効に活用することができるのです。

目的にフォーカスする

時にクライアントは無闇に新しいテクノロジーや特定の制作手法の採用を要求します。競合の動向やトレンドに目がくらみ、本来のビジネス目的ではなく「手法」を優先してしまうのです。もちろん、私たちWeb製作者もレスポンシブデザインなどの最新トレンドに流されることがあります。しかし、採用する目的が明確でなければ決してリソースをコミットしてはいけません。

新しいテクノロジーを検討すること自体は悪いことではありません。しかし、技術や手法のトレンドは直ぐに移り変わり、クライアント自身の興味も変わっていくことを知りましょう。トレンドの採用を目的としたWebサイトほどその寿命は短く、時間の経過に耐えられないものです。Web製作者にはプロジェクトの目的に対して、最適な技術や手法を選択する義務があります。クライアントの要望を鵜呑みにするのではなく、「何故?」と問い正すことは重要です。投資を正当化するビジネス上の理由、リターンの可能性、想定されるリスクなどを十分に意識してもらい、クライアントの論理的な判断をサポートしましょう。

投資対効果を意識する

クライアントにWeb制作の投資対効果を計算することはできません。多くの具体的な要望やリクエストがあったとしても、各施策の有効性と実現可能性については私たち専門家の知識を必要とます。ブリーフィングやRFPに記載された各要件のコストやリターンを計算し、実施に対するアドバイスを提供しましょう。私たちの仕事はクライアントの全てのリクエストに応えることではなく、ビジネスに有効なサービスを提供することです。そのためにはビジネス目標の達成に最適化されたWebサイトの構造を提供する必要があります。

Webサイトに過剰なコストや労力をかけないためにはリニューアルだけではなく、部分的な改善施策も検討すべきです。機能の拡張は無闇に行わず、設計時に十分想定をしましょう。技術や手法はトレンドで選ばず、目標に合わせて実績あるものを採用します。クライアントと共に投資対効果を意識することは、プロジェクトの成功だけでなく、長期的な信頼、そして更なる投資やビジネスの獲得にもつながります。

Webデザインへの客観的なフィードバックを行うことができるクライアントはなかなかいません。デザインを見ただけではその機能や体験を完全に理解することは私たちWeb製作者でも不可能です。多くのフィードバックはその瞬間で受けた印象に左右され、主観的なものとなります。しかし、専門家ではないクライアントの主観的なフィードバックを全て反映すればWebサイトの設計は破綻してしまいます。

本来、クライアントがその場で指摘する問題は存在すらしないかもしれません。更に新しくキレイなデザインを見て、重要な問題を見落としている可能性もあります。どちらにせよ、その場の印象による主観的なフィードバックはプロジェクト成功の妨げになります。デザインを見せる時にはその背景や提案理由を十分に説明し、すぐにフィードバックを求めず、判断に時間を掛けるべきであることを伝えましょう。また、デザイン変更に対して、最初に批判的な反応があることは珍しくないと伝え、クライアント自身が社内調整を行う際に同様の問題に陥らないようにしましょう。

クライアントから客観的なフィードバックを得るために、最も効果的な手法は密接なコラボレーションを重ねることです。ワイヤーフレームを確認しながら、制作プロセスを共に歩むことでクライアントは初めて客観的な判断に必要な情報を得ることができます。また、自身が関わったデザインであれば、そう簡単に否定することはできず、フィードバックに時間をかけてくれるはずです。デザイン提出の前にはクライアントと密接に関わるようにしましょう。

もちろん私たちWeb製作者もデザインを主観的に判断してはいけません。クライアントにフィードバックを求めるのであれば、デザインを客観的に説明する必要があります。「このデザインをどう思いますか?」「何か他にデザインへのご要望はありますか?」などという主観的な質問は絶対にしてはいけません。「このデザインは目的を達成するために十分最適化されていますか?」「このデザインはブランドイメージを正しく表現していますか?」などと聞きましょう。答えがノーであったとしても、クライアントに客観的な説明を求めることができるはずです。

長期に渡り、多くのリソースを消費するWebサイトのリニューアルには、Web制作のプロフェッショナルではないクライアントとの密接なやり取りが発生します。プロジェクトを通じて良好なクライアントリレーションを維持するためには多少の衝突を拒んではいけません。Webサイトリニューアルを成功させるためには、なにより私たちWeb製作者の、クライアントに対する積極的な姿勢が必要なのです。