
2025年11月、成蹊大学 経営学部のブランド戦略授業にて、FICCプロデューサー・伊藤真愛美がゲスト講師として登壇し、「ブランドビジョン」「ブランドパーパス」について講義を行いました。本授業は、ブランド戦略の理論やフレームワークを体系的に理解しながら、企業の実践事例を通じて、企業と生活者の双方の視点から戦略を描ける力を育むことを目的としています。
これまで同授業には、生活用品メーカーなど事業側のブランド領域にて活躍されている方々が登壇しており、今回は約220名が参加。学生の皆さまに向けて、FICCのブランドマーケティングの考え方や伊藤の経験を交えてお話ししました。
FICC プロデューサー・伊藤 真愛美
大手化粧品メーカーを中心に、プロモーション戦略の設計から実行までを担当。化粧品領域に加え、ペット商材やヘルスケア商品において、コミュニケーションガイドライン策定やブランド戦略設計など、上流工程から具体施策への落とし込みまでを一貫して経験。ブランド資源・市場環境・顧客接点を整理・構造化し、訴求軸の設計や新規価値提案につなげることを強みとする。
伊藤は、2017年に新卒入社して以来、FICCにて幅広い領域のブランドマーケティングに携わってきました。キャリアの初期は大手化粧品メーカーのプロモーションを中心に担当。その後は食品、ペット用品、自治体など業界問わず、生活者や地域と向き合うプロジェクトへと活動の幅を広げています。
コロナ禍を機に、美容領域の経験から「使われずに余ってしまうコスメ」「自分らしさとは」という点に目を向け、高校生たちの関心や違和感に向き合うとともに個々の感性を育む活動に取り組むなど、分野を越えて価値創造に挑戦してきました。
ブランドパーパスとビジョンの役割と位置づけ
講義の前半では、FICCが掲げるブランドマーケティングの考え方を紹介しました。
まず、ブランディングとは、生活者の中にあるブランドの「意味・記憶」を蓄積していく活動だと伝え、ブランドの活動を「Say-Do-Confirm」というフレームで捉えて解説していきました。
ブランドの思想やパーパス(Say)が実際のサービスや活動(Do)に正しく反映され、さらにその成果が生活者やステークホルダーに正しく理解されているか(Confirm)を確認することが重要です。ブランドが「言っていること」「やっていること」「認識されること」の3つが一致することが、ブランドの一貫性に繋がり、ブランドパーパスの体現に繋がります。

そして、パーパスとビジョンの違いについても解説した上で、FICCのフレームワーク「ビジョンラダー®︎」や「6つの成立要件」についても紹介しました。
パーパスとは、「社会的大義(ブランドが社会と共有する意味や目的)」であることに対し、ビジョンは「目指したい理想の姿」です。どちらも短期的に変化することのない、覚悟を持った決意が必要です。パーパスは、何のために存在するのかという目的であり信念であるからこそ、その企業やブランドが向き合う誠実な姿が多くの共感を生み、求心力に繋がると考えます。

FICCでは、パーパスを単なる理念として捉えるのではなく、組織の内外に浸透し、実際の行動へ落とし込まれるべき実践的な基盤として位置づけています。パーパスが明確になることで、ブランドに関わる一人ひとりが自らの仕事の意味を再認識し、主体的な行動を生み出すことができます。また、ブランドに関わるパートナー企業や生活者に向けても、企業姿勢の一貫性や信頼を高める効果があります。
パーパスを施策へつなぐには。事例を交えての紹介
後半は、ブランドのパーパスを施策にどのようにつないでいくか、FICCが支援したライオンペットの事例を交えながら紹介しました。
ライオンペットでは「ペット第一主義」というパーパスを掲げています。ペットを家族として捉える価値観が広がる以前から、同社は「ペットが健やかに生きるための商品づくり」を徹底しており、歯磨き・トイレ・ボディケアなど幅広いケア商品を展開しています。

歯みがきガム『PETKISS(ペットキッス)』では、犬のオーラルケア習慣化に向けたプロジェクトを2021年から伴走。調査結果から「歯磨きが進まないのは、飼い主の知識不足である」ことを見出し、飼い主の行動変容を促す施策設計を行いました。歯磨きが難しい理由や心理的ハードルを丁寧に分解し、段階的なステップ提案や習慣化の伴走プログラムに落とし込むことで「自分でもできる」と感じ、日常に取り入れやすくなる環境づくりを支援しました。
また、猫用トイレの取り組みでは、トイレの重要性を猫目線でコミカルに伝える動画や、開発担当者の“バカ真面目なまでの猫第一”の姿勢を伝えるブランドムービーを制作しました。商品機能を表面的に紹介するのではなく、トイレ開発に情熱を注ぐ様子や、ブランドが一貫して大切にしてきた「猫ちゃんファースト」の姿勢そのものを可視化することで、ブランドの独自性を生活者に伝えることを重視しました。

これらの取り組みに共通しているのは、ブランドがパーパスを「語る」だけでなく、「行動として示していく」ことの重要性です。ペットの飼い主の行動変容を促すコミュニケーション設計や、商品の裏側にある開発者の想いや姿勢を可視化する取り組みを通じて、「ペット第一主義」が飼い主の日々の選択や体験価値として実感されていきます。パーパスを行動として示すことで、生活者にとって意味のある価値へと変えていくことが重要です。

授業に出席した学生の方々からは、次のようなお声をいただきました。
ブランドのメッセージは企業が一方的に決めるのではなく、人々の声や社会の変化を丁寧に拾いながら育てていくものだという点が新鮮で、これまでのイメージが大きく変わりました
自分が生活者としての立場で価値を感じられる・利用したいと思うブランドは、ただそのブランドに価値があるというだけでなく、根底のどこかに “自分の需要を叶えてくれる” という信頼と安心感があると発見できました
ビジョンラダーの説明で “イデオロギー” という言葉を聞いて、今後企業で勤めていく上でブランドの意味を考えながら働くことができればいいなと思いました
今回の講義には、将来ブランディングやマーケティングのキャリアを目指す方や、ブランドの在り方に関心を持つ方など、さまざまな想いを持った学生の皆さまに参加いただきました。
日々企業やブランドの支援の中で培ったFICCのブランドマーケティングの知見が、これから社会に出ていく学生の皆さまにとって、少しでもヒントや気づきになることを願っています。
今後もFICCでは、企業の組織変革や社会課題の解決を支援したい方々に向けて、ブランドマーケティングの知識共有など、さまざまな活動を行っていきます。
執筆・撮影:鈴木友(FICC)



