
“空の玄関口”羽田空港を舞台に、共創の可能性を拓くイベントを開催
2025年6月末、羽田未来総合研究所が主催するビジネス共創プログラム『KNOT HANEDA』の特別企画「喫茶エアサイドハネダ 2025夏」に、FICCのクリエイティブディレクター・森田 雄とコンテクストデザイナー・村中 沙織が登壇しました。会場は、羽田空港第2ターミナルにある地方創生をテーマにしたカフェ『和蔵場~WAKURABA~』。日本の“空の玄関口”である羽田空港という、地方と都市、国内と海外、人と情報が交差する象徴的な場での開催となりました。
イベントのテーマは「人の想いを起点にした未来思考のブランドづくり」。社会や市場が複雑化する現代において、ブランドや事業をどう再定義し、価値を生み出していくのか。FICCはその問いに対し、“課題解決”にとどまらず、「関わる人たちの想い」からブランドを再解釈するアプローチの重要性を、ワークショップ体験も交えながら発信しました。FICCはこれまでも、羽田空港における支援の一環として、同様のワークショップを実施しています。
イベントは先着20名限定で開催され、参加者には和蔵場のオリジナルドリンクとお茶菓子が提供されるなど、羽田空港ならではのホスピタリティも印象的な会となりました。
FICC クリエイティブディレクター・森田 雄
12年間映像ディレクターとして経験を積んだのちFICCにジョイン。CM、ミュージックビデオ、映画、プロジェクションマッピング等、あらゆる映像を演出した経験を軸に、マーケティング戦略にもとづいたコミュニケーション全体のコンセプトとストーリーの立案から、施策のコンテンツ企画まで手がける。→ インタビュー記事はこちら
FICC コンテクストデザイナー・村中 沙織
慶應義塾大学でリベラルアーツを学んだ後、大手SIerでデータエンジニアとして勤務。金融監督技術の国際標準化に携わった後、ソニーへ転職し、マーケ業務統一を推進。日系企業の本社・海外拠点で10年以上の実務経験を持つ。多文化圏での視座とアート哲学の素養を背景に、企業や地域の「意味」を再解釈し、戦略へ翻訳することを専門とする。英仏語流暢、他5言語にも馴染みあり。趣味でフラメンコの舞台にも立つ。
“未来視点でブランドを再解釈する” ── FICCのアプローチと事例

当日は、森田と村中が、ブランドの価値を“想い”からストーリーへと立ち上げる実践や、企業・地域との共創事例を交えながら、「未来思考のブランドづくり」の考え方を共有しました。
FICCが大切にする「未来思考のブランドづくり」とは、目の前の課題に対して、過去や現在だけでなく、“未来”という視点からブランドの資源や意味を再構築するアプローチです。特に重要なのは、ブランドに関わる人たちの内側にある「内発的動機」と「イデオロギー」。イデオロギーとは、ビジョン実現に向けて、障壁となっている社会・業界の既成概念や枠組みを変えていきたいという信念です。これらを起点にすることで、単なる表層的なブランドの刷新にとどまらず、未来への意思を伴ったストーリーへと変化します。

登壇では、FICCが開発した独自フレームワーク「ビジョンラダー®」も紹介されました。このフレームワークでは、ブランドに関わる人々の想いや歴史をひもときながら、現在の資源を再解釈し、ブランドが実現したい理想的な未来とつなげていくことで、社会に向けて語るべきストーリーを可視化・構造化していきます。
森田からは、「ビジョンラダー®」の要素について、自身が探求しているストーリーテリングの専門性の視点から、小説や映画などのストーリー構造に置き換えて捉えていくアプローチを紹介。ブランドとステークホルダーが主人公となって障壁を乗り越えていく物語とコンセプトに共感を集めていける可能性について示唆しました。
また、森田が担当した明治ミルクチョコレートやマリオンクレープのブランディングプロジェクト、村中が担当した広島県での地域創生プロジェクトについても紹介されました。
それぞれの事例に共通するのは、「社会や人にとって、なぜこのブランドが必要か?」という問いを“未来の視点”から捉え直すこと。そのプロセスにこそ、FICCが向き合い続けてきたブランドマーケティングの本質があります。
「想い」を起点にした対話が、新たな気づきを生んだ参加者の声

後半は、参加者自身の想いから出発する「ミニワークショップ」を実施。まず個々人の「未来への願い」を書き出し、それをもとに対話を行いながら、共感や価値の手がかりを見つけていく流れです。FICCが羽田空港と共に取り組んだ実際のワークショップの様子や参加者の声も一部紹介され、当日は多くの共感と関心が寄せられました。
参加者からは、「普段交わることのない業種や立場の方々との対話が新鮮で、想いという共通言語を通じて多くの気づきが得られた」という声があがりました。
また、複雑になりがちなブランディングを、FICC独自のフレームワークをもとに、森田が探求するストーリーテリングの考え方で導き出すプロセスに関しても、「多様な視点からの解像度の高いアプローチが参考になった」との評価の声もいただきました。

さらに、ワークショップを通じて自身の価値観や想いを言語化したプロセスが、「自分自身の原点を見つめ直す貴重な機会になった」との感想も寄せられました。リラックスした雰囲気のなかで、心の内側と向き合う対話が自然に生まれていた様子が印象的でした。
今回のイベントを通じて、“空の玄関口”羽田空港という、人・地域・世界をつなぐ象徴的な場で、ブランドや組織に関わる一人ひとりの「想い」こそが未来をつくる原動力であることを改めて実感する機会となりました。FICCは今後も、このような共創の場を通じて、“想い”を価値へと変えるブランドづくりを実践していきます。