ブランドマーケティングのFICCが業界の垣根を超えてパートナーシップを締結する理由

FICCは「あらゆるブランドと人がパーパスによって、未来を創り続けている世界の実現」というビジョンを掲げ、一人ひとりの想いを起点に、ブランドや社会の価値を創造することを目指しています。

2020年、「次世代によりよい世界を」をミッションに気候変動 × テクノロジー事業に取り組むアスエネ株式会社(以下、アスエネ)とパートナーシップを締結いたしました。両社で対話を重ね「共創」という形でブランドや社会への価値を創造します。ブランドマーケティングを専門とするFICCが、なぜ異業界の企業とパートナーシップを締結したのか、具体的な取り組みと合わせてご紹介します。

●アスエネ株式会社
持続的な脱炭素社会をつくるため、ブロックチェーンを活用した再エネ100% ×地産地消が特徴のクリーン電力サービスアスエネを提供している。

なぜ企業は社会課題・環境問題に取り組むべきなのか?

近年、コロナ禍で拡大する所得格差や気候変動による豪雨・森林火災の自然災害等、解決すべき社会課題や環境問題が山積みです。かつて、これらの課題や問題は国や先進国政府主導で解決をするという考え方が一般的でした。しかし、国が深刻化する問題に対処し切れないため、企業なら解決できるだろうと期待が高まっています。

共感の連鎖を呼んだアスエネとの出会い

FICC代表 森とアスエネ代表 西和田氏

2020年秋頃、FICC代表 森はメディア取材やイベント登壇の機会に恵まれました。その一つ、情報誌「経営者通信」を運営するイシン株式会社においては、取材を通じてFICCと共感し合いつつも、同じような想いを持つクライアントやパートナーと繋げていただける関係へも発展しました。そこでご紹介いただいたのがアスエネ代表の西和田 浩平氏でした。その後、対話を重ねていき、FICCとアスエネだからこそ社会的意義のある新しい価値提供が実現できると両者が実感しタッグを組むこととなりました。

FICCが他業界であるアスエネとパートナーシップを締結する理由

ブランドマーケティングエーシェンシーであるFICCが目指すのは、ブランドに関わる全ての人たちが、優劣を競う「競争」ではなく「共創」によってイノベーションを起こし、社会価値と経済価値を持つ新たな市場を創造することです。これまでの良い製品を作れば売れる時代は終わり、ブランドに社会的意義が必要とされる時代において持続的な成長をし続けるためには、生活者だけではなく全てのステークホルダーに対して一貫性のある行動を起こす必要があります。そこで、異なる視点を持ち、社会課題解決に取り組む他業界の企業とFICCがパートナーシップを締結することで、これからの時代を生き抜くために必要なブランド独自の価値創造を目指しています。

社会的意義に基づいたブランド独自の行動を起こす

FICCが大切にしていることは、ブランドが全てのステークホルダーに対して一貫した行動を起こし、社会価値・経済価値の両立に向けた独自の市場を創造することです。ブランドがバリューチェーンの一環として再生エネルギーを使うという選択をしたとしても、その行動が大義に沿ったものでない限り、ブランド独自の価値を形成することができません。そこで、ブランドマーケティングを専門とするFICCがアスエネのような他業界のパートナーとタッグを組み、ブランドの様々な行動に対してブランドマーケティングによる一貫性を提供することで、ブランドと社会の未来に貢献することができると考えています。

価値提供のため気候変動に関する勉強会を行う

2021年2月26日、FICCではアスエネ代表の西和田 浩平氏と江森 靖紘氏を招き、気候変動に関する勉強会を実施し、環境問題の現状やSDGs取り組み事例を学ぶ機会を設定しました。ここでは対話の一部をご紹介いたします。

1. 環境問題を学び専門的な視点から現状を知る

環境問題をはじめとする社会課題の現状について西和田氏から共有いただいた後、対話をしました。

CO2排出量の少ないオーストラリアが対策をしなければいけない理由

森:現在、オーストラリアのCO2排出量は1.1%と世界的に見て少ない数値です。しかし、私が留学をしていた高校生の頃、オーストラリアは真上にあるオゾン層破壊の影響から皮膚ガンのリクスが非常に高く、幼少期からケアをしなければいけなかったり、学校で紫外線対策の授業があるような国でした。全世界が影響を与えているのに、直接的な被害が出ているのは世界中でごく一部の国という状況を目の当たりにし、当時もはや一国単位の問題ではないなと感じたことを覚えています。

西和田:まさに環境先進国である欧米・オーストラリアは、気候変動の問題に呼応して政府・企業だけでなく個々人でも積極的に取り組んでいる印象があります。日本でも徐々に注目されつつありますが、抽象的な表現の報道が多いため、客観的なデータに基づいて現状を把握して議論することが重要だと思います。

日本のグリーンリカバリーが進まない理由

西和田:石炭火力発電所や化石燃料由来の自動車など、短期的な視点で既存の利益が出ているビジネスモデルから脱却できず、EV・蓄電池・再エネなどのクリーンテクノロジー・イノベーションへと大胆にシフトできていない現状があります。一方で、欧米や中国は一度既存モデルの利益を断ち切って、未来への投資に注力しています。時代の流れに合わせてスピード感をもって変化できていないことが、日本の課題だと感じています。

森:国によって「目先の利益を見るのか、長期的な視点で見るのか」そもそも違っていますよね。

西和田:そうですね。テスラ社のように長期的な視点で取り組みを進めた方が、結果的に企業価値は上がるはず。イノベーションのジレンマがあることは理解できますが、目先の利益を追いすぎてしまう考えは、早急に変えるべきだと感じてます。

企業が気候変動に取り組むことで繋がること

西和田:単に気候変動の対策をするというより、環境負荷を減らしながらビジネスチャンスや売上増加に繋げる取り組みが、企業の中でも活発になっています。

森:企業が環境への新しい問いと向き合うことで、イノベーションが起きているということですね。

西和田:そうです。企業や製品の選定軸として、単にコストが安いだけではなく、いかに環境や社会的な課題に配慮しているかどうか、で選ぶ人が増えています。

経団連が「脱炭素を優先」と発表した背景

西和田:経団連も日本政府や米国の動きに注目しています。管政権が「2050年に脱炭素社会を実現する」と掲げたこと、また米国がバイデン大統領になりパリ協定に復帰した流れを考慮して、徐々に脱炭素・カーボンニュートラルを重視し始めています。

森:消費者が価値を感じて選択をする、という消費行動を含めた経済の構造が連携しないと、どこかで動きが止まってしまう。だからこそ、ブランドマーケティング視点では企業だけでなく消費者に対する働きかけが大切だと思っています。

2. 企業事例から具体的な取り組みを学びアイデアを醸成

SDGsに取り組む企業事例について江森氏から共有いただいた後、対話をしました。

事例1. 星のや

森:以前、星のや代表・星野 佳路氏の「勝手にSDGs」に関するインタビュー記事を拝見しました。環境にいいからだけでなく最終的に利益が出るからやるんだと徹底されているなと感じました。CSR(企業の社会的責任)ではなくCSV(共通価値の創造)だと。地域の資源に着目しどうやって活性化するかを考え、宿泊客にとって楽しいコンテンツにしたり、ベネフィットを得られると感じてもらえるように仕掛けていくことで、社会価値と経済価値の両立が叶えられると感じました。結果的に、SDGsの目標を捉えた活動になっているということですね。

江森:そうです。星のやが行っていた「地域の食材や土地の文化をテーマにした仕組みづくり」は、SDGsの取り組みだと社員が気付いたことがきっかけです。対外的に情報発信しないと勿体ないという社内の声から代表に提言して始まったのが、この「勝手にSDGs」です。

事例2. 日本環境設計

森:彼らは目的として「服を作る」と掲げていて、生まれ変わらせる際に「どのような目的で服を作っていくのか」も考えて活動しています。消費者が使ってくれて初めて循環するので、素晴らしい取り組みだと思います。

江森:私も含めてこのような取り組みに賛同しているZ世代は、SDGsや環境問題への意識が非常に高く、ストーリーや目的を持った製品を選ぶ傾向にあると言われています。米国の調査によると、Z世代の62%がサステナブルブランドの商品を選ぶと回答しています。この結果はどの世代よりも高い比率であり、サステナブル商品であれば高額でもお金を使うといった特長もあります。

森:Z世代が社会課題や環境問題に意識が高い理由は何だと思いますか?

江森:小中学生の時から授業で環境問題について習ったり、デジタルネイティブ世代ということもあって簡単に世界の情報を得ることが出来たからだと考えています。さらに、スマホを通して今世界で起きている問題を身近に感じ、目の当たりにしてきた結果だと思っています。

森:社内のZ世代と話をしていると、これからの社会や環境問題を考えた時、上の世代は未来の問題という意識が強く、若い世代ほど今起きている問題なんだと自分ごと化ができているように思います。世代によって、未来を見つめる時間軸が大きく違うと感じました。

西和田:お金やモノがない時代を生き抜いた上の世代は、モノを追い求める欲が強い傾向にあると感じます。一方で、豊かな時代に生まれて多くの物欲が満たされている若い世代は、このままだと地球環境が脅かされ日常生活ができないリスクが高くなっていることから、自分達が住んでいる地球の危機を改善したい、社会のために何かをしたいという欲が強い印象があります。

森:2050年の未来には、何がなくて何を求めて生きているんだろうと想像すると面白いですね。

3. ワークショップで個の視点を持ち寄り探求

最後に、FICCスタッフに対して、クライアントやパートナーへの価値提供となる気付きやアクションの解像度を高めるべく、ワークショップを実施しました。このアクションは、FICCの社内で2020年から育んできた「ONE FICC ー CROSS THINK TO INNOVATE」という文化によるもので、対話をすることにより一人ひとりの視点から社会へと繋がる問いを導き出し、イノベーションを生み出す取り組みです。

後日、社内アンケートではスタッフからこんな声が届きました。

「プラスチック容器の経年変化が美しくなるような、愛着の湧くようなアイディアは友人のプロダクトデザイナーと意見交換会をしてみようと思いました」

「新しいものが求められてきた社会の文脈を、例えば使い込むことがカッコいいという文脈に変換するなど、生活者にとっての価値に変換していくことが大事と感じた。また星のやのように実はソーシャルグッドだったじゃん、みたいに経済との両立、生活者の価値との両立は忘れてはいけない。『意識高い』になってはいけない」

「専門用語が多くて分かりにくかったことも、興味あるトピックについてその人の言葉で発されることで一気に距離が縮まることを体感した。やらなきゃいけないけど、つい後回しにしてしまうことについて、自分ごと化出来るようになると、前のめりで行動に起こしたくなると実感した」

より良い選択肢の一つとして、アスエネ電気を福利厚生に

FICCは社内の福利厚生として、環境に優しくコスト削減につながるアスエネ電気を導入しました。スタッフは特別割引で使用することができます。
導入したスタッフからは、「電気への意識が変わった。CO2排出削減の貢献度合いが、スギの木何本分といった直感で分かりやすい指標になっていて、日々の使用電力チェックが習慣になった」という声もありました。
リモートワークにより使用電力が増加するなかで個人にとって良い選択ができる一つの機会として、また、毎日当たり前に使うからこそ環境について考えるきっかけになればと願っています。

ルーツであるクリエイティブ視点から、ブランディングサポートを

現在、アスエネのロゴ開発やブランディングに関わるサポートを行なっています。また、FICCのクリエイティブ資源を生かし、ブランドマーケティングの視点からアドバイザーとしても関わっています。

ビジョン推進に向けて、大切にしていること

FICCは、今後も、関わるクライアントを「真のブランド」へと導いていけるよう、クライアントのバリューチェーンに関わる様々な企業と、ビジョン共感によるパートナーシップを推進していきます。なぜなら、私たちが大切にしている「社会的意義によるブランドマーケティングのあり方・人の可能性を信じること・存在意義による共創」の全てをFICCが実現してこそ、クライアントの価値になると信じているからです。ブランドと関わる全ての人が社会的意義のある行動を起こすことで、より良い未来へと繋がるのではないでしょうか。

予測できない未来に、いかに社会への価値を創造し続けるか | FICC代表 森 啓子


私たちの生活にパラダイムシフトが起き、未来が予測し辛いこの時代、ブランドや私たちはどのように未来へと向き合うべきでしょうか。

不確実な時代だからこそ、自分たちの存在意義から外れることなく、意志を持って社会に価値を創造し続けることが、最も大切だと思います。

すべてのブランド、すべての人の存在を貴重なものとし、改めて存在意義を見つめ直すこと。そして、存在意義により価値を創造し続けることで、より良い社会、より良い未来が実現される。そう信じています。

FICC 代表取締役 森 啓子

これからの時代に必要なのは、競争ではなく「存在意義の共創」

Photo by Xiaolu Chu / Getty Images, William Bossen, Voice of America / AP, Liam Burnett-Blue

世界中の人々が直面している、新型コロナウイルスの脅威。さまざまな情報が飛び交い、何が正しくて何が正しくないのか、各国においても政治判断は異なり、先の見えない不安を多くの人が抱えていることでしょう。

さらに、相次ぐ自然災害、国と国との対立、SNS上での誹謗中傷など、私たちが生きる現代社会は混乱に溢れ、人々の心に暗い影を落とすニュースが絶えません。

そんな中、「自分にできることはないか」と考えた人々の行動が共感を生み、不安と混乱の渦中にある人々をエンパワーする動きが生まれています。

コロナ禍において事業継続が危ぶまれているローカルビジネスに対する、 “応援消費” という新たな消費行動も、「いま私たちにできること」を起点として、共感により広がりをみせた意義ある社会活動の形です。

今までの常識が常識ではなくなる時代において、いま私たちにできることは何なのか。この問いは、社会全体で未来を創造していかなければならないいまだからこそ、個人だけでなく、企業・ブランドも向き合うべき問いではないでしょうか。

VISION あらゆるブランドと人がパーパスによって、未来の価値を創造し続けている世界の実現

あらゆるブランドと人がパーパスによって、未来の価値を創造し続けている世界の実現 ―― これはFICCのビジョンであり、私たちが目指す世界です。

この世界には、こんなにも多くのブランドや人が存在しているのだから、同じマーケットを刈り取り合う「競争」ではなく、ブランドの想いや一人ひとりの想いを社会に繋げ、それぞれの存在意義(パーパス)の「共創」によって社会価値と経済価値が創造すること。そして、その集合体がマーケットとなる世界を実現することができれば、この世界はより素晴らしいものになるとFICCは信じています。

また、このビジョンは私たちFICCというブランドが社会に存在する意義でもあり、これが実現されたとき、FICCはこの世界に存在する意義がなくなる。それぐらいの強い想いで見つめている世界です。

このビジョンを実現するために、FICCの一人ひとりが日々学びを価値に変え、そして“ONE FICC”という一つの組織として日々対話し、価値を創造し続けるまでへと進化しました。しかし、こうしたビジョンを見据えられるようになるまでの道のりは、決して平坦なものではありませんでした。

FICCが社会に存在する意義とは。サステナブルな状態を目指して

Photo by Unsplash

マーケティングの知識やフレームワークといった知識資源の創造に力を入れてきたFICCですが、組織内では「なぜやるのか」というWHYがない状態が長く続いていました。

当時、自分はビジネスの執行責任を持つ立場ではありましたが、一番の苦悩は離職率の高さでした。マーケティングのナレッジやノウハウを習得した中間層の社員が転職してしまうのです。

教育して育てても去っていく―― 組織が一向に強くならない状態が続き、いまFICCが掲げているような存在意義による価値創造はおろか、採用で組織のリビルディングを続けながらビジネスを成長させていくという、決してサステナブルとは言えない状態でした。

2016年に取締役に就任してまず行ったのが、「FICCが社会に存在する意義とは?」「人生の貴重な時間をFICCで過ごす社員にとっての喜びとは?」という問いに向き合うこと。自分自身も経営者としてFICCに存在する意義、そして経営者である前に一人の人として大切にしている想いを、経営を共にする役員へ伝え、互いの想いを対話しました。

2017年のキックオフでのスピーチ
2017年のキックオフでのスピーチ

そして役員全員の想いとして、期首の全社キックオフの場で全社員に向けてスピーチ。学生の頃からスピーチやプレゼンは多く経験してきましたが、このときばかりは「こんなにも人生で緊張したことはあっただろうか」というくらい、緊張したのを覚えています。
それは、自分が生きてきた中で心から大切にしている想いを、大切にしている人たちへ届けたい、という強い願いからの緊張だったんだと思います。

私たち「人」とはそもそもどういう存在であるのか、「人」であり続るということはどういうことなのか。そして変化し続ける世界において、価値を創造する人はどういう人であるのか。マーケティングを専門とするFICCだからこそ、これらの問いに真摯に向き合い、価値を創造し続ける重要性を伝えました。

さらに、いまFICCが大切にする「学際的リベラルアーツ」による価値創造の考えとその想いを、社員と共有したい想いとして伝えました。
お互いの存在へ感謝し、多様性を受け入れ、価値創造を実現する ―― このリベラルアーツに基づいた考えを、組織の文化としてだけではなく、ビジネスにおける達成すべき指標として組み込むことで、ビジネスと組織文化の本格的な融合を開始しました。

ビジネスにおける達成すべき指標としてリベラルアーツに基づいた考えを組み込む
ビジネスにおける達成すべき指標としてリベラルアーツに基づいた考えを組み込む

社会に繋がる「問い」を立てることが、予測できない未来の価値創造を可能にする

FICCでは常に「問い」に向き合う組織であることができるよう徹底しています。
なぜなら、変化し続ける不確実な時代において、価値を創造することができる人は、社会的意義を持ち社会に「問い」を立てることができる人だからです。

社員にとっては「答え」を渡されることがないため、大変な場面もあると思います。しかし、FICCが目指しているのはトップダウンや型にはめた組織ではありません。そうしたやり方では「経営者の想像を超える価値が創造されることはない」と考えているからです。

ただし、突然「問い」に向き合おうと言っても、できることではありません。それはFICCも同様でした。その理由は、日本の教育や社会の在り方が問いに向き合うことを求めてこなかったからです。

日本の教育は、暗記することが学ぶこと、問いに対して正しい回答は一つであることを前提とした教育であり、一人ひとりの存在意義が貴重であるということを前提としていないため、答えのない「問い」に向き合う機会が圧倒的に少ないのです。

自分の人生を豊かにしてくれた海外のリベラルアーツの学びは、人の数だけ答えがあることを前提に「問い」に向き合うことを大切にしています。「問い」に向き合うプロセスを通じて、一人ひとりが自身のユニークな視点や想いに出会い、そして自ら「問い」を立てるまで成長し、そして、最終的には「社会に繋がる問い」を立て、新たな価値を創造できる人になることを目標としています。

では日本の教育がそうなっていないから、日本の企業はそうなれないのか ―― 私は違うと信じています。むしろ、そうであってはならないと思っています。

多くの人は、人生において社会に出てからの方が長い時間を過ごします。企業こそ「問い」に向き合い「社会に対して問い」を立てる人を育み、価値を創造し続けることができる組織を目指すべきなのです。

Photo by Unsplash

FICCが大切にする「リベラルアーツ」、その起源は古代ギリシャ・ローマで奴隷として囚われた人たちが市民として解放されるときに、人として生きていくうえで必要な学びとして生まれた「自由七科」が始まりです。

日本の現代社会において奴隷制度はないものの、多くの社会課題は、固定観念や既成概念への囚われによるものです。そういった既成概念から解放され、思考を自由にし、一人ひとりの想いや視点のフィルターを通して、さまざまな学問やメタファーとなるものに視点を飛ばしながら、学際的な思考の旅に出ること。そして社会に対して「問い」を創造すること。

それは昨今求められている「イノベーション」への思考にも通じます。イノベーションとは新しい技術や目新しいものを生み出すことではありません。私たちの中にある固定観念や社会の既成概念を解放し、新しい考え方により、社会をより良い姿へ導くことこそがイノベーションです。まさに「人を自由にする」リベラルアーツの哲学です。

イノベーションの本質への「問い」に出会うためには、純粋な探究心に身を任せた思考の旅が必要であり、それこそが一人ひとりの存在意義によるイノベーション、価値創造へと繋がるのです。

そして“対話”による多様性の交わりと学際的なプロセスを通じて、他者の視点を自身に内在させ、視点を増やし視座を高めることで、イノベーションに繋がる価値を創造することができると信じています。

2020年から掲げる組織テーマ「ONE FICC ー CROSS THINK TO INNOVATE」
2020年から掲げる組織テーマ「ONE FICC ー CROSS THINK TO INNOVATE」では、一人ひとりの想い(Spark Joy) × 社会課題・トレンドによる、気付きやイノベーションに繋がるフレームブレーキングの発信、イノベーションに繋がる対話を行い、ナレッジの資源化とパーパスを推進するビジネスイノベーションが組織から主体的に創造される状態を目指しています。

これらの考えの下、FICCでは、社員一人ひとりが自身のユニークな視点や想いに出会い、そして自ら「問い」を立て、「社会に繋がる問い」を共創し、全社で新たな価値を創造する取り組みをはじめました。

2020年から「ONE FICC ー CROSS THINK TO INNOVATE」という組織テーマを掲げ、毎月全社で「問い」に向き合う会を設けています。その会に向けて、一人ひとりが問いに向き合い、気付きや視点を持ち寄り、対話を通じて価値創造の種を見出す。そして事業部、チーム、プロジェクトという組織のさまざまな共同体において価値創造に繋げていくというサイクルを実現しています。

「一人ひとりの想い」というアンコントローラブルなものをいかにビジネスに融合させるのか

FICCが目指す、一人ひとりの存在意義を価値に変え、未来に繋げるという経営のあり方は、決して簡単なことではなく、むしろ非常に難易度の高い経営のあり方です。

予測できる未来に対して、コントロールできるもののみを前提に経営を考えることの方が効率的でしょう。しかし、それは自分がやるべき使命ではないと思っています。

なぜなら、一人ひとりの想いや存在意義という極めて有機的でコントロールが難しい世界と、経営・マーケティングという論理的で方法論が確立された世界を融合した経営を実現する ―― それが「リベラルアーツ」を信じる自分の人生における使命であり、経営者としての使命であると信じているからです。

関わる一人ひとりの想いを貴重なものとし、かつ効率的に価値を共創する。そんな存在意義による「イノベーションプロセス」を生み出せないか、という問いを持ち続け、2017年頃から社内の取り組みを通じて、可能性を模索してきました。

パーパスと学際的リベラルアーツによるイノベーションプロセス
パーパスと学際的リベラルアーツによるイノベーションプロセス。詳細はこちらにてご覧いただけます。

そして、2020年よりFICCとして正式に「パーパスと学際的リベラルアーツによるイノベーションプロセス」を体系化し、組織に導入するに至りました。

社員一人ひとりの想いと学びを社会に繋げ、それぞれの存在意義の共創によりイノベーションを起こし、未来に繋がる価値を創造し続ける。私たちFICCは、そんな日本におけるロールモデルとなる企業になれるよう、強い意志を持ちアクションを続けていきたいと想っています。

2020年からのFICCの経営バリューチェーン
2020年からのFICCの経営バリューチェーン

さらに、2020年からはFICCの経営のバリューチェーンにも、一人ひとりの存在意義からバリューを創造するこのイノベーションプロセスを正式に組み込みました。FICCのバリュー創造を通じてビジョンが推進され、FICCの想いに共感いただく第三者の方々と共に共感資源を創造し、共に存在意義によるマーケットを創造していくこと。
FICCが掲げる大義が大義で終わることなく、ブランドと一人ひとりの存在意義により価値を創造し成長し続ける企業を目指していきます。

「一人ひとりがユニークである」という理解だけでは、共創による価値創造は生まれない

Photo by Unsplash

FICCでは生活者への広告プロモーションにおいても、ブランドと人の存在意義による価値創造のビジョンを見据えています。広告は「邪魔なもの」といったネガティブなイメージを生活者に抱かせてしまっている側面がありますが、FICCはそんな広告のあり方を変えていきたいと考えています。

FICCが目指しているのは、ブランドの存在意義が、生活者のベネフィットとなり、ブランドが選ばれる ―― そんな広告プロモーションです。

また、FICCの「パーパスと学際的リベラルアーツによるイノベーションプロセス」の取り組みに共感いただいた方々から、広告プロモーションだけでなく、組織のコンサルテーションや、イノベーション支援のコンサルテーションのお話をいただくことが増えてきました。

実際にお話を伺ってみると、どこの組織も直面している課題感というのは、「学びや価値創造に対して、組織が受け身になっている」「新しい世代の新しい価値観を受けて、組織内での世代間ギャップが存在し、共創がし辛い」など、いずれも過去にFICCも直面し、そして乗り越えてきた課題でした。

さらに昨今は「多様性」という言葉が各所で叫ばれるようになりました。しかし、多様性を「一人ひとりがユニークである」という理解で留まってしまうと、ユニークでない状態をユニークな状態にする、すなわち女性の活躍推進、高齢者雇用などの制度や仕組みの話に留まってしまい、共創による価値創造は生まれません。

価値創造のためには、「一人ひとりがユニークであることが貴重なことである」という理解にまでストレッチさせることが重要です。

Photo by Unsplash

組織によって抱える課題は違えど、どの組織であっても私たちが「人」であることは変わりません。その「人」を見つめ、私たち一人ひとりの存在意義こそが貴重であるということを起点にして思考すること。そうすることで、共に何を創造するのかという思考に至ることができ、理想的な状態へと辿り着くことができるのです。

そして組織の真の自走とは、共に見るビジョンが存在し、そして組織に所属する一人ひとりの想いが動機となり、ビジョンの実現に向けて、自らの想いを起点に一人ひとりが主体的にアクションを行うことにより実現されます。

おわりに:「互いの存在への感謝」が未来の価値を創造する

「純粋理性批判」のコペルニクス的転回
認識は、すでに存在している外界を主観がいかに受け入れるかではない。認識の対象である世界は、空間・時間および範疇という感性・悟性の先天的形式にのっとって主観が構成したものである。

リベラルアーツを想う時、そしてFICCが信じるビジョンを想う時、哲学者カントの言葉と情景が想い浮かびます。

そして思うのです、一人ひとりの想いや見ている世界は、自分では予測できないような世界であり、それらが人の数だけ存在しているということは、どれだけ素晴らしいことかと。

いま私たちに求められているのは、リベラルアーツの本質である「互いの存在への感謝」、そして大切な想いから社会への「問い」を立て、新たな価値を創造すること。ブランドも、私たち一人ひとりも、互いの存在を貴重なものとして、未来につながる価値を創造することではないでしょうかーー。


Photo by Unsplash