FICC ナレッジブログ

「戦略クアドラント®」とは? 組織の戦略への協働を可能にし、持続的な成長につなげるフレームワーク

森 啓子 /

経営、経営企画、事業責任者、プロダクトやサービスの担当者が「戦略」という言葉を使う時、その戦略が捉えている時間軸は異なるでしょう。戦略が扱うべき要素や、企業と事業の間で共有し合う資源などが十分に定義されないまま、それぞれのレイヤーで戦略と実行を進めなければならない ―― そうした状況は多くあるのではないでしょうか。

ブランドエクイティや事業ポートフォリオの観点でも、顧客や業界から認識されているイメージや事業と、組織内での認識とが統一されず、自社の強みや独自性を再認識することなくマーケティング投資が続けられてしまう。結果として、投資が非効率な状態に陥ってしまうことも少なくありません。
また、企業の中長期経営計画が刷新されていく中で、中長期的な戦略を捉えながら、目の前の事業では短期的な成果も求められる現実があります。こうした複数の時間軸にまたがる戦略を、どのようにマネジメントしていけば良いのか。

このような課題は、これまでも企業における重要なアジェンダとして語られてきました。しかし依然として、組織内での資源や時間軸の連携において、どのように戦略をマネジメントしていくべきかは、多くの企業において課題となっています。

戦略クアドラント®とは

戦略クアドラント®とは、FICCのブランドマーケティングの専門知識から生まれた、ブランド戦略とマーケティング戦略を分断させず、連携させることを前提とした、戦略要素を定義するフレームワークです。両方の戦略が連携し合う、普遍的なマーケティングナレッジに基づく構造であるため、企業、事業、プロダクトやサービスなど、企業のあらゆるレイヤーにおいて活用でき、戦略要素の定義と管理を可能にします。組織内の各レイヤーが、戦略において一貫性を持ちながら、互いに連携することを可能にするフレームワークです。

戦略クアドラント®が重要視している普遍的なナレッジとは

戦略クアドラント®には、マーケティング戦略で一般的に扱われる「独自機能・資源」「ベネフィット」「ターゲット」「競合・収益源」という4つの要素があります。重要なのは、これらの要素が個別に定義されるのではなく、相互に強固な関係を持ち合うものとして構造的に定義されるという点です。すなわち、各要素をつなぐ “矢印” で定義されていることこそが、戦略クアドラント®が重要視しているナレッジなのです。

・競合・収益源 → [模倣できない] → 独自機能・資源
・独自機能・資源 → [提供可能にする] → ベネフィット
・ベネフィット → [欲求を刺激する] → ターゲット
・ターゲット → [購入・検討する] → 競合・収益源

そして何より、最も重要なナレッジは、戦略クアドラント®の中心に「大義・ビジネス目的」を捉えていることです。大義やビジネス目的が異なれば、たとえ同じ資源であっても、それが業界や社会においてどう解釈されるかは変わり、捉える市場、競合・収益源も自ずと異なってきます。そのブランドや事業が何のために存在し、何を変革し、どのように事業を通じて持続的に社会に価値を提供していく存在であるのか。

競合は、必ずしもカテゴリー内の競合とは限りません。大義に基づいて、業界や社会の何を変革し、社会価値を創造しながら、経済価値も創造していくのか。大義が異なることで、捉える市場の解釈が異なり、自社の資源の意味や提供する価値、そして、その価値を享受するターゲットが捉える課題さえも異なっていきます。

このように、ブランド戦略と分断することなく、マーケティング戦略の要素を定義できることこそが、戦略クアドラント®の最も重要なナレッジです。そして同時に、“マーケティング戦略へと解釈を行うことができる” ブランド戦略をそもそも描くということも大切な点です。この点については、FICCのブランドマーケティングの専門性から生まれたナレッジ「ビジョンラダー®」の記事でご紹介しています。

普遍的なナレッジだからこそ、企業の課題を解決する

戦略クアドラント®が取り扱うナレッジは、経営戦略においても、事業戦略においても、プロダクトやサービス単位の戦略においても活用できる普遍的なものです。だからこそ、企業・事業・プロダクトやサービスといった企業のあらゆるレイヤーで活用可能であり、さらに、それらが連動する戦略として一貫性をもって設計・管理することができるのです。

企業の経営戦略では、まず経営戦略で描く市場戦略と事業ポートフォリオとが連動するものとして再解釈を行い、戦略クアドラント®の「競合・収益源」「独自機能・資源」の視点で定義していきます。その上で、自社だからこそ提供する価値やターゲットの捉え方をより強固にしていきます。経営レイヤーからご支援する際には、事業ポートフォリオの再定義を起点に、戦略要素を強化していくケースもあります。

そして、事業レイヤーで戦略クアドラントを描く場合は、企業レイヤーで描いた戦略要素と強化された事業ポートフォリオの考えをもとに、事業レイヤーの戦略要素の解像度を高めていきます。これにより、事業にとって活用できるマーケティング戦略要素を見出していくことができます。なお、4つのどの要素から最適化を行っていくかは、事業ポートフォリオの考え方に基づき異なります。

このように、経営戦略、事業ポートフォリオの視点を持ちながら、戦略クアドラント®を活用することで、企業・事業・プロダクトやサービスそれぞれの戦略を一貫性のあるかたちで構築・管理することができます。

戦略クアドラント®を企業が導入する理由

FICCではこれまで「戦略クアドラント®」を活用し、医療、IT、インフラ、不動産、食品、化粧品、日用品など、BtoCからBtoBまで、さまざまな業界の企業において、以下のような課題を解決してきました。

<解決してきた企業の課題>

自分たちのプロダクトやサービスの強みを定義し直すにあたり、企業レイヤーまで立ち戻って、自社の強みが何であるのかを改めて捉え直す必要があるのではないか…

事業間シナジーを起こすことが組織の中で求められているが、何を目指して事業同士が連携すべきかが定まらず、効果的な動きが生まれづらい…

中長期の事業戦略と、短期的な目標に対しての戦略とを、どのようにマネジメントすべきか、最適解を見出せていない…

BtoC、BtoBの両方の事業を展開する企業として、企業全体の共通戦略と、事業ごとに特化した戦略をどう描き、マネジメントしていくかの最適解が見つかっていない…

これまで技術を強みに事業を展開してきたが、市場環境やビジネスモデルの変化により、強みを活かしながら、事業変革やコミュニケーションの見直しが求められている…

プロモーションのために、他社のプロダクトやサービスとの定期的なコラボレーションが求められる中で、自社のブランドやサービスのコミュニケーションが定まらず、取り組みが資源として蓄積されづらい状態になっている…

こうした課題に対して、FICCのブランドマーケティングの専門性から生まれた「戦略クアドラント®」を導入することで、経営者、経営企画、事業責任者、ブランド責任者の間での共通理解が生まれ、部門を越えた協働が実現します。インナーからも共感され、確信を持って事業を前進することができる「自社だからこそのマーケティング戦略」を手に入れることができます。
また、この戦略は中長期的な事業開発や資源開発のガイドラインとしても、短期的な目の前のマーケティング戦略としても活用でき、成果を実感することができます。

「戦略」と「資源」で組織が協働し、持続的に成長するために

企業が持続的に成長していくためには、企業の各レイヤーやミッションを持つ組織が同じ目的を共有し合い、それぞれの立場から独自性や強みを再認識しながら、「戦略」として協働していくことが不可欠です。

FICCでは、企業の「大義」を戦略の重要な目的として位置づけ、「戦略クアドラント®」をはじめとするブランドマーケティングのナレッジとフレームを活用しながら、企業の各レイヤーの方々の課題や想いに向き合ってきました。そして、多様な企業の課題解決と、持続的な成果につながるご支援を行っています。

※「戦略クアドラント®」はFICCの登録商標であり、ブランドマーケティングの専門知識によりFICCが開発した、マーケティング戦略要素を導き出すフレームワークです。

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未来の社会を創造する
「ブランドマーケティング」

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  • 存在意義の共創

FICCは、人の想いの共創を通じて、企業やブランドのビジネスを成功へと導くブランドマーケティングエージェンシーです。
ブランドの社会的意義による新たな市場を創造する「ブランドマーケティング」の考えと、20年以上にわたる実績で培ったノウハウを通じて、企業のブランディングやマーケティング活動の支援、さまざまなセクターの方々と未来に向けた取り組みを行っています。