新型コロナウイルスの影響による消費者ニーズの変化を調査

新型コロナウイルスの影響により、消費者行動は劇的に変化し、ソーシャルディスタンスを保った在宅ライフスタイルが来年以降も続く可能性が高くなってきました。ブランドが今後も成長し続けるためには、この新しいライフスタイルにおける消費者ニーズを早急に捉え、適切なコミュニケーションを展開すべきです。

FICCでは、この数ヶ月で消費者ニーズがどのように変化したかを明らかにするために、ジョブ理論の考え方に基づき、消費者が製品やサービスに求めるアウトカム(結果)の重要性の変化を調査しました。


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全体的な傾向として、ウイルスによって直接脅かされている衛生、安心安全、健康、そして経済的な支出などの項目が最も重要視されています。さらに、ストレスの緩和、体力の向上や、メンタルヘルスの改善など、個人的なアウトカムが魅了の向上や家族以外の人間関係の改善などの社会的なアウトカムよりも優先していることがわかります。

性年代別の結果は以下の通りです:

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新しいコミュニケーションの設計をサポートします

FICCでは、Coup Marketing Companyの音部大輔氏によって考案された、パープションフロー・モデルを活用し、コミュニケーションの設計を行っています。生活者の在宅ライフスタイルに合わせた、新しいマーケティング施策を展開する際にご活用ください。

調査概要
調査期間:2020年5月14日〜5月18日
調査地域:全国
調査対象:20歳以上の一般男女
調査数:1,812人

逆境のいまこそ見直したい、ブランドの「設計図」とは?:ブランドホロタイプ・モデルの基本

この異常な状況の下で、多くの人が通常どおりの広告に多少ながらの違和感を感じていると思う。パンデミックによって私たちの環境は劇的に変化し、広告の大半がその文脈から外れてしまっている。平静を装い、いままで通りのコミュニケーションを続けても、焦って短期的な収益の回復を試みても、大した効果は見込めない。前代未聞の状況に対応しなければならないマーケターが、いま行うべきことは一体何だろうか?

最初の反応は、何らかの形でこの危機的状況に貢献し、困窮している人々を助けようとすることかもしれない。しかし、いくつかの重要な製品やサービスを除いて、新型コロナウイルスとの戦いに直接的な役割を果たすことができるブランドは極めて少ない。これらのブランドの多くは、適切なコミュニケーションを行うことができず、広告出稿の大幅な削減や停止を行なっている。

消費者需要が低迷するなか、広告出稿を控えることは賢明な判断だと思うかもしれない。しかし、Marketingweekとeconsultancyの調査によると、これは長期的かつ大きな損失につながる可能性もある。イギリスの実在するビールブランドのシミュレーションで、広告出稿を完全に停止した結果、マーケットシェアが13%低下したが、広告費の削減を50%に抑えた場合、その損失は1%に留まったというのだ。広告を停止することで、ブランドは回復が困難なほど弱体化してしまう可能性がある。事業存続のために、ブランドはコミュニケーションをし続けなければならない。

大義からブランドを設計するブランド・ホロタイプ・モデル

ブランドホロタイプ・モデルはクー・マーケティング・カンパニーの音部大輔氏によって考案された、パーセプションフロー・モデルの前提となるブランドの設計図だ。これを活用することで、企業はその社会的な大義を起点に、もっとも重要な経営資源であるブランドを厳密に設計することができる。このようなブランドの構造を示すモデルは数多く存在しているが、これほど包括的で、要素ごとの関係性を導き出せるモデルは決して多くはない。


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ブランドホロタイプ・モデルを正しく理解するために、その要素をひとつずつ説明する。

大義

ブランドのパーパスを示し、消費者にブランドの存在理由を伝える、ストーリーの源泉となるブロック。効果的なマーケティングにストーリーは欠かせない。大義は人の共感を生み出すブランドの根幹である。

機能・性能

製品やサービスの機能や性能はベネフィットの提供を可能にする。ブランドを競合から差別化し、消費者の問題解決を実現するマーケティングの礎石となる要素だ。

ベネフィット

ベネフィットは、機能・性能から得られる利得を消費者の視点から表したブランドコミュニケーションの軸である。消費者の欲求を満たし、ブランドがカテゴリー外の製品やサービスの競合関係を可能にすることで、市場を拡大させる。
ベネフィットの条件は、情緒的か否かということではなく、主語が消費者自身であること。製品やサービスが主語である場合は、ニーズが顕在化した消費者にしかアピールできず、市場の拡大やブランドの成長への貢献は見込めまない。

ターゲット消費者

ターゲット消費者のブロックは、ブランドの戦略を定める箇所。ターゲットは商品を買ってもらいたい人ではなく、投資対利益(ROI)が最も高い、つまりベネフィットに興味を持ち、広告に反応してくれる潜在顧客を示す。ブランドターゲットは、ニーズ発生やベネフィット享受の要因となる属性を持つ層。プロモーションターゲットは、そのなかでも比較的に獲得しやすく、もっとも競合に奪われてはならない層を指す。

市場・競合

市場は「競合との競争環境」であり、競合こそがブランド成長の収益源だ。ターゲット消費者同様、市場・競合を正しく定義することは戦略を決定づける。
ブランドはそれぞれ固有のベネフィットを示し、同じカテゴリーの商品が必ずしも消費者の心のなかで競合するとは限らない。本来は同じベネフィットを持つものがブランドの競合であり、それがまったく違うカテゴリーの製品やサービスである可能性は大いにある。現在、消費者が問題解決のために行っていることを理解すれば、正しい競合を定義することができる。また、同じ機能を提供するカテゴリー競合のなかでも、優先順位が存在する。戦いに勝つ方法を探すよりも、勝てる戦いを探すことのほうが賢明だ。

エクイティ

エクイティはコミュニケーションに活用できる、消費者の心のなかに築かれたブランドの「意味」である。レバレッジすべきエクイティが存在しなければ、そのブランドを使用する理由はない。エクイティは機能やベネフィットだけでなく、共感を生む大義の要素を含むことも可能だ。
このブロックには既存のエクイティだけでなく、求められるエクイティを書き示すこともできる。しかし、消費者の心に留められるブランドの意味は完全にコントロールできるものではないため、できる限りひとつの簡潔な定義に集約させるべきだ。

パーソナリティ

ブランドは、製品やサービスの機能を超えて、消費者と情緒的な関係を築く。その結果、機能や価格に左右されない競合優位性を築くことができる。しかし、人は無機質な存在と情緒的な関係を築くことはできない。クリエイティブを通じてブランドを擬人化し、人格を付与することにより、さまざまなタッチポイントにおけるコミュニケーションの一貫性を保ち、消費者との繋がりを創り出す。ブランドのパーソナリティを定義するポイントは、ターゲットがベネフィットを享受しやすく、受け入れやすい人物像を示すこと。目的は組織内のコンセンサスであるため、具体的な名称を使用することも可能だ。

アイコン

アイコンは消費者の条件反射を引き起こす合図。その合図を受けたときにブランドを想起し、ベネフィットやエクイティを感じるなどの、情緒的な反応を呼び起こすことが目的だ。必ずブランド固有のものであり、何らかの気づきを与えるものでなければならない。

いまこそ、ブランドをしっかり見直そう

マーケターはどんな逆境に直面しても、常に冷静で、着実に、そして戦略的に行動しなければならない。一部の人は、すでにパンデミック終息後のマーケティング計画を立てているかもしれない。しかし、先行きが見えない状況で、多くの人はまだそこに至っていないだろう。
時が経てば、いずれこの危機的な状況は過ぎ去り、物事は回復に向かう。しかし、これを乗り越えたあとの私たちの世界は、決して前と同じではないはずだ。いまこそ、ブランドのあるべき姿を見直し、社会とのつながりを設計し直そう。

※本記事はDIGIDAYに寄稿したコラムを転載しています。

パーセプションフロー・モデルとは

マーケティングは複雑なチームプレーを要する企業活動であり、個人の能力によって成り立つものではありません。成功のためにはチームの全員が戦略と実行計画を正しく理解し、それぞれの担当領域の効果を改善し続ける必要があります。しかし、多くのマーケティング組織には建設的な連携と軌道修正を可能にする共通言語や活動の全体図が存在しないため、チームとしての能力を発揮できずにいるのです。

パーセプションフロー・モデルとは

パーセプションフロー・モデルは、Coup Marketing Companyの音部大輔氏によって考案されたマーケティング・マネジメントのモデルです。一連の購買行動プロセスを「自然な認識変化の流れ(パーセプションフロー)」として描き、組織的な協働を可能にするマーケティング活動全体の設計図です。その習得と活用により、チームの連携だけでなく、マーケティング計画の早期立案や、規則的な活動の実行管理が可能になります。全体設計に基づいて、個々の活動を規則的に改善できるため、確実にマーケティング効果を向上することができるのです。

右上には合意すべき戦略が明記され、横軸は目的の消費者行動を起点に、パーセプション→知覚刺激→KPI→メディアの順に並んでいます。縦軸となる8つの状態は購買行動に現れない細かいパーセプションの変化を段階的に表しています。段階毎に設定されたKPIはマーケティングROIに基づく施策毎の評価を可能にし、マーケティング全体を通じた仮説検証を実現するのです。

カスタマージャーニーマップとの違い

カスタマージャーニーマップは消費者の過去の行動を示すものであり、ブランドの選定に伴う複雑なパーセプションの変化を捉えることはできません。多くの企業がカスタマージャーニーマップを導入した後に「打ち手がわからない」状況に陥るのはこのためです。現状の消費者行動を描くカスタマージャーニーマップとは対照的に、パーセプションフロー・モデルは、ブランド選定に至るまでの理想的なパーセプションの変化を描きます。未来を描くものであるからこそ、具体的なマーケティングの実行計画を示すことができるのです。

パーセプションフロー・モデルを活用したデータマネジメント

パーセプションフロー・モデルは消費者の行動に伴うパーセプションの変化を計測可能にします。マーケティング活動の効果をクラスターごとに測定し、比較することで、効果の改善に向けた仮説を立案することができます。また、購買行動の段階に適した広告のパーソナライゼーションや、粒度の細かい仮説検証も可能になるため、計画的なトライアル購入やライフタイムバリューの向上を実現することができます。

パーセプションフロー・モデル・テンプレート


FICCはパーセプションフロー・モデルの設計と活用に10年以上の経験を有する日本で唯一のマーケティングエージェンシーです。現在ではCoup Marketing Companyの音部大輔氏とのパートナーシップを通じて、化粧品、飲料、食品、車、日用品、IT、BtoB、金融、保険など様々な業界で活用されてい汎用的なテンプレートの開発を進めています。

パーセプションフロー・モデルを導入する理由

マーケティング組織が機能するためには、一人ひとりが個別の専門家ではなく、チームとして協働するための基盤が必要です。マーケティングに関わる様々な分野において、パーセプションフロー・モデルの導入は専門性の壁を超えた共通言語を確立し、チーム全員の能力を最大限に引き出します。

※ パーセプションフロー・モデルはCoup Marketing Company音部大輔氏考案のマーケティング・マネジメント・モデルです。
※ パーセプションフローモデリングの引用には上記クレジットの掲載をお願いします。

「ブランドパーパス」を本当に機能させるには?

娘がまだ幼いころ、私は彼女の自発的な学びを促すために、絵本を読む代わりに毎晩彼女の質問にひとつ答えることを日課にしていました。「捨てられたゴミはどうなるの?」とか「世界一深い海はどこ?」といったことを娘は尋ねてきて、一緒にWikipediaやYouTubeで答えを探していたのです。7歳になったときに娘は、「生きていることに意味はあるの?」と聞いてきました。その頃、彼女は宇宙に関する本を読んでいて、宇宙全体から見る人間の存在はとても小さく、意味を持てるようなものではない、と主張しました。正直、この質問にはどう答えてよいかわかりませんでした。かといって、質問自体に意味がないとはねつけることもできません。その晩、私たちは満足する答えを見つけるまで検索を続け、ヴィクトール・フランクルの「人生の意味とは、人生に意味を与えることだ」という名言にたどり着いたのです。

幼い子供と同じように、私たちは誰もが生きることに意味を求め、自身が存在する目的を理解しようとします。存在目的(パーパス)があれば目標があり、目標を実現することで、私たちは存在意義を感じることができるからです。「ブランドパーパス」とうコンセプトが急速に世界的なマーケティングのトレンドになっているのも、これが理由かもしれません。消費者が意義を感じるブランドの活動を通じて、ビジネスの成長を約束するブランドパーパスは、実際に効果があるか否かにかかわらず、マーケティングという私たちの仕事に意義を感じさせてくれるものなのです。

このトレンドは、企業の責任と社会貢献の意識を高めました。しかし、同時に社会問題の解決を訴えて製品の販売を試みる、多くの無計画なパーパスキャンペーンも生み出しました。このような一時的なキャンペーンはビジネスにも、社会の役にも立たず、ブランドやマーケティング業界への不信を煽るだけです。ブランドパーパスは必ずしも社会問題の解決に関わるものではありません。啓発された自己利益という考えに基づき、すべてのブランドが持てる、ビジネスを通じて人の生活をより良いものにするという目的なのです。

ブランドパーパスはポジティブなトレンドであるはずです。しかし、このままではむしろ有害無益なものとなる可能性もあり、ほとんどのブランドはそのビジネスと社会的な意義の関係性を見い出せないままになるでしょう。これは、非常に残念なことだと思います。では、どうすればブランドパーパスを本当に機能させることができるでしょうか?

行動の変化

あらゆるマーケティング活動は、消費者の行動を変えることを目的とします。しかし、他者の行動をコントロールすることは不可能であり、影響を及ぼすことしかできません。そのため、マーケティングでは行動の自主的な変化を促すためにコミュニケーションを利用するのです。


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人の行動はすべて、なんらかの刺激への反応です。ただし、人間である以上、私たちは反応の仕方を選択することができます。人にはものごとがどうあるべきかという信念、すなわち自分の「価値観」に基づいて行動する能力が備わっています。そのため、行動の変化を促すマーケティングコミュニケーションにはふたつの役割が考えられます。ひとつは消費者の価値観に沿う行動の後押しをすること。もうひとつは消費者の価値観に反する行動を誘引することです。

パーセプションの変化

私たちが自分の価値観に従って行動するか否かは、自分自身と周囲の世界をどう見るかというパーセプション(認識)によって決定されます。たとえば、ひとりの行動では環境に大きな影響を及ぼさないと考えている人が、環境保護のために積極的な行動を取る可能性はほとんどありません。それどころか、環境保護のために自分の時間や利便性を犠牲にする人々の行動を愚かだと思うかもしれません。しかし、もちろん自分の行動に影響力があると考えるなら、違う思考と行動を取るはずです。

いかなる状況においても、人には自分の行動を選択する能力があります。その選択は周囲の人々に大きな影響を及ぼし、自身の幸せを左右します。能力と影響に対するパーセプションを変えることで、人の生活をより良くする、価値観に沿った行動に後押しすることができるはずです。では、どうすればこのようなパーセプションを変えることができるでしょうか?


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※パーセプションフロー・モデルの構成要素の一部

パーセプションフロー・モデルでは、「知覚刺激」がパーセプションを変える原因とされます。耳慣れない用語で、多くの人には理解しにくい概念かもしれませんが、効果的なマーケティングコミュニケーションの重要な要素です。知覚刺激の概念を理解するにはまず、記憶のメカニズムについて考える必要があります。

記憶とストーリー

人類は歴史を通じて、思想や価値観を他者の心に植え付けるためにストーリーを利用してきました。マーケティングの分野では、ストーリーは製品の特製、消費者にもたらされるベネフィットや、ブランドパーパスの説明にも使われます。しかし、最近の研究では、ストーリーは効果的な人間のコミュニケーションのための手段であるだけでなく、脳が経験を認識し、記憶を形成するための手段であるともいわれ、この考え方は「ナラティブ仮説」と呼ばれ、自動翻訳やバーチャルアシスタントの開発を可能にする計算言語学の研究にも採用されています。

問題の解決策に突然気付いたときに、私たちは「アハ体験」と呼ばれる感情的な反応を経験します。新しい気付きが引き金となり、脳内報酬系が強烈な快感を引き起こす化学物質を放出するのです。私たちの脳は、物事の関係性をそのような快感を得る機会として認識し、絶えず何かのパターンの認識を求めることになります。人がストーリーに注目してしまうのは、ストーリーが新たな気づきの経験を可能にする情報のパターンであるためです。


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ストーリー(正確には「ナラティブ」)は、一連の出来事を表し、その因果関係を示唆する情報の構造です。出来事の因果関係を発見したときに、その情報はストーリーの構造を持つ「エピソード記憶」として、私たちの長期記憶に格納されます。ストーリーの構造に至らない情報は、短期記憶とした処理され、忘れ去られます。同じようなエピソード記憶が蓄積されると、脳はそのパターンを認識し、一般的な法則や知識を抽出して、「意味記憶」と呼ばれる別の種類の長期記憶を形成します。これは私たちの習慣的な行動を決定するものです。


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知覚刺激とは、物事の因果関係を示唆することで、その理解を要求する情報のパターンです。新たな発見や気付きを引き起こし、その結果として消費者の認識と行動に影響を及ぼす長期記憶を形成します。示された情報の関係に自ら気づくことで、人はそれを自分自身の考えだと思い込み、パーセプションの変化が起きるのです。

この記憶のメカニズムを通じて、私たちは自律的に知識を獲得し、学習しています。しかし、あらゆるシステムと同様に、このメカニズムも完璧なものではなく、欠陥や脆弱性が含まれています。まず、脳はストーリーの真偽を区別することなく、報酬型を活性化させます。さらに、その快感はあまりに強力であり、生理的欲求の認識を含む認知活動の一部を無効化してしまいます。これらの欠陥により、人はストーリーに対してきわめて無防備になります。新たな気付きを体験したいがために無条件に注目をしてしまい、嘘や非現実的な結論を自ら信じ込んでしまうのです。

マーケティングにおける優れたストーリーは消費者の心を捉えて、注目をブランドのベネフィットに集中させ、製品やサービスの欠点が考慮される可能性を減らします。しかし、優れたストーリーは消費者に自身の価値観に反する行動を強く促すこともできるため、ブランドは十分にその責任を認識しなければなりません。

効果的なストーリー

ストーリーは私たちの認識と行動に影響を及ぼしますが、すべてのストーリーが強い影響力を有するわけではありません。遠い過去の出来事を長期間にわたって詳細に思い出すことができても、最近の出来事は思い出すことができないかもしれません。記憶の持続力は私たちが経験する感情の高ぶりの度合いによって決まるといわれており、その関係は逆U字の形のグラフで表すことができます。感情の高ぶりが弱い経験はもちろん忘れられますが、逆に感情の高ぶりが強すぎるトラウマ経験もまた忘れられます。これは精神に破壊的な影響をもたらす心的外傷を防ぐ「解離性認知症」と呼ばれる脳の自己防衛メカニズムだとされています。


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ストーリーは私たちに、そのようなトラウマ経験のリスクなしにさまざまな出来事を体験させてくれます。優れたストーリーのすべてに、その克服に悪戦苦闘する主人公の姿に誰もが共感できる問題が組み入れられているのはそのためです。ストーリーで描かれる問題が大きいほど、記憶の持続力が高まるのです。

ある専門家は、ストーリーは人が将来的な問題を回避し、解決法を学ぶためのバーチャル体験であると主張しています。ストーリーがより優れた行動を学習し、選択するための方法であるという考え方は、ナラティブ仮説を支持するもので、私たちの脳がこれほど強くストーリーを求めることも説明できます。

人は自分との関係を有する登場人物や状況に共感します。効果的なストーリーは、その共感を通じて私たちの理解と感情を高め、記憶の形成を助けます。さらに、日常的な出来事から記憶が頻繁に想起されるきっかけを作るのです。そのうえで、私たちはストーリーを通じて、社会のなかで適切に行動する方法を学ぶため、道徳性や社会規範の観点からも共感を求めます。道徳的葛藤(モラルジレンマ)や倫理的境界線の体験は感情の高ぶりを促す有効な手段です。しかし、道徳的にまったく受け入れられないストーリーには有用性がなく、共感されることはありません。


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ストーリーの効果を高めるもうひとつの要素は、変化です。変化は私たちに物事の関係性を認識させ、心のなかに具体的なイメージを描きます。変化は私たちに強い印象を与え、想起しやすく、持続力のある記憶を形成します。関係の変化は、時間(複数の事象間の絶対的ないし相対的な時間的関係)、因果関係(複数の事象間の条件と結果)、位置(対象物と事象の絶対的ないし相対的な空間的関係)、作用(対象物どうしの行動と反応)の四種類に分類することができます。マーケターはコミュニケーションにこれらの変化を用いることで、消費者の心にイメージを描き、強い印象与えることができます。

購買行動の促進

どんなに効果的ストーリーでブランドパーパスを伝えても、それだけでビジネスが成長することはありません。ブランドパーパスはブランド選択や価格正当化に寄与するとされていますが、これは自分の価値観に基づいて購入する消費者に限定されます。ブランドが高品質の製品やサービスを競争力のある価格で提供し、消費者にとって価値あるベネフィットを伝え、積極的にセールスプロモーションを実施しなければならないことに変わりはありません。

消費者の購買行動を駆り立てて、持続的なビジネス成長を達成するには、ブランドコミュニケーションと一貫するセールスプロモーションが必要です。両方に活用できるストーリーやアイデアを見つけ出すことは現代の多くのマーケターが抱える課題ではないでしょうか。

大規模な行動の変化を促すには、ブランドは社会規範として受け入れられつつあり、ティッピングポイントに近い価値観に着目すべきです。そのような価値観は、大半の人が同意できるトピックの下に隠されています。例えば、地球温暖化に対する真剣な取り組みが必要であることには、ほぼすべての人が同意できることでしょう。しかし、そのために自らの時間、金銭、利便性を犠牲にし、積極的な行動にコミットする人はごくわずかです。私たちは地球温暖化を問題視していても、本音ではひとりの人間の行動では何も変わらないと信じているのかもしれません。大義にコミットする少数の価値観を推進することで、ブランドは大衆にポジティブな行動の変化を促すことができます。さらに、購入や消費がこれらの価値観に沿うものであれば、購買行動につながるのです。

プロモーションは、消費者が求めるユニークで、新しい体験の提供を通じてその効果を発揮します。しかし、その役割は消費者の購買意欲を直接刺激することだけではありません。営業組織や小売企業のやる気をかき立てて、販売を促進するシナジー効果を起こすこともプロモーションの重要な役割です。プロモーションの直接的な効果だけでなく、商品の露出や消費者接点を増やすことがトライアルとリピート購入の増加につながるのです。

ブランドの誠実性

パーセプションフロー・モデルやストーリーテリングなど、マーケティングコミュニケーションの技術的な知識は間違いなく有益です。状況によっては成功に欠かせない要素でもあります。しかし、どのようなコミュニケーションもその主張に即した行動、すなわち誠実性が根底になければ相手との信頼関係は築けず、欺瞞として受け取られます。誠実性こそが、ブランドと消費者との関係を含む、すべての信頼関係の原点であり、人間のコミュニケーションの基盤なのです。そのため、ブランドパーパスはブランドが過去の行動から一貫してそれを体現していない限り、消費者に受け入れられることはありません。現代の消費者は不誠実なコミュニケーションを簡単に見破ります。

消費者に意義のある行動を促し、購買行動駆り立てるブランドは、ブランドパーパスを主張するだけでなく、その価値観に即した行動を徹底する必要があります。これはブランドの組織だけでなく、組織内の個人にも当てはまります。組織の誠実性は個人の行動の総和です。ブランド組織と個人の両方に深く根ざしていないなら、ブランドパーパスはどこかの時点で必ず嘘になるのです。


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私はこれまで、職業人生の大半をマーケティングコミュニケーションにおける技術的な知識の開発に費やしてきました。しかし、どのようなコミュニケーションの技術やノウハウがあったとしても、その根底に意義と誠実性がなければいずれ無益なものになるはずです。しばらくは一歩退いて、自分自身の意義の追求と誠実性の開発に集中し、それがビジネスに及ぼす影響を観察したいと思います。人がコントロールできる唯一のものが自身の行動であれば、意義あることの達成もまた、自分の行動からはじめなければならないのだと思います。

※本記事はDIGIDAYに寄稿したコラムを転載しています。

デブリーフィング:米空軍に学ぶ ナレッジマネジメント法

新しい知識の獲得は、能力の開発と組織の成長を担保する唯一の方法です。ナレッジマネジメントはあらゆる組織にとって、市場環境の急速な変化に適応し、競争力を維持するために欠かせません。いまや、チームや地域を超えて、情報を素早く共有することは決して難しいことではありません。現代の組織はその大きさや複雑さに関わらず、テクノロジーを活用することで、効果的なナレッジマネジメントを実現することができるはずです。しかし、その簡便性により、多くの組織では情報の共有だけが目的と化しています。個人の経験に基づく知識を組織的に学習する仕組みがなければ、むやみに共有される膨大な情報量に圧倒され、ほんの一部だけの活用可能な知識のために、貴重な資源を消耗させてしまうのです。

ナレッジマネジメントの目的は、決して情報共有ではなく、学習を通じた組織力の強化です。この誤解こそが、いまだにナレッジマネジメントから成果を得られない組織が多く存在する理由です。人の学習なくして、テクノロジーが組織の成長の答えとなることはありません。そのためには、能力の強化に必要な知識の種類と、その知識を個人から他者へと移転させる方法を理解する必要があります。

多くの組織がナレッジマネジメントから成果を得られないもうひとつの理由は、標準化された業務プロセスやワークフローを持っていないことです。共有された知識を組織的に活用するためのプラットフォームがなければ、プロジェクトごとに結果は異なり、同じ間違いが繰り返されてしまいます。多くの専門家との協働を要する現代のマーケティング組織が成果をあげるためには、パーセプションフロー・モデルのように、業務の標準化を可能にするプラットフォームが必要なのです。

優れた組織はどのようにナレッジマネジメントを実施しているのでしょうか? その理解のために、私はまずSECIモデルで有名な野中郁次郎氏の著書、『失敗の本質』を読むことを勧められました。この本では、第二次世界大戦の初期において日本軍が米軍を圧倒したにもかかわらず、組織力の低さによって敗北した様子が解説されています。

失敗の本質 表紙
             野中郁次郎氏の著書『失敗の本質』

日本軍とは対象的に、米軍は自らの過ちから素早く学び、迅速に状況への適応をしました。ビジネスでも必要とされるこの機敏さと規律が戦争の勝敗を分けた原因になったのはもちろんですが、米軍、特に米空軍が世界でもっとも効果的な学習型組織へと進化することにもつながります。彼らがリスクの高いミッションを毎日失敗なく実行できる理由は、決して個人の超人的な能力ではなく、徹底したナレッジマネジメントによる組織力です。

現代のビジネス組織の大半がいまだにできないことを、数十年前の米空軍はどのようにして成し遂げたのでしょうか? 彼らはナレッジマネジメントと実際の業務を区別せず、学習を作戦行動のなかに組み込んでいたのです。米空軍でデブリーフィングと呼ばれる結果報告は、同じ過ちが二度と繰り返されないことを確実にする、作戦行動の不可欠な一部です。デブリーフィングは、組織が効率的かつ効果的に学習する仕組みであり、いかなるビジネス組織にも適応することができます。元空軍職員によるビジネスコンサルティング会社アフターバーナー(Afterburner)は、この仕組みをS.T.E.A.L.T.H.デブリーフというフレームワークにまとめています。個人の見解も一部加えますが、今回はこのフレームワークをもとに、学習型組織のナレッジマネジメント手法を学んでみましょう。
デブリーフィングのプロセス

デブリーフィングの設定

学習は業務の一部であるため、デブリーフィングは実行計画に事前に含まれている必要があります。デブリーフィングの重要度は、オリエンやブリーフィングと同等であり、すべてのメンバーに時間厳守、出席、および貢献が求められます。メンバーは全員、WORKED / NOT WORKED(上手く行ったことと行かなかったこと)と、その原因について話し合い、分析をする準備をしなければなりません。予想外の成功や間違った仮説に基づく成功も、問題として分析する必要があります。

心理的に安全な環境の確立

デブリーフィングは個人の実績ではなく、組織の能力を評価するものです。そのためには、すべてのメンバーが自分の経験や考えを責められることなく発言できる「心理的に安全な」環境が必要です。その目的は建設的な批判を取り除くことではなく、お互いの視点を受け入れて尊重することです。デブリーフィングでは個人から地位や肩書を切り離し、発言も結びつけません。空軍職員はこの考えを強調するために、実際にフライトスーツから名前や階級章を剥ぎ取ります。メンバーの準備ができたら、まずはプロジェクトのリーダーから自身のミスや不十分だった点を発表し、全員に率直な評価を求めます。

目的と結果の確認

人は目前の仕事に熱中すると、本来の目的を簡単に見失ってしまいます。これは組織にとってもっとも一般的であり、もっとも避けねばならない過ちです。デブリーフィングはプロジェクトの目的を確認し、結果と比較することからはじまります。測定可能な目的に対する結果は、達成か未達成でのみ述べることができます。曖昧な答えはありません。達成に近い結果であったとしても、目的は変えず、未達成に至ったミスや不十分な点を検証する必要があります。

ミスは決して失敗ではありません。失敗は、ミスを修正せずに放置することで起こります。ナレッジマネジメントを追求する組織は、ミスを受け入れ、経験から可能な限り多くの知識を得るべきです。プロジェクトの計画時に、検証すべき仮説の定義や「ラーニング目的」を設定することで、組織はその学習効率を大幅に向上することができます。ラーニング目的は、組織の長期的な目標や、克服すべき弱点を踏まえて設定することが効果的です。

根本原因の特定

将来的なミスを防ぎ、成功を再現するためには、望ましくない結果の根本原因を見極めなければなりません。組織の活動において、ヒューマンエラーというものは存在しません。それを防止できなかった組織に、必ず改善すべき不備があるのです。根本原因は人材やトレーニング、業務基準、戦略、中長期目的など、組織の中核に存在するかもしれません。または、計画やチームワーク、実行の不備である可能性もあります。個人のパフォーマンスや、外的影響にとらわれず組織のなかにある問題点を見つける必要があります。

根本原因の特定

経験から得られた知識が組織内で活用されなければ、組織力の強化にもつながりません。多くの組織は、すでに処理しきれないほどの情報を抱え込んでいます。不要な情報の共有は、貴重な時間や人的リソースの消耗を招くだけです。ナレッジマネジメントから成果を得るためには、組織が失敗を防止するために必要な知識に重点を置き、情報の氾濫を避ける必要があります。

共通知識の創造

組織力の強化にもっとも重要な手順は、組織によって活用される共通知識の創造です。共通知識がなければ、組織は同じミスを繰り返し、成功を忘れてしまいます。経験に基づくラーニングをフレームワークやメンタルモデルとして言語化することで、組織は自らの成長を制限する自損事故を防ぐことができるようになるのです。言語化された共通知識には、多くの状況で活用できる汎用性だけでなく、曖昧さを排除し、必要な行動を明確にする正確性も必要です。

知識の活用を促進するためには、標準化された業務プロセスやワークフローに組み込むことが効果的です。そのためには、どのような状況で誰が知識を必要とし、活用すべきタイミングと方法を明確にします。また、当人の業務負荷を増やさずに活用する方法も考慮しなければなりません。

デブリーフィングの記録は、共通知識の基となるラーニングと、それを理解するための補足情報だけで十分です。心理的に安全な環境を維持するために、個人の発言などは記録せず、デブリーフィングのなかに留めておくべきです。

デブリーフィングシート

組織への教育

知識を組織的に活用する方法を確認したら、知識の適切な汎用化と言語化、そして組織への教育をタスクとして責任者に割り当てます。責任者は知識の共有だけでなく、正式な教育プロセスを通じた組織への浸透と、その活用に対する責任を負います。

モチベーションの刺激と維持

ナレッジマネジメントは、私たちに自らのミスや至らない点と向き合うことを求めます。現状のやり方に異議を唱え、慣れ親しんだ業務プロセスやワークフローを変えてしまいます。決して簡単ではなく、混乱やストレスを招くものですが、組織の成長に欠かせないものでもあります。デブリーフィングは、組織がよりよい未来に向けて、自らを改善するための方法です。決して否定的な評価や、懲罰的なものではなく、参加者のモチベーションを高めるものでなければならないのです。最後に得られた成果や業務の改善を確認し、互いの貢献と支援を感謝しあうことで、デブリーフィングにポジティブな印象を与えることができます。

互いのモチベーションを刺激し、持続させる方法なくして、ナレッジマネジメントが組織力の強化につながることはありません。メンバーの努力と貢献を見落とさず、正しく評価することが大切です。もちろん参加者全員のデブリーフィングへの貢献にも、リーダーから感謝の気持ちを述べるべきです。

デブリーフィングは、あらゆる組織の継続的な業務改善に適用し、活用することができます。そのコードはプロセスやワークフローの改善に留まらず、組織に学習、規律、そして説明責任の文化を作り出します。どんなに優秀な人材を集めても、共通知識がなければそれは計画的に動くことができないただの集団です。組織力を強化するためには、デブリーフィングを通じてナレッジマネジメントに取り組みましょう。

※本記事はDIGIDAYに寄稿したコラムを転載しています。

ブランドパーパス、そのインパクトをいかに測定するか?

ブランドパーパスがビジネスに大きなインパクトを与えるという考え方は、徐々に受け入れられつつあります。マーケティング活動の成果や強いチームの結束などという形で、その効果を直接体験したという主張も、もはや珍しいことではありません。

社会的にポジティブな変化がビジネスの成長を加速させるという可能性は、マーケターに大きな期待感を与えます。それは私たちの仕事により広い社会的な側面を与え、意義を感じさせてくれるものです。ジムステンゲル氏の『GROW』が出版された2015年から、たった4年でカンヌを席巻するほど、ブランドパーパスがマーケターの間で人気のコンセプトになったのも不思議ではありません。

ブランドパーパスの幅広い可能性に目を向けるにあたって、そのインパクトを測定する明確な方法が必要になります。従来の調査方法では、パーパスに対する熱意や、ビジネスにおける費用対効果などを指し示すことはできません。従業員、消費者、そして社会というあらゆるレベルに影響を及ぼすブランドパーパスの計測は決して簡単なものはないはずです。

 
ブランドパーパスの図
 

しかし、複雑であるということは言い訳にはなりません。私たちはブランドとそのビジネスを社会にとってより良い形にする機会を享受していますが、それには活動を測定し改善するという責任が伴います。その重要性から、ブランドパーパスのインパクトを測定する方法は急速に確立されていくはずです。先ずはインパクトの対象となる従業員、消費者、社会という対象毎にどのようなアプローチがあるのかを考えてみましょう。

従業員へのインパクトを測定する

ブランドパーパスのインパクトは組織内から始まります。パーパスから得られるメリットの中でも、チームの結束は最も目に見え、価値のあるものです。アンケートによって社内エンゲージメントを測るツールなどで、ブランドの一部であることに対する従業員の熱意を理解することはできません。そのためには、1 on 1などの対面のミーティングが欠かせません。

しかし、ほとんどの組織では自らの活動を正当化し、改善するために何らかの量的指標が必要となります。ブランドへのエンゲージメントを測定する基準は数多くありますが、中でも最も適切なのがブランドアイデンティフィケーション(ブランドとの同一化)であると思います。次の項目に従い、5段階のスケールなどで評価を行うことにより、従業員がどれほどブランド自身のアイデンティティーと同一化しているかを測定し、改善すべき点を理解することができます。

ブランドとの同一化

  • ブランドや組織の成功を自分の成功のように感じますか?
  • 他の人がブランドや組織についてどう思うか興味がありますか?
  • 誰かがブランドや組織を褒めた時、自分が褒められているように感じますか?
  • ブランドや組織を「私たち」と「彼ら」のどちらで呼びますか?
  • ブランドや組織が批判されると自分が侮辱されたように感じますか?

現在のアイデンティティ

  • 自分を表現する上で、ブランドや組織はどれほど重要ですか?

理想のアイデンティティ

  • ブランドや組織はどれほどなりたい自分に近づいていると感じさせてくれますか?

有意義さ

  • ブランドや組織はどれほど自分の人生に意義を与えてくれていると感じますか?

アチチュード(態度)の強さ

  • ブランドや組織のことを考える頻度はどれくらいですか?

消費者へのインパクトを測定する

ブランドアイデンティフィケーションに関する調査は消費者へのインパクトの測定にも活用することができます。しかし、その結果から個別の活動を評価し改善することはできません。消費者の心理的変化を管理するためには、パーセプションフロー・モデルが有効な手法です。消費者行動の各段階における購買への影響を評価し、購入や再購入の段階を軸にROIに基づいて段階ごとのKPIを定義することができます。

下にブランドパーパスの消費者へのインパクトを示したパーセプションフロー・モデルのテンプレートを用意しました。消費者が自分にとって重要な社会的問題に気付くことから始まり、その問題に共に取り組むブランドと同一化するプロセスを描いています。
 

ブランドパーパス版

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ジム・ステンゲル氏曰く、「ブランドパーパスはビジネスそのもの」であるべきです。私たちは消費者へのインパクトを測定し、そのROIを示すことで、マーケティングへ投資を正当化しなければなりません。私は今のところパーセプションフロー・モデルを用いたインパクトの測定が最も現実的な方法だと思います。

社会へのインパクトを測定する

ブランドパーパスの最も重要な側面はその社会へのインパクトです。ブランドパーパスに基づいた活動は、個人や社会全体に目に見える改善をもたらし、信頼できるものであるべきです。ブランドはそのオーセンティシティ(真正性)だけでなく、実際のインパクトも証明しなければなりません。

ブランドパーパスに基づいた活動はそれぞれ異なる目的を持っているため、あらゆるケースに対応する汎用的なソリューションは存在しません。また、ブランドの活動に対する社会的な価値は、常に主観的判断に左右されます。しかし、その社会的インパクトを証明できなければ、ブランドはいずれ従業員と消費者からの支援を失うことになります。

非営利団体への助成金の給付などに活用されるSROI(社会的投資収益率)フレームワークはブランドパーパスの社会的インパクトを測定するためにも活用できるものだと思います。

このフレームワークでは、生み出された「アウトカム(成果)」や人々の生活の改善に対する経済的価値を定義することで、活動の社会的価値を算出します。こうしたアウトカムに絶対的な評価指標はないため、その経済的な価値を指し示すには代わりの「プロキシ(基準値)」を設けなければなりません。こうした代替の基準値はブランドが独自に定義するのではなく、実際にその社会的問題に直面している人々の視点から調査を行うべきです。
 


 

デッドウェイト(死荷重)は、特に何もせずにもいずれは発生していたアウトカムの価値を指します。ディスプレースメント(置換)は、活動の結果として生まれた他者に賦与されたコストのことです。これらをアウトカムの合計から差し引くことで、本当の社会へのインパクトを明らかにすることができます。

[社会へのインパクト] = [アウトカムの合計] – [デッドウェイト及びディスプレースメント]

ブランドパーパスの測定はまだ黎明期にあり、今後マーケティングのROIを改善し、収益を生み出すポテンシャルは大いに存在します。ブランドパーパスは間違いなく21世紀のブランドの原動力となるものです。より多くのブランドがそのパーパスを追求し、ビジネスを成長させるためには、私たちが確実な測定方法を確立しなければならないのです。

※本記事はDIGIDAYに寄稿したコラムを転載しています。

ブランドパーパスの発見と活性化、いかに達成すべきか?

多くの製品カテゴリーにおいて、どのブランドを選ぶかということは、消費者にとって重要な問題ではありません。消費者の強い関心と、マーケットシェアを獲得するためには、ブランドが消費者にとって大切な意味を持つ必要があります。激化の一途をたどる競争環境により、ブランドパーパスの有効性は今後も伸び続けるはずです。

ブランドパーパスはブランドと社会が共有し、互いに存在意義を感じる目的です。消費者が担う社会的役割によって、大切な目的は異なるはずです。その目的を全ブランド活動の指針とすることで、ブランドパーパスはビジネス成長の原動力となります。

ブランドパーパスを活用するプロセスには大きく発見、活性化、計測の3段階が存在します。今回の記事では発見と活動について説明します。

ブランドパーパスの発見

ブランドパーパスを発見するうえで重要な要素3つ。ブランドのルーツ、社会的インパクト、そして、ビジネスリーダーのコミットメントです。
 

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1. ブランドのルーツ
ただ消費者の関心が高い社会問題の解決を掲げても、ブランドパーパスとしては成立しません。パーパスは決してやりたいことではなく、やるべきことです。組織はそれぞれの生い立ちや状況によって、社会に貢献できる方法が異なります。だからこそ、パーパスはブランドのルーツに基づいていなければならないのです。

  • ブランドが貢献すべき相手は誰か? その相手はどのような社会的役割を担っているか?
  • ブランドが保有し、相手への価値となる知識や経験は何か?
  • ブランドの行動指針となる価値観や信念は何か? それらが形作るカルチャーとブランドパーパスは合致しているか?

2. 社会的インパクト
ブランドが追求すべきパーパスは、実際に人々の生活に違いを生むものです。幸せ、つながり、探求、誇り、社会貢献という人間の5つの普遍的価値に基づき、計測可能な影響を与えなければなりません。

  • どのように人々の生活をより良くするのか?
  • 人々の生活にどのような違いを生むのか? あるのとないので社会はどう変わるのか?
  • その影響を計測し、証明することはできるのか?

3. ビジネスリーダーのコミットメント
ブランドパーパスは収益を成長させ、有能な人材を魅了することでビジネスの利益につながります。しかし、その達成は全活動のアライメントを要するため、ビジネスリーダーのコミットメントが欠かせません。事業の責任を持つビジネスリーダーのコミットメントを得るためには、パーパスは慈善事業ではなく利益を生むものでなければなりません。

  • パーパスはどのように利益を生むのか? どのように収益を成長させ、有能な人材の獲得を可能にするのか?
  • パーパスによる収益成長と人材獲得を実現する具体的な戦略はあるか?
  • リーダーは、パーパスのビジネス上の必要性を確信し、情熱を持って語ることができるか?

ブランドパーパスの活性化

パーパスはブランドのすべての活動の指針となる起点であり、社会と共有する事業の存在目的として、目標や戦略を定めるものです。ブランドパーパスと利益の相互因果関係や、その実現に向けた戦略が定まれば、その達成を阻むのは無関係な活動のみです。
 

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ブランドパーパスの活性化には、社内エンゲージメント、商品・サービス化、社会奉仕活動、ブランドエクスペリエンス、消費者エンゲージメントの5つの要素があります。

1. 社内エンゲージメント

ブランドパーパスにはビジネスに対するさまざまなメリットが存在しますが、社内の結束だけでも十分な投資価値があると言えるでしょう。エンゲージメントの目的は、その一部でありたいと思ってもらうことであり、組織のなかで機能パーパスが、外で効果を発揮することはありません。

  • パーパスに対するリーダーのコミットメントや、ビジネス上の必要性をどのように伝えるべきか?
  • 社員の一人ひとりがパーパスを語り継げるストーリーは何か?
  • 組織全体がパーパスに沿って動くための成果指標や評価制度は何か?

2. 商品・サービス化

パーパスが収益を生むためにはブランドの商品やサービスに反映されていなければなりません。

  • 商品やサービスはパーパスを反映しているか?
  • 顧客の重要な問題を解決しているか?
  • ビジネスに十分な収益性をもたらすか?

3. 社会奉仕活動

パーパスを体現し、その達成に向けて消費者を牽引するために、ブランドは収益を生む活動だけでなく、社会奉仕活動にも積極的に取り組むべきです。

  • パーパスに基づく社会的活動はエンゲージメントを推進する(ブランドの一部になりたいと思わせる)か?
  • 一時的なトレンドではなく、普遍的な価値を反映したものか?
  • 誰もが参加でき、疎外感を感じないものか?

4.ブランドエクスペリエンス

ブランドのさまざまな活動のなかで、パーパスと矛盾するものは消費者に大きな違和感を与えます。完璧なブランドエクスペリエンスの提供は不可能ですが、可能な限り近いものを目指し、矛盾点の排除に尽力すべきです。

  • パーパスに対する経時的な一貫性は保たれているか? 過去のブランドの活動との矛盾点は存在しないか?
  • パーパスに対する共時的な一貫性は保たれているか? ブランドエクスペリエンスを提供するさまざまな要素にパーパスとの矛盾点はないか?
  • パーパスに合致しておらず、優先的に修正すべき3つのポイントは何か?

5. 消費者エンゲージメント

消費者が、社員よりもパーパスに対する関心や信頼を示すことは期待できません。ブランドはそのオーセンティシティ(真正性)と、強い意志を示すために、言葉ではなく行動を通じてパーパスを体現する必要があります。

  • パーパスを体現できる行動は何か?
  • その行動に顧客や消費者が参加できる方法は何か?
  • その活動の効果を証明し、伝える方法は何か?

企業により一層の透明性が求められる時代において、ブランドパーパスの活用はいずれ避けられないものになるかもしれません。企業の道徳性という意味では、私たちエージェンシーのビジネスにも大きな影響を与えるものです。いまはまだブランドパーパスの黎明期かもしれませんが、その発見、活性化、計測に対するニーズは、今後伸び続けるはずです。次回はブランドパーパスの計測について考えをまとめます。

※本記事はDIGIDAYに寄稿したコラムを転載しています。

年齢と性別ではなく、社会的役割に基づくマーケティングを

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ターゲットを性別と年齢だけで定義するマーケティング組織は、現代市場での競争に必要な消費者理解に至っていません。世代ごとに同様のライフスタイルが共有されていた時代はもはや遠い過去であり、現代の消費者の多様化した消費傾向を的確に表すには、単純なデモグラフィック属性以外の要素が重要です。そもそも性別と年齢が商品の購買動機となることはありません。まだターゲットを性別と年齢だけで定義しているのであれば、ただちにその時代遅れな固定概念を捨て、消費者理解を深めましょう。

「他者との関係」は動機の源泉

生理的な欲求以外に、私たちの購買行動に大きな影響を与えているのは「他者との関係」です。他者との関係は私たちに果たすべき社会的役割を与えてくれます。その社会的役割から私たちは自己概念という自身のイメージを抱き、その実現や一貫性の維持が行動の動機になります。マズローの欲求五段階説が示すように、私たちは自己実現に至るために他者との関わりを持ち、自身の価値を他者に認めてもらわなければなりません。他者との関係は、私たちの行動に決定的な影響を与える動機の源泉なのです。

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他者との関係が私たちの行動を左右しているという主張に、大きな違和感や驚きを感じる人は少ないはずです。誰もが日々の生活のなかでその重要性と影響力を認識しているはずです。しかし、ほとんどのマーケターはその本質的な価値に気づいておらず、その活用はクチコミなどの施策に留まっています。それは他者との関係というものが、決して単純なものではないからからかもしれません。

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購買行動に影響を与える他者との関係には、周囲からの推奨や同調圧力という直接的な関係だけでなく、不特定の他者に与える自身の印象管理という間接的な関係や、社会的な基準を守る規範意識という潜在的な関係も存在します。他者との関係をマーケティングに活用するためには、これらを集約する概念として、関係から生まれる社会的役割について理解を深める必要があります。

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「自尊動機」を満たすブランドへ

私たちは他者との関係を通じて、自身の社会的役割を認識し、その達成に責任や存在意義を感じます。そして、自身の価値観に基づき、役割を果たすために理想的な自分のイメージ(自己概念)を描きます。自己概念は社会的役割と価値観によって形成されます。よい親は優しくあるべきだと信じる人もいれば、厳しくあるべきだと信じる人もいます。同様に一つひとつの社会的役割に対して、その人物にとっての理想的な自己概念が存在します。私のような40代の男性は、優しい父親であると同時に、頼れる夫であり、有能な上司でありたいと思うかもしれません。

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この理想的な自己概念が現実の自分と異なれば、私たちは自己を高め、その実現に努力します。この自己概念における理想と現実のギャップを埋めようとする動機は「自尊動機」と呼ばれ、それを叶えてくれるブランドへの欲求を生み出します。私たちは理想の自己概念を実現することで、自身のアイデンティティを形成します。アイデンティティに基づき、行動に一貫性をもたらす動機は「自己一致的動機」と呼ばれ、アイデンティティを肯定してくれるブランドへの欲求を生み出します。

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自尊動機を満たし、理想的な自己概念の実現を叶えるブランドのなかには、競合の優れた機能や品質に左右されないロイヤルティを確立するものもあります。これらは自己表現の手段となることで、消費者のアイデンティティの一部になるものです。すべてのブランドが、私たちのアイデンティティの一部にはなり得ませんが、そのようなブランドをすべて他者との関係や社会的役割に立脚しているのです。

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社会的役割のターゲティングを

ブランドは消費者との関係を一対一ではなく、他者を含めたものとして考えるべきでしょう。人間の普遍的な動機である自尊動機や、自己一致的動機は、ほぼすべての購買行動を左右する決定的な要因です。この力をマーケティングに活用するためには、ブランドがどのように他者との関係に介在すべきかを考えなければなりません。そのために私たちがマーケティングの起点とすべきものは、性別や年齢などのデモグラフィック属性ではなく、他者との関係から生まれる社会的役割なのです。

幸いにも社会的役割はさまざまな行動に影響を及ぼすため、検索、購買、そしてインタレストを示すコンテンツの閲覧データなどから特定することができます。メディアやエージェンシーは、購買行動との因果関係が不明な一次的な属性データの提供よりも、それらに解釈を加え、社会的役割のターゲティングを可能にすべきではないでしょうか。

※本記事はDIGIDAYに寄稿したコラムを転載しています。

ビジョンラダー:理想を現実に変えるためのフレームワーク

ビジョンは組織の共有する目標であり、人々を束ね、活気づけるものです。ビジネスの理想の形の定義であると同時に、持続的な成長の原動力にもなり得ます。この貴重な資源を最大限に活用するためには、正しい設計と、事業活動への統合が必要となります。

しかし、多くのビジョンは、実際のビジネスと乖離がし、ただの掲げられた理想に終わっています。ビジョンとの矛盾を抱えたビジネスは、必ずどこかで行き詰まります。ビジョンラダーは、多くの人々がより良い社会の実現に向けて協働し、その理想を現実にするためのフレームワークです。

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VISION

利益はすべてのビジネスの目的であり、その成功を定義する指標です。しかし、それは唯一の目的ではなく、単体で達成出来るものでもありません。意図的でなくても、すべてのビジネスは人々の生活をより良くする存在目的(パーパス)を持っています。利益は、企業がその存在目的を果たした結果にもなり、それを可能にする原因にもなり得るのです。「啓発された自己利益」と呼ばれる、この利益と存在目的の相互因果関係こそが、ビジネス成長の原動力となるビジョンの基盤です。
利他的行動が利益につながるという考えかたは未熟です。ほとんと゛の場合、それらは相反関係にあり、人々に良く、ビジネスにも良いビジョンの設計には多くの時間と労力を要します。しかし、人々の生活をより良くすることを通じて利益を得ることができれば、ビジネスが成功する可能性は飛躍的に向上します。

  • ビジネスはどのように人々の生活をより良いものにするのか?
  • ビジネスはどのように社会に好ましい影響を与えるのか?
  • それはどのように理想的な市場の形成につながるのか?
  • ビジネスにとって理想的な市場とは何か?

CULTURE

人々にとって良く、ビジネスにとって理想的な市場は、現状のままでは存在し得ません。ビジョンを達成するためには、多くの人の心をつかみ、新しい考えや価値観に向けて牽引する必要があります。「文化的イノベーション」(https://amzn.to/2Pc0cvp)は、人々が共有する考え方や価値観から生まれる社会的行動を変化させます。これには新たな考えのシンボルとなり、共感できる存在意義を示すブランドが必要となります。
ブランドは人の心のなかにある「意味」を示します。優れたブランドは、単なる製品やサーヒ゛スよりもはるかに重要な意味を持ち、消費者との強力な関係を築くことができます。もっとも重要な意味を持つブランドは、消費者のアイデンティティーの一部となり、自己表現の手段になっています。大切な考えや価値観を体現し、そのシンボルとなるブランドは、その支援者に存在意義を感じさせ、ほかの選択を無効化することができるのです。
文化的イノベーションには、人々にとって好ましくない状況を生み出す固定概念に対抗するイデオロギーに基づきます。イデオロギーは、一時的な社会的混乱や分断によって人々が求めるものであるべきです。ブランドが言葉ではなく、行動を通じてそのイデオロギーを示さなければ、人々に受け入れられることはありません。そして、その表現にはイデオロギーを連想させる、サブカルチャーなどの既存の文化的シンボルを用いることが効果的です。

  • 人々にとって好ましくない現状を生み出す固定概念は何か?
  • 人々がイデオロギーを求める原因となる、一時的な社会的混乱や分断は何か?
  • ブランドはどのような行動を通じてイデオロギーを示すことができるか?
  • イデオロギーを連想させる既存の文化的シンボルは何か?

NETWORK

社会的な文化の変革をビジネスが単独で起こすことはできません。広く蔓延する固定概念を打破するためには、新たな考えに賛同する多くの組織や個人の協力が必要です。ビジネスが文化的イノベーションを実現する上で、不足する資源を保有する組織や個人とのつながりは、ビジョンの達成に欠かせません。
文化の変革に必要な資源は、4つのカテゴリーに分類することができます。メディア的影響力、倫理的権威、経済的影響力、そして政治的影響力です。ビジネスは不足する資源を特定することで、戦略的に文化的イノベーションに取り組むことができます。

  • メディア的影響力、倫理的権威、経済的影響力、政治的影響力のうち、不足が多い資源は?
  • どの組織や個人が不足する資源を保有しているか?

RESOURCE

ビジネスの力は活用可能な資源の量と、資源に対する需要で決まります。文化的イノベーションを起こすためには、多くの組織や個人の支援と交換できる資源が必要となります。それは交換のたびに消耗される資金や時間などの有限資源ではなく、知識やデータ、テクノロジーなどの消耗されない「無限資源」であるべきです。無限資源を資金や時間などの有限資源や、文化的イノベーションに必要な4種類の資源と交換することで、ビジネスはその力を劇的に増やすことができます。
ビジョンに描かれた理想的な市場は、ビジネス固有の資源に対する高い需要が存在し、競争相手がいない状況を示します。そのために、ビジネスは間接的にでも人々の生活をより良くする可能性を持ち、まだ人々が需要を持たない資源に投資する必要があります。「イノベーションのジレンマ」と呼ばれる、市場が存在しない資源への投資はリスクを伴います。しかし未来の市場に投資しなければ、ビジネスが先行者利益を得て、持続的な成長を実現することができません。

  • ビジョンの達成に欠かせない組織や個人が求め、交換によって消耗されない資源は何か?
  • ビジョンに描かれた理想的な市場は、この資源の需要につながるか?
  • この資源はと゛のように人々の生活をより良いものにすることができるか?
  • 競合はなぜこの資源に投資する可能性が低いのか?
  • この資源はなぜ持続的な競争優位性になり得るのか?

※本記事はDIGIDAYに寄稿したコラムを転載しています。

利益と成長をもたらす、ブランドパーパスの見つけ方

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ブランドパーパスは、理想主義や利他主義に基づく思想ではありません。それは、人々の生活をより良いものにするという社会的な存在意義を通じて、ブランドが成長し続けるための方法です。前提として、ブランドのパーパスとビジネスのプロフィットを上下関係ではなく、表裏一体とすることが求められます。

人間の基本的価値に関わるパーパスは、人に存在意義を感じさせることで、ブランドとの深いつながりを生み出します。人間関係にもとづくすべてのビジネスにとって、人とのつながりは大切な資源です。パーパスは、従業員や顧客だけでなく、ブランドの言葉に耳を傾けるすべての聴衆とのつながりを可能にし、持続的な成長に必要な機会を創出します。

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5つの基本的価値

ブランドパーパスは、ブランドが社会に提供するベネフィットであるとも言えます。前回も紹介した書籍『GROW 本当のブランド理念について語ろう』では、人々との深いつながりを生み出すブランドパーパスは、5つの人間の基本的価値に関わるものであると紹介されています。製品やサービスの機能に立脚するものを選び、文の主語を消費者に変えれば、ブランドが消費者に提供するベネフィットとして活用することもできます。

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デイビッド・アーカーは、消費者が享受するベネフィットを、機能以外の3カテゴリーに分類しています。消費者の感情を刺激するエモーショナル・ベネフィット、消費者と準拠集団との関わりを示すソーシャル・ベネフィット、そして、消費者に自己表現の術を与えるセルフエクスプレッシブ・ベネフィットです。5つの基本的価値に関わるベネフィットは、自己肯定感、準拠集団との存在意義の共有感覚、価値観を表現する術を与え、アーカーが定義するすべてのベネフィットの要素を満たすものです。

つながりを生むストーリー

人々とのつながりの深さは、ブランドが伝えるストーリーの質によって決まります。ストーリーは、幅広い聴衆を魅了し、明快さと説得力を持ってメッセージを伝えるものです。その構造はブランドパーパスの効果的な伝達にも役立つはずです。

Story Spine”は、ストーリーの本質を3つの文章で定義するフレームワークです:

Hookと呼ばれる最初の文章は、文字通り聴衆の注目を引くためのものです。当たり前な正論や、綺麗事に聞こえるブランドパーパスが、人の心を動かす事はありません。ブランドは、社会の不利益を生む既成概念に対抗し、新しく、刺激的な「イデオロギー」を示すことで、聴衆の関心を獲得します。

次のBuildは、聴衆の興味を持続させるものです。人は、自分の価値観や信念を肯定するものに強い共感を覚えます。人が大切に想う価値を表すことで、ブランドは特別な意味を持つ存在になり得ます。

給料日を意味するPaydayは、聴衆に満足感を与えるものです。パーパスを達成するブランドの意志に加え、その方法と能力を示すことで、人々に期待と希望を与えることができます。

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ブランドパーパスの伝達に必要なストーリーの本質は、あらゆるコミュニケーションの機会に適応することができます。雛型となるStory Spineがあれば、ストーリーの軸を見失うことなく、表現を改善し続けることができるはずです。

本物のブランドとは

パーパスに基づくブランドの活動は、すべて顧客の体験に集約されます。人々の生活をより良いものにする意志と努力は、パッケージ、店頭、広告、製品などすべての顧客接点に反映され、優れたブランド体験を創り出します。一方で、顧客はブランド体験のなかで矛盾する点を簡単に見つけ出します。聴衆のなかには、必ずブランドの真意に疑いを持ち、公の場でその嘘を暴こうとする人がいます。このような、一見厄介に思える人でさえも、パーパスに基づく本物のブランドにとっては、関節的な支援者になり得るのです。

一連のブランド体験を通じて、顧客を欺く方法はありません。唯一の解決策は、人々のより良いを生活の実現を、本心から求めることだけです。大切なのは、あなた自身が本当の価値観や信念を表していること。その価値観や信念に行動が基づいていること。そして、人々の生活をより良いものとし、ブランドを成長させ続けるというあなたの想いが、本物であると信じることです。

※本記事はDIGIDAYに寄稿したコラムを転載しています。

ブランドパーパスはビジネス成長の条件か? またはマーケターの幻想か?

ブランドには利益だけでなく、社会に貢献するパーパス(存在目的)が求められます。優れたパーパスの存在はビジネスの原動力となり、その成長に大きく貢献します。この理想主義的のような考え方により、現在ブランドパーパスを軸とするマーケティング活動が世界中で活発化し、欧米では一般化の兆しも見せています。

元P&Gグローバルマーケティング責任者、ジム・ステンゲル氏は、この世界的なマーケティングトレンドを起こした著書の『GROW 本当のブランド理念について語ろう』で、社会的大義をパーパスに掲げる50のブランドが、代表的な上場企業の4倍もの成長率を実現しているという研究結果を発表しました。そして、ブランドパーパスこそがビジネス成長の普遍的な条件であると主張したのです。

ブランドパーパスの効果

ステンゲル氏の主張と研究結果の正当性を疑問視する声も上がっています。しかし、彼の言葉は多くのマーケターにとって自身の仕事の意義を示し、勇気を与えてくれるものでした。「ビジネスの成長にはブランドパーパスが欠かせない」という考えは、業界全体の規範として急激に浸透し、受け入れられていったのです。この現象を逆手に、ブランドパーパスはマーケターが望んだ幻想であると言う人もいます。しかし、私はこの新しいイデオロギーの発生こそが、ステンゲル氏の主張を裏付けていると思っています。

その後、広告代理店コンサルティングファームからは、消費者の購買判断がブランドパーパスの影響を強く受けているという調査報告が相次ぎます。しかし、人はアンケートの発言通りに動くことはなく、その効果を鵜呑みにすることはできません。ブランドパーパスが直接的な購買理由にならなくても、その判断を正当化する効果は十分に考えられます。また、消費者が共感するブランドの選択だけでなく、共感できないブランドの不買も発生しているはずです。私達はブランドパーパスの効果に過剰な期待を抱く前に、購買行動に対する影響を正確に把握するべきではないでしょうか。

ステンゲル氏の主張は業界全体を牽引し、多くの企業の追随を招きます。しかしブランドパーパスの活用は広告代理店に委ねられ、社会問題に対するスタンスを表明する広告が相次いで発表されます。本来パーパスは全てのブランド活動の指針であるべきです。パーパスに対する十分な活動の整合性と積み重ねがなければ、ブランドの主張が消費者に受け入れられることはありません。ブラック・ライヴス・マターに似たデモの解決を描いたペプシの事例や、それまで推奨してきた「男らしさ」を有害なジェンダーステレオタイプとしたジレットの事例は、ただ大義を振りかざすだけの広告として消費者の強い反発を受けました。無闇に注目の社会問題を起用し、偏ったスタンスを表明するような広告は間違いなくブランド毀損を招きます。ブランドの根底にある信念に基づき、十分な時間と労力を費やさなければ、ブランドパーパスはただの「利益を得るための嘘」になってしまいます。

広告活用の成功事例

もちろん、ブランドパーパスを活用した広告の成功事例もあります。人種差別に反対し、試合時に国歌斉唱を拒否してきたコリン・キャパニック選手は、2015年からNFLのチームに所属していません。ナイキは彼の生き様と、自らが彼の起用に対して抱えるスポンサーのリスクを重ね、「全てを犠牲にしても、信念を貫け」という強烈なコピーを打ち出しました。この広告は、キャパニック選手の国家斉唱拒否に反対する年配者による反発や不買運動を発生させました。しかし、スポーツシューズの中核的購買層である世代からは、熱狂的な支持を得ることに成功しました。ブランドの活動とパーパスの整合性を見事に実現した事例です。

ブランドの活動とパーパスの整合性が無ければ、消費者の信頼は得られません。そのためには、より良いの社会の実現に向けて、真摯に取り組む以外ありません。とはいえ、企業活動の継続には利益の獲得が必要であり、利他的な社会貢献ばかりを優先していては、ブランドの存続が困難になってしまいます。利益とパーパスをトレードオフの関係で考えてしまうと、必ずどちらかが優先されてしまいます。しかし、2つを相互補完関係で考えれば、持続的なビジネス成長の答えが見えてきます。

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パーパスは利益の目的であり、手段でもあります。人々にとってより良い社会が、ブランドにとってより良い市場でもあるべきなのです。このパーパスと利益を両立する社会的なビジョンこそビジネス成長の原動力であり、その力は、P&Gの歴史からも見ることができます。

大恐慌の時代に、アメリカ内陸部のシンシナティで石鹸製造業を営むジェームズ・ギャンブルと、ローソク製造業のウィリアム・プロクターは、暗く、不衛生な生活環境の改善を目的に、原料を奪い合うのではなく、共有し合ったのです。「人々の生活が豊かになれば、より多くの生活用品を買ってもらえる」というパーパスと利益の相互補完関係を含むビジョンこそが、P&Gの成長の原動力なのかもしれません。

ビジョンを実現するために

ビジネス成長の原動力となる社会的なビジョンが描ければ、次はそれを達成する方法が必要になります。社会的な変革は単独で起こせるものではありません。ビジョンを実現するためには、業界など社会の一部を牽引しなければなりません。ブランドパーパスの権威であったステンゲル氏は、自身のビジョンを正当化するイデオロギーで業界全体を牽引しました。その結果ブランドパーパスへの需要は世界的に高まり、彼にとって理想的な社会が実現しています。

もちろん、イデオロギーを広めるためにはさまざまなリレーションシップが必要です。それまでに多くの人から絶大な信頼を勝ち得てきたからこそ、新しい考え方を広め、浸透させるほどの影響力を持つことができたのでしょう。それは、確実なビジネスの成功というベネフィットによって構築され、ブランドパーパスに対する実証的な研究というフィーチャーに立脚しています。ステンゲル氏の本の内容だけでなく、彼が成し遂げた、世界中の企業に社会貢献の重要性を認識させるという社会的な改革からも、ブランドパーパスの活用方法を学べます。
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ブランドパーパスに対する世界的な関心にもかかわらず、その直接的な効果を証明する事例は未だ多く存在していません。私たちはまだブランドパーパスと言う概念が持つ意味や、その活用方法を理解し始めたばかりです。多くの失敗例が目立つ中でも、ブランドの活動と整合性のあるパーパスが人を奮い立たせることはわかっています。人々のよりよい生活を実現し、ブランドの需要を高める社会の中で、ビジネスが成長しないはずがありません。ブランドという存在を嘘や、幻想で終わらせないためにも、私たちはこれからもパーパスについて学び続けなければならないと思います。

※本記事はDIGIDAYに寄稿したコラムを転載しています。

効果的な「広告メッセージ」を見極める、たった1つの質問

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私たちが1日に見る広告の数は数千件。しかしごくわずかな例外を除いて、広告は自分とは無関係であり、欲求をまったく刺激されないものばかりではないでしょうか。電車に乗っていても、テレビを見ていても、製品やサービスの機能を訴求する広告ばかりが目につきます。このような広告は、ニーズが顕在化した消費者にしかアピールできず、市場の拡大やブランドの成長への貢献は見込めません。

私たちの購買判断の多くは、欲求が先行し、あとからその正当化を行なっています。製品やサービスの機能や性能がどんなに優れていたとしても、ニーズが存在しなければ、それは購買を正当化する理由にしかなりません。機能の訴求では、ニーズが顕在化していない消費者の欲求を刺激することはできないのです。

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ベネフィットの訴求は、ニーズが顕在化していない消費者の欲求を刺激し、市場を拡大させます。そして、同じ製品やサービスのカテゴリーだけでなく、同様のベネフィットを提供するものすべてを収益源とすることができるのです。機能よりもベネフィットを訴求するメッセージが効果的なのはこのためです。

消費者を主語にすべき

広告のメッセージがベネフィットを訴求しているか否かを確認するために、ひとつ簡単な方法があります。それは「メッセージの主語が消費者自身になっているか?」と問うことです。ベネフィットは機能を通じて、消費者の視点から得られる利得を表現しています。そのため、製品やサービスが主語である場合は機能、消費者が主語の場合はベネフィットを訴求しているはずです。

“メッセージの主語が消費者自身か?”

もちろんすべてのベネフィットを訴求するメッセージが、効果的に欲求を刺激するとは限りません。消費者が求めるベネフィットが訴求されていなければ、欲求を刺激することはできません。求められるベネフィットを訴求するためには、ターゲット消費者を理解し、正しく定義する必要があります。

ブランドの独自性も大事

また、ブランドが選ばれるためにはベネフィットに独自性があることも重要です。ベネフィットが単なる機能ではなく、固有の特性に立脚していれば、ブランドは独自性の強いベネフィットを提供することができます。
もし、あなたがこの記事を電車のなかで読んでるのであれば、まわりの広告を見渡してみて下さい。メッセージの主語が消費者自身であり、便益を訴求しているものはいくつあるでしょうか? そのなかでも、あなたの欲求を刺激する広告はどのようなものでしょうか? メッセージの主語が何であるかという視点で見れば、効果的な広告のメッセージを簡単に見極められるようになるはずです。

※本記事はDIGIDAYに寄稿したコラムを転載しています。

データドリブンマーケティングの「ロードマップ」の作り方:企業のデジタル推進を実現するために

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データドリブンマーケティングの利点は明らかです。 データに基づく軌道修正と改善は、マーケティングチームが成果にコミットできる唯一の実践的な方法です。また、測定可能な仮説と適切なデータ分析に基づくマーケティングの意思決定は、ブランドの持続的な成長を可能にするものです。

マーケティングは統計学に裏打ちされた科学的分野であり、その活動はそもそもデータドリブンであるべきです。相手の反応を定量的に記録し、改善に活かす「インタラクティブマーケティング」の概念は、90年以上も前に、クロード・ホプキンスの『科学的広告法』(1923)によって確立済みです。いまになって、あらためてマーケティングにデータの活用が求められる背景には、計測可能な項目やデータ量の爆発的な増加に、私たちのマーケティングが対応できていない現状があります。現代市場において有効なデータドリブンマーケティングを実行するためには、闇雲にデータを収集する前に、そのプロセスを見直すべきでしょう。

多くのデータを収集し、統合し、分析すれば、意思決定に役立つヒントが得られるという考え方は間違っています。少なくとも、ひと握りの世界的なIT企業以外に、十分なデータ量や分析技術の獲得は現実的ではありません。一般企業が闇雲にデータを収集しても、手元にある断片的な情報から、有効なマーケティングの意思決定を行うことはできないでしょう。

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データに基づく意思決定は、目的、仮説、そして実行・検証方法の定義による事前設計が必要です。データやテクノロジーは、明確な方向性があってこそ、マーケティング効果の改善に役立てることができます。持続的かつスケール可能なデータドリブンマーケティングの実現には、正しいプロセスを示すロードマップと、規律を持った実行が欠かせません。

①目的

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ビジョン・ミッション
組織のなかでデータドリブンマーケティングの推進を担うのは、主に複数のブランドやマーケティング機能を横断する部署です。しかし、そもそもデータドリブンマーケティングに取り組む目的が明示されていなければ、ブランドやマーケティング機能を担当するチームとの衝突が発生し、推進が困難になります。会社組織の目的と合致するビジョンと、その達成方法(ミッション)を定義する指標がなければ、横断部署によるデータドリブンマーケティングの推進は見込めません。

マーケティング戦略
戦略は、目的の達成に向けた資源活用の指針であり、目的や資源に変更がなければ変えるべきではありません。施策の結果がマーケティング戦略に影響を与えないことはありませんが、しっかりとした現状分析に基づくマーケティング戦略であれば、大きな変更を行う必要はないはずです。また、データドリブンマーケティングを推進する部署にとって、マーケティング戦略は他部署によって定められるものであるはずです。そのため、上記のロードマップではマーケティング戦略を「目的」の段階に含めています。

プロジェクト目的
すべてのマーケティング活動の目的は、高いマーケティングROIの実現です。データドリブンマーケティングは、高いROIの実現のために意思決定の速度と精度を改善します。デジタル施策がROIに直接的な影響を及ぼすダイレクトレスポンスなどの分野では、デジタル単体での部分最適でも十分な成果が見込めます。しかし、それだけではROIの改善に大きく貢献できないカテゴリーも多く存在します。この場合、デジタル施策から得られたラーニングを資源とし、より大きな影響を及ぼす施策へのフィードバックを行うことが有効です。データドリブンマーケティングのプロジェクトは施策単体ではなく、他施策へのフィードバックを通じたROIの改善を目的とすることで、マーケティング組織全体に貢献することができます。

②仮説

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パーセプションフロー・モデル
ROIの持続的な改善には、マーケティング施策の仮説検証を繰り返し行う必要があります。マーケティング全体の詳細な設計図がなければ、仮説検証の粒度は荒くなり、精度は低くなってしまいます。消費者の認識変化を軸とし、マーケティングの全体像を描くパーセプションフロー・モデルを用いれば、データドリブンマーケティングに必要な仮説を網羅することができるのです。

③計画

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検証方法
マーケティング施策のROIには、さまざまな影響要因が存在します。メッセージ、クリエイティブ、ターゲティング、メディアなど、それぞれの影響を個別に検証しなければ、成功・失敗要因を特定することはできません。影響要因と該当する指標を分解し、評価方法を定めることで、収集すべきデータを定めることができます。

データ収集
どんなにたくさんのデータを保有しても、有益な意思決定につながらなければ無意味です。マーケティングの仮説と、正確な検証方法があってこそ、私たちはデータから価値を抽出することができます。デジタル施策はユーザーの行動に基づく細かい効果検証が可能ではありますが、マーケティングの意思決定がすべて行動データから取得できる訳ではありません。しかし、現在では個体識別を通じて、ユーザーの行動と調査データなどを掛け合わせることが可能です。データ収集の設計次第では、個別の広告視聴などの行動と、態度変容やオフラインの購買行動などとの直接的な因果関係を検証することができます。

企画・プランニング
検証方法とデータ収集の目処が付けば、具体的な施策のプランニングを開始することができます。言い換えれば、この段階までできていなければ、個別の施策を担当するエージェンシーにブリーフィングをすることはできません。検証すべきコミュニケーションをもとに、コンテンツやクリエイティブを企画し、適切なデータ収集が可能なメディアや媒体を選定します。さらに、目的を達成し、検証に十分なデータ量が確保できるよう、予算の配分を行います。

④実行

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実装、配信・運用
実行段階では、デジタル広告やコンテンツなどから正しくデータを収集するための実装と、配信・運用作業があります。これらの段階が正確に実行されなければ、調査パネルなどとのデータ連携や、評価方法に基づく分析が行えなくなります。マーケター自らが行う工程ではありませんが、データ収集における技術的制約を理解することは計画立案にも役立ち、決して無駄なことではありません。

データ分析
分析の段階では、データから意思決定に役立つ情報を抽出します。施策の実行から得られたデータを、さまざまな角度から分析することは可能ですが、プロジェクトがその分析を目的に設計されていなければ、データが十分であっても意味のある結論が導き出せるとは限りません。この段階では、新たにデータの活用方法を考えるのではなく、計画に定められたROIの影響要因と評価方法を活用し、将来再現すべき成功や、防止すべき失敗を導き出すのです。データ分析は事前の設計に従わなければ、精度と効率を維持することはできません。

⑤改善・レビュー

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ラーニング
マーケティング組織の強さは、ラーニングの数に比例します。優秀さとは、学習効率の高さであり、ひとつの事象からたくさんのラーニングが得られている状態を指します。しかし、重要な意思決定に役立たない情報は、ラーニングであるとは言えません。事前に定められた目的に沿って、仮説検証を行うことでマーケティングROIの改善に役立つラーニングが得られます。

フィードバック
得られたラーニングを活用できなければ、マーケティングROIの改善を実現することはできません。ラーニングをほかのメディアや施策で活用できるよう汎用化し、プロジェクト目的で定めたフィードバック先へと適用します。

プロセス改善
すべてのプロジェクトにはミスが付き物です。想定外の成功を含むミスは、人的なものではなく、プロセスの不備が原因です。理想的な実行とは、ミスを一度も犯さないことではなく、同じミスを二度と犯さないことです。プロジェクト終了時のレビューではミスの原因を特定し、プロセスの改善策を組織全体に周知します。

目的から整然と設計されたデータドリブンマーケティングは、将来あるべき姿を見据えて、マーケティング組織を前進させます。データの正しい活用は、過去を検証するだけでなく、私たちに未来を形作る術を与えてくれるのです。いままでに、多くの企業がデジタル推進を掲げ、デジタルマーケティングに特化した部署を立ち上げてきました。しかし、その多くはいまだ大きくマーケティングROIに貢献することができず、その存在意義を問われ続けています。デジタルマーケティングの本質的な価値は、デジタルメディアを通じた消費者との接触ではなく、消費者の反応を収集・記録する「インタラクティブ性」にあります。いま、デジタル担当部署に求められるのは、マーケティング全体のROI改善に役立つ、データドリブンマーケティングの体制を確立することではないでしょうか。

※本記事はDIGIDAYに寄稿したコラムを転載しています。

現代の「市場ダイナミクス」を理解する、3C+1分析 とは?:3Cモデルに社会的側面もプラス

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パーセプションフロー・モデリングの依頼を受ける際、そもそもマーケティング戦略の策定や、策定に必要な現状分析が十分に行われていないことがあります。実行する施策だけでなく、戦略までも代理店に任せていては、成果に対する責任の所在がわかりません。良い実行は必ずしも成功を約束しませんが、戦略の欠如は間違いなく失敗を招きます。効果的な戦略を導き出すために、十分な現状分析を行うことはマーケターの責務です。客観的なデータの収集や、マーケティング調査の知識を要するからと言って、盲目的に他者に任せるべきものではありません。

大前研一氏によって考案された3Cモデルは、Company、Competitor、Customerの相互関係から市場ダイナミクスの分析を可能にします。しかし、現代市場はこの3要素の相互関係で表せるほど単純なものではありません。現代の消費者は互いに影響し合い、無数の共同体に帰属しているため、その行動を大きく影響する社会的要素を無視することはできないのです。3Cに「Community」を加えることで、社会的側面からも現代の複雑化した市場ダイナミクスを理解することができるはずです。

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現状分析には、明確な手順はありません。それぞれの要素の相互関係を分析するため、各要素の間を行き来する必要があります。適切な分析には情報収集が欠かせないため、まずは自社を示す「Company」からはじめるのが良いでしょう。

Company (自社ブランド / 製品・サービス)

  1. 自社のビジョン・理念は何か?
  2. 自社ブランドが提供するベネフィットは何か? 消費者はブランドを購入・使用することでどのような人物になれるのか? またはどのような人物であると主張できるのか?
  3. ベネフィットと自社のビジョン・理念の整合性は保たれているか?
  4. 目標とするビジネスゴール(売上 / マーケットシェア等)は何か? 現状との差異は?
  5. 自社のブランドや、製品・サービスを競合と差別化する機能や属性は何か? 同質化する機能や属性は何か?
  6. 自社のブランドや、製品・サービスはターゲット消費者にどのように認識されているのか? どのような属性・キーワードを保有し、連想させるのか?
  7. 競合に対して自社のブランドや、製品・サービスの価格はどのように設定されているか?
  8. 自社のブランドや、製品・サービスの品質を担保・保証するものは何か?
  9. 自社のブランドや、製品・サービスはなぜユーザーのロイヤルティーを得ることができるのか? ブランドが提供するベネフィット以外の理由はあるか?
  10. 他部署との連携における制限は何か? 不足する資源や能力は何か?

マーケティングにおいては、市場を「競合との競争環境」と定義することがあります。しかし、直接的な競合が存在しない、又は直接的な競合との競争が好ましくない場合があるため、「Competitor」という表現は誤解を招き、市場を限定してしまう可能性があります。消費者の支出は有限であり収益は必ず何かからでなければならないため、私たちはソースオブビジネス(収益源)という言葉を使います。

ブランドは、成長のために製品やサービスのカテゴリー外にソースオブビジネスを設定することができます。競争相手となるソースオブビジネスの特性や、自社ブランド / 製品・サービスとの違いを正確に把握することはマーケティング活動の成功に決定的な影響を与えます。

Competitor(競合 / 収益源)

  1. 同じ製品・サービスカテゴリー内の、直接的な競合ブランド(カテゴリー競合)は何か?
  2. 同様の便益を提供する、製品・サービスカテゴリー外の間接的な競合(ベネフィット競合)は何か? 自社のブランドや、製品・サービスが入手できない場合、既存顧客は何を代替として検討するか?
  3. 競合の競争力となる特性や優位性は何か?
  4. 競合を自社のブランドや、製品・サービスと差別化する機能や属性は何か? 同質化する機能や属性は何か?
  5. 競合の価格は? 保有する市場規模は?
  6. 消費者は競合に対してどのような未充足(または過充足)の不満を抱えている可能性があるのか? 継続に対する懸念や、物足りなさを感じ得るポイントは何か?
  7. 競合はなぜユーザーのロイヤルティーを得ることができるのか? ブランドが提供するベネフィット以外の理由はあるか?
  8. 競合のマーケティング戦略を方向づける、または制限する要因は何か? 事業や投資、経営体制などの公開情報はあるか?

ターゲットとなる消費者や顧客を含む「Customer」は、マーケターによってもっとも単純化されてしまう傾向があります。現代の消費者はそれぞれ固有のライフスタイルを持ち、メディアの消費に時間と場所の制約を受けません。ライフスタイルによる欲求やニーズ、メディア消費行動による接点は購買行動に大きな影響を与えます。断片化された現代市場において、必要とされるのはマーケティングROIを左右するターゲット属性の理解です。

Customer(ターゲット消費者・顧客)

  1. 製品・サービスカテゴリーにおいて、ターゲット消費者が優先的に求める属性は何か?
  2. 自社のブランドや、製品・サービスが保有する属性に対して、ニーズや欲求の要因となるターゲット特性は何か?
  3. ターゲット消費者の購買判断やブランド選択に対する影響要因は何か?
  4. ターゲット消費者による商品やサービスの購入が見込める場所(買い場)はどこか?
  5. 広告に反応し、購買に至る(リスクを許容する)要因となるターゲット特性は何か?
  6. 高いライフタイムバリューの要因となるターゲット特性は何か? ロイヤルティの高いユーザーと、そうでないユーザーを分ける要因は何か?
  7. ターゲット消費者にもっとも効率的な接触が見込めるタッチポイントは何処か?
  8. ターゲット消費者はどのような状況で広告やメッセージを受容するか?

消費者行動に決定的な影響を与えながらも、従来の3Cモデルに含まれていないのが「Community」の概念です。社会的動物として、私たちは本質的にコミュニティ(共同体)への帰属を渇望します。共同体のなかで自身がどう捉えられているか、または自身をどう捉えているかは、購買行動の原因となる欲求を創り出します。また社会における他者の価値観も、遵守すべき社会規範として私たちの行動を大きく左右します。現代の消費者は互いに大きく影響しあい、無数の共同体の影響を受けています。3Cモデルに「Community」という社会的側面を追加することにより、マーケターは市場ダイナミクスをより正確に把握することができるようになります。

Community(共同体 / 社会環境)

  1. ターゲット消費者が帰属(または羨望)する集団や共同体は何か? 集団や共同体と共有する価値観は何か?
  2. ターゲット消費者が関係を重視(または優先)する相手は誰か? その関係をどのように改善(または維持)したいのか?
  3. ターゲット消費者は相手にどのように思われたいのか? どのように思われることを避けたいのか?
  4. 景気による市場全体の購買意欲への影響は?
  5. 製品・サービスカテゴリーの消費に間接的な影響を与える(間接費となる)市場は何か? その動向は?
  6. 世間が関心を持つ社会問題は何か? 新しい文化(社会全体が正とするもの)になりつつある新しい価値観は何か?

現代の消費者は情報や商品を自由に選択し、互いの購買行動に影響を与え合っています。市場ダイナミクスを社会的側面から理解することができなければ、ブランドが持続的な成長を実現することは難しいでしょう。効果的なマーケティング戦略を導き出すためには、社会的側面を含めたモデルを用いて、市場ダイナミクスの理解に取り組みましょう。

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※本記事はDIGIDAYに寄稿したコラムを転載しています。

「ターゲット定義」の正しいプロセス:ROIの最大化を目的とする


ターゲットを「20〜50代の男女」というように、漠然と定義するブリーフを見たことはありますか? 機会損失を恐れるあまり、マーケターが市場全体をターゲットと定義してしまうことは往々にしてあります。しかし、すべての潜在顧客から同等の収益が見込めるわけはありません。ターゲット定義の目的は、市場の限定ではなく、マーケティングROIの最大化です。ターゲットは「商品を購入してもらいたい人」ではなく、「もっとも高いROIが見込める潜在層」と定義されるべきなのです。

✔︎ ソースオブビジネス(収益源)
✔︎ ライフタイムバリュー(顧客生涯価値)
✔︎ レスポンシブネス(反応性)

ターゲットのROIは、ソースオブビジネス(収益源)、ライフタイムバリュー(顧客生涯価値)、そしてレスポンシブネス(反応性)に左右されます。これらの影響要因を無視したターゲットの定義はROIを大きく制限し、ブランドの成長を妨げてしまいます。ブランドの継続的な成長のためには、ROIを左右する要因を理解し、ターゲット定義の正しいプロセスを身につけなければなりません。

①ソースオブビジネス(収益源)

消費者の支出は有限であり、ブランドの収益は何らかの競合からしか得られません。競合との競争環境である「市場」を定義する前に、デモグラフィック属性などでターゲットを定義することは無意味です。ターゲットは必ず、直接的なカテゴリー競合や、間接的なベネフィット競合から獲得可能な潜在顧客であるはずです。

KANTAR TNSのコンバージョンモデルは、競合が収益源となる度合いを可視化します。現在はより洗練されたものにアップデートされていますが、旧モデルの方が理解しやすいのでそちらを紹介します。コンバージョンモデルは、ブランドごとのユーザーと非ユーザーを愛着の度合いによって分類し、離反しやすく獲得可能な潜在顧客層のボリュームを明らかにするものです。獲得可能なユーザーを多く保有する競合を特定し、その特性や潜在的な不満などから、ターゲットの属性を導き出すことができます。

②ライフタイムバリュー(顧客生涯価値)

ターゲットは「もっとも購入が見込める人」と定義されることもあります。しかし、必ずしも初回のトライアル購入だけでマーケティング投資が回収できるわけではありません。継続的なリピートや、クロスセル、アップセルなどが見込める「ライフタイムバリューの高い人」が、より適切なターゲットの定義であると言えるでしょう。

たとえば、「40代男性」を高級車のターゲットとする場合、その人物がなぜ高級車を求めるのかを理解しなければなりません。他者にステータスを誇示するためか、自己イメージを高めるためか。これは、その人物の社会的な役割や、状況によって変化します。ライフタイムバリューの高いターゲットを定義するためには、これらの要因がどのように継続的、または高額な支出につながるかを明らかにする必要があります。
ライフタイムバリューに加えて考慮してもよい点がネットワークバリューです。多くの潜在顧客への影響力を持ち、商品を紹介しやすい人は、ブランドに間接的な収益をもたらします。ネットワークバリューを左右する属性も、同様の考え方で特定することが可能なはずです。

③レスポンシブネス(反応性)

もうひとつ、ターゲットのROIを大きく左右するのは、広告やマーケティング施策に対する反応性です。イノベーションの普及理論(下図はWikiから流用)が示すように、新しいアイデアや技術の採用は、年齢、社会階級、収入、社交性、知性、リスク許容度などの影響を受けます。イノベーターや、アーリーアダプターは比較的新しいバリュープロポジションを受け入れ易く、広告やマーケティング施策に対する反応性が高いのです。

アーリーマジョリティ、そしてレイトマジョリティに分類される人は反応性が低く、新しい考えが一般に浸透しはじめたあとから採用を行います。新しいバリュープロポジションには適していませんが、すでにトレンドとなっているものを訴求する場合には、ターゲットとなるかもしれません。

ROIの高いターゲットの属性を特定する質問

– 現在何を購入(または使用)していて、なぜ獲得が見込めるのか?
– なぜ商品を購入することができるのか?
– このような社会的役割や状況によって、継続的(または高額な)支出が見込めるのか?
– なぜ新しい考えを採用しやすいのか?

私たちがターゲットを定義するうえで問うべき質問は、「誰に商品を買ってもらいたいか」ではありません。ソースオブビジネス、ライフタイムバリュー、レスポンシブネスの観点から「なぜ高いROIが見込めるのか」ということを問うべきです。ターゲットの定義は、マーケティングプランのなかでもっとも重要かつ難しい部分であり、曖昧な表現は許されません。限られた資源でブランドの継続的な成長を実現するためには、ROIに対する影響要因を正しく理解し、適切なターゲットの属性を問い続ける必要があります。

※本記事はDIGIDAYに寄稿したコラムを転載しています。

「消費者ベネフィット」の定義に役立つ、6つの質問:ベネフィットセリング習得の第一歩

80年代以降、製品機能を中心としたマーケティングコミュニケーションは、効果的ではないとされてきました。「フィーチャーセリング」呼ばれるこの手法は、市場規模や顧客関係に制約をもたらし、ブランドの脆弱性をも生み出します。しかし、日本ではいまだ多くのブランドが、フィーチャーセリングの枠から抜け出せていないように思えます。

フィーチャーセリングが効果的でない理由は3つあります。まず、消費者が自身の機能的ニーズを自覚していないことが往々にしてあります。製品機能だけでは、享受できるベネフィットを理解することが難しいため、フィーチャーセリングは市場のごく一部に対する訴求力しか持ちません。次に、製品機能は一時的な機能的ニーズは満たしますが、消費者に強い印象与え、長期的な情緒的関係性を築くことには適していません。情緒的関係性がなければ、持続的成長をもたらすブランドロイヤルティを育むことが難しくなります。最後に、製品機能は競合に真似られ、同質化をされてしまう恐れがあります。機能を強みとして訴求する事は、同時に弱点を露呈してしまうことでもあるのです。
消費者の購買意欲を掻き立てるためには、マーケターが売りたいと思う製品の機能ではなく、消費者が求めるベネフィットを伝えなければなりません。ベネフィットは、消費者の視点から得られる状況改善を意味し、製品機能と表裏一体です。製品機能に立脚するベネフィットは、ブランドの定義には欠かせません。
 
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ベネフィットの特定には、活用できる分類法がいくつかあります。フィリップ・コトラーのブランドベネフィットラダーでは、情緒的ベネフィットと社会的ベネフィットが機能のうえに位置しています。デイヴィット・アーカーは情緒と社会に加え、自己表現ベネフィットに言及しています。

情緒的ベネフィット

このブランドを購入 / 使用すると、○○を感じる

製品の購入や使用の際に、ブランドが消費者の気持ちに与える変化が情緒的ベネフィットです。情緒的ベネフィットはより豊かなブランド体験を通じて、消費者に強い印象を残し、ブランドとの長期的な関係構築を可能にします。

社会的ベネフィット

このブランドを購入 / 使用すると、○○とのつながりを感じる

人間は社会的動物として、他人に認められ、集団に帰属することを切望します。ブランドがどのようにして消費者と他者の関係性を改善するのかが社会的ベネフィットです。

自己表現ベネフィット

このブランドを購入 / 使用する私は、○○である

自己表現ベネフィットは消費者の自己概念を強化するものです。ブランドは消費者が自己表現を行う媒介物として、消費者の自己イメージの確認と強化を支援することができるのです。

さらに、スタンフォード大学の心理学教授、B.J. フォッグによる「コアモチベーター」と呼ばれる興味深いモデルがあります。このモデルでは、人間の行動原理を、感覚、帰属、期待という3つの普遍的区分に分類し、各区分には、ポジティブとネガティブな側面が設けてあります。消費者行動の背景にある理由がベネフィットであるため、フォッグの理論もベネフィットの定義に活用できるはずです。

感覚的モチベーター (快楽 / 苦痛)

このブランドを購入 / 使用すると、<快楽>が得られる / <苦痛>が軽減できる

情緒的ベネフィットは認知に基づくものですが、感覚的モチベーターには生理的な欲求に基づきます。衝動的な購買の多くは、実際に一時的快楽を得たり、苦痛を軽減 / 解消するために行われています。

期待的モチベーター (希望 / 不安)

このブランドを購入 / 使用すると、<希望>が持てる / <恐怖>を払拭できる

消費者が購入する商品やサービスのなかには、購買時にその機能を発揮しないものがあり、将来的に何らかの改善につながる期待から購入されています。消費者は、将来への希望や、恐怖や不安の払拭というベネフィットを購入しているのです。

帰属モチベーター (承認 / 疎外)

このブランドを購入 / 使用すると、周りに<承認>される / <疎外>されない

帰属モチベーターは社会的ベネフィットとほぼ同義です。承認欲求と疎外感の回避は、消費者行動のもっとも強力な動機になり得ます。ベネフィットを定義する際には、このような社会的、帰属的側面を考慮するべきでしょう。
 
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上記の分類法を活用し、ベネフィットの定義に役立つ、6つの質問を用意しました:

  1. 消費者はどんな気持ちになりたいのか? どんな気持ちになりたくないのか?
  2. 消費者は誰に認められたいのか? どう見られたいのか? どう見られたくないのか?
  3. 消費者はどんな人物でありたいのか? どんな人物でありたくないのか?
  4. 消費者何に楽しみを感じるのか? 何に不安を感じるのか?
  5. 消費者はどんな快楽を得たいのか? どんな苦痛を解消したいのか?
  6. 製品機能はどのように競合との差別化を実現し、ベネフィットの提供を可能にするのか?

購入時にベネフィットを認識してもらえれば、購入率は上がります。ベネフィットを軸としたコミュニケーションは、「買うときの気持ち」からはじめ、現状へとさかのぼるよう設計しましょう。パーセプションフローモデルに当てはめると、以下のように形になります。最新のテンプレートがCoup Marketingのサイトからダウンロードできるので、ぜひ活用してみてください。
 
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ベネフィットは本質的にフィーチャーを消費者視点の価値に言い換えたものです。しかし、機能的ニーズに限定されず、人の普遍的な欲求を満たすものであるため、市場創造やカテゴリー成長に貢献します。何十年もその効果に疑問持ちながら、フィーチャーセリングの思考に捕らわれている場合ではありません。マーケティングが社会の発展に貢献するためには、私たち一人ひとりが1日も早くベネフィットセリングを習得する必要があるのです。

※本記事はDIGIDAYに寄稿したコラムを転載しています。

「ブリーフィング」技術習得のため、理解すべき11の項目:ブリーフの書き方の基本

効果的なマーケティングは、明確なブリーフからはじまります。ブリーフィングは、ビジネスを左右するマーケティングの決め手となる、マーケターのもっとも重要な仕事のひとつです。しかし、ブリーフィングの文化に乏しい日本では、十分なスキルを持つマーケターが少なく、戦略が曖昧なオリエンばかりが行われています。

ブリーフに正しい形式はありません。しかし、必要項目を網羅した汎用性の高いフォーマットを作ることはできます。今回は、WPPグループの主要エージェンシーのブリーフフォーマットから、共通する構造を抽出してみました。マーケターがこれらの質問に答えられなければ、エージェンシーから精度の高い提案を期待することはできません。エージェンシーもまた、マーケティング戦略やプランの改善に貢献するために、効果的なブリーフの構造を理解する必要があります。

ビジネス課題・機会

いかなるビジネスドキュメントも、まずは目的を定義することからはじめます。ブリーフは、相手が目的と背景を十分に理解できるよう、マーケティング施策が対処すべきビジネス課題や、機会を明確にすることが重要です。

  • マーケティング施策の実施が必要とされる理由は何か? 対処すべきビジネスの課題や、機会は何か?
  • 対処すべき課題や機会と消費者、市場動向、競合、現行のマーケティング施策の関係は何か?

ビジネスゴール

マーケティングROIを向上させ、ビジネスの推進に貢献するためには、定量的なゴールを設定する必要があります。ゴールはマーケティング施策と収益成長の因果関係を描き、解釈の余地がないものであるべきです。

  • マーケティング施策に求められる収益はいくらか? ROIは?
  • マーケティング施策はどのように収益に影響を与えるのか?(トライアル購入、リピート購入、購入頻度、購入量など…)
  • 効果をどのように測定するのか?

予算と期間

予算と期間はマーケティング戦略を大きく左右するため、プランニングに先立って定義する必要があります。的外れな提案や、無駄な工数を省くため、マーケターはビジネスゴールの達成に適切な予算と期間を算出できなければなりません。

  • マーケティング施策に割り当てれる予算は? その額がビジネスゴールに対して適切である理由は?
  • マーケティング活動に割り当てられる期間は? 計画、実行、効果測定など、各マイルストーンの期限と期間は?

収益源となる競合

企業にとって、唯一の収益源は競合です。有限な消費者の資金は、必ずどこからか獲得しなければなりません。収益源は、同じカテゴリーの直接競合である場合も、まったく異なるカテゴリーの間接競合である場合もあります。競合は、ターゲット消費者の決定要因となる、マーケティング戦略の起点です。競合の選定には、収益源として十分な市場規模と支出額があることがポイントとなります。

  • 収益源となる競合は何か? 同じカテゴリーの直接競合か? カテゴリーの異なる間接競合か?
  • 競合の価格と市場規模は? 収益源として十分か?

ターゲット消費者

ターゲットは、マーケティング施策に反応し、競合から獲得可能な消費者を指します。ターゲットに適したコミュニケーションを設計するためには、デモグラフィック属性だけでなく、潜在的な競合への不満、求めるベネフィットやニーズなど含めて定義する必要があります。

  • 影響を与えたいターゲット消費者は誰か? どのような属性を持っているか?
  • ターゲットが競合を選ぶ理由は何か? 競合に対する不満、又は物足りなさを感じるポイントは何か?
  • 購買判断を行うのは誰か? 購入者は誰か? 使用者は誰か? これらは同一人物か、別人か?
  • ターゲット消費者が解決したい問題は何か? 商品やサービスの購入時に何を期待するのか?
  • ターゲット消費者は自分自身がどうありたいと思うのか? 社会的な役割は何なのか? 他人からどう思われたいのか?
  • ターゲット消費者がお金と時間を使う対象の優先順位は何か?
  • ターゲット消費者の商品やサービスの購入を妨げているものは何か?

属性と機能

ブランドの選択基準を定める属性と、ベネフィットの享受を可能にする機能は、消費者の購買行動を大きく左右します。独自性の強い属性や機能が消費者に求められることで、競合から収益を獲得することが可能になります。

  • 消費者が商品やサービスに求める属性は何か?
  • ベネフィットの提供を可能にする機能は何か?
  • 競合に対して独自性のある属性や機能は何か?
  • 競合が、自社に対して独自性のある属性や機能は何か?

行動変容・態度変容

マーケティング施策がその目的を達成するためには、ターゲット消費者の行動や態度(ブランドに対する気持ち)を変化させる必要があります。期待する変化を正確に伝えるためには、マーケティング施策による影響を受ける前と、受けた後の状態を定義すべきです。消費者の行動と態度は、パーセプション(知覚・認識)によって左右されるため、パーセプションフロー・モデリングという管理手法が効果的です。

  • 消費者の現状の態度と行動は何か? マーケティング施策の影響受ける前のパーセプションは何か?
  • 望ましい消費者の態度と行動は何か? マーケティング施策の影響受けた後のパーセプションは何か?
  • 行動と態度の変化はどのように測定するのか? 変化を示す指標は何か?

刺激・メッセージ

消費者の行動や態度の変化を促すには、購買行動の段階に合わせた刺激やメッセージが必要になります。直接的に情報を伝えるのではなく、気づきを与えることが効果的です。

  • 行動や態度の変化を実現するために、どのような刺激・メッセージが必要か? 問題提起か? ベネフィットか? 属性か機能か? 具体的な効果か? 使用方法か? RTB(信頼できる理由)か? リピート購入のメリットか? 離反のデメリットか?
  • 直接的に伝えるのではなく、気づきを与えるために適切な刺激やメッセージは何か?
  • 他のマーケティング施策や、刺激・メッセージの影響・兼ね合いをどのように考慮すべきか?

トーン&マナー

消費者の共感を得るためには、ブランド独自の人格や価値観を伝えなければいけません。このような人間的な特徴を伝えるには、一貫性のあるトーン&マナー必要になります。ターゲット消費者の自己概念や価値観を理解することで、ブランドは自己表現に最適なトーン&マナーを見つけることができます。

  • ターゲット消費者はどのような人とつながりを持ちたいと思うのか?
  • その人の人格はどのような特徴を持っているか?(現代的、伝統的、楽観的、真面目、先進的、保守的、友好的など)
  • ブランドはどのような理想や価値観を重んじるべきなのか?
  • ターゲット消費者に疎外感を感じさせないためには、どのようなコミュニケーションを行うべきか?

メディア・チャネル

マーケティングプランはメディアやチャネルを起点とせず、コミュニケーションに合わせて選定されるべきです。目的のコミュニケーションを効率的かつ効果的に実現し、データの収集や測定が可能なメディアやチャネルを選ぶことで、購買行動全体の管理と最適化行うことができます。

  • ターゲット消費者はどのような状況で、刺激やメッセージを受容するのか? 態度や行動を変化させるためにもっとも効果的なメディアやチャネルは何か?
  • どのメディアやチャネルがもっとも安価に刺激やメッセージをターゲットに届けられるか?
  • データ収集や効果測定が可能なメディアやチャネルは何か?

必須要件

ブリーフに必須要件が少ないに越した事はありません。しかし、プランニングの前には必ずマーケティング施策に関するすべての必須条件(技術的要件、法的要件、文化的要件など)を網羅しなければなりません。

  • マーケティング施策のプランニングと実行において、検討しなければならない要件は何か?

マーケターは決して、ブリーフに求められるプロフェッショナリズムを過小評価してはなりません。優れたブリーフがマーケティング施策の成功を約束する訳ではありませんが、粗末なブリーフは大抵失敗をもたらします。ブリーフの精度が低ければ、見当違いな提案や、主観的なフィードバックが発生し、貴重な時間と資金のロスにつながります。ブリーフは、エージェンシーに指示を伝えるだけでなく、マーケターの思考整理にも大きく役立ちます。ブリーフによって固められた仮説は、ラーニングとなりマーケティング組織の強化につながるのです。ブリーフィングの技術を習得は、マーケティングの成功を決定づけるものになるでしょう。

※本記事はDIGIDAYに寄稿したコラムを転載しています。

消費者が意義と共感を感じる、ブランドパーパスの作り方


私は学生の頃に「広告は社会変革の道具である」と教えられました。社会に大きな影響を及ぼす広告は、モノを売り、収益を得るだけでなく、社会を豊かにする役割を持つべきだというのです。当時の私は、先生の言葉を十分に理解することができませんでした。しかし、20年経ったいまは、その言葉が私に働く意義を与え続けてくれています。

人は自身の存在に意義を求めます。意義は私たちの行動を正当化し、後押しとなるモチベーションを与えてくれるのです。だからこそ、私たちは意義のあるブランドを好むのです。
消費者が意義と共感を感じるブランドパーパス(ブランドの存在目的)は、ブランドの成長を加速させることがわかっています。P&GのCMOを務めたジム・ステンゲル氏は、著書の『GROW:本当のブランド理念について語ろう』のなかで、パーパスを持つブランドは、他社よりも3倍の成長を実現すると述べています。ハバス(HAVAS)のミーニングフル・ブランド(Meaningful Brands)調査からは、ブランドパーパスが、購入意向や価格プレミアムウォレットシェアなどを高めることがわかります。もはやブランドの成長と、パーパスを切り離して考えることができません。成長に貢献するブランドパーパスは、一体どのようにして作られるのでしょうか?

社会規範と他者貢献

人は社会に属し、他者とともに生活をする社会的動物です。私たちは社会の一員として認められるために、周りからの期待に応えようとします。社会全体に共通する「社会規範」は、個人が自己利益よりも「他者貢献」を優先することを求めます。自分自身よりも、属する社会を優先することは、私たちの帰属欲求、承認欲求、そして自己実現欲求をも満たしてくれます。この社会規範に基づく他者貢献こそが、私たちに存在意義を実感させる、ブランドパーパスの本質なのです。


社会と個人をつなぐ社会規範

共同体感覚

他者貢献という軸だけでは、必ずしも消費者の共感を得ることはできません。人は社会のなかでも、家族や組織、国家など、さまざまな共同体に属し、それぞれへの貢献を求められます。「共同体感覚」と呼ばれる、特定の共同体への貢献意志は、人によって大きく異なるものです。そしてこの共同体感覚は、外的な影響や、状況にも大きく左右されます。
私は以前、売上の一部を途上国に寄付する、コーズマーケティング施策に参加しました。開始から数年間は社会全体に広く共感され、大きな売上の増加を実現しました。しかし、東北地方の震災を機に「被災地を優先すべき」という意見が増え、社会の共感を失ってしまったのです。消費者が参加でき、寄付に加えた10年間の自立支援を含む、正当性の高いプログラムであったにも関わらず、共同体感覚の急激な変化には対応することができなかったのです。


支援を歓迎するマリ共和国、チャアラ村の子供たち

ブランドパーパスは、必ずしも社会全体や人類に貢献するようなものである必要はありません。むしろ、家族のような小さな共同体への貢献が、はるかに効果的であることも多いでしょう。共同体感覚に基づくブランドパーパスは、ブランドと消費者を強い共感で結びます。消費者が大切に想い、強い帰属意識を感じる共同体を把握することは、ブランドパーパスの作成に欠かせないのです。


異なる共同体感覚の範囲

ブランドパーパスは、消費者と同じ共同体への参加を示すものです。社会的パーパスを掲げるブランドは、消費者と共通の共同体への貢献意識を持たなければなりません。そして、そのすべての行動に一貫性を持たせる必要があるのです。

嘘偽りのなさ

消費者は、ブランドの偽善を簡単に見抜きます。ブランドの外的なメッセージや体験が、企業組織としての内的な文化や行動と異なれば、ブランドパーパスは崩壊します。ブランドパーパスは、ブランドという無形な存在ではなく、その運営を行う人々の理念を表すものです。消費者との共同体には、ブランドが守るべき社会規範が存在し、規範に反するブランドは共同体から除外されます。ブランドパーパスは、決してマーケティングメッセージではなく、組織全体の行動指針となるものです。正しく定義することができれば、組織のなかにもたくさんのメリットが生まれます。

  • 組織の意思決定の指針となる
  • 共感する従業員を引き寄せる
  • 方向性を定め、協働を促す
  • 競合に真似できない文化を生む
  • 組織やブランドの強い推奨を生む

ブランドパーパスを掲げる組織は、その判断や行動のすべてを一貫性が求められます。今後ブランドには、ますます透明性が求められ、その存続には誰もが信じて疑わない、嘘偽りのないブランドパーパスが必要となるはずです。これは決して簡単なことではありません。しかし、広告やマーケティングに従事する私たちがブランドパーパスを本質的に理解し、自ら体現できれば、ブランドの持続性と、より豊かな社会の発展を実現することができるはずです。

※本記事はDIGIDAYに寄稿したコラムを転載しています。

間接競合の選び方:ゼロサムゲームから脱却し、市場創造を実現する

「同じベネフィットを提供する商品はすべて競合になり得る」。マーケティングに携わる方であれば、一度はこのような言葉を聞いたことがあるかと思います。競合の正しい定義は、ブランドの成長に欠かせません。しかし、多くのブランドは直接競合とのシェア争いという不毛な消耗戦に陥り、自らの成長を制限しています。

競合は単なる競争相手ではなく、貴重な収益源(ソースオブビジネス)でもあります。消費者の資金は有限であり、新しい商品を購入するために、必ずほかの何かを諦めなければなりません。消費者はジョブの解決策(ベネフィット)を求めて購買行動を起こすため、同じベネフィットを持つ、すべての製品やサービスは収益源となる得るのです。

本題に入る前に、少し競合について整理をしましょう。ブランドは優位性を発揮する市場のなかでしか成長することができません。市場は競合との競争環境を意味し、競合はブランドの収益源となります。マーケティングは市場創造の活動と定義されるため、「新たな収益源となる競合との競争関係を創る活動」とも定義できるはずです。製品カテゴリーに限定されない間接競合を収益源とし、新しい市場を創り続けることこそが、マーケティングの本質なのです。

では、収益源となる間接競合はどのように定義すれば良いのでしょうか? 正しい競合の選定には、3つのポイントがあります。

  1. 同じジョブの解決を担っている
  2. より多くの価値を認識してもらえる
  3. 十分な収益が見込める

同じジョブの解決を担っている

購買行動の裏には必ず消費者のジョブが存在しています。ジョブに機能的側面と、ベネフィットが満たす情緒的側面があります。情緒的ジョブはさらに自己と社会に分類され、欲求段階説の上位と合致しているとも言えます。

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機能的ジョブは消費者の状況ごとに異なり、その競合範囲は同カテゴリーか、せいぜい隣接カテゴリーに限定されます。その一方、情緒的ジョブはいくつかの普遍的な感情に紐付くため、広い競合範囲を持っています。スタンフォード大学のB.J.フォッグ教授は、人間の行動原理を6つの根本的な動機(コアモチベーター)に分類しています。これらは誰にでも共通する、情緒的ジョブを示すものだと言えるでしょう。

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情緒的ジョブに基づく競合は、消費者の心のなかにしか存在していません。競合関係は常に変化しているため、マーケターは常に消費者との直接的な対話を心がけなければならないのです。消費者との対話から、間接競合を導き出すには、以下のような質問が効果的です。

  • あなたが<商品>を試す前に、ほかにどのような解決策を検討しましたか?
  • あなたが実際に試したほかの解決策は何ですか?
  • あなたが試したほかの解決策について、何が気に入らなかったのですか?
    または、何が気に入ったのですか?
  • <商品>が利用できなくなった場合は、代わりに何を利用するでしょうか?
  • あなたが知っている人が、<商品>以外に試した解決策は何ですか?

より多くの価値を認識してもらえる

消費者の購買行動を切り替えてもらうためには、現状に対する不満を抱いてもらう必要があります。現状と理想の隔たり(バリューギャップ)が広いほど、人は変化とコストを受け入れ易くなるのです。しかし、どれだけ優れた製品力を持っていても、消費者に選ばれないということは往々にしてあります。購買行動の切り替えには、消費者自身が切り替えに伴うリスクや手間以上の価値を認識する必要があります。

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競合はジョブの解決に不十分である、または過剰であること。または競合では解決できないより根本的な問題が存在すること。競合やジョブに対する消費者の認識を変えることで、現状への不満を強めることができます。さらに、情緒的ジョブの達成を描くことで、理想を高めることもできます。開かれたバリューギャップを埋めるために必要な解決策として、ブランドが想起されれば、ブランドスイッチは自ずと起きるはずです。

十分な収益が見込める

より低価格な相手や、小さな市場しか持たない競合と戦っても、十分な収益は見込めません。競合を選ぶうえで欠かせないのが収益見込(レベニューポテンシャル)です。同じジョブの解決をより低価格で行う相手には、こちらが収益源となってしまいます。情緒的ジョブの競合範囲には、より高額な相手がいるはずです。そのカテゴリー全体に十分な市場規模が存在し、バリューギャップを広げる見込みがあれば、理想的な競合と言えるでしょう。

ゼロサムゲームからの脱却

直接競合への流出を防ぐことはとても重要です。しかし、マーケットシェアを指標とする市場浸透(マーケットペネトレーション)は、営業とセールスプロモーションを主戦場としています。新しい市場の創造よりも、営業商談への貢献などが求められた場合、その企業は不毛なゼロサムゲームに陥っている可能性があります。

マーケティングは自らの手で市場を切り開く力です。競争の激しい日本市場において、新しい市場を創造することできなければ、持続的な成長は不可能だと言えるでしょう。さあ、あなたは「競合」をどう定義しますか? ブランドの成長が、その答えにかかっています。

※本記事はDIGIDAYに寄稿したコラムを転載しています。

データドリブンIMC:主観的なマーケティング管理からの脱却と、継続的な成長の実現

私たちマーケティング実務者の仕事は、上司やクライアントなどの管理者を満足させることではありません。曖昧なブリーフやフィードバックは、仕事量の肥大化と、士気の低下を招きます。マーケティングの機能不全は、決して実務者の能力不足ではなく、主観的なマーケティング管理に起因しているのです。組織の強化を望むマーケティング管理者は、まず自らの管理手法を見直すべきではないでしょうか。

ブリーフ、フィードバック、レビュー

マーケティング管理業務は、目的を明確化するブリーフ、ブリーフと提案内容の整合性を確認するフィードバック、そして業務プロセスを改善するためのレビューに分類されます。継続的なブランドや事業の成長に欠かせないこれらの業務には、客観性が求められ、管理者の個人的な主観が入る余地はありません。

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管理者と実務者の協働には、目的の明確化と共通理解が欠かせません。良いブリーフは、目的に対する解釈の余地をなくし、客観的なフィードバックやレビューを可能にします。ブリーフにはさまざまなフォーマットがありますが、マーケティング目的の曖昧性をなくすためには5つの要素を含めると良いでしょう。ターゲットの属性、起こしたい態度変容、態度変容を起こす知覚刺激、成果指標と目標値、そして、予算と時間の制限です。

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これらの要素が定義されていれば、(検証すべき仮説を含む)提案に対する客観的なフィードバックが可能になります。そもそもフィードバックとは、ブリーフと提案内容の整合性を確認し、相違点を実務者に伝え戻す作業です。管理者の個人的な意見や好みを述べることではなく、目前の仕事に熱中する実務者が大局的な目的を見失わないために、客観的な視点を提供することなのです。

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マーケティング管理の目的は、継続的な事業の成長を実現することです。そのためには、業務プロセスの改善を可能にする実行施策のレビューが欠かせません。レビューを業務プロセスの改善に役立てるためには、効果測定と目標達成度の評価だけでなく、仮説検証によるラーニング、成功要因の分析による再現方法、そして失敗要因の分析による防止・回避方法の確立が必要となります。

主観的判断や属人性な業務プロセスは、マーケティングの再現性を阻み、成長に向けた管理を困難にします。実務者の能力に依存した成功や失敗は、管理手法の不備であり、再現方法や防止・回避方法を必要としているのです。米空軍に採用されているSTEALTHデブリーフィングという手法では、チーム全員が階級や個人としての主観を捨て、プロセスの不備と改善方法を議論することで、将来のミッションを成功に導く業務プロセスを構築することができるのです。

組織全体の連携を実現するIMCプラン

客観的なブリーフ、フィードバック、レビューが行われても、そのプロセスが施策ごとに分断されていては、部分最適に陥ってしまいます。マーケティングの全体像と施策間の関連性を描くIMC(Integrated Marketing Communications:統合型マーケティング・コミュニケーション)プランがなければ、組織全体の連携を実現することはできません。上記のブリーフに含まれるマーケティング目的の要素を、態度変容の流れを描く※パーセプションフローを用いて、購買行動の段階ごとに定義すれば、IMCプランの骨子が出来上がります。

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※パーセプションフロー:Coup Marketing Company 音部大輔氏考案のフレームワーク

しかし、自然な態度変容の流れを描き、段階ごとのマーケティング目的を定義することは決して簡単な作業ではありません。主観的に描かれたIMCプランは、主観的なマーケティング管理と同様、機能することはないのです。精度の高いIMCプランを作成するためには、既存顧客が購入に至った態度変容プロセスの分析が欠かせません。

消費者データからIMCプランの逆行分析を行う「データドリブンIMC」では、実在する態度変容プロセスからマーケティングの全体像を可視化します。自然発生している態度変容をマーケティングコミュニケーションで再現できるよう改良を加えれば、短期間でIMCプランの作成が可能になります。

目的を明確化するブリーフ、ブリーフと提案内容の整合性を確認するフィードバック、業務プロセスを改善するレビュー、そして、組織全体の連携を実現するIMCプラン。これらの客観的なマーケティング管理業務の実行により、組織全体に責任と規律が生まれ、継続的な改善を重視する文化が根付きます。マーケティング管理者は、組織の継続的な成長の実現に向けて、直ちに主観的な管理手法を見直すべきなのです。

※本記事はDIGIDAYに寄稿したコラムを転載しています。

次なる大変革、「マス1to1マーケティング」を実現せよ:デジタル業界

広告主はいまのデジタル広告の効果に満足していません。消費者の個体識別データの充実により、マーケターは広告ROIを可視化することができるようになりました。しかし、皮肉にもデータによってその非効率性が明らかとなったのはデジタル広告であり、昨年はP&Gのマーク・プリチャード氏に、業界全体の未熟さを指摘されてしまいました。P&Gは、デジタル広告のターゲティング手法を見直し、マス的なアプローチを採用することで、デジタル広告費の削減と、ROIの改善を実現しています。

より広く、無差別的に配信され、ますます侵入的になるデジタル広告に、消費者は強い不快感を感じ、その視聴を拒み続けています。このままでは、消費者データが十分に活用されることはなく、デジタル広告が高い効果を発揮することはありません。

一方で、データの充実は、個々のカスタマージャーニーの分析や、一対一でのエンゲージメント(反応の喚起)を可能にしています。それぞれのジャーニーに合わせて、特定の人物や状況に最適化されたコミュニケーションが、マス広告よりも効果的であることは間違いありません。しかし現状では、私たちのマーケティングプランの精度や、マーケティング業務の効率がデータやテクノロジーの進歩に追いついていないのです。

プリチャード氏は、デジタル広告のパーソナライゼーションとスケールの両立を「マス1to1マーケティング」と称し、ブランドマーケティングの次なる大変革であると述べています。その実現に向けて、私たちは効果測定に真剣に取り組み、精度向上と効率改善を追求する必要があるのです。

マス1to1マーケティングの実現には、マーケティング、メディア、クリエイティブ、そしてテクノロジーの提供者が一丸となり、その知識やスキルをアップデートしなければなりません。マーケティングの精度を向上するために、マーケターは、消費者が求める情緒的なジョブを満たすコミュニケーションを設計し、メディアエージェンシーは広告が受容され、その価値が最大化されるモーメントをターゲティングしなければなりません。マーケティング業務の効率化には、クリエイティブエージェンシーが継続的に使い続けられるエバーグリーンコンテンツを開発し、テクノロジーベンダーがオペレーション業務の自動化を行う必要があります。

情緒的なジョブを満たすコミュニケーション

マーケティングコミュニケーションは、主にデモグラフィック属性に基づくターゲットのペルソナから設計されます。マスマーケティングの時代では、セグメントごとの消費者の性質が似ていたため、デモグラフィック属性がマーケティング効果に決定的な影響を与えました。しかし、現在は個々のライフスタイルが大きく異なり、消費者のニーズとデモグラフィック属性の相関性が無くなりつつあるのです。

マーケティングコミュニケーションは、高いLTV(生涯顧客価値)により、十分なROIが見込める人物に向けて設計する必要があります。高いLTVを生み出すブランドロイヤルティは、消費者が求めるジョブへの満足から生まれます。ジョブには機能的な側面と、情緒的な側面があり、現代の消費者は機能的ジョブを満たす豊富な選択肢を持っています。つまり、情緒的なジョブを満たすことこそが、確実にロイヤルティを獲得する方法であり、マーケティングコミュニケーションの設計に欠かせないものなのです。

私たちが商品を購入する際は、その商品が如何に自身のイメージに合うかということだけでなく、その購入・所有・使用に対する他者の影響を考慮します。これらの影響要因は、自己概念と社会的自己の一貫性の維持、または自己承認や社会的承認の獲得という4つの情緒的ジョブに分類することができます。この情緒的ジョブの分類は万能かつ網羅的ではないかもしれません。しかし、大半のコミュニケーション設計の起点として活用することができるはずです。

マーケターは、情緒的ジョブに応えるコミュニケーションを設計するために無関係なデモグラフィック属性に基づくペルソナを捨て、情緒的ジョブの基となる不安や不満、そして、競合商品がジョブを満たしていない理由を明文化すべきです。現代のマーケターには、情緒的なジョブに応じた消費者の識別、適切なメッセージの配信と、心理的な態度変容の測定を行う能力が求められます。しかし、まず学ばなければならないのは、情緒的なジョブに応えるコミュニケーションの設計です。

モーメントのターゲティング

デジタル広告の視聴に対する主導権は消費者が握っているため、適切な状況で接触をしなければ、受け入れられることはありません。消費者が広告を受容し、その情報に価値を感じる状況を「モーメント」と言います。モーメントは時間軸におけるタイミングではなく、広告がその効果をもっとも発揮する状況を示します。

膨大な消費者データを保有し、その解析能力を持つメディアエージェンシーは、広告接触に適したモーメントを発見、または予測できなければなりません。マーケターが提供するコミュニケーション設計を、アドレス可能なデータやKPIに変換するだけでなく、データのなかから、モーメントという広告効果を最大化する機会を見つけ出す必要があるのです。

エバーグリーンコンテンツの開発

消費者のモーメントに合わせて配信されるデジタル広告は、ここに最適化されたタイミングで配信されるため、一斉に潜在顧客にリーチすることはありません。そのため、コンテンツの開発費を含めたROIの回収には、ある程度の期間を要します。クリエイティブエージェンシーは、短期間で消耗される広告クリエイティブではなく、恒常的な配信が可能なエバーグリーンコンテンツの開発を行わなければなりません。

エバーグリーンコンテンツのリーチは極めて限定的なものですが、消費者の情緒的ジョブを満たすコミュニケーションと、モーメントのターゲティングが行われていれば、広いリーチは不要なはずです。また、その有効性とROIは、PDCAサイクルの頻度と、配信期間に応じて向上し続けます。エバーグリーンコンテンツに投資することにより、ブランドは枯渇することのない資源を生み出すことができるのです。クリエイティブエージェンシーは、モーメントにおける消費者の心理状況に適したコンテンツの開発と、コンテンツごとのROIや損益分岐点の計算を行えるようにならなければなりません。

オペレーション業務の自動化

デジタル広告の効率化を阻むのは、高い精度の追求に伴う、オペレーション業務の肥大化です。企画立案、施策実施、効果測定におけるルーチンワークの多くは、すでにテクノロジーによる自動化が可能です。また、特化型人工知能の発展により、業務の自動化だけでなく飛躍的な高速化が可能になりつつあります。

問題は、定量化がされていない業務をテクノロジーが自動化できないことです。テクノロジーベンダーは、オペレーション業務を網羅的に把握し、業務プロセスの定量化と、指標やデータ構造の統一化をサポートしなければなりません。自動化により、オペレーション上の障害がなくなれば、パーソナライゼーションとスケールの両立が可能となり、マス1to1マーケティングが現実のものとなるのです。

※本記事はDIGIDAYに寄稿したコラムを転載しています。

2018年、 デジタル広告に求められる3つの「質」:コンテキスト、コンテンツ、そしてコミュニケーション

2017年はP&Gのマーク・プリチャード氏の啓発により、業界全体が透明性の改善に向けて動き出しました。その結果、P&Gではメディア投資の効率化が進み、1億ドル以上(マーケティング予算のおよそ2%)を削減したにも関わらず、売上高の増加を報告しています。効率化の動きは今後も続き、2018年は日本でも増加するデジタル広告予算が広く見直されるでしょう。

効果の低いメディア投資を削減しても、効率化の限界はすぐに訪れます。これから先、私たちはデジタル広告の質を大きく向上させなければなりません。しかし、生活者が視聴の主導権を握るデジタル広告には、従来のマス広告とは異なる「質」の考え方が必要となります。

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生活者の状況というコンテクストを無視した広告が、受け入れられることはありません。広告にコンテンツとしての価値がなければ、十分なアテンションを獲得する事はないでしょう。そしてコミュニケーションが現在のブランドに対する認識を捉えなければ、購買に至る態度変容を起こす事はありません。

受け入れられるためのコンテクスト

一人ひとりの状況に合わせて、広告をパーソナライズする事はまだ現実的ではありません。そのため、Facebookは広告主のために、メディア消費の状況を3つに分類しています。生活者が特定の情報を積極的に求め、「前のめり」になっている状況を”Lean Forward”、移動中でSnackable(つまみ食い可能)なコンテンツを消費している状況は”On the Go”、そして、目の前に流れるコンテンツを消極的に消費する状況を”Lean Back”と言います。それぞれの状況では、広告に対する受容率や、受容される広告の種類が異なります。

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アテンションを獲得するコンテンツ

生活者の状況うまく捉えても、広告の内容に価値がなければ、視聴者のアテンション(注目)を獲得することはできません。広告の内容を評価する4-Dモデルは、アテンションの獲得・維持に必要な属性を新規性、有用性、好感性、そしてユーモアに分類しています。調査からは、アテンションの獲得にこれらの要素のどれかが必ず必要であり、ユーモア単体では効果が無いこともわかっています。

態度変容を起こすコミュニケーション

ブランドのアイデンティティーを確立することが主な役割であるテレビ広告とは異なり、デジタル広告にはカスタマージャーニーの段階ごとにさまざまな役割が存在します。高精度なターゲティングを活かし、特定のセグメントの需要を喚起すること、またはインサイトに適した購買口実を提供すること。購入意向を持つ見込み顧客を刈り取ること、そして既存顧客にリピート購入を促すこと。

ジャーニーの段階ごとに生活者とブランドの距離は異なり、適したコミュニケーションも異なります。態度変容を軸とした設計が無ければ、せっかく視聴された広告も、その効果を発揮する事はありません。

コンテクスト、コンテンツ、そしてコミュニケーションの質を改善することで、デジタル広告は生活者に受け入れられ、そのアテンションを獲得し、購買行動を起こすことができるようになるのです。そして、その効果は一時的に改善するだけでなく、粒度の細かい仮説検証により、継続的に改善が可能になるのです。デジタル広告予算は2018年以降も増え続け、テレビとの相乗効果の実現が、今後多くの広告主の課題となります。質だけでなくスケールの大きなテレビ広告を支えるために、デジタル広告は効率化だけでなく、質の向上を通じた効果の継続的な改善に向けて突き進むべきなのです。

※本記事はDIGIDAYに寄稿したコラムを転載しています。

そのカスタマージャーニーマップは、なぜ機能しないのか?:有効性の高いCJMの作り方

カスタマージャーニーマップ(CJM)は、無形のサービスをデザインするために、IDEO社が1990年に開発したフレームワークです。サービスに関わる一連の顧客体験(CX)を可視化し、改善箇所を特定するその手法は、マーケティングコミュニケーションの設計と管理にも応用されています。情報過多な現代の生活者に、さまざまなメディアで一貫性のあるCXを提供する統合型マーケティング(IMC)や、その効果を定量的に検証し、改善し続けるデータドリブンマーケティングには、もはやCJMの活用は欠かせません。

マーケティング従事者にCJMの重要性を問う必要はないでしょう。では、その有効性はどうでしょうか? CJMのマーケティング活用が進むアメリカでも、2016年時点の調査では、CJMが収益成長に貢献していると答えたマーケターはわずか5%に留まりました。これほど重視されている手法でありながら、CJMは何故成果を出せないのでしょうか? 元P&Gの音部大輔氏は、有効性の低いCJMを「飛行機の絵」にたとえて説明します。

飛ばない飛行機の絵

機体や翼、エンジンなどの部品を相対的に配置すれば、誰にでも飛行機の絵は描けます。しかし、その絵から飛行機を再現しても、決して飛ぶことはありません。マーケターが主張したい内容を、AIDMAなどの規定の枠に書き込めば、CJMらしいものは出来上がります。しかし、所詮「飛ばない飛行機の絵」のように描かれたCJMからは、効果的なマーケティングコミュニケーションが再現されることはありません。マーケティングに有効なCJMを作るためには、実在する態度変容プロセスにフォーカスしなければなりません。

態度変容を軸としたCJM

CJMの本来の目的は、顧客の体験を理解・管理することです。しかし、マーケティングは市場の認識を理解・管理することであり、その活動は主にメディアを介して行われるため、直接的に反応を得ることは容易ではありません。マーケティングに有効なCJMは顧客の体験ではなく、見込客の態度変容プロセスと、その要因となる知覚刺激を表さなければなりません。

音部氏によって考案され、FICCが推奨するパーセプションフロー・モデルは、見込み客がリピート購入や推奨に至るまでの態度変容プロセスを、要因となる知覚刺激とともに可視化します。また、パーセプションフロー・モデルはAIDMAやAISASのような、認知から購入という限定的な枠組みではなく、現状から目的達成までの生活者の認識を描き、その理解と管理を可能にします。

実在する購買行動の描写

マーケティングに対するCJMの有効性が低いもうひとつの理由は、その多くが空想の産物であることです。自らの力でカスタマージャーニーを制御できると勘違いするマーケターは、理想像を描こうとします。しかし、生活者の購買行動はマーケティング施策以外にも無数の知覚刺激に影響されるため、主観で描かれたCJMを再現することはほぼ不可能なのです。

しかし、実在する態度変容プロセスに基づくカスタマージャーニーであれば、マーケティングコミュニケーションで再現できる可能性があります。カスタマージャーニーは発見するものであり、決してマーケターが創り出すものではありません。

マーケターは、生活者が購入やブランドスイッチに至ったプロセスを再現し、スケールさせれば良いのです。そのためには、いろいろな調査データのツギハギではなく、シングルソースのデータから、個々の完全なジャーニー把握する必要があります。しかし、これも決して容易なことではありません。カスタマージャーニーには、同じものはふたつとなく、百人百通りのものが存在するのです。

コレクシア社が提供するカスタマージャーニーの調査ソリューションは、独自のアンケート手法を用いて100名ほどの態度変容プロセス含むCJMを個別に生成します。それらの共通点と相違点を分析し、ひとつのドキュメントに集約すれば、異なる段階構造や態度変容プロセスを網羅するCJMが出来上がります。

実在する態度変容プロセスを網羅的に俯瞰できるマップがあれば、粒度の細かい効果測定とマーケティングコミュニケーションの微調整が可能になります。四半期ごとにマーケティングプランを作り直す必要はなくなり、リソースを戦略的な市場拡大や、顧客生涯価値(LTV)の向上に充てることができるはずです。そして、継続的な運用を通じて、CJMはその有効性を次第に発揮するようになります。

実在するカスタマージャーニーの網羅的な調査から、異なる段階構造や態度変容プロセスを俯瞰するCJMを作成したあとは、定量調査でコミュニケーションの優先順位を決めます。マーケティング施策を実施したあと、マーケティング施策との接触を示す行動データを収集し、ブランドリフト調査から態度変容の有無を確認します。これでマーケティング予算を効果的なジャーニーに集中的に投資し、効果の低いコミュニケーションの内容を改善することができるようになります。精度と網羅性の高いカスタマージャーニーの仮説を、繰り返し検証することではじめて、私たちは飛行機の絵ではなく、空を飛ぶための図面を手に入れることができるのです。

※本記事はDIGIDAYに寄稿したコラムを転載しています。

個々の能力に頼らない、有能なマーケティング組織の作り方:目的管理の極意とは

人は、自らの状況を改善するために行動を起こします。その裏には必ず目的が存在し、意識をしなくても、私たちの目的と行動は必ず連動しています。しかし、一個人では当たり前なこの連動も、集団行動には該当しません。どれほど優秀な人材も、一度集団に加われば簡単に目的を見失い、感情や主観的な判断に流されてしまう可能性があります。

フランスの心理学者、ギュスターヴ・ル・ボンは、集団の愚かさを描いた『群衆心理』のなかで、「どれだけ知性のある人物も、集団の一部となった途端、考えられないほど愚かな行動を起こす」と述べています。これは、集団が組織として機能するために、有能な人材を投入しても無駄であることを意味しています。有能な組織は、個々の能力の集積ではなく、その行動を左右する目的の管理によってもたらされるのです。

多くのビジネスリーダーを輩出するハーバードなどのアイビーリーグ校は、学問だけでなく、ローイングなどの団体競技を通じたチームワークの習得を重視します。これは将来のリーダーに、チーム全員のアラインメントが個々の能力に勝ることを認識させるためです。集団が組織として機能するためには、その目的を意識的に管理し、個々の行動と連動させる以外に方法はありません。

アライメントの実現にもっとも効果的な手法は、組織全体における一連の目的と、成果指標を定義することです。指標の意味や関係性を従業員全員が理解してはじめて、組織として機能することができるのです。そのためには、経営陣や上級管理職による、段階的な目的と指標の設計が必要になります。

目的の共通認識を図るために、S.M.A.R.T.という効果的な目的定義の手法があります。SのSpecificは具体性を意味し、目的に解釈の余地が無い状況を示します。MのMeasurableは効果や途中経過の計測が可能であること、AのAchievableは目的の達成に向けた資源が確保されていること、RのRelevantは上位目的に合致していること、そしてTのTime-Boundは時間制限が設けられていることを示します。

※Time-Boundは、Measurableに内包されるという考え方もあります。その場合は、RelevantのRを、一貫性を意味するConsistentのCに置き換えた、S.M.A.C.というアクロニムが用いられます。

組織の目的定義における主な課題は、Relevantの段階にあります(S.M.A.R.T.のRは、ときにはRealisticと定義されることもありますが、この定義はAchievableと重複するだけでなく、目的間の階層的相互関係を排除しています)。組織のアラインメントを実現するためには、指標の段階的相互関係を通じてビジネスの全体像を描き、従業員一人ひとりの業務が事業目標となる収益成長や、より大きなビジョンなどの目的に貢献していることを可視化する必要があります。

目的間の階層的相互関係を描くためには、指標の因数分解を行います。マーケティング施策の主な目的は事業目標である収益成長です。しかし、これだけでは解釈の余地が生まれてしまい、具体的な施策内容の合意に至ることができません。「収益成長→新規顧客獲得→既存セグメントの顧客シェア向上」というように事業目標を実施目標へと分解することで、担当実務者が達成すべき目標が明確になります。

経営者や上級管理職は事業目標ばかりを重視し、末端の実施目標との関係性を十分に理解しないことが往々にしてあります。そして、業務を担当する実務者は自身の実施目標が何であり、上位目的の関係性がわからないことに悩んでしまうのです。理想的には、経営陣や上級管理職が事業目標から戦略目標までを設定し、実施目標の設定を担当実務者に委任すべきでしょう。これにより、経営陣や上級管理職は細かい施策内容の監督業務から開放され、戦略的業務に集中できます。そして、実務者も戦略や指標の優先順位を上司と十分に議論し、戦術を任せられることで、業務に主体性と責任を感じるようになるのです。この目的と指標の設計を通じた組織のアラインメントと動機付けこそが、リーダーの仕事ではないでしょうか。

組織に目的の共通認識が備われば、ビジネスの改善に必要な戦略を周知し、パフォーマンスを向上させることが容易になります。それぞれの従業員が自身の責任範囲に適した業務を遂行し、マイクロマネジメントや不毛な論争の必要がなくなるのです。多くのマーケティング組織が実際には主観と感情に流される「脆弱な集団」であるという状況下で、目的管理の能力は圧倒的な競合優位性をもたらすはずです。

※本記事はDIGIDAYに寄稿したコラムを転載しています。

テレビはデータで進化する:アメリカのテレビデータ活用事例

本記事は、デジタルインテリジェンス主催の『テレビ×デジタルの最適化 CMARCセミナー』の講演内容をまとめたものです。
講演では、弊社代表取締役の荻野とデジタルインテリジェンス代表取締役の横山隆治氏による、テレビ広告の未来についてのトークセッションが実施されました。

以下、当日のスライドとともに、セッション内容をご確認ください。

日本よりも早くデジタル化が進むアメリカでも、テレビはいまだ最大の広告メディアです。しかし、視聴データの充実により、テレビ広告の形は少しずつ変わりはじめています。地域によって変革の度合いは異なりますが、すべてMeasurable(測定可能)でAddressable(個別配信可能)な方向に進んでいます。

テレビが変化している背景には、データの可用性があります。テレビデータには以下の3種類があり、その可用性と量の増加に伴い、マーケティングの可能性が広がります。

日本では、視聴行動のデータが少しずつ集まりはじめていますが、まだ分析対象のセグメントを細かく分けるほどのボリュームがありません。今後はテレビメーカーや携帯キャリアのデータシェアリングなどを通じて、視聴データ量の充実が進みますが、現状のデータでもできることはたくさんあります。

データ量が豊富なテレビの視聴サーベイデータを、セグメントや購買行動の段階ごとに分類したデジタル広告の視聴行動データと掛け合わせ、態度変容や購買行動のサーベイを実施することで、ターゲットやチャネル、そしてメッセージの効果を定量的に評価することができます。態度変容や購買行動に対する効果をもとにコミュニケーションを改善し、最適な予算のアロケーションが可能になるのです。

アドレサブルTVはさらに、世帯ごとに個別のテレビ広告の配信を可能にします。その広告インベントリ(在庫)はテレビ全体の12%と限定的ですが、すでに8割以上の広告主が利用しており、その高い効果を実感しています。その市場規模はいまだ12.6億ドル(約1435億円)と、テレビ市場の1.75%に留まっていますが、2019年には倍以上の30.4億ドル(約3463億円)まで成長が見込まれています。

アドレサブルTVの活用はまだ実験段階であり、たくさんの事例は存在していません。しかし、数少ない事例のなかからも、その効果的な活用方法は見えはじめています。

飲食チェーンや地域密着型の量販店などは、ロケーションデータや既存顧客のデータを活用することで、来店見込みの高い、商圏内のユーザーだけにテレビ広告を配信することが可能になります。ロケーションデータを提供するPlaceIQのケーススタディでは、広告接触者の来店率が70%も向上しました

車メーカーなどはさらにオウンドメディアのデータを活用し、車の購入を検討しているユーザーにテレビ広告を配信し、最寄りのディーラーへの訪問を促すことができます。AT&Tのケーススタディでは、こうしたディーラー誘導広告は10倍のROIで、100万ドル(約1.1億円)以上の収益増を生み出しています。

アドレサブルTVとデジタルメディアとの併用効果を分析した事例では、新規顧客と既存顧客の購買行動に違いが現れています。ペネトレーション(新規顧客の獲得)には併用が効果的であり、リピート(既存顧客の再購入)にはアドレサブルTV単体が効果的であることが伺えます。

この結果からは、広告が新規顧客にレレバンス(関連性)だけでなく、複数のタッチポイントで接触することで、ブランドのオムニプレゼンス(偏在性)を感じてもらう必要があるのかもしれません。テレビがターゲティング可能になることで、ブランドはターゲットを絞り、低コストでオムニプレゼンスを演出することができるようになります。

日本ではいまだテレビ広告の個別配信ができなくも、広告主は動画広告から同様の知識と経験を得ることができます。複数のセグメントや、購買行動における様々なモーメントのターゲティング、Lean Backというテレビのメディア特性、そしてデータ資源の獲得と活用方法など、アドレサブルTVの登場までに学ばなければならないことはたくさんあります。

※本記事はDIGIDAYに寄稿したコラムを転載しています。

ITの進化は、マーケティングにどんな変革をもたらすのか?

言語の発明を起源とするインフォメーションテクノロジー(IT:情報技術)は他のテクノロジーとの融合を繰り返し、私たちに高度な情報活用の能力を与えました。融合可能なテクノロジーの多様化に伴い、その進化のスピードは加速し続けています。

加速するインフォメーションテクノロジーの進化は、マーケティングや広告業などの情報産業に今後どのような変革を起こすのでしょうか?

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マーケティングにおけるテクノロジーの多様化は、情報の氾濫とマーケティング業務の複雑化を引き起こしました。この傾向は今後も加速の一途を辿るため、現在はマーケティングの情報活用に大きな変革が求められています。パーソナライゼーション、オートメーション、アナリティクスの融合は、マーケティング実務者の情報の扱い方を一変させ、持続的なマーケティングを実現する可能性を秘めています。

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コンテンツパーソナライゼーション

コンテンツパーソナライゼーションは、個々のユーザーの属性や状況に合わせて、個別のメッセージを届ける技術です。集団に向けてひとつのメッセージを発信するマスマーケティングよりも、関連性の強いメッセージを届けることができるため、高いマーケティング効果が期待できます。

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アメリカではすでに、世帯ごとに個別のテレビ広告を配信する「アドレサブルTV」が普及しはじめています。従来のテレビ広告よりも高い効果が認められており、すでに8割以上の広告主が利用しています。媒体側の収益増につながる可能性も高く、近い将来に日本でも導入される可能性もあるはずです。コンテンツパーソナライゼーションの重要性を理解するブランドや企業は、ターゲティングされた動画広告の配信に積極的に取り組み、コンテンツパーソナライゼーションのスキルを習得しはじめています。

アドバタイジングオートメーション

アドバタイジングオートメーションは、広告取引の自動化を意味するプログラマティックバイイングに加え、広告のプランニングやオプティマイゼーション(最適化)をも自動化する考え方です。生活者の行動データをもとに、広告配信をリアルタイムに最適化することで、コンテンツパーソナライゼーションをスケール化が可能になります。世界最大の広告主であるP&Gは、生活者一人ひとりとOne to Oneの関係を築くと明言しています。しかし、その実現は、人間業では及ばず、広告配信をリアルタイムに最適化するAI(人工知能)の活用が不可欠となります。

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広告のクリエイティブな側面を除けば、配信や最適化などの運用業務は数学的性質が強く、アルゴリズム(計算式)に置き換えることが可能です。コンピューターによる自動運用は人間の速度と能力に制限されることがなく、リアルタイムな広告の自動配信が可能になるのです。広告運用に特化したAIはすでに存在しています。プラットフォームの横断など、大きな課題はありますが、数年後には広告運用の完全自動化が実現されるでしょう。

ジャーニーアナリティクス

生活者が広告を受け入れ、情報に価値を感じる「モーメント」は特定の状況下でしか発生しません。このコンテキストを理解し、モーメントに合わせた広告接触を実現するためには、カスタマージャーニー(生活者が商品に求めるジョブが達成されるまでの一連のブランド体験)の可視化が欠かせません。しかし、生活者の購買行動には広告やマーケティング施策以外のさまざまな影響要因が存在するため、一人ひとりに個別のジャーニーが存在するのです。

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ジャーニーアナリティクスは、オンラインの行動データに加え、IoTやビーコンテクノロジー、データシェアリングなどによって得られるさまざまなデータを分析し、個々のカスタマージャーニーを可視化する技術です。個々のジャーニーにパーソナライズされたブランド体験の提供を自動化するすることができれば、ジャーニーオーケストレーション(カスタマージャーニーの最適化)が可能になるのです。

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ディズニーワールドのマジックバンドは、パーク内の来園者の特性や行動を可視化し、サービスの効率化と顧客体験の向上を行うために10億ドル(約1100億円)資金が投入された史上最大のジャーニーアナリティクス事例です。ジャーニーの個別最適化を自動化するテクノロジーはいまだ存在しないため、マジックバンドから得られる情報活用はキャストの臨機応変な対応に任せられています。たとえば、来園回数、好きなキャラクター、位置情報などのデータがあれば、初回来園者に好きなキャラクターからのグリーティングというサプライズを提供することも可能になります。ディズニーワールドは現在のテクノロジーをヒューマンインターフェースと融合することで、ジャーニーオーケストレーションを実現しているのです。
target=”_blank” rel=”noopener”>プロキシティマーケティングのソリューションは、店舗販売におけるリピート購入時の手間を省き、顧客ロイヤルティを向上させます。その効果はAmazonを見れば一目瞭然です。1クリックボタンはチェックアウトの手間を省き、Dashボタンは購入の手間だけでなく、商品選択の手間も省いてしまいました。ボタンを押すだけで購入できる利便性は、ブランドを選択する自由に勝る価値を提供し、商品選択におけるブランドの機能を打ち消してしまいます。Amazon Echoは、顧客一人ひとりのニーズにリアルタイムに対応し、音声インターフェースによるレコメンデーションを行うことで、チェックアウトと商品選択の手間を省いています。

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商品の選択と購入は、私たちに多量の情報処理を求めます。レビューやランキングなどが低価格・低関与な日用品の購入にも大きな影響を与えるのは、この情報処理を簡略化しているからです。スパイクジョーンズの映画『her』では、人工知能が発達した未来を描いています。映画のなかでは人間並みの知性に加え、何千倍の情報処理能力を持ったコンピューターOSが、ライターである主人公の仕事を編集し、彼の代わりにメールの返信を行うのです。Googleのエンジニアリング担当役員のレイカーツワイル博士はこのような人工知能は2029年までに実用化されると予言しています。十数年後、私たちは膨大な情報量を瞬時に処理できるようになり、不合理な行動を回避できるようになります。生活者を欺くようなマーケティングは通用しなくなり、本質的な価値創造だけが求められるようになるでしょう。

※本記事はDIGIDAYに寄稿したコラムを転載しています。

『ジョブ理論』で導き出す、ブランド成長の新セオリー:クリステンセンの新著から

Photo by Betsy Weber(CreativeCommons)

生活者の資金に余剰分はありません。貯蓄を含め、すべての支出は競合関係にあり、新しい商品を購入することは、何かを放棄することを意味します。カテゴリー内の直接競合ではなく、より間接的な競合商品群をソースオブビジネス(収益源)とすれば、ブランドは大きく成長できるはずです。しかし、ほとんどのブランドは、市場規模が小さく、ブランドスイッチが困難な直接競合とのシェア争いに陥っています。より大きく、競争の少ない市場から収益を得るには、カテゴリーの枠を超えた競合関係に目を向けなければなりません。

たとえば、30代半ばのOLが、忙しい1日の最後に、コンビニエンスストアでプレミアムビールを手に取り、最終的にハーゲンダッツのアイスクリームを買ったとしましょう。寝る前に少しだけ自分の時間を楽みたかったのかもしれません。アイスクリームとビールには一見競合関係が無いように思えますが、「少ない可処分時間を充実させる」という同じ役割が与えられた場合は、完全な競合となるのです。ハーゲンダッツは「夜の贅沢な時間」を連想させ、ビールよりも優れた「可処分時間の充実」を生活者の心のなかに描くことで、ビールだけでなく、可処分時間を充実させるすべての商品(ホットアイマスク、バスソルトなど)からも収益を奪うことができるのです。

『ジョブ理論』という考え方

『ジョブ理論』

『ジョブ理論』

大きな話題を呼んだクレイトン・M・クリステンセンの新著『ジョブ理論』は、ジョブと呼ばれる商品に与えられた役割こそが、購買行動の原因であると説いています。先ほどのハーゲンダッツの例では、性別、年齢や、OLという職業などという属性はどれもアイスクリームの購買行動と相関はするかもしれませんが、因果関係はありません。原因は残業による可処分時間の減少と、精神的疲労によって生まれた「少ない可処分時間の充実」というジョブなのです。

さらにこの事例では、固くてすぐに食べられないというネガティブな特性も、「最高の幸せは待つ人だけに訪れる」というクリエイティブなアイデアで、優位性に変えています。ジョブの理解はソースオブビジネスの発見だけでなく、効果的な打ち手をも示してくれるのです。

本来無関係に思える間接競合をソースオブビジネスに設定すれば、不毛な競争を避け、大きな市場を狙い、エモーショナルなブランドを立脚することができます。少し前の記事で、「万年筆の競合」について解説をしました。平均価格が5000円程度で、8割がギフト需要である万年筆のソースオブビジネスは、ネクタイです。モンブランは「父親を喜ばせる」という情緒的なジョブを理解しているため、筆記用具としての書き味などは一切訴求しません。その代わりに、ネクタイをつけないヒュー・ジャックマンを理想的な成功者とし、万年筆をその立役者として描いているのです。

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いかにジョブを見つけるか?

ジョブを見つけ、ソースオブビジネスを設定すれば、後は商品をより良いソリューションとして描くコミュニケーション設計を行い、マーケティング施策の実行に取り掛かれます。しかし、肝心のジョブはどのように見つければ良いのでしょうか? 残念ながら、定量的なデータからジョブを見つけることはできません。ジョブの発見には、生活者の状況を、生活者の視点から分析する必要があるのです。

ジョブを炙り出すツールとして、ジョブの種類を図にしたものがあります。ジョブには直接的なものと、付随する間接的なものがあります。さらに、機能的側面と情緒的側面があり、情緒的側面は個人の内在的側面と、社会に向けた対外的側面に分類することができます。

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※画像クリックで拡大

まずはもっとも簡単な直接的×機能的ジョブを定義しましょう。たとえば、ボディーシートの場合は「汗を拭き取る」ことかもしれません。内在的側面は「不快感を味わいたくない」ことで、対外的側面は「不潔だと思われたくない」などでしょう。また、「汗を拭き取る」に付随する機能的ジョブは「人前での見た目を整える」としましょう。情緒的×内在的側面は「気持ちを切り替えたい」、対外的側面は「相手に好印象を与えたい」などで良いでしょう。「汗を拭き取る」という直接的×機能的ジョブを共有している競合は同じボディシートや洗顔シートでしょう、しかし「人前で見た目を整える」には化粧品なども含まれます。「不快感を味わいたくない」であればエアコンの効いたカフェなども競合となります。「不潔だと思われたくない」は、すべての身だしなみグッズが含まれます。「気持ちを切り替えたい」のであればガムやタブレット菓子、「相手に好印象を与えたい」のであれば、ファッションアイテムもソースオブビジネスとなります。

ブランド成長に限界はない

このように、ジョブは購買の原因でありながらも、いろいろな競合と共有される広範な役割なのです。ジョブという視点から市場を見れば、たくさんのソースオブビジネスの存在に気づくことができます。自社商品のジョブに対し、不完全な解決策となっているすべての競合から収益を得ることができると考えれば、ブランドの成長に限界はありません。私たちは、ソースオブビジネスの多様性がブランドの継続的な成長に欠かせないことを理解し、ジョブから生まれる複雑な競合関係をマーケティングに活かさなければならないのです。

※本記事はDIGIDAYに寄稿したコラムを転載しています。

データリテラシー、ブレークスルーを実現する重要スキル:「絶望のループ」を避ける方法

あなたのマーケティング組織は施策の効果を立証することができますか? また、その過程で有益な結論を導き出すことができますか? 「データドリブン」なマーケティング組織になるために、私たちは何に投資をすべきでしょうか?

データの収集や可視化のためのテクノロジーに無闇な投資をしても、マーケティング効果の向上は見込めません。これらのテクノロジーは、データ活用の強化を目的としており、「データが活用できない」という根本的な問題の解決にはなりません。データが活用できなければ、組織は失敗から学ぶことができません。成功も再現できないため、施策には勢いがつかず、大きな成果が出ることもないでしょう。このような状況で無闇な投資を続ければ、組織はさらなる悪化を招く「Doom Loop(絶望のループ)」に陥ってしまいます。

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Doom Loopを避け、マーケティングのブレークスルーを実現する要因は「データリテラシー」です。データリテラシーは、有用な結論に至るために必要なデータの生成や、解釈に関する能力を指します。テクノロジーは確かにデータの分析速度や可視性を向上させることができますが、データリテラシーそのものを向上することはありません。

行動や態度変容の統計的分析力だけでなく、有益なデータを生成するための施策設計能力は、データドリブンマーケティングに欠かせないスキルです。これには調査設計に加え、オーディエンスデータのターゲティング活用や、コミュニケーション設計、そしてKPI設定のスキルが必要になります。
組織に定着した主観的な意思決定プロセスや、既成概念は、データリテラシーの養成を阻害します。マーケティング戦略を広告代理店に丸投げするような体質も大きな阻害要因のひとつでしょう。このような環境のなかで、新しいテクノロジーを導入しても、マーケティング効果を向上させることはできないのです。
最先端のテクノロジーに投資をすれば、主要なマーケティング指標を表す詳細なレポートやダッシュボードを生成することができます。しかし、それを扱うチームにデータリテラシーがなければ、視覚化されたデータから結論を導き出すことができません。強力なデータインフラストラクチャが、データの操作や分析の基本知識を持たないチームを強化することありません。その一方、データリテラシーの高いチームは、限られたデータを利用するための知識を備えており、データの限界や、どのような技術が本当に必要かを理解しています。彼らは断片的なスプレッドシートを使い、手動でレポートを作成していても、効果的な意思決定に必要な情報を得ることができるはずです。重要なのはテクノロジーではなく、データを共通言語としたマーケティング組織なのです。
データドリブンマーケティングには、チームのデータリテラシーが不可欠です。企業はどのようにデータリテラシーを養うことができるでしょうか?

試験的なプロジェクトへの投資

データリテラシーは、純粋な訓練ではなく、継続的な関与を通じてもたらされます。ワークショップなどで、必要な知識の基礎を築くことはできます。しかし、データを活用したワークフローは従来の業務プロセスとは大きく異なり、担当者にとって予算確保や、プロジェクトの立ち上げが困難になる可能性があります。データリテラシーを養成したい企業は、データを活用したワークフローの確立のために、チームに試験的なプロジェクトの権限を与え、積極的に投資を行うべきです。

価値あるデータを生成する施策設計

単にデジタル施策を実施し、ユーザーの行動をトラッキングするだけでは、有益なデータは得られません。どれだけデータを溜めても、重要な意思決定や、法則性の発見に至らなければ無意味です。有益なデータを得るには、事前に複数の仮説を定義し、検証を可能にする施策設計が必要です。デジタルマーケティングは、細かい計測が行えるだけではなく、設計次第でマーケティング仮説の検証に必要なデータを「生成」することができます。そして、データから得られた結論を、戦略や戦術にフィードバックすることで、継続的なパフォーマンスの向上を実現することができるのです。

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※データ、情報、知識、知恵を分類するDIKWモデル

必要なデータを揃える

継続的な改善ができたとしても、その投資が十分なリターンを生まなければ、継続することはできません。マーケティング施策が達成すべき目標や中期指標がわからなければ、その価値を証明することも不可能です。施策が割り当てられた予算に応じて、収益増を実現するためには、まず損益分岐点を明確にする必要があります。KPIの数値目標を算出するためには、購入あたりの粗利益、ターゲット人口、マーケティング予算以外にも、購買ファネルの段階に沿った認知率、購入意向率、購入率などの数値が必要となります。これらの数値はKPIの設定に不可欠であり、簡単な調査から得ることができます。しかし、企業側の理解がなければ、マーケターにとって予算確保が困難となる場合があります。

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※ 量的、質的、価値指標の算出例

能力を持った人材を採用する

組織のデータリテラシーを養成するうえで見過ごされる分野は採用です。現在ではネット専業代理店などで広告運用を経験し、一定レベルの能力を持った人材が、事業会社のマーケティング部署へ転職することも珍しくありません。データのマーケティング活用を真剣に考えている企業は、これらの能力を考慮して新しいチーム候補を評価しはじめる必要があります。

目的の明確化を徹底する

企業は上位目的を定義し、部署やチーム、個人の目的を合致させることで組織を管理します。これらの目的は、SMARTを活用することで数値化され、指標の分解が可能になります。指標は、業績を左右するROIの観点から定義されるものや、より広範なビジョンから設定されるものなど、さまざまです。

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データリテラシーの高いチームも、明確な目的を必要とします。データが導き出すのは、目的達成に適した戦略や戦術であり、目的が不明確な状況では役に立ちません。データリテラシーの有無に関係なく、チームは組織の段階的な目的や、指標を明確に理解しておく必要があります。経営者によって定義された明確な目的や、指標という基盤から、チームは継続的にデータリテラシーを育み、さまざまな可能性の評価と、正しい意思決定を実現することができるようになるのです。

※本記事はDIGIDAYに寄稿したコラムを転載しています。

デジタルマーケティングの「本質」とは何か?:求められるデータドリブンな側面の理解

デジタルマーケティングは、「デジタルメディアを通じたマーケティング」ではありません。デジタルメディアのインタラクティブ性(反応を収集し、記録する特性)を活かした、「数値化されたデータに基づくマーケティング」と定義すべきです。ターゲティング精度が高く、粒度の細かいコミュニケーションが可能なデジタルマーケティングでは、データに基づく継続的な軌道修正と改善が効果的です。しかし、多くの広告主は、いまだこのデジタルマーケティングのデータドリブン的な側面の理解に至っていません。

インタラクティブ性と、高精度なターゲティングは、特定ターゲットの広告反応を計測可能にします。得られた反応データをもとに、コミュニケーション設計やメディア運用を改善すれば、継続的なマーケティング効果・効率の向上が見込めます。いまや、この考え方はダイレクトレスポンスだけでなく、ブランドマーケティングにも適用できます。しかし、パフォーマンスの向上に役立つデータを得るためにはまず、マーケティング施策を得たいデータに合わせて設計しなければなりません。

オーディエンスの分類

データ取得が可能な属性(年齢や興味など)によって、オーディエンスを分類することで、マーケターはターゲットごとの反応に意味を見い出せるようになります。もしターゲットが分けられていなければ、得られる反応データはひとつの無意味な塊となり、属性ごとの違いが見えません。何人が目的を達成したか、ということだけがわかり、それがどのような人物であるかを知る事ができないのです。ターゲットを広く設定することは構いません。ただ、その反応データは必ず属性ごとに収集し、分析可能にすべきです。

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コミュニケーションの設計

デジタルマーケティングの利点は、粒度の細かいコミュニケーションが可能なことです。元P&Gの音部大輔氏が考案した”パーセプションフロー・モデル”という手法を使えば、生活者が購入に至るまでの段階的な態度変容と、必要な刺激からコミュニケーションを設計できます。そして、DAGMAR(広告効果測定のための広告目標の定義)という広告効果管理のアプローチを採用すれば、段階ごとの広告接触と、その態度変容効果の測定が行えるのです。

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ターゲットのニーズが異なれば、フローも分岐されます。しかし、フローの分岐は実施と管理の工数を肥大化させるため、最小限に抑えましょう(画像クリックで拡大)。

広告の反応データは、さまざまな方法で収集することができます。しかし、マーケターはデータを収集をする前に、その意味を正しく理解しなければなりません。動画視聴、ページビュー、スクロール深度、クリックなどの行動データは、広告との接触や、接触時の反射的行動を計測しています。心理的な反応を計測し、態度変容や購買行動の有無を確認するためには、ブランドリフトサーベイと呼ばれる、アンケート調査が必要となります。行動データとサーベイデータが互いを代替することはなく、広告接触と心理効果の関係を理解するために補完し合わなければならないのです。

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マーケティング活動へのフィードバック

リアルタイムな行動データと、定期的なサーベイデータの分析は、マーケティング活動にフィードバックすることができます。オーディエンスのなかから購入に至り易いターゲットを見つけ出し、広告予算を集中すれば、マーケティング「効率」が向上するのです。ブランドの成長には、コミュニケーションの改善を通じたマーケティング「効果」の向上が欠かせません。ターゲットが購入に至る比率自体を上げなければ、広告費のROIは、すぐに頭打ちになります。

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データからコミュニケーションを改善するためには、まずは改善すべき箇所を特定し、ターゲットと同様にコミュニケーションの「分岐」を作ります。コミュニケーションの分岐は、クリエイティブのバリエーションを必要とするため、事前に制作費の費用対効果を考慮しなければなりません。新しいクリエイティブによってマーケティング効果の向上が期待できるのは、広告が視聴されていながらも、十分に態度変容が起きていない(行動データの量的な反応が高く、サーベイデータの質的な反応が低い)箇所です。このように心理的な歩留まりが確認できる箇所で、かろうじて反応しているターゲットの属性を特定し、新しいコミュニケーションの仮説を導き出し、その効果を検証します。効果的なコミュニケーションは、ターゲットごとに異なる可能性もあります。分岐されたコミニケーションの効果は、ターゲットごとにも検証をすべきでしょう。

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デジタルマーケティングは、膨大な量のデータ収集を可能にします。しかし、マーケティング施策が必要なデータを収集するように設計されていなければ、集められたデータは何の役にも立ちません。DMPを設け、データマネジメントの重要性を掲げる広告主は増えました。しかし、そのデータは本当にマーケティングの改善に役立てているのは、そのなかでもほんのひと握りなのではないでしょうか。“Garbage in / Garbage out”(ゴミのようなデータを分析しても、ゴミしか得られない)と言われるような結果を防ぐために、私たちは数値化が可能なマーケティングに挑み続けなければならないのです。

※本記事はDIGIDAYに寄稿したコラムを転載しています。

刈り取り広告と併用して利益を最大化するデジタル広告への取り組み方

通販や保険、金融や教育といった業界で取り組まれることが多いダイレクトマーケティングは、デジタルの普及によって手法が大きく変わったマーケティングの1つです。特にリスティング広告やリターゲティング広告などのダイレクトレスポンス広告が登場して以降、これらの手法は刈り取り広告として多用されてきました。

リスティング広告やリターゲティング広告は多くの企業が取り入れていますが、ノウハウの成熟によって最適化が進み、CPA(顧客獲得単価)の下げ止まりや顧客獲得数の増加が頭打ちになっているケースも見受けられます。刈り取り広告だけではビジネス成長が鈍化しつつあるデジタル広告で今後どのようなアプローチが必要になるのでしょうか。

1. 刈り取り広告の課題と解決方法

リスティング広告やリターゲティング広告などの刈り取り広告は「顕在化した需要に対して接触できる広告」であり、売上に直結しやすいことから多用されています。一方でリスティング広告にはキーワードの月間検索数、リターゲティング広告にはサイト訪問数など、接触できるユーザーに限りがあります。刈り取り広告は「顕在化した需要内での最適化」となることから、需要を刈り取りつくしてしまうとCPAの上昇や獲得数の減少が起こります。

刈り取り広告の課題に対するシンプルな解決方法は「需要を顕在化させて新規見込み顧客を獲得する」ことです。需要が顕在化することで、刈り取り広告で接触できる新規の見込み顧客が増加し、CPAを下げることや顧客獲得数の増加が見込めます。

下記図のように新規見込み顧客の獲得は態度変容ファネルの上部にあたります。一方で刈り取り広告による顧客獲得はファネルの下部になります。ファネル毎の役割を明確化し、上部から下部までファネル全体を最適化することが重要であり、弊社では「フルファネル・マーケティング」と呼んでいます。

フルファネル・マーケティングの概念を理解し、各ファネルのユーザーに対して、適切なデジタル広告で接触することが刈り取り広告の課題を解決するための糸口になります。

2. 需要を顕在化させるファネル上部へのデジタル広告

それではファネル上部へ接触するためには、どのような広告を活用するべきなのでしょうか。

これまでファネル上部へのアプローチとして多くの企業がテレビCM等のマス広告を利用してきました。マス広告の影響力は未だに絶大であり、多くのユーザーに接触する目的として適しています。

しかし、マス広告はデジタル広告と比較すると大きな予算が必要であり、性別や年齢等の条件でターゲティングすることも難しいです。そのため、ダイレクトマーケティングを活用し、ターゲットが絞られているブランドには投資対効果の面から最適とはいえません。

一方、デジタル広告でもオーディエンスターゲティングができるディスプレイ広告でファネル上部へアプローチする試みが行われていますが、ターゲティング精度の問題でターゲットユーザーに接触できる確率が低く、こちらも投資対効果の面から最適とはいえない状況でした。

そんな状況で登場したのがFacebook広告です。Facebookはユーザー自身が登録した情報や行動データなど、様々なデータを使用してターゲティングするため、非常に精度が高いメディアです。

Facebookのようなメディアを活用すれば、正確にターゲットに対して接触することが可能であり、投資対効果の面からもファネル上部への有効的なアプローチ手法といえるでしょう。

3. デジタル広告を中心としたフルファネル・マーケティング

デジタル広告を中心としたフルファネル・マーケティングの具体例を簡単に紹介します。まずはブランドに適したファネルを定義していきます。ダイレクトマーケティングの場合はファネルが複雑になる傾向がありますが、今回はわかりやすく認知→興味&契約意向→契約の3ステップで考えてきます。

3.1. 認知

まずは需要を顕在化させることを目的とした認知の獲得です。ここでは顧客となる可能性の高いターゲット層にブランドを認知してもらうことが重要になります。

例えば現在の顧客情報等のデータを活用し、複数のターゲットセグメントを設定します。同様にブランドの強みなどからコミュニケーションする訴求軸も複数設定していきます。このターゲットセグメントと訴求軸を掛け合わせてFacebook広告を配信します。配信中は効果測定を行いながら、効果の高いターゲットセグメントと訴求軸に合わせて配信を最適化していきます。

配信後は結果から、どのターゲットセグメントにどの訴求軸が響いていたのかを分析することで、今後のコミュニケーションの参考にすることができます。

3.2. 興味&契約意向

続いては新規見込み顧客の獲得を目的とした興味&契約意向の獲得です。ブランドを認知したユーザーに対して興味&契約意向を促すためのコンテンツへ誘導していきます。認知段階で配信したFacebook広告の遷移先を興味&契約意向獲得コンテンツとして、コンテンツ内で興味&契約意向を促す内容を訴求することなどが考えられます。

また最近ではデジタル動画広告を活用し、動画を最後まで視聴してもらうことで、認知から興味&契約意向まで一気に訴求しているケースもあります。

3.3. 契約

最後は顧客獲得を目的とした契約の獲得です。ブランドに興味&契約意向を持ったユーザーに対して契約を促すランディングページ等に誘導します。

ここで刈り取り広告を活用することができます。興味&契約意向段階で離脱してしまったユーザーにはリターゲティング広告が有効です。また、すぐに契約に結びつかない商材の場合、検討期間終了後にブランド名や関連するキーワード名で検索される可能性があるため、リスティング広告を活用することで機会損失を防ぎます。

4. CPAの最適化ではなく利益の最大化を

上記のようなフルファネル・マーケティングを実施する際に注意しなければいけないことがKPIの設定です。

KPIをCPAだけとしてしまうと顧客獲得に直結しないファネル上部へ費用を投資するため、初期段階ではCPAが上昇する可能性が高く、失敗とみなされてしまう場合があります。フルファネル・マーケティングに取り組む背景は「刈り取り広告のみによる顧客獲得数の頭打ち」であり、目的は「利益の最大化」です。この場合のKPIは新規顧客獲得数とCPAであり、KGIは利益となります。

数値は仮となりますが「刈り取り広告のみ」と「フルファネル・マーケティング」で比較してみましょう。

一見すると刈り取り広告のみの方がCPAが安価でROIも高く、良い施策に思えます。しかし、刈り取り広告のみはCPAの最適化で運用をしており、顕在需要から考えた場合、費用の400万円は限界投資額です。仮に400万円以上の予算があったとしても、同じCPAで新規顧客は獲得できず、CPAの上昇を理解した上で投資を行う必要があります。

一方のフルファネル・マーケティングは需要の顕在化を同時に行っているため、投資を行うことで、新規顧客獲得数は大幅に増加し、最終的な利益も刈り取り広告より大きくなります。また、施策を継続していくことで需要の顕在化による新規見込み顧客も増加するため、CPAを下げ、更に大きな利益を獲得することも期待できます。

5. 継続したビジネス成長を描くために

短期的な数値だけでデジタル広告への投資を判断する場合は投資対効果の高い刈り取り広告が選ばれることが多いと思います。しかし、最初に述べたように刈り取り広告は「顕在化した需要内での最適化」です。

継続的に顧客を獲得し、ビジネス成長を続けるためには需要の顕在化から、顧客の獲得までワンストップで行うフルファネル・マーケティングの考え方に基づき、ファネル上部に対するデジタル広告施策も同時に実施していく必要があるのではないでしょうか。

デジタルに悩むマーケターは、なにを見落としているのか?:マーコム設計という根本問題

デジタルマーケティングに課題を感じ、私に協力を求めるクライアントの多くは、より根本的なマーケティングの課題を抱えています。デジタルメディアがもつ、高精度なターゲティングや、インタラクティブ性などの特性は、マーケティングコミュニケーションの設計なしに活用することはできません。そのため、多くの広告主は、既存需要の刈り取りしか行っておらず、デジタルマーケティングによる収益成長の実現に至っていないのです。
マーケティングコミュニケーションの主な役割は、新しい需要を喚起し、商品の購入意向を獲得することです。その設計には、態度変容プロセスの正しい理解が欠かせません。コミュニケーションの起点となるのは、広告反応と購入見込の高いターゲットと、その支出先である「ソースオブビジネス(収益源)」です。

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ソースオブビジネス

新しい商品の購入資金は、既存の消費支出から補填されます。補填元となるソースオブビジネスは必ずしも直接的な競合商品ではなく、生活者の意識しないところから資金を奪っているかもしれません。商品がもつ機能と与えられた役割は、まったく別物であることが多いのです。

※クリステンセンが推奨するJTBD(Job to be done)は、商品の機能ではなく、その本質的な役割を問う思考法

たとえば、8割がギフトとして購入される万年筆は、ほかの筆記用具ではなく、同じ男性向けギフトのネクタイをソースオブビジネスに設定すべきでしょう。書き味の良さよりも、男性が喜ぶことをアピールすべきなのです。ほかにも、プレミアムアイスクリームは夜のお酒(役割:可処分時間の充実)に、トレーニングジムは英会話学校(役割:自分を磨く)などにソースオブビジネスに設定している事例があります。重要なのは、新しい商品と共通の役割をもち、収益源として十分な支出を伴っていることです。

根本問題

大半の購買は、何らかの問題解決のために発生しています。その問題は必ずしも意識されていたり、機能的である必要もありません。 新しい商品を購入してもらうためには、現状よりも深く、その商品にしか解決できない「根本問題」を認識してもらうことが効果的です。この記事でも、「デジタルマーケティングができていない」という課題を感じている方に、「マーケティングコミュニケーションの設計ができていない」という、より根本的な問題を認識してもらうことができたでしょう。ターゲットが、この問題の再解釈により、ソースオブビジネスに対する支出が解放され、ほかの商品に向けられるようになるのです。

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生活者が根本問題を認識する度合いにより、獲得できる市場の規模が決まります。その効果を高めるためには、根本問題を過去の体験に基づく「知覚要因」と紐づけることが効果的です。たとえば、この記事の「マーケティングコミュニケーションの設計ができていない」という、より根本問題の例では、「KPIの設定に困った」という体験に紐づけることができます。態度変容プロセスの全体像がわからなければ、何を中期指標とすべきかはわからないはずです。さらに、この知覚要因が日常的に発生するものであれば、根本問題をより頻繁に思い出してもらうことが可能になります。

差別特性

生活者が抱える問題の解決策を独占できれば、商品が自然に売れ続ける市場が生まれます。解決策の独占には、その商品やサービスがもつ差別特性から、解決する問題を逆算し、根本問題として設定します。差別特性は、必ずしも強みや、優位性である必要はありません。独自性が強く、模倣が困難であれば、あとからでも何らかの価値を描くことができるのです。

商品がもつ差別特性から、逆順的に考えれば、独占可能な問題にたどり着くことができます。私の場合は、「マーケティングコミュニケーションの設計能力」と「デジタルの専門性」という複数要素の組み合わせが差別特性となっています。そのため、「デジタルにおけるマーケティングコミュニケーション設計の重要性」を広めることが、自分が独占できる市場の形成に繋がるのです。

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ブランド

ブランドは、商品がもつ意味であり、生活者が求める本質的役割(JTBD)の識別標識であるとも言えるでしょう。広告の大半は、アソシエーションというブランドと特性を紐づける手法により、商品に「意味」を与えることにフォーカスしています。もちろん魅力的なブランドイメージを描き、知覚品質を上げることも広告の大きな役割のひとつです。しかし、紐づけられた特性にニーズがそもそもなければ、どんなに強力で、魅力的なブランドも、求められることはないのです。

商品=ブランド(意味)+製品(機能)

認知度や、ブランドイメージを高めても、売りにつながらないのはそれ以前のコミュニケーションが設計できていないからかもしれません。重要なのは、生活者が求める解決策と関連付けることで、ブランドを欲求の受け皿として機能させることなのです。

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購入意向

合理的な購買判断には、膨大な情報量が必要となるため、私たちはまず欲求などの感覚に頼ります。そして、あとから支出、時間、手間などのコストや、失敗のリスクが許容範囲内であるかを確認し、判断の正当性を確認するのです。必要な情報がなければ、正当性の確認ができないため、購買に至る確率は大きく低下します。購入意向を抱いてもらうためには、見込み客が欲求に基づく自身の判断を、客観的に正当化できる情報を提供する必要があります。

購買判断を正当化する情報は、大きく二種類あります。一つは、製品の機能や利用用途、耐久性などによる付加価値をアピールし、知覚コストを下げる情報。二つ目は第三者による推奨、効果を肯定する検証結果、市場における実績など、知覚リスクを減らす情報です。欲しいと思う商品のコストが許容でき、購入のリスクを感じなければ、購入に至る可能性は大きく向上します。

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購入意向を獲得したあとも、買い場での販促活動(リテールコミュニケーション)や、リピートや推奨を促す商品体験(プロダクトエクスペリエンス)の設計が続きます。購買行動の全体像を描くためには、さらにいくつもの段階が存在するのです。しかし、需要喚起から購入意向の獲得までを描くことができれば、ある程度の成果は出せるはずです。特に、ソースオブビジネスから資金を奪い、ブランドを唯一の選択肢とする「根本問題」の設計ができれば、大きな収益成長の可能性が生まれます。このテンプレートが万能であるとは言いませんが、広く応用可能なマーケティングコミュニケーションの基本の形であるはずです。

※本記事はDIGIDAYに寄稿したコラムを転載しています。

デジタル広告によるフルファネル・マーケティングに必要な4つのスキル

私たちは、ソーシャルメディアのアプリなどから、日常的に動画コンテンツを視聴するようになりました。すでにデジタル広告のおよそ1割が動画の形式になり、「モバイルビデオ」の時代に突入したとも言えるでしょう。従来デジタル広告の大半は、既存需要の刈り取りを目的に使われてきました。

しかし動画の普及により、ファネルの下部だけでなく、上部における需要喚起にも使われるようになったのです。現在はデータを用いてファネル全体を一気通貫するフルファネル・マーケティングが求められています。しかし、広告主も代理店も、ファネル全体におけるデジタル広告の経験がまだ浅く、十分なスキルを持ち合わせていないのです。

ネット広告代理店の多くは、長い間「刈り取り」型の広告の運用を専門としてきました。クリックや、コンバージョンの単価を下げることにフォーカスし、顕在化された需要を競合と奪い合っているのです。デジタル広告による刈り取りの参入障壁は低く、競合が増えれば、新しい需要が十分に喚起される前に、顧客は全て刈り取られてしまいます。そして、ファネル全体を最適化できない広告主のビジネスの成長は、失速するのです。

フルファネル・マーケティングでは、最終的なコンバージョンの獲得単価(CPA)を最適化するだけでは不十分です。連続的な広告接触の影響を分析し、ファネル全体を最適化する必要があるのです。そのために、幾つかのスキルを習得しなければなりません。

態度変容プロセスの設計

私たちは一回の広告接触で購買に至るわけではありません。カスタマージャーニーと呼ばれる段階的な体験によって、徐々に商品の購買に向けた態度変容を起こすのです。購買に至る態度変容には、ある程度共通する順番があり、それを引き起こすコミュニケーションにも、同様の順番があります。

態度変容プロセスの設計を初めて行う場合、段階の数は最小限に留めましょう。コミュニケーションの効果を評価する上で、立ち戻る基準さえあれば、段階の細分化は後からでも行えます。上記5段階のファネルは、オンラインで比較検討をするような商材の多くに当てはまるものです。全てに当てはまる汎用的なテンプレートではありませんが、対象に適した段階を考えるベースとしては役に立つでしょう。

中期指標の設定

最終的なコンバージョンだけで効果測定を行えば、買い場に最も近い、または最も適した広告に予算が寄せられてしまいます。ファネル全体の広告効果を最適化するためには、段階毎の中期指標を設定し、ブランドリフトと呼ばれるアンケートなどを用いることが一般的です。しかし、一定量のアンケート結果を集めるためには、予算も時間もかかってしまいます。そのため、態度変容を示す行動を予め設定し、その実行率で段階毎のパフォーマンスを計測します。特定コンテンツの視聴、広告への反応、サイト内の遷移など、態度変容が前提となる行動が何であるかを考えましょう。

さらに、広告主が中期指標の設定に困るのは数値目標の設定です。最終的なコンバージョンであれば、ROIから価値指標を算出することは難しくありません。しかし、中期指標の場合は、既存の購入率や、購入意向率などから、目標数値を算出する必要があり、事前調査が必要となる場合もあります。

KPI算出シート

クリエイティブのバリエーション

広告の効果を最も大きく左右する変数はクリエイティブであり、マーケターは目的に適したクリエイティブのテストを重ねる必要があります。バナーのA/Bテストなどで行うような、細かい視覚的な表現方法ではなく、メッセージや訴求軸自体のバリエーションがたくさん必要になります。一つのクリエイティブを考え出すのも大変だというのに、いくつものバリエーションを作るにはどうすれば良いのでしょうか?

段階ごとに何を訴求すべきかを考えるためには、買い場のコミュニケーションからコミュニケーションを逆順で考える、P&Gの「StoreBack」というフレームワークが有効です。マーケティング・コミュニケーションは買い場でその効果を発揮すべきですが、選択肢の多い買い場におけるコミュニケーションの時間と空間は限られています。StoreBackは、買い場での効果を最大化させるため、メッセージの受容性を高めるコミュニケーションを先行して行うというものです。これを買い場ではなく、最終的な商品体験から考えたらどうでしょう?最終的な商品体験から逆算し、その受容性を高めるコミュニケーションの仮説が段階ごとに出てくるはずです。この仮説一つひとつをバリエーションとし、検証することができます。

ファネル全体の最適化

ファネル段階ごとのクリエイティブ以外にも、広告配信のタイミング、フリーケンシー(視聴回数)、シーケンス(順番)なども広告の効果を大きく左右します。その最適解は、ターゲットごとにも異なります。これほどまでの変数を含むテストが、人の手によって行われている場合は、明らかに非効率的であり、テストの内容にも限界が生じます。

現在では、デジタル広告の運用を自動化するツールが登場しています。いくつかのターゲットやクリエイティブの最適化を行うだけであれば、人の手によるプロセスで十分であったかもしれません。しかし、そこにファネルの段階や、時間軸などが加われば、広告のバリエーションは膨大になり、管理しきれなくなるのです。adgoのようなツールを活用すれば、段階ごとのパフォーマンスだけでなく、ファネル全体の最適化が可能になります。

多くのマーケターは、収益を伸ばす責任を負っており、新規顧客の獲得が欠かせません。そのためにはファネルの段階ごとの効率だけでなく、スケールも伸ばさなければなりません。今や、ユーザー単位の行動データによって、ファネル上部の施策を、下部への直接的な影響から最適化することができ、データドリブンなフルファネルマーケティングを実現することができ、再現性の高い施策の実施や、プロセスの開発を可能にするのです。

私たちは未だモバイルビデオの時代におり、このような最適化の手法はスマートフォンやPCの世界に限られています。しかし、数年以内にこれらのテクノロジーがテレビCMにも活用できるようになったらどうなるでしょうか。アメリカではすでにケーブルテレビCMの3割ほどの広告枠で、データによるターゲティングが可能です。データによってファネル全体を最適化するスキルを持たなければ、今後はどのようなプラットフォームにおいても成果を出すことが難しくなるはずです。

広告の内容よりも、直前の心理状況が重要?マーケティングの常識を覆す『プリ・スエージョン』とは?

広告や販促活動の影響から、説得に至るまでの心理的プロセスを解説した『影響力の武器』から32年。ロバート・チャルディーニ博士がまたもや、実験データから人間の不合理な心理バイアスを解明し、マーケティングの常識を覆す新著を発表しました。『プリ・スエージョン』(説得以前)と題された本作では、説得が行われる前の心理状況の重要性が焦点となり、マーケティング効果を向上させる様々な手法が紹介されています。未だ和訳の発表はされていませんが、皆さんに少しでも興味を持ってもらえるよう、冒頭部分から幾つかのポイントを紹介します。

チャルディーニの調査結果からは、成績優秀なセールスマンほど、セールストークを始める前の言動や行動に多くの時間をかけていることがわかっています。扱う商品や、販売条件を自由に変更することができないセールスマンにとって、相手の心理状況こそが、成約率を最も大きく左右する要因でした。優れたセールスマンは、セールストークの内容を工夫するのではなく、その受容性を高めることに努めていたのです。

コスト感覚に対する影響

あるコンサルタントは、75,000ドルのフィーを提示するたびに、クライアントから減額を要求されていました。しかし、提示前に「100万ドルはかかりませんが…」と、一度非現実的な金額を述べることで、一切減額を要求されなくなったのです。高級チョコレートの販売実験では、事前に9桁の社会保障番号を書いた被験者が、対照群に比べて高い金額で商品を購入しました。私たちのコストに対する感覚は、相対的で、曖昧なものです。そして、一見無関係なものにも、大きく左右されてしまうのです。

好みや共感への影響

一見無関係なものは、私たちのコストの感覚だけでなく、商品やサービスの好みや、共感へも大きな影響を与えています。ワインの販売実験では、店内にドイツ系の音楽が流れている間はドイツワインが売れ、フランス系の音楽では、フランスワインの売上が伸びました。MOMA(ニューヨーク近代美術館)が「年間100万人以上が来館」という広告を、バイオレンス映画と共に配信した結果、ブランド好意度が大きく上昇しました。しかし、同じ広告をロマンス映画と配信した際には、好意度が低下したのです。チャルディーニの説明は、映画の内容によって、便益の受容性が変わるというものです。バイオレンス映画のような、恐い刺激を受けた相手は、安心を求め、周囲に馴染むこと(fit-in)を促すメッセージに共感してしまうのです。反対に、ロマンス映画の場合は、自身の独自性を示したいと感じるため、周囲から目立つこと(stand-out)を促すメッセージに共感しやすくなります。

シューティング・クエスチョン

スーパーマーケットのアンケート調査では、「あなたは人のために役立ちたいと思いますか?」という質問をアンケートの前に加えることで、回答率が29%から77.3%まで上昇しました。また、新しい炭酸飲料のサンプリングでは「あなたは冒険心のある人ですか?」という質問を加えることで、サンプリング率が33%から、75.7%に伸びています。「シューティング・クエスチョン」と呼ばれるこの手法を通じて、自身の肯定的な特徴が提案の内容に合致すると、人はその提案を受け入れやすくなるのです。

モーメント・メーカーのスキル

この提案を受け入れやすい心理状況を、チャルディーニは「モーメント」と称し、自然発生するモーメントを探し出すマーケターを「モーメント・シーカー」と呼んでいます。しかし、モーメントの発生は心理的な法則に基づいており、再現性が高く、汎用性もあります。意図的な刺激によってモーメントを創り出すことができる「モーメント・メーカー」こそ、広告の効果を最大化することができるのです。

商品価格よりも大きな数字を思い浮かべてもらえば、相手は価格に対する抵抗を感じ難くなります。特定の地域を連想してもらえば、その地域の商品を選びやすくなります。恐怖を感じれば、人気の高い商品に魅力を感じやすくなります。そして、自分に冒険心があると自覚すれば、新しい商品を試すことに、抵抗を感じ難くなるのです。

これらのモーメント・メーカーの手法は、特定の行動(ビヘイビア)をターゲティングでき、個別に、連続的なコミュニケーションが可能なデジタルメディアに、大きな優位性をもたらします。私たちのようなデジタルマーケティングの実務者は、プリ・スエージョンの心理的な仕組みを理解し、モーメント・メーカーとしてのスキルを必ず習得すべきではないでしょうか。

動画広告というメガトレンドに、マーケターはどのように取り組むべきか?

動画はモバイルと同等のメガトレンドである。

マーク・ザッカーバーグは2月の業績発表でこのように述べ、動画広告がFacebookの成長戦略の柱であることを強調しました。IAB(Interactive Advertising Bureau)の調査によると、アメリカでは既に7割以上のマーケターが、テレビ広告の予算を動画広告へとシフトしています。動画広告の販売効果は平均的にテレビCMよりも高く、デジタル広告ならではのターゲティングを加えることで、その効果が、さらに倍以上も高まるという調査結果も出ています。臨場感を伝え、視聴者の注目を引きつける動画を、ターゲティングされた広告として配信することは、態度変容という目的において、最も効果的な広告手法のであることは間違いありません。

しかし、そんな動画広告のポテンシャルを活かしている広告主は決して多くはありません。動画をテレビCMとして活用することに慣れたマーケターは、マス向けに一つのメッセージを発信し、そのリーチを成果指標としてしまうのです。また、動画の制作にも、莫大なコストがかかるという先入観を持っているため、動画広告の可能性を認識していながらも、実験的な試みに踏み切れずにいるのではないでしょうか。

生活者のメディア利用において、モバイル端末の割合が急激に高まっています。なかでも、FacebookやSmartNewsなどのアプリには、多くの利用者数だけでなく、動画視聴に十分な利用時間があります。生活者の強いアテンションが集まるこれらのプラットフォームに、現時点で動画広告を配信していないことは、機会損失を招いていると言えるかもしれません。今後、広告主、メディア、そして生活者自身による動画の配信は増え続け、アテンションを巡る競争はさらに激化します。そして、いずれ「アドレサブルTV」という形で、テレビにもターゲティングされた動画広告が配信されるようになるでしょう。動画広告の習得は、マーケターにとってもはや避けて通れない道なのです。

動画制作のコストを抑える

動画広告の制作に、テレビCM並みの予算は必要ありません。たとえiPhoneで撮影された動画でも、コンテンツとしての価値があれば視聴してもらえます。逆に、どれだけ予算をかけて、映像制作の品質を上げたとしても、あからさまな広告は視聴されません。静止画のスライドショーや、グラフィックや文字のアニメーションでも、効果的な動画広告を作ることはできます。日本語は他の言語に比べ、音節レート(読み上げ速度)が突出して高いためPDF:英語と日本語における情報密度と音節レートの相関性について/岩畑貴弘氏)、文字のアニメーションは情報の伝達にとても効果的なのです。

動画の制作費が高ければ、それを回収するためのメディア費がかさみ、広告予算が雪だるま式に増えてしまいます。また、実験的な試みの場合、複数のコンテンツやバリエーションを作成し、様々な仮説を検証する必要があります。そのため、動画広告の制作コストは、既存の素材やアニメーションなどを活用し、できる限り抑えるべきなのです。

配信された動画広告の効果は、ほぼリアルタイムで計測することができます。最近では視聴行動だけでなく、態度変容の度合いを計測するブランドリフト調査の機能も、プラットフォーム毎に充実し始めています。今では、動画広告の作成、配信、そして効果測定も、スマートフォン一つで行うことができます。もはや動画広告の配信に、多額の予算も、高い技術力も必要ありません。しかし、そのような状況でも動画広告の確かなノウハウを習得し、ワークフローを確立している広告主は少ないのです。

ターゲティングを活用する

動画広告の効果を高めるためには、オーディエンスデータに基づくターゲティングを活用すべきです。例えば、複数のセグメントに異なる内容の広告を配信することで、より共感できるメッセージを届けることができます。「マルチセグメントマーケティング」と呼ばれるこの手法は、年代や性別、家族構成などのセグメント毎に訴求軸が異なる通信、金融、保険、旅行などのカテゴリーに効果的です。また、ユーザーのプロフィールなどから、詳細な条件を満たす人物だけに広告を配信する「ハイパーターゲティング」と呼ばれる手法は、限定的なニーズを対象とした高額商材や、BtoB、医療カテゴリーに向いています。そして、ユーザーの反応を基に、連続した広告を、最適なモーメントに合わせて配信する「シーケンシャルメッセージング」は、検討期間の長いサービスや、自動車、不動産などに効果的です。

コンシューマーセントリックに考える

動画広告は効果的でもありますが、ネガティブなブランド体験を起こす可能性もあります。モバイルデバイスにおける広告の受容性はテレビに比べて低く、生活者の大半は、動画広告の強制視聴を不快に感じます。生活者は、広告が観たいのではなく、優れたコンテンツが観たいのです。視聴の主導権が生活者側にある動画広告では、商品を売るための広告ではなく、面白い、または有益であると感じてもらえるコンテンツを配信しなければなりません。広告主は自らの視点からではなく、生活者の視点から考えることで、より効果的な動画広告を作ることができるはずです。

動画広告は、今後必ずマーケティング戦略の中核的存在になります。アーリーアダプターは、現在も比較的低いコストで生活者のアテンションを獲得することができます。さらに施策を重ねることで、ノウハウやワークフローを習得し、クリエイティブのアセットや、オーディエンスデータなどを得ることができます。今後、動画広告の重要性がさらに増し、テレビ広告にも影響を与え始める頃には、これらの資源が絶対的な競合優位性となるでしょう。

これから動画広告に取り組む場合、どこから始めるべきでしょうか?まずは、オーディエンスデータや計測ツールが充実しているFacebookでの配信を試してみるべきでしょう。テレビCMのようなあからさまな広告ではなく、低コストなアニメーションで、有益な情報を伝えるインフォグラフィック動画などを作成してみても良いでしょう。そして、低コストなテストと仮説検証を繰り返し、効果と再現性の高い、確かな動画広告の知見を深めていきましょう。

デジタルマーケティングの体制構築を支える「オーケストレーション」とは?

デジタルマーケティングという言葉は、バナー広告が取引され始めた、1990年代初頭から使われています。その市場規模は、昨年アメリカで7兆円に達しすでにテレビを超えているとも言われています。日本でも、デジタル広告は、広告市場全体の2割に迫り、1兆円を超えています。このような、広告主の積極的な投資からは、すでにデジタルマーケティングが実験的な試みではなく、一般的な実務になっていることがわかります。

しかし、現在も多くの広告主が、デジタルマーケティングにおける決定的なスキルギャップ(技能不足)に悩まされています。2016年10月のCMO Surveyの調査によると、デジタルマーケティングは企業にとって最も重要なスキルであると同時に、最も不足しているスキルでもあるのです。デジタルマーケティングの教育が盛んで、人材の流動性も高いアメリカ市場でさえ、広告主が十分にデジタルマーケティングのスキルを習得できない理由は一体何なのでしょうか?

マーケティングの業務範囲は急激に広がっています。Web、サーチ、CRM、ソーシャルメディア、ディスプレイ広告、オンライン動画、データマネジメントなど、テクノロジーへの対応を迫られるたびに、新しい専門知識を取り入れなければならないのです。CMO Surveyの調査からも、過去5年間でマーケティングの業務範囲が大きく広がっていることがわかります。しかも、この業務範囲の拡大は、技術革新のペースと比例しているため、今後も加速度的に進むことが予想されます。

このように広範囲の専門性を要するデジタルマーケティングでは、専門知識を集約したマネージャーが、個々の専門家に詳細な実行指示を出すような管理方法は現実的ではありません。それぞれの専門家が、全体における自身の役割を理解し、自律的に連携をするオーケストラのような体制が望ましいのです。

奏者から指揮者へ

複雑なシステムの自律制御を可能にすることを「オーケストレーション」といいます。デジタルマーケティングの体制構築に本当に必要な人材は「奏者」のような特定領域の専門家ではなく、様々な専門家のオーケストレーションを通じて、マーケティング全体を向上させる「指揮者」なのです。指揮者の存在によって、専門家は外部環境の変化に応じて入れ替えや、切り捨てが可能な「モジュール」になります。そして、指揮者としてのスキルを習得した広告主は、持続的に新しいテクノロジーを取り入れ、活用できるようになるのです。

モジュール型組織の必要条件

指揮者の下で、入れ替え可能な専門家が自律的に連携・稼働する組織を「モジュール型組織」と言います。イノベーション理論の第一人者であるクレイトン・クリステンセン曰く、モジュール型組織が機能するためには、以下の3つの条件が必要となります。これらの必要条件を満たすことが、指揮者の役割であると言えるでしょう。

特定性:目的や、解決すべき課題が明確に説明されること。コミュニケーションでは、広く理解されている用語を正しく活用し、物事を厳密に定義しなければならない。
予測可能性:業務が円滑で予測可能な方法で連携すること。連携が各自の負担とならないよう「プラグアンドプレイ」が可能でなければならない。
検証可能性:広く受け入れられている成果指標を活用し、課題の解決、目標の達成が提供されていることを明らかにしなければならない。

これらの条件をマーケティングに当てはめて考えると、オーケストレーションに必要な要素が見えてきます。業務の特定性には「マーケティングの基礎知識」と「マーケティングブリーフ」、予測可能性には「カスタマージャーニー」、そして検証可能性には「共通KPI」。これらがあれば、マーケティング組織のモジュール化ができるのではないでしょうか。

特定性:マーケティングの基礎知識とマーケティングブリーフ

広告主と広告会社には、共通言語が必要であることは言うまでもありません。正しいプロセスと、用いられる用語の正確な定義が理解されなければ、マーケティングの仕事はどうしても手法先行型になってしまいます。広告主と広告会社の間で、戦略的な議論がされることはなく、具体的な手法の一つひとつを、主観的に細かく確認するという不毛な作業が永遠に続くのです。デジタルマーケティングに携わる会社は、技術的な専門性を持っていても、マーケティングの基礎知識を持っていないことが往々にしてあります。デジタルマーケティングの専門的な分野に特化した会社を採用する際は、互いに共通言語を確立するための、オンボーディング期間を設けることが効果的です。

マーケティングの基礎

専門家は本来、マーケティングの全体を監督するマネージャーよりも、担当分野における判断力があるはずです。それでも、具体的な手法の確認が細かく発生する場合は、求められる業務内容が十分に伝わっていないことを意味します。細かい指示なく、自主的に稼働するチームには、プロジェクトの必要条件を共有するための「マーケティング・ブリーフ」が必要となります。

マーケティングブリーフは、広告主が欲しいものをオーダーするためではなく、課題に対するソリューションを、専門家に提案してもらうためのドキュメントです。特にデジタルの領域では、専門知識を持たない広告主が、自ら効果的なソリューションを立案することができないため、ブリーフによる詳細な合意形成が欠かせません。マーケティングブリーフに決まったカタチはありませんが、プロジェクトの背景、エージェンシーに求めること、成果指標、活用可能な資源や、制限事項などを含めるです。

マーケティングブリーフ項目 テンプレート

予測可能性:カスタマージャーニー

主に認知率の向上を担うマスマーケティングとは違い、デジタルマーケティングは消費者の購買行動全体を横断的にカバーしています。マーケティング効果を最大化するためには、扱うテクノロジーや手法により、担当領域が異なる専門家同士の連携が欠かせません。専門家同士の自主的な連携を実現するためには、マーケティング施策の全体像と、それぞれの役割が描かれたカスタマージャーニーが必要になります。

カスタマージャーニーがあれば、無数のデジタルマーケティングの手法から、目的の達成に必要なものを戦略的に選ぶことができ、手法先行型のマーケティングに陥ることもありません。まずは「認知 → 興味・関心 → 購入意向 → 購入」程度のシンプルな段階ごとに、目的となる生活者の行動変容、それに伴う態度変容、必要となる刺激、そして最適なコンタクトポイントをリストアップしてみましょう。そして、商材に応じてジャーニーの段階を細分化すれば、チーム全員のマーケティング活動における指針となるドキュメントが完成するはずです。

検証可能性:共通KPI

マーケティング投資からリターンを得るためには、ROI(投資対利益)に基づいたKPI(成果指標)を設定し、その達成に向けて業務の改善を行います。PVや、再生回数などの量的指標や、CPCなどの価値指標は単に計測しやすいだけであり、マーケティングの効果を示す指標ではありません。直接的なROIを示すCPA(顧客獲得単価)が、eコマースや、ダイレクトレスポンス広告のように、計測できない場合は、態度変容を成果とし、カスタマージャーニーの段階毎に、その人数(量的指標)、達成率(質的指標)、そして、獲得単価(価値指標)を設定します。

サンプルKPI計算シートはこちら

マーケティング予算や、対象商品の粗利額、ターゲット人口などの数値から、これらのKPI正しく設定することにより、ジャーニーの異なる段階に向けられた、様々なデジタルマーケティング施策を共通の基準で評価することができるようになります。さらに、これらの指標はデジタルに限らず、オフラインの施策にも当てはめることができ、マーケティング全体における、デジタルの優位性や、適正を特定することにも活用することができます。

積極的な投資にもかかわらず、広告主が十分にデジタルマーケティングのスキルを獲得できない理由は、その業務範囲が広がり続けているからです。次々に現れる新しい技術を効果的に取り入れ、強固なデジタルマーケティングの体制を構築するためには、共通言語の確立や、業務内容と成果指標の可視化を通じた、オーケストレーションが欠かせません。デジタルマーケティングに対応するために、私たちは現在のマーケティング組織のあり方から見直さなければならないのだと思います。

ブランド力を強化する「デジタル広告」のあり方とは? ― 現代の生活者に受け入れられるために

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デジタル広告の大半は、オンラインの購買行動を直接的に刺激するダイレクトレスポンス広告です。リスティングやリターゲティングなど、購買ファネルの後半で、顕在化した需要を刈り取る役割をもっています。しかし、生活者のアテンションがマスメディアからスマートフォンへと移行し、デジタル広告にも間接的な店頭での販売促進や、ブランド力の強化などを目的とした、「ブランド広告」の役割が求められるようになりました。

しかし、多くのマーケターがもつブランド広告の考え方と、デジタル専業代理店が得意とするレスポンス広告のノウハウには、大きな乖離が存在します。結果、デジタルメディアはいまだブランド広告の領域では大きく活用されず、減少するマスメディアの効果を十分に補完できていません。多くのマーケターは、デジタルメディアのさらなる活用を求められており、その特性を活かした、新しいブランド広告の考え方を必要としています。

マルチセグメント・マーケティング

デジタル広告は、特定のセグメントだけにリーチすることができます。しかし、どれだけピンポイントなメッセージを届けられたとしても、狭いターゲティングは限定的なリターンを意味し、マーケターにとって必ずしも魅力的なものではありません。トップラインの成長目標を与えられたマーケターは、できるだけ多くの生活者をターゲットにしたいと思うはずです。しかし、直接的なリーチの規模や効率で、デジタル広告がテレビを上回ることはありません。リーチ以外の特性を活かさなければ、デジタルメディアがブランド広告に大きく活用されることはないのです。

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高精度なターゲティングというデジタルメディアの特性を活かせば、セグメントごとに最適な広告を配信することができます。市場全体をターゲットとするマスブランドでも、同じ広告を全員に配信することが正解であるとは限りません。効果的な広告とは、自身に向けられたと感じ、共感できるものであるはずです。デジタル広告は、複数のセグメントに、複数のメッセージを発信する「マルチセグメント・マーケティング」を可能にし、広告のスケールと、精度の両立を実現してくれるのです。

ファネル上部の質的指標とブランドリフト

ブランド広告には、オンラインのコンバージョンポイントが存在しません。そのため、主にクリック数や再生回数などの量的指標と、CPC(クリック単価)やCPV(視聴単価)などの価値指標が効果測定に用いられます。しかし、これらの指標はリーチの規模と効率だけを表しており、態度変容の有無を含んでいません。つまり、これらを基に広告を最適化しても、効果の無い広告の配信を、効率化している可能性があるのです。

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ブランド広告の効果測定には、購買ファネルの上部における、認知率や購入意向率などの質的指標が必要となります。しかし、これらの目標設定や計測は、レスポンス広告ほど簡単ではありません。ブランド広告では、マーケティングROI(マーケティング予算に対する粗利目標)から算出可能な、ファネルの購入段階の数値を基に、認知や購入意向など、より上部の数値目標を推計します。そして、その効果測定には、態度変容を示す行動データの取得か、ブランドリフト調査を用いる必要があります。成果指標とは、文字通り成果を指し示すものであり、計測のし易さは関係ありません。量・質・価値の3軸から、正しい計測を行わなければ、ブランド広告としての効果を測定し、最大化することはできません。

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ネイティブなマイクロコンテンツ

テレビ用に作られた広告を、スマートフォンに配信しても、積極的な視聴は見込めません。生活者は、スマートフォンから欲しいコンテンツをいつでも得られるようになり、数分間のスキマ時間に新たな価値を感じるようになりました。そして、そんな短い時間でさえも、あからさまな広告に奪われることを嫌うようになったのです。誰にでも、動画コンテンツを観る前に、まったく無関係なプレロール広告を強制的に視聴させられ、不快な思いをした経験があるでしょう。これは広告が私たちに、十数秒の時間を費やして良いと思えるほどの価値を提供していないことを意味するのです。

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スマートフォンは、いままで仕方なく広告を視聴してきた私たちに、膨大なコンテンツの選択肢を与えてくれました。私たちは、広告を視聴しない自由を与えられ、広告に対する寛容度が大きく低下したのです。そんなスマートフォンを媒体とするデジタル広告が、従来の広告と同じものでは、視聴されるはずがありません。デジタル広告が視聴者に受け入れられるためには、視聴するコンテンツや、プラットフォームとの親和性(ネイティブ)、広告自体のコンテンツとしての有益性、または面白さ、そして、断片化された可処分時間で消費できる短さ(マイクロコンテンツ)を兼ね備える必要があります。視聴者が支払う「時間」というコストをできる限り少なくし、それに見合った価値を、違和感なく提供しなければ、広告を視聴してもらうことはできないのです。

スマートフォンとソーシャルメディアが広く普及したいま、デジタル広告のスケールは、マスメディアに匹敵しています。さらに、精度の高いターゲティングや、視聴者の反応を得るインタラクティブ性、そして情報の拡散性など、従来の広告に比べ、さまざまな優位性が存在します。しかし、デジタルメディアの特性や、生活者の広告視聴における心理的な変化を正しく理解しなければ、広告を視聴してもらえないどころか、ブランド毀損を招く可能性すら大いにあります。変わり続けるデジタル広告の世界において、成功の方程式は存在しません。しかし、新しいことに挑戦し続けなければ、広告の効果は低下し続けるだけです。現代のマーケターは、従来のマスマーケティング中心のノウハウと、デジタルのさまざまな知識を融合させ、新しいブランド広告のあり方を模索し続けなければならないのです。

※本記事はDIGIDAYに寄稿したコラムを転載しています。

小さなデジタルエージェンシーが直取引獲得に必要な3つのスキル

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デジタル広告の制作や、運用を行う小規模な広告会社は無数にあります。よほど大規模なマスキャンペーンでない限り、彼らが直接大手の広告主との取引ができない理由はありません。しかし、このような会社の大半は、主に広告代理店の下請け業務を行なっています。高いデジタルの専門性や技術を擁していても、広告主とコミュニケーションを取れなければ、元請け代理店の利益を確保する労働力に過ぎません。また、彼らは広告主の課題を直接聞き、フィードバックを得ることができないため、市場の変化を上手く察知することもできません。結果、顧客のニーズではなく、自社の強みばかりに着目してしまい、独りよがりなサービスを提供してしまうのです。下請け業者が、いくら高品質なサービスを提供しても、自らの力でビジネスを切り開いていくことは、決して簡単なことではありません。

現在では、マスメディアに頼らないマーケティング機会があらゆる所に存在するため、広告主も、さまざまな広告会社との接点を必要としています。しかし、新しい広告会社との取引は、マーケターの業務負担を増やし、既存代理店との軋轢を起こしかねません。保身のために消極的になるマーケターは、積極的な取り組みを行う競合に遅れをとってしまいます。小さなデジタル広告の会社は、マスマーケティングや、ブランドマネジメントを知らないかもしれません。しかし、デジタル中心の施策であれば総合代理店よりも高いパフォーマンスを発揮します。そして、何より小規模であるがゆえの高い献身性は、間違いなくマーケターの資源となるはずです。

小さなデジタル広告の会社が、デジタルエージェンシーとして広告主と直接取引をするためには、提供するサービス以外に、少なくとも3つのスキルが必要になります。まずは、相手とその上司を説得できること、次に、マーケターとの共通言語が話せること、そして、互いに連携できることです。どれも決して簡単なことではありませんが、才能やセンスを必要とせず、努力次第で可能なことです。代理店の下請け業務から脱し、顧客により多くの価値を提供したいと思う会社は、積極的に取り組んで欲しいと思います。

1. 相手やその上司を説得する

説得とは、客観的な情報を正しい順番で相手に伝え、自らの意志で行動を変えてもらうことです。広告主側の担当者も、マーケティング施策を実施するうえで、上司を説得しなければなりません。それには、しっかりとした提案書が必要となるのです。しかし、提案書のトレーニングを受けていない会社の資料は、相手を説得する目的で書かれておらず、要点がわかりづらく、客観性や根拠に欠けていることが多いのです。マーケターは、上司に中途半端なものを渡せば、自身の評価を下げてしまいます。広告主を説得するための提案書は簡潔で、わかりやすく、合理的なものでなければなりません。

FICCでは、説得される側の態度変容プロセスに合わせて情報をまとめ上げる、ワンページメモライティングのワークショップを実施しています。相手や、その上司を説得するために必要な情報を集め、正しい順番にまとめる方法を知ることで、はじめて検討してもらう資料を作ることができるのです。

2. マーケターとの共通言語を話す

広告主とともに仕事をするには、マーケティングの基礎を習得する必要があります。理解が曖昧なまま、仕事を進めてしまえば、顧客に大きな負担をかけてしまいます。そもそもの用語の正しい定義、マーケターが重視する指標、STP、4P、カスタマージャーニーについての知識などは習得しておくべきでしょう。基本的な要素をカバーするトレーニングを受け、入門書的な書籍を読み、提案書へのアウトプットを繰り返せば、広告主とのコミュニケーションに必要な知識は数カ月で得られるはずです。

マーケティングの経験のない人には気の遠くなる話かもしれません。しかし、目的は自らマーケティング戦略を組み上げられるようになることではありません。それは広告主の仕事であり、エージェンシーは戦略を理解したうえで、最適な手法を提供するのです。目的は、マーケティングという共通言語を確立し、ともに仕事ができるようになることです。

3. 互いに連携をする

小さな広告会社が提供するサービスは、企業のマーケティング活動のほんの一部しかカバーすることができません。たとえば、動画の制作会社が単独で広告主の課題を解決することはできませんが、メディアの買い付けや、運用を行う会社と連携をすれば、動画広告の企画から配信、そして効果測定までを請け負うことができます。マーケティング予算の大半を占めるメディア費の有効活用は、マーケターの評価に直結します。そして、メディアを扱えるようになれば、広告会社はマーケティング効果をスケールさせ、安定的な成果を提供することができるようになります。

もちろん、FacebookやGoogleの広告は、プラットフォーム上で誰でも買い付けと運用をすることができます。しかし、知識と経験のない会社が、多額のメディア費を預かるリスクは双方にとって大きいものです。広告の企画や制作を行う会社は、アドテクベンダーのエージェンシー部門などと協業することが良いでしょう。彼らもメディアに特化しているため、単独では広告主に価値を提供することはできません。小さな広告会社は、互いに連携し、サービスを補完し合うことで、広告主にソリューションを提供することができるようになります。

そのためにはWin-Win-Winの関係を築かなければなりません。クライアントの提供価値と、互いの収益性を考え、積極的な案件の紹介、情報交換、そして、業務外でのコミュニケーションなどを通じて、現場間の連携を強める必要があります。小さな広告会社は、仕事を獲得するためのセールスと同様に、自社にとって強力なパートナーの獲得に励むべきです。

エージェンシーが実務を行ううえで必要とするスキルはいくらでもあります。しかし、もっとも重要なのは、その実務を価値あるサービスに変換し、広告主に買ってもらうためのスキルです。そのサービスがいまだ一流でなくても、独自性の強いものでなくても、誰かの課題を解決し、報酬を得ることはできます。そして、顧客との直接取引をしていれば、ヒアリングや、フィードバックを通じて、サービスレベルを向上させることができます。小さな広告会社が自らの力でビジネスを切り開くために必要としているのは、広告主と直接コミュニケーションを取るスキルと、互いに連携するためのスキルなのです。

※本記事はDIGIDAYに寄稿したコラムを転載しています。

アテンションをアービトラージしたものが勝つ ― ギャリー・ヴェイナーチャックが考える2017年に求められる広告とは

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Photo by https://www.garyvaynerchuk.com/

ギャリー・ヴェイナーチャック(Gary Vaynerchuck)は、Facebook、Twitter、Tumblrの初期の投資家であり、1999年から実家の酒屋をベースに立ち上げた、ワイン専門ECサイトwinelibrary.comの運営者。現在は従業員1000名を超え、トヨタやペプシコなど大手広告主のソーシャルメディア戦略を担当するデジタルエージェンシー Vaynermediaの代表も務めています。

また、世界的なスピーカーとしても知られ、各地のカンファレンスで彼の超合理主義とも言えるビジネス哲学を語っています。和訳されている著書などは少し古く、残念ながら日本語で彼の新鮮な物事の考え方に触れられる機会はとても少ないのが現状です。

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根っからの商売人であるギャリーは、現代の広告業界は不合理で、非効率であると言います。彼は、広告の目的を「できるだけ多くの人のアテンション(関心)を獲得し、クリエイティブ(新しく創造的な)な手法でブランドのストーリーを伝え、セールス(売上)を生むこと」と定義しています。クリエイティビティこそが優れた広告のもっとも重要な要素であると強調しながらも、ほとんどの広告主やエージェンシーは「アテンションの価格」というもうひとつの重要な係数を無視していると言うのです。今回はギャリーの数々のキーノートから、彼の広告に対する考え方についてまとめます。

2017年らしい広告を

私たちはいま、活版印刷以来最大の、コミュニケーションにおける技術的変革の真っ只中にいます。あなたのマーケティング戦略が、まだトラディショナルなメディア中心のものだとしたら、ただちにテクノロジーが生活に与える影響を理解しなければなりません。スマートフォンとソーシャルメディアは登場当初、そこまで重要であるとは思えませんでしたが、この10年で徐々に私たちのアテンションを支配しました。しかし、その浸透が比較的緩やかだったため、多くのマーケターはまるで茹でガエルのように、この大きな変革の意味合いに気づいていないのです。

私たちは身の回りに注意を払うことが難しくなるほど、スマートフォンに集中しています。テレビのCM中、電車内、路上、そして店内でも多くの人が常にスマートフォンを見ており、もはや広告に全神経を集中するということはありえません。しかも、スマートフォンとソーシャルメディアのおかげで、生活者のアテンションは、巨額な広告予算をもったブランドだけでなく、誰でも簡単に獲得できるようになってしまいました。いまや、重大なニュースも、トラディショナルなメディアが報じる前に、友達が自分のタイムラインに直接シェアしてくれる時代です。ソーシャルメディアは私たち自身を、すべての情報をカバーする、世界的なメディアネットワークへと変えてしまったのです。

私たちは、お互いが発信するコンテンツを積極的に消費し、自らのアテンションをとても希少なものへと変化させました。いまではその対象も素早く移り変わり、現在インスタグラムに向けられているアテンションも、数カ月後にはどこか別のところにあるかもしれません。マーケターとして、私たちはテレビCM、PR、イベント、ショッパー・マーケティングなど、特定のコミュニケーションチャネルの知識とスキルを習得するために、多くの時間を費やしてきました。しかしながら、今日私たちのアテンションの大半が向いているスマートフォンやソーシャルメディアに、積極的に時間を投資したマーケターは少ないのです。自分が大切な時間を費やしたチャネルに名残惜しさを感じるのは無理もありません。しかし、もはや十分にアテンションを獲得できないチャネルに執着する気持ちが、私たちを時代遅れなマーケターにしているということも理解すべきです。

アテンションのアービトラージ(さや抜き)

ブランドのストーリーは、マーケターが語りやすいと感じる場所ではなく、生活者に聞いてもらえる場所で語る必要があります。マーケターはそのために、自らのスキルを時代や環境の変化に順応させ、常に新しいスキルを習得しなければなりません。スマートフォンと現代の生活者は、マスマーケティング時代のメディアやオーディエンスとは大きく異なります。生活者は、1日のなかの無数の場面で、知人のアップデート、ニュース記事のタイトル、写真や、短い動画などのマイクロコンテンツを消費しています。このようなマイクロコンテンツは、いままで退屈だった細切れのスキマ時間にも充足を与えてくれる、とても大切なものなのです。

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私たちがマイクロコンテンツを楽しむ時間は、ほんのわずかしかありません。電車のなか、会議の合間、短時間のコーヒーブレーク。忙しい現代の生活者には、1日を通じてまとまった自由な時間はなく、常に何らかのタスクに追われています。だからこそ、私たちは娯楽を邪魔をされるのを我慢することができず、条件反射的に広告を避けるようになったのです。ブランドのストーリーは、私たちの好みのプラットフォームで、私たちの都合の良い時間に、私たちが楽しめるマイクロコンテンツとして提供されなければ、一切私たちには届かないのです。

新しいソーシャルネットワークが多くの生活者に注目されても、大抵のマーケターはその有用性を疑います。掲載されているコンテンツは素人臭く、まだユーザー数が少ないため、低い費用対効果や、ブランド毀損などのリスクを感じるのでしょう。しかし、トレンドに敏感で、ソーシャルメディアで積極的に情報発信を行うユーザーが、新しいプラットフォームが提供する体験に強い関心を寄せているのです。有能なマーケターならこのチャンスを見逃すはずはなく、より優れた、価値あるコンテンツを提供する方法を考えるでしょう。コンテンツが受け入れられれば、その体験はTwitterやFacebookのような、確立されたプラットフォームにもシェアされ、珍しいメディアの現象として、ブロガーやレポーターが記事にしてくれます。新しいプラットフォームで、良質なコンテンツを提供すれば、まだ誰もやっていないという単純な理由だけで、多くのアテンションを、低コストで獲得することができます。この「アテンションのアービトラージ(さや抜き)」を見つけ出し、投資を集中させることこそ、広告のリターンを飛躍的に伸ばす方法なのです。

マーケターがすべてをダメにする

このような利点を踏まえれば、新しいプラットフォームには、ただちに多くのマーケターが飛びつき、有効なコンテンツを大急ぎで模索しはじめるはずです。しかし、実際は皆、プラットフォームのメインストリーム化を実感するまで投資を先延ばしにします。確かにそのころには多くのユーザーがいるかもしれません、しかし、ユーザーはプラットフォーム独自の体験や、コンテンツ、広告にも慣れており、もはやそのアテンションを大きくアービトラージすることはできないのです。

マーケターは、広告で生活者のアテンションを追い求め、すべてをダメにしてしまいます。あからさまな広告は、私たちのアテンションを薄れさせ、どんなプラットフォームからも、その魅力を奪い去ってしまうのです。しかし、あまりに大きな変革をもたらすテクノロジーが、長期に渡って私たちのアテンションを獲得し続けることがあります。これがGoogleとFacebookです。Adwordsがはじめて登場したころ、キーワードの価格は現在の数十分の一でした。登場当時に、積極的な投資を行った企業はどこも、検索という極めて強いアテンションを低価格で大量に買い付けることに成功したのです。

現在、生活者にとってのインターネットは、検索中心のWebから、情報が自動的にフィードされてくるソーシャルメディアへと変わっています。そしていま、もっとも大きなアテンションのアービトラージが期待できるのがFacebookです。同社のCEO マーク・ザッカーバーグはアテンションの価値を熟知しており、インスタグラムを10億ドルで買収し、Facebookにアテンションの最大化を目的としたデザインやアルゴリズムを展開するなど、その獲得を追求し続けています。その結果、現在Facebookには人類史上最大のアテンションが集まっており、ほかのプラットフォームよりもはるかに高い広告効果が約束されています。

時間を奪わない広告

広告はいままでずっと、私たちの時間を奪ってきました。本来したかったことに無理に割り込み、何かを売りつけようとします。しかし、スマートフォンをもった現代の生活者は、そのアテンションを向ける多くの選択肢をもっており、邪魔されることなく娯楽を楽しむことができます。いままで何気なく広告を見ていた細切れのスキマ時間が、より有益な事に活用されはじめ、突然価値をもつようになったのです。だから、現代の生活者は、短いスキマ時間さえもあからさまな広告に奪われることを拒むのです。スマートフォンとソーシャルメディアの時代では、どんなに優れた広告も生活者の時間を奪うものはすべて、悪い印象を与えるか、無視されてしまうのです。

生活者が娯楽を楽しむあいだに語りかけたいのであれば、広告は楽しめる娯楽でなければなりません。ニュースを読んでいるときにはニュースであり、友人や家族と話しているときは、会話のトピックでなければならないのです。プラットフォーム上のコンテンツが提供する価値と、その形状を真似るネイティブ広告は、生活者に時間を奪う印象を与えません。現代のマーケターは、ストーリーの伝え方だけでなく、生活者が好むプラットフォームの体験を、うまく再現する方法を考える必要があります。

何気ない無価値な時間を奪ってきた広告の時代は、スマートフォンの登場とともに終わり、時間に見合った価値を提供しなければ、視聴すらしてもらえないものになりました。広告は、生活者の行動に割り込み、時間を奪うものから、提供価値の対価としてアテンションを受け取るものへと変わらなければならないのです。

価値あるコンテンツ

スマートフォンとソーシャルメディアは、生活者に情報発信力を与えましたが、同時に多くのノイズ(雑音)も生み出しました。ノイズを打ち破れなければ、生活者にストーリーを聞いてもらうことはできません。提供価値の対価として得られる希少なアテンションを、広告の量や、コンテンツの発信頻度で獲得しようとしても無駄です。もちろん量も大切ですが、質が低ければさらなるノイズを生むだけです。大抵のブランドが投稿するコンテンツは、バナー広告と同じくらいつまらないものばかりです。退屈なコンテンツを発信していては、魅力的で、共感できるブランドとして感じてもらうことができないばかりか、生活者に見向きもしてもらえないのです。

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Red Bull TV https://www.redbull.tv/

レッドブルやスターバックスは、すでに世界的なメディア企業と張り合うほど、魅力的なコンテンツを作っています。もちろん、すべてのブランドが映画のような大作を作れません。しかし、マス広告に投資しているブランドであれば、生活者が少しのコストや時間をかけてでも、もち帰りたくなるような、ローカル誌くらいのコンテンツは簡単に作れるはずです。個人がコンテンツだけでトラディショナルなメディア以上の影響力を得られる時代に、はるかに多くのリソースをもつマーケターにできないはずがありません。

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Starbucks Coffee Instagram https://www.instagram.com/starbucks/

コンテンツは必ずしもブランドや商品に関する内容である必要はありません。オーディエンスが熱中しているテーマであれば、どんなものでも構わないのです。重要なのは、購買行動を喚起する広告を届ける前に、生活者が求めるコンテンツを継続的に配信し、ポジティブな関係を構築しておくことです。たとえば、ターゲットが好む音楽やカルチャー、関心の高いニュースについて、ブランドが理解をしていることを示してみましょう。何も売り込もうとしていなければ、生活者はそれを理解し、ブランドをより身近なものとして感じるはずです。継続的に提供されるマイクロコンテンツに価値を感じる人は、格段にそのブランドの広告を受け入れやすくなります。ソーシャルメディア戦略などというものを、あまり難しく考える必要はありません。それは「買ってもらう前に、できるだけ与えておく」くらいのものでいいのです。

コンテンツに時間をかけること

質の高いコンテンツを作るためには、たくさんの資金よりも、時間が必要になります。マーケターは定期的なコンテンツを配信するために、意識的に多くの時間を割かなければなりません。生活者は、1日のメディア接触時間のほとんどをスマートフォンに費やしているのに対し、マーケターがコンテンツの作成に費やす時間はごくわずかです。プラットフォームごとに存在する独自の特性を学び、それぞれで最適なコミュニケーションが行えるようにならなければ、生活者が求めるコンテンツを発信することはできません。

誰もが「デジタルで出遅れている」と感じる主な理由は、広告を作るのに忙しすぎて、優れたコンテンツの制作に投資をしていないからです。デジタルで結果を出したければ、メディア企業のような発想をもち、コンテンツ制作に時間をかけなければなりません。大きな予算よりも、生活者が手にとって読みたくなるコンテンツを考え、さまざまなアイデアをテストする時間の方がはるかに大切なのです。ソーシャルメディアに成功法や方程式は存在しません。重要なのは多くの実験を通じてソーシャルメディア上の語り手として、自らスキルを習得することです。現時点ですでに文章を書くのが得意な人、写真や映像が上手な人もいるでしょう。そのスキルを存分に活かし、アテンションを得ているプラットフォームに適合させるのです。得意なコンテンツの制作に費やした時間は、マーケターにとって最強の競合優位性になります。

コカ・コーラや、ペプシコなどの大手広告主は、すでにインハウスのクリエイティブスタジオを設置し、コンテンツ制作の人材育成に投資をしはじめています。スマートフォンとソーシャルメディアの時代では、生活者がアテンションの主導権を握っています。巨額なメディア予算をもつマーケターも、優れたコンテンツなしではそのストーリーを聞いてもらえないのです。現役であり続けたいマーケターは、自分の手のなかにある新しい現実から目を背けず、より良いコンテンツを提供するために、積極的に自分の時間を投資しなければならないのです。

※本記事はDIGIDAYに寄稿したコラムを転載しています。

賢いメディア取引には透明性と自動化が欠かせない ― トレーディングデスク内製化のすすめ

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デジタルメディアの取引には、そのすみずみまでテクノロジーが浸透し、市場は日々複雑化しています。もはや専門知識なくしてROIを高めることはできず、広告主自らがメディア戦略を評価することは困難です。広告主の知識不足に加え、関心の低さも悪影響となり、メディアエージェンシーの業務は透明性を失っています。そしていま、メディア取引における透明性の欠如は、業界全体に大きな不利益をもたらしているのです。

メディアエージェンシーは広告主と媒体社の仲介役として、メディアの購入条件と、販売価格を調整することができます。彼らはメディアの原価にマークアップを載せ、広告主へ販売するだけでなく、媒体社からの大量発注割引またはリベート、無償の広告インベントリ、延払い条件など、取引から派生するさまざまなメリットを受け取り、利益に変換することができるのです。そして、メディアの効果的なプランニングや、効率的な運用業務を通じて、広告主へROI改善などの付加価値を提供することができます。

このようなメリットは、もちろん広告主の大規模なメディア予算がなければ成立しません。エージェンシーと広告主、双方のアセットをもち合わせることではじめて、メディアから価値を引き出すことができるのです。エージェンシーの稼働に対するフィーが支払われていることが前提ではありますが、本来は広告主とエージェンシーが協力し合い、メディア取引の全体を可視化し、予算規模や、コスト削減、パフォーマンス向上から生まれる利益を双方に分配すべきなのです。

日本の広告費、残念な現状

2014年のWFAの調査(PDF)によれば、日本の広告費の投資回収率は世界最低であり、その透明性は中国に次いでワースト2位です。さらに、最近の電通の不祥事からも見えるよう、一部のエージェンシーや業者は、広告主に価値を提供することなく、メディア費から利益を搾取しています。このような状況で、広告主はメディアのROIを最大化することができるでしょうか?

広告主がメディア取引の現状を把握せず、エージェンシーへインセンティブとなる利益分配のスキームを作らなければ、「許容可能な最低限の広告効果」しか受け取ることができません。また、大多数の広告主が、引き続きメディアの透明性に無関心なままであれば、この最低限の広告効果が業界の標準となり、デジタルメディアの価値は大きく引き下げられたままになります。

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アメリカの一般的なメディアエージェンシーと業者の収益構造 http://www.wfanet.org/media/programmatic.pdf

データから自動的にメディアを買い付けるプログラマティック・バイイングは、高い透明性と、仲介者の少ない効率的な取引を実現してくれるように思えます。しかし、実際は無数のテクノロジーや、データプロバイダーが複雑に絡み合い、それぞれの業者がコミッションを受け取る、不透明かつ非効率なものなのです。

上記の図は、アメリカの一般的なメディアエージェンシーと業者の収益構造ですが、日本ではそもそもアメリカに比べて、一案件辺りのメディア予算が少なく、エージェンシーやDSP事業者のコミッションはさらに割高になる傾向があります。一般的なエージェンシー・トレーディングデスクでは、メディア費の半分以上がこうしたエージェンシーや業者のコミッションに充てられており、多くの広告主が自らデジタルメディア取引を管理する、ブランド・トレーディングデスクの導入を検討しています。

全体像の可視化が第一歩

広告主がデジタルメディアを自ら管理する目的は、エージェンシーや業者へのコミッションを減らすことではなく、コミッションをインセンティブとして正しく機能させ、ROIの改善や、透明性の向上を実現することです。取引に関わるすべての業者、それぞれの支払い条件、そして、ROIへの貢献責任を含む全体像を可視化することこそ、広告主がデジタルメディアを管理するための第一歩であり、ROIの向上にもっとも効果的な方法です。自社のメディア予算がどのように使われているのかを知ることではじめて、広告主は対等な立場でエージェンシーと交渉し、賢いメディア投資ができるようになるのです。

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トレーディングデスクの運用スタイルの比較 http://www.wfanet.org/media/programmatic.pdf

広告の配信設定や、運用業務の複雑さもデジタルメディアのROIに大きなインパクトを与えています。たくさんの顧客を抱えるエージェンシーでは、常に時間と人的リソースが不足しています。しかし、ターゲット属性、タイミング、プレイスメント、フォーマットなど、デジタル広告の配信には無限ともいえる選択肢があり、汎用的な成功法はありません。顧客、そして案件ごとにカスタマイズされた設計が必要になり、中規模の広告キャンペーンを十分に最適化するためには、少なくとも30〜40のバリエーションをテストしなければならないのです。

このような広告の配信条件の設計するだけでも何時間もの工数がかかります。そして、多くのエージェンシー担当者は、効果的なデジタル広告の配信と運用に必要な時間だけでなく、スキルも持ち合わせていません。彼らは定常化された運用業務に追われ、複数の顧客に同様のメディア戦略を提供せざるを得ないのです。もちろん、このようなやり方が大きな成果を生むことはなく、ウォールストリートでは、投資銀行が行う同様のアプローチを”Dumb Money”(馬鹿げた投資)と呼んでいます。

ウォールストリートでは1990年代から、金融商品の取引に人を介在させない自動取引システム(ATS)が活用されています。人の介入を排除することで、金融商品の取引からは主観的な判断や、ヒューマンエラーがなくなり、そのスピードが大幅に向上しました。デジタルメディアの取引においても、人の介入は最大のコストであり、リスク要因でもあります。 取引の自動化は、メディアの買付けと運用にかかるコストを大幅に削減し、ROIを飛躍的に向上させることができるのです。

テクノロジーの知識が成果を左右

デジタルメディアの取引にも、すでに同様のシステムが開発されています。アメリカの大手投資銀行でATS開発を行なっていたマイケル・キム氏がCEOを務めるマーケティングテクノロジー会社Adgorythmics(アドゴーリズミックス)は、FacebookとInstagram広告の買付と運用を自動化する「Adgo(アドゴー)」というプロダクトを提供しています。トップクラスのメディアプランナーの監修をもとに、最先端の数学モデルと機械学習法を兼ね備えたアルゴリズムが、人間には検知できないパターンを見つけ出し、数千バリエーションにも及ぶ広告設計作成と買付け、またリアルタイムな最適化を同時に行ないます。

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Adgoのダッシュボード画面

アドゴーは単にFacebookとInstagramの広告キャンペーンの作成や管理を効率化するためのツールではありません。マイケル氏は、人間の手では不可能なテストの量と速度を通じて、FacebookとInstagram広告の潜在的な価値を最大限引き出すことに成功しているのです。このテクノロジーの存在は、FacebookとInstagramに対する限界ROI(メディア視聴者数にもとづく最大投資回収可能額)までの投資を可能にしています。これからは、広告主のメディア戦略と競合優位性が、このようなテクノロジーの知識に大きく左右されてしまうのです。

メディア取引の自動化により、広告主はさらに、オーディエンスの行動データという貴重な副産物に直接アクセスできるようになります。広告主は、自社内のさまざまな情報を集約し、製品や消費者、競合の情報をもとに戦略を立案することができます。これらの情報にアクセスできないエージェンシーなどのサードパーティーには不可能なことです。広告主は、自らの豊富な知識にリアルタイムなオーディエンスデータを加えることにより、迅速なサイクルで仮説を検証し、メディア施策から得られたインサイトを、さまざまなチャネルのマーケティング活動に適用できるようになるのです。

ブランド・トレーディングデスク内製化の動き

P&G、ユニリーバ、ロレアル、ケロッグ、キンバリークラークなどのグローバル企業は、メディア取引の業務を、従来のエージェンシー・トレーディングデスクから、社内のブランド・トレーディングデスクへと移行しています。これはメディアの買付けと運用業務を社内に移行するということではなく、メディア取引全体を可視化し、戦略的な意思決定を社内で行うことを意味しています。

彼らのプラットフォームは世界的なメディアエージェンシーのサポートを受けて構築されていますが、テクノロジーやパートナーの選定、その契約や支払条件などは、広告主が積極的に管理しているのです。ブランド・トレーディングデスクを擁する広告主は、メディアのROIを第三者に任せるのではなく、自らの手で積極的にデータを活用し、改善することができます。メディア取引の管理を社内に取り込むことによって、透明性が改善されるだけでなく、強い責任意識をもたらすことができるでしょう。

透明性の欠如、容赦のないコミッション、そして複雑で非効率なワークフローにより、現在ではデジタルメディア市場全体の価値が制限されています。ブランド・トレーディングデスクという新しいプラットフォームを確立するためには、まずメディア取引の透明性を求め、バリューチェーン全体を管理可能にする必要があります。これにより、広告主はインセンティブを正しく機能させ、エージェンシーや業者に、さらなる透明性とパフォーマンスの向上を促すことができるのです。

次に、自動化が可能な箇所には、Adgoのようなテクノロジーを導入し、さらなる効率化とパフォーマンス向上を実現すべきでしょう。競合優位性をもたらすブランド・トレーディングデスクの構築には、早い段階で、正しい施策にフォーカスすることが、とても重要なのです。

※本記事はDIGIDAYに寄稿したコラムを転載しています。

デジタル時代のマーケティング戦略に影響を及ぼす3つの力

デジタルの語源は、数を数える「指」を意味するラテン語の「digitus」にあります。しかし、マーケティングにおいてデジタルという言葉は、単に「数字に基づく」ということよりも遥かに広範な意味を持ちます。デジタルデバイスからリーチするあらゆるメディア、eコマースのような新たなマーケティングミックスの要素、日常生活のあらゆる場面で登場するツールやアプリケーションなどもこれに含まれます。現在、デジタルという言葉が持つ意味は、「マーケティング投資に対するリターンを向上するためのデジタル技術の活用」であるとも言え、まさに広告主の多くが苦戦を強いられている分野でもあります。

マーケティングは、テクノロジーから最も大きな影響を受けている業界のひとつです。テレビが最大のメディアの座をスマートフォンに明け渡し、今やミレニアル世代はデジタルメディアの消費に最も多くの時間を費やしています。しかも、その30%以上はリアルタイムでテレビを視聴することすらありません。また、こうしたデジタルメディアへのシフトは、消費者をも変えつつあります。もはや情報はマスに向けた画一的なものではなく、個々の関心により細分化され、多種多様なライフスタイルを生み出しています。無数の情報チャネルと生活者ニーズによって断片化された市場において、テレビを中心としたマスマーケティングはそのリーチと精度の限界に達しているのです。

広告代理店やメディアはこのような変化に全力で抵抗をしてきました。そうした企業にとって、これまでテレビを中心としたマスマーケティングが多くの利益をもたらすものであったからです。しかし、テクノロジーの力学に深く根ざしたマーケティングにコミュニケーションのデジタルシフトを回避することはできません。進む方向はただひとつ。前進あるのみです。
多くの広告主はデジタルによるマーケティング課題の解決に漠然とした期待を抱いています。しかし、その大半は具体的な戦略を見出せず、従来のマーケティング活動に対する後付け的な対応に留まっているのです。デジタルによる成果を望むならば、マーケターはまずテクノロジーがマーケティング戦略に及ぼす影響を理解し、戦略を根本から見直さなければなりません。そうした覚悟とアプローチがなければ、デジタルの潜在力を真に活用することはできず、マーケティングパフォーマンスの低下を止めることはできないでしょう。

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ケビン・ケリーが著書「〈インターネット〉の次に来るもの ― 未来を決める12の法則」で表現するように、現在テクノロジーを推し進める力には様々なものがありますが、私はそのなかでも3つの力がマーケティング戦略に多大な影響を及ぼしていると考えています。アクセスを可能にするアドレサブル、トラッキングを可能にするインタラクティブ、そしてシェアを可能にするシェアラブル。これらのデジタルの特性は、マーケターのターゲティングや測定、リーチ、そしてクリエイティブに対する考え方をも変えるものなのです。

アドレサブル:個を特定し、アクセスする能力

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マーケティング戦略の本質はターゲティングです。マーケターは投資対効果を最大化するために、共通するニーズが特定でき、かつ十分なリターンを確保できる規模のターゲットを適切に選択しなければなりません。市場全体をひとつのオーディエンスとして捉えるマスマーケティングにおいて、リーチと正確性との間のトレードオフは、常にマーケターを悩ますジレンマです。

アドレサブル、またはデータに基づき個人(または世帯)を特定し、アクセスする能力により、マーケターは相互に重複しない複数のセグメントを同時にターゲットとできるようになります。より効率的なターゲティングが可能になるだけではなく、複数のターゲットを積み上げることで、リーチと正確性を両立することができるのです。アドレサブルという特性を活用すれば、マーケターは複数のセグメントのニーズに、同時に対処することが可能になるのです。数年以内にはテレビCMの一部もアドレサブルになり(http://digiday.jp/brands/ogino-vision_of_digital_shift_on_marketing_team/)、このような考え方が当たり前に求められるようになります。これは日本市場において大変大きなインパクトを持ち、多くの企業がデジタルのあり方について根本的な考えの見直しを迫られる要因となるでしょう。

インタラクティブ:反応をトラッキングする能力

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「インタラクティブ」という言葉は、反応を収集し、記録するという意味を持ちます。どの時代のマーケターも、計測を通じたパフォーマンスの改善を行ってきました。しかし、デジタルを活用すればより大規模に、リアルタイムで、非常に精緻にこれを行うことができるのです。また自動化を可能にすることで、作業負荷とリードタイムの大幅な低減が実現できます。インタラクティブの特性はダイレクトマーケティングの考えに基づき、デジタルに限定されるものではありません。しかし、デジタルであるからこそ、複雑な多変量テストや、リアルタイムのフィードバックを実現することができ、正確かつ迅速なマーケティングコミュニケーションの軌道修正が可能になるのです。

デジタルの出現以前には、 マーケターは高額なテレビCMのクリエイティブをプレテストと呼ばれる手法での精査を強いられていました。クリエイティブは一般に公開される前に、複数の指標に対して厳しくテストされ、多くの修正や妥協がつきものでした。優れたアイディアがこうしたプレテストの段階を勝ち残ることは殆どなく、公開にこぎつけるものはさらに少ないというのがマーケターの常識です。このように、ある特定のオプションが複数の変更のサイクルを経るリニアなプロセスでは、必ずしも改善につながるわけではなく、十分なスピードを得ることもできません。

デジタルで、テスト対象となるアイディアの数を限定する要因は制作能力とコストです。良いテストとは、各オプションのパフォーマンスが良好であることではなく、むしろパフォーマンスにおける大きな違いが記録されるものを指します。高速でパフォーマンスを改善するためには、豊富な選択肢からパフォーマンスの低いアイディアを排除することが不可欠です。マーケターは、一本の優れたクリエイティブを作ることから、制作予算内で最大数のクリエイティブを作成することへとシフトしなければなりません。

シェアラブル:生活者を介して情報を拡散する能力

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生活者はもはや、単なるオーディエンスではありません。現代の広告主のブランドメッセージを広める、最大かつ最も影響力のあるメディアなのです。生活者が、コミュニケーションの最も重要なチャネルである現代の市場において、ブランドはマーケティングコミュニケーションを単に伝えるためのものではなく、生活者を介して共有されるものへと作り変えなければなりません。

自身のタイムラインに目を向けさえすれば、生活者に対するコミュニケーションのあり方を再考せざるを得ないことがわかります。共有されるものはコンテンツだけであり、広告ではないのです。テレビCMや、プレロールのような動画広告というフォーマットは過去の遺物です。生活者がそれらを自ら見たがることはなく、若い世代であればあるほどわかりやすい広告には免疫があります。成功する広告とは、実際には優れたコンテンツであり、それがたまたま広告であるというものなのです。

現在のスマートフォンは動画コンテンツで溢れており、純粋な広告が入り込む隙はありません。単にタレントが製品特徴を話す15秒の動画が、友達が共有した面白い動画に勝つことができるでしょうか? マーケターは、競合他社より優れた広告キャンペーンを製作するということから、誰にとっても楽しめるコンテンツを恒常的に創り続けるこへとシフトしなければなりません。

テクノロジーの流れを止めることは不可能です。マーケターとして、私たちはアドレサビリティやとインタラクティブ性の向上、そしてよりシェアラブルなコンテンツを追い求め続けることでしょう。今私たちが行うべきことは、むやみに最新トレンドを追いかけるのではなく、不可避な未来に向けて確実性の高い計画を立案することではないでしょうか。もはや生活者とブランドの間には埋めきれないほどのデジタル・デバイドが生まれ始めています。デジタルに対する根本からのアプローチと、マーケティング戦略を再考する最後の猶予が、まさに今この時なのです。

※本記事はDIGIDAYに寄稿したコラムを転載しています。
※弊社代表取締役 荻野と、動画メディアスタートアップSpotwrightの代表 明石岳人氏の共同執筆です。

マーケティング全体を強化する、未来のデジタル組織の描き方

※本記事はDIGIDAYに寄稿したコラムを転載しています。

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理由なく新しいものを取り入れることを英語で、“Innovation for innovation’s sake”(イノベーションのためのイノベーション)といいます。経営者がトップダウンでデジタル化を推進するような企業でも、デジタル化そのものが目的化してしまうことは決して珍しいことではありません。デジタル推進の御旗を掲げる経営者の多くは、自身が専門家でないことを理由に、その目的や戦略を定義していないのです。その結果、目的が不明瞭なまま、戦略から実行までが、社内で十分な影響力や連携体制を持たない専門部署などに丸投げされてしまいます。

マーケティングにおいて、デジタルという言葉はもはやPOE(ペイド、オウンド、アーンド)などのデジタルメディアの枠に収まらず、調査から購買まで、マーケティング・プロセス全体に深く関わっています。これは小さな部署がカバーするには余りにも広い領域であり、優先課題を絞り込まなければ、幾ら投資をしても成果を得ることができません。しかし幸いなことに、マーケティング組織が抱えている課題や、適応すべき環境変化の多くは共通しています。経営者は「デジタルの専門家ではないから」という言い訳を捨て、先ずはマーケティング組織の今と未来のあるべき姿について、方針を決めるべきではないでしょうか。

デジタルメディアの重要性が高まっているとはいえ、一般消費財メーカーなどの投資額はせいぜいマーケティング予算の1割程度に留まり、所謂「デジタル施策」はマスブランドのマーケティングを大きく左右するものではありません。また、今やデジタル施策を滞りなく実行できる人材やベンダーは多く、その体制構築が大きな競合優位性に繋がることも考えにくい状況です。 デジタルの専門家や専門部署が担うべき役割は、デジタルメディアのマーケティング活用という限定的なものではなく、マーケティング組織全体のパフォーマンスを向上させるものであるべきです。

現状の優先課題:インサイトの発掘体制

マーケティングは本来、セリング(売る行為)を不要にする仕組みを作り、ブランドの継続的な需要を創出する役割を担います。そのためには生活者のニーズと、ブランドが提供する便益を合致させる必要があり、生活者が本当に求めていることの理解、すなわち「インサイト」の発掘が欠かせません。全てのマーケティング施策の起点となる、インサイト発掘はマーケターの最も重要な仕事であるといえます。しかし、その発掘には、常に発想の転換や、本質を問い続ける根気が求められ、ほとんどのマーケターにその余裕がないのです。上司へのレポーティングや、他部署との調整に忙殺され、彼らが実際にマーケティングの仕事を行う時間は決して多くはありません。また、確立されたブランドを担当するマーケターは、その歴史や既存のブランドイメージなど、様々な制約を抱えながら仕事を推し進めています。習慣化された業務に追われ、ブランドの固定概念に囚われたマーケターが、十分にインサイトを発掘することができない状況はどのマーケティング組織にとっても解決すべき優先課題の一つと言えるのではないでしょうか。

インサイトの発掘には従来、座談会やグループインタビューなど、生活者の声を直接聞く手法が用いられてきました。しかし、それでは得られる情報が少人数の意見に限定され、発言の内容も、場の雰囲気や他人の意見に流されてしまいます。また、そもそも内向的な人物は、そのような場に足を運んでくれないという可能性も否めません。ネット調査の普及に伴い、様々な生活者の声を低コストで集められるようにはなりましが、ポイントなどのインセンティブが存在し、一方的に回答を得るだけのオンラインアンケートでは、回答内容の正確性だけでなく、インサイトに近づくための思考の深さが期待できません。現在ではオンラインで不特定多数のユーザーと、継続的な対話が行えるMROC(Market Research Online Communityの略。生活者の声を傾聴したり、観察をしたりすることで気づきを得るという手法。)を通じて、この課題を解決することができます。

MROCの活用は、日本でもインサイトの発掘と、数々のブレークスルーの成功事例を生み出しています。Blabo!*というサービスを活用した「ガリバー」のショッピングモール出店計画もその一つです。

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*Blabo!は、「企業と生活者の“重なり”をつくる」をモットーとし、全国に1万4千人のユーザーに、企業が直接問いかけることができる「アイディア共創プラットフォーム」です。コミュニティとのオンラインでの対話をベースに、企業と生活者の本音を重ね合わせることで、インサイトの発掘からコンセプトの開発までを実現するサービスを提供しています。

ガリバーは、中古車の販売台数を伸ばすために、家族連れが多く訪問するショッピングモールへの出店を計画していました。しかし、Blabo!を通じて生活者のニーズを調べた結果、ショッピングに行くことが目的なのではなく、「週末どこに行っていいのかわからないから、とりあえずショッピングモールに行っている」という本音を見つけることができました。そして、Blabo!によって開発された”おでかけのきっかけを提供する”というコンセプトと共に、キャンピングカーやバイクのレンタル、おでかけに持って行きたい雑貨の販売など、全く新しい施策を打ち出し、多くの家族連れの獲得に成功したのです。

Blabo!では、回答に金銭的なインセンティブが発生しないため、「自分の話を企業が直接聞いてくれる」「自分のアイディアが世の中に出るかもしれない」という純粋な期待を持ったユーザーが、企業の課題に真摯に向き合ってくれます。ユーザーが一つの回答に何時間もかけることも珍しくなく、深い洞察に基づいた回答が多く得られることがポイントです。ほかのBlabo!の事例では、生活者がシチューを買わない背景に「ごはんに合わないから」という理由が挙げられ、他のユーザーとのやりとりの中、で具体的な解決策までも浮かび上がっています。

テクノロジーを活用し、低コスト・短期間でインサイトの発掘ができれば、マーケティング効果は飛躍的に向上します。最新のマーケティングトレンドを取り入れた、場当たり的なデジタル施策よりも、遥かに優れた投資先であると言えるでしょう。全てのマーケティング施策において、確実に、そして継続的にインサイト発掘が行われる体制は、どのマーケティング組織にとっても大きな価値があるはずです。

未来の優先課題:アドレサブルTVの到来

アメリカでは既に、ケーブル・サテライトTV契約者の半数、約5000万世帯がリアルタイムの世帯別TVCM配信、”アドレサブルTV”に対応しています。テレビとスマートフォンのマッチングも進んでおり、一人のユーザーに向けて複数の端末で広告を配信するクロスチャネル・ターゲティングも可能になりつつあります。数年以内には、日本でもターゲティングされたTVCMの配信が開始され、オリンピックを機に、テレビの買い替えや、新しい通信サービスの加入など、ハードウェアとデータのインフラ整備が一気に進むはずです。他国に比べて圧倒的にテレビの影響力が強く、2020年以降もその維持が見込まれる日本において、アドレサブルTVが広告市場に与えるインパクトは計り知れません。

アドレサブルTVにより、広告主はターゲットごとに最適なメッセージを届けることができるようになります。また、商品やサービスに有用性を感じない生活者への広告配信を減らすことで、費用対効果の向上や、ブランド毀損を抑制することができます。広告主のメリットがとても多いことから、最初は少ないアドレサブルTVのインベントリも、いずれ全てのTVCM枠へと広がり、現在のデジタル広告のような細かいターゲティングや、厳密な効果測定がTVCMにも当たり前のように求められるようになるでしょう。デジタルの手法がテレビの世界に飛び出すアドレサブルTVの到来は、マスマーケティングの終焉とも言え、従来の広告やマーケティングの考え方を一変させるはずです。そんな、そう遠くない未来に向けてマーケティング組織はどのような対応を進めれば良いのでしょうか。

競合優位性となるデータ投資

アドレサブルTVの広告配信には、様々なオーディエンスデータが適用されます。年齢、性別、家族構成、居住地などの基本的なデモグラフィックデータは、現在でもサードパーティーによる提供が可能であり、どの企業もアクセスできるものです。しかし、独自のターゲティングを可能にするデータ資源は、将来的な競合優位性なり得ます。また、広告反応率の高いターゲット属性を事前に分類し、事前に効果的なターゲティングのナレッジを貯めておくことも重要です。企業は現在のデジタル施策や、データへの投資を、将来的な競合優位性、そしてテレビとのインテグレーションの可能性を踏まえて進める必要があります。

データドリブンなワークフロー

デジタル広告にはアドレサビリティ(オーディエンスデータに基づくターゲティング)に加え、相手の反応をリアルタイムに集計する、インタラクティブという特性があります。インタラクティブな広告は、視聴者の反応に基づき、配信期間中にその継続の有無を判断することが可能です。反応のボラティリティー(変動率)が高い、広告クリエイティブや配信条件のバリエーションの中から、速やかに、効果的なものだけを選別し、広告費を集中させることがマーケティング効果の向上につながります。もちろん、視聴者の反応に基づき、クリエイティブの内容や、ターゲティングの属性を調整することも重要です。マーケティング組織は、将来的に効果の高いTVCMが配信できるよう、オンライン動画などの施策を通じて、データドリブンなワークフローを確立すべきです。

効果測定・評価方法の統一

世帯ごとの視聴データが集計可能になれば、GRPという曖昧な指標は意味を持たなくなります。デジタル広告の評価に用いられる指標が加わり、より厳密な効果測定と評価方法が確立されていきます。リーチした人数に基づく量的指標、ブランドリフト調査から態度変容の度合いを示す質的指標、そして、ファネルの段階毎の一人あたりの獲得単価を示す価値指標。これらの指標を総合的に分析することにより、広告の投資対効果や、優先的に改善すべきマーケティング課題を明確化することができます。テレビとデジタルの融合に向けて、企業は部署やブランド横断的に、統一された効果測定・評価方法を確立しておくべきでしょう。

バリエーション制作ノウハウ

ターゲティングされた広告のクリエイティブに対する考え方は、現在のTVCMなどのマスマーケティング施策とは大きく異なります。大衆に向けて一つのメッセージを発信するマスマーケティングでは、より多くの生活者との関連性を高めることが重要ですが、ターゲティングされた広告では、小さなニッチセグメントが持つピンポイントなニーズと合致が重要になります。企業が生活者に提供できるメリットは、ターゲットの年代、性別、就業状況、家族構成などによって、大きく変わります。投資回収の見込みを計算し、異なるニーズを持った小さなセグメント毎に最適なクリエイティブを作成するのです。

広告クリエイティブのバリエーション制作にはそれなりのコストと時間がかかります。10のセグメントに向けた動画を作成するために10倍の制作予算をかけることはできません。アドレサブルTVの時代には、限られた予算と時間の中で、様々なニッチセグメントのニーズに合致する、より多くのバリエーションを制作するノウハウが求められます。

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私たちは今、マーケティング組織の現状と、未来のメディア環境変化に合わせて、戦略的な組織の改革を進める必要があります。理想の体制は、組織ごとに違うかもしれませんが、継続的にインサイトが発掘できる体制と、アドレサブルTVに対応できる体制はほとんどの広告主が必要とするものではないでしょうか。経営者はデジタルな施策を自ら実行する必要がなくても、その可能性と変化のスピードを理解し、有利な状況を創りだすマーケティング組織のビジョンを描かなければならないのです。

テレビCMが効かない時代にマスブランドがすべきこと

※本記事はDIGIDAYに寄稿したコラムを転載しています。

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あなたの最近のお気に入りはなんでしょうか?自分の趣味やテイストだけでなく、生活スタイルにもぴったりマッチしたモノはありますか?それは少しこだわりのあるガジェットや、化粧品、コンビニの食品などかもしれません。決して誰もが知るマスブランドでは無く、自分と周りの知人の間だけで流行っている、所謂マイブームです。しかし、このような商品が広告を打たずに突然広く流行りだすことがあります。むしろ最近のヒット商品の大半は市場全体に向けたマスマーケティングではなく、小さなセグメントからの支持によって生まれているのです。

テレビ広告が効かない断片化市場

この現象は、メディアと生活スタイルの多様化から生まれています。現代の消費者は何時でも欲しい情報にアクセスできるようになり、フィルターバブルという自分に最適化された情報空間に囚われています。興味のある情報は一瞬にして伝達するにもかかわらず、他の情報は届きにくくなります。こうしてソーシャルメディアやモバイルテクノロジーの普及とともに、市場は共通する興味だけでつながった無数の細かいセグメントに分解されて行くのです。

個々のセグメントは少しずつ異なるニーズを持っており、市場は一見、たくさんのニッチマーケットの集合体のようにも見えます。企業はこれらのニーズを満たすために多くのブランドエクステンションや商品バリエーションを展開します。もちろん、競合もシェアを奪われないために同様に商品を展開します。そして、より高い認知を獲得するためにテレビCMを打つのです。しかし、ニーズの異なる無数のセグメントに一つのメッセージを投げかけても、受け入れられる訳がありません。「テレビCMはもう効かない」と言われるのは、単にテレビのリアルタイム視聴が減ったからではなく、市場の断片化によってマスマーケティング自体が通用しなくなってしまったからなのです。

バリアラダーとクチコミの特性

消費者が特定の商品を買わない理由を6段階に分けた、バリアラダーというフレームワークがあります。下に行くほど重大な問題であり、マーケティングで解決すべき課題がわかるようになっています。断片化市場では、一定量の消費者から3段目の「共感(レレバンス)」を得ることがとても難しくなっています。マスマーケティングに依存するブランドにとって死活問題です。しかし、小さなセグメントの支持から生まれるヒット商品は「共感」だけでなく、更に上の「信頼」や「優位性」をも一気に超え、広く受け入れられていきます。その理由はクチコミという情報の特性にあります。

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あなたは会ったばかりの人に大切な仕事を任せますか?そんなことはしない、と答える人がほとんどでしょう。しかし、これが信頼する人物からの紹介ならどうでしょう?紹介者への信頼がそのまま被紹介者に移り、試しに何かの仕事を任せてしまうかもしれません。直接的なクチコミは「認知」から「信頼」までのバリアを一気にクリアしてしまいます。そして、その時点でより良い選択肢がなければ、人は勧められたものをそのまま受け入れてしまうのです。

クチコミへの依存度を高める情報氾濫

無数の商品の選択肢とそのマーケティング、そして消費者間で発信・共有される情報。私たちが日々接触する情報量は爆発的に増えています。あなたはあまりの情報の多さに、Amazonや楽天での買い物を諦めたことは無いでしょうか?特にスマートフォンの小さな画面で様々な商品スペックやレビューを比較し、最適な商品を選ぶことには誰もがストレスを感じるはずです。私達の情報認識能力には限界値があり、それを超えると思考停止に陥ってしまいます。情報の氾濫は、合理的な購買判断の妨げとなり、私たちが他人の意見に耳を傾け、盲目的な信頼を寄せてしまう原因となっているのではないでしょうか。

更にデジタルメディアの接触時間が増えるほど、企業からの直接的なメッセージは届きにくくなります。オンラインはブランドではなく消費者が情報の選択と伝達を行う、広告主にとって最も過酷な環境です。Webやソーシャルメディアは広告を見せるためではなく、人と人がつながるために進化してきました。私たちはコンテンツが見たいだけではなく、その体験を共有したいのです。情報の共有が中心であるオンライン環境では、ほぼ全ての広告が無視されてしまいます。企業がデジタル広告で劇的に露出を高めても、間接的な消費者間の対話を引き起こすことができなければ大したマーケティング効果は得られないでしょう。

ネットワークバリューと熱狂的体験

断片化市場では、大衆に向けて一つのメッセージを投げかけるマスマーケティングは通用しません。しかし、マスブランドが小さなニッチマーケットを狙っても、十分な投資対利益は見込めません。また、細かいニーズに合わせて様々な商品バリエーションやブランドエクステンションを展開しても、数とともに成功率は減少し、マーケティング組織は疲弊します。マスブランドを担当するマーケターは、現代の断片化市場にどのようにアプローチすべきなのでしょうか。

ニューヨークタイムズ・ベストセラー作家のマルコム・グラッドウェルは、2000年の著書『ティッピング・ポイント』の中で、社会的流行は少数の特殊能力を持った人物によって起こされると述べています。これらの人物は、権威ある立場から情報を発信するメイブン(通人)、広いオーディエンスに情報を広めるコネクター(媒介者)、そして情報に懐疑的な相手を説得するセールスマンに分類されます。現在はソーシャルメディアの特性上、優れたコンテンツを配信するメイブンと、広いリーチを持つコネクターの境界線はなくなっています。中にはもちろんセールスマンの特性を持ち合わせた人もいるでしょう。このような人物は、企業が従来ターゲティングにおいて重視してきたライフタイムバリューとは異なる価値である「ネットワークバリュー」を持っています。

マスブランドが現代の市場を攻略するためには、このようなネットワークバリューの高い消費者の発信力と伝達力を無視することはできません。市場はもはや直接的に語りかける「オーディエンス」ではなく、情報を流通させるための「ネットワーク」へと変化しているのです。しかし、インフルエンサーに謝礼を払い、アンバサダーとして商品を紹介してもらっても、その情報はインフルエンサーの周りにしかリーチしません。オーディエンスのオーディエンスへとリーチするためには、彼らの熱狂的な支持を獲得しなければならないのです。これはマスマーケティングでは不可能ですが、共通の興味によってつながっている小さなセグメントであれば、感動的な体験を提供することは可能です。

情報を伝播させる3つのポイント

断片化市場でヒットを生むためには、マーケターはネットワークバリューの高い層を見つけ出し、熱狂できる体験を提供します。しかし、それだけでは情報は広がらず、小さなニッチマーケットの中に収まってしまいます。情報を広く伝播させるためにはポイントが3つあります。

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私たちは自分自身ではなく、周りが興味を持つ情報を共有する傾向があります。熱狂的なファンが発信した情報が、二次的、三次的に共有されていくためには、少数がではなく、できるだけ多くの人が興味を持つ情報でなければなりません。更に、情報の共有に少しでも自己表現の機会が含まれていれば、共有される確立は劇的に高まります。また、その自己表現が本人にとってプラスに働けば、情報共有の動機付けを行うことができるのです。

アフリカ全土を熱狂させたABSOLUT VODKA

VML NATIVEのジェイソン・ゼノプロス氏は私が心から尊敬するクリエイターの一人です。彼の手によって展開されるマーケティング施策は最新のテクノロジーを駆使し、消費者の心に響くだけでなく、必ずクライアントに大きな収益成長をもたらします。ペルノ・リカールが保有する世界的なウォッカブランドのABSOLUTは、様々な人種や文化の違いによって、日本よりも遥かに断片化が進んでいるアフリカ市場での「共感」の獲得に悩んでいました。ジェイソンは先ずネットワークバリューの高いセグメントとして「アフリカ音楽のファン」を選び、MTVとのコラボレーションを通じて当時最も人気の高い5人のアーティストを起用し、音楽好きに響くコンテンツの配信やキャンペーンの展開を開始します。そして「Africa is Absolut – #BeAbsolut」という、アフリカ人としてのアイデンティティを刺激するキャンペーンをアフリカ全土で展開し、消費者に自分が如何にAbsolut(絶対的)であるかという自己表現を求めます。その結果、ソーシャルメディアから爆発的な反響を生み、Absolut Vodkaの社会的流行を巻き起こすのです。

もはや時代遅れのマーケティングは通用しません。企業が広告で直接的に消費者に語りかけ、ブランドを創る時代は既に終わっているのです。ブランドは消費者が自らの手で創りあげるものであり、企業はその手助けをするしかないのです。マスブランドが今必要としているのは、テレビ広告の広いリーチなどではなく、ブランドを広めてくれる熱狂的な伝道師たちなのではないでしょうか。

ビッグデータが利益ではなく損失につながる理由

※本記事はDIGIDAYに寄稿したコラムを転載しています。

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あなたの会社にはどれだけのデータがありますか?今までそのデータに幾らの投資がされましたか?ビッグデータ市場は2020年までに6兆円に達し、広告市場の1割以上の規模に成長します。マーケティングROIの向上や、競合優位性の確立を期待し、世界中の企業が競ってデータ保有量を伸ばしているのです。しかし、大量のデータを保有することが本当にビジネスの成功につながっているのでしょか?現実はそこまで単純ではないようです。

ビッグデータは本来ほとんどの企業にとって無縁なものです。実際に企業が保有するデータの9割弱は、活用どころか集計すらされていません。世界中のWebページを評価するGoogleであれば、確かにビッグデータを必要とする課題を多く抱えているのかもしれません。しかし、同様に巨大なテクノロジー企業のFacebookでさえ、ほとんどのタスクに必要なデータの量はノートPCでの処理が可能なMB〜GBの規模であると言います。

データの価値はその量ではなく、抽出できる情報で決まります。ソーシャルデータからカスタマー・エクスペリエンスを最適化するリチウムテクノロジーズのマイケル・ウー博士は「データから抽出できる情報は、データ量の増加に伴い漸近的に減少する」と述べています。価値ある情報を得るための計算や分析は、データ量の増加と共に難しくなるため、「大量をデータを分析すれば、今まで見えなかったパターンや、予想外のインサイトが得られるだろう」という考えは非現実的なのです。

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過去にもバーコードのスキャニングやCRMなど、新しいデータ技術が登場する度に多くの企業が計画性のない投資を行なってきました。Webキャンペーンなどから数十〜数百万人規模の詳細なデータを収集したのにも関わらず、今では定期的なメルマガの配信にしか活用していない企業も少なくはないはずです。戦略なしに新しい技術に投資をしても対価が得られず、いずれ盲目にイノベーションを求めることが愚策であることに気付くはずです。この失望と投資削減の段階を乗り越えることができれば、現実的なデータへの投資と活用を実現することができるはずです。では、新しい技術が登場する度に、企業が同じ間違いを繰り返してしまう理由は一体何なのでしょうか?

問題はデータの活用に対する企業の手法先行型のアプローチです。データに対する成熟度が比較的高いアメリカでも、多くの企業がデータの活用法に悩んでいます。多額のデータ投資を行うフォーチュン1000企業のうち63%は、データがビジネスに貢献しているかがわからないと言います。ROIを実感している企業も、その大半は1%程度の収益成長しか見込んでいないのが現状です。これは多くの企業がデータに対して未だ場当たり的な対応をしていることを意味するのではないでしょうか?

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幾つかの企業はROIの高いビッグデータ施策を実現しています。AMEXやT-MOBILEはユーザーの行動から解約の予測と防止に成功しています。詳細な顧客データをオフラインのビジネスに活かせていないWAL-MARTも、ユーザーの検索行動の予測からECの売上を数千億円単位で伸ばしています。UPSは配送ルートの最適化から1500万リットルの燃料を削減。DELTAは乗客自身が荷物のトラッキングを行えるサービスを提供し、ロイヤルティの向上に成功しています。P&Gはソーシャルメディアや購買データなどから新商品開発のための市場トレンド予測に成功していると言います。これらの企業の違いは、データを活用する目的が明確であることです。データからROIを得ている企業は解決すべき課題を定義し、そのために必要なデータを収集しているのです。

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来園者のプロフィールや行動データから、接客対応を最適化するディズニー・パークスのマジックバンドも、ある課題を解決するために開発されました。全ての財務指標が順調であったにも関わらず、1000億円以上を投じてディズニー・パークスが解決したかった課題は「初回来園者満足度の低下」です。パークの将来を左右するこの指標を改善するために、ディズニー・パークスは最大のアセットであるキャストの最適化を戦略とします。そして、キャストが一人ひとりの顧客を識別し、パーソナライズされた接客を提供できるよう、顧客データを収集するマジックバンドの開発を決断するのです。

データのマーケティングに活用を考えると、私たちはついデジタルという小さな枠に囚われてしまいます。しかし、デジタル広告比率の低い日本において、バナーのCPA改善などは優先的に解決すべきビジネス課題であるとは言えません。マーケティングの成功を決定付けるそもそもの戦略の立案や、市場を変える新商品の開発、多額の広告費を要するテレビ広告の最適化など、より重要な課題が他にたくさんあるはずです。

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課題を定義して初めて、その解決に活用すべきデータを選定することができます。例えばマーケティング戦略を立てる場合、工程ごとに活用すべきデータの種類は異なります。セグメンテーションを行うためには、正確なデモグラフィックやカテゴリーに適した属性(車カテゴリーの場合は年収データなど)を含むオーディエンスデータを活用します。データを通じて配信された広告への反応から、最適なセグメントの分類方法やセグメント毎に適した訴求軸を割り出すことができるのです。ターゲティングにはセグメント毎の人口、ブランド認知率、購入意向率、購入率などのデータを活用します。投資回収に必要な顧客獲得数を軸に、達成の見込みが最も高いセグメントの特定や、マーケティング施策のKPIとなる量的、質的、価値指標の設定を行います。ポジショニングには、ターゲットが重視するニーズの重要度、需要規模、そして競合による充足率などのデータを活用し、ホワイトスペースの特定や、理想と現状の差異を埋める差別化、同質化要因を割り出すことができます。

オープンデータの公開と活用を推進するオープン・ナレッジ・ファウンデーションのルーファス・ポロック氏は、「ほとんどの企業にとって価値のあるデータとは、特定の課題解決にフォーカスした小規模なスモール・データである」と述べています。企業がデータからROIを得るためには、先ず課題が何であり、次にその解決にどのようなデータが必要かを理解しなければなりません。

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課題を定義することはできても、データドリブンマーケティングの経験が少ないマーケターには、データの選定や分析方法の定義ができません。これには定量的に物事を捉え、因子分析に長けたアナリストのサポートが必要になります。目的から手法を考える戦略的思考プロセスに加え、マーケターとアナリストが密接なコラボレーションを行う環境がなければ、データからROIを得ることはできないでしょう。

たとえ世界中のデータを保有していても、解決すべき課題がわからなければ、データからROIを得ることはできません。ましてや活用できないほど肥大化したデータはその収集、保管、分析に多くのリソースを要し、企業に損失を与えるものへと変化してしまいます。「データの有効活用法を考えて欲しい」「マーケティングにビッグデータを活用したい」このようなリクエストを出す企業は一度根本に立ち返り、解決すべき課題と必要となるスキル、人材、そして体制について考え直す必要があるのではないでしょうか。

データドリブンマーケティングマニフェスト

※本記事はDIGIDAYに寄稿したコラムを転載しています。

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データドリブンとは統計的な数字に基づいて判断・行動することを意味します。データドリブンマーケティング(以下DDM)に対する理解が高いUS、UK、オーストラリアなどの成熟市場では、データを直接収集・活用できるデジタル広告の比率が広告費全体の50%を超えています。また、デジタル広告以外でもオーディエンスの分析、メディアミックスの最適化、顧客セグメンテーション、ターゲティング、コンテンツやクリエイティブの改善など、様々なマーケティング判断にデータが活用されています。

グローバル企業の経営者の64%が、競争を勝ち抜くためにDDMは欠かせないと述べています。DDMを実施する企業は、実施しない企業に比べて6倍の確率で競合よりも高い利益率を実現しており、その有効性に議論の余地はありません。継続的な成果が求められるマーケターにとって、再現性の高いDDMへの取り組みは最優先事項であり、広告主とエージェンシーの双方で、データ中心的なマーケティング活動を可能にする体制構築が急がれています。

残念ながら日本ではDDMに対する取り組みはそれほど進んでいません。デジタル広告比率も23%に留まり、2020年の時点でも27%という低成長が予想されています。その背景にはマーケティング効果に大きなインパクトを与えるオーディエンスデータが成熟市場に比べて少ないことや、依然としてテレビの影響力が強いことなどが挙げられます。しかし、私は日本でDDMが普及しない一番の理由にマーケティング業務に対するアカウンタビリティーの違いがあると思います。
日本よりも遥かに競争の激しいUSでは、成果を出し続けなければ企業のマーケターも、エージェンシーも簡単に職や仕事を失います。彼らには優れたクリエイティビティはもちろんのこと、仕事における成果の継続性が厳しく求められるのです。どんなに経験豊富なマーケターも、自身の感覚だけを頼りに資金や人員などの貴重な経営資源を消費することはできません。再現性の高いマーケティングを実施し、成果を出し続けることが一人ひとりの責務に直結しているからこそ、DDMに対する高い需要が存在しているのだと思います。

日本ではこのようにマーケティング施策のパフォーマンスが、個々のキャリアを大きく左右するようなことはありません。それどころか、マーケティング施策の成果指標すら明確でないことが往々にしてあります。DDMに対する関心と理解が広まらない理由は、マーケティングの分野において個人のアカウンタビリティーが少なく、データドリブンな考え方の必要性を感じ難いからではないでしょうか。

Without data you’re just another person with an opinion.
– W. Edwards Deming

日本企業は過去にデータドリブンな考え方を取り入れ、国際的な競争力の獲得に成功しています。「データがなければ、それはただの意見に過ぎない」という名言で知られるW・エドワーズ・デミングは、1950年代にデータに基づく製造工程の管理方法を日本の製造業に広めました。デミングの教えを受け、日本製品は品質を大幅に向上させ、その後の世界市場を席捲します。もしデミングがデータドリブンな考え方を継承していなければ、又は当時の経営者たちが彼の考え方を軽視していれば、日本が経済大国への道を歩むことはなく、私たちのライフスタイルは大きく変わっていたかもしれません。

デミングの時代から半世紀以上が経過し、企業の成長は製造技術よりもブランド力やマーケティングに左右されるようになりました。成熟市場のブランドが確実なデータを基に創り上げられるなか、DDMを実施しない日本のブランドが世界的な競争を勝ち抜くことはできないでしょう。今の日本には業界全体を正しい方向へ導いてくれるデミングのような人物もいません。私たちマーケティング実務者の一人ひとりがデータの重要性を理解し、DDMを通じてブランドを育む成功体験を積み重ねることこそが日本のブランドに世界的な競争力を与えるのです。では私たちがDDMに取り組むためには何をすれば良いのでしょうか?

目的の定義

手段の目的化はどんな仕事でも簡単に起こり得ることです。DDMでは扱うデータの量に応じて業務が複雑化・肥大化し、目的を見失いやすくなります。単にデータを活用することや、ビジネスインパクトの無い部分最適に陥らないよう、マーケティングROIの継続的な改善を目的としましょう。

KPIの設計

マーケティングプロセス全体を定量的に描き、マーケティングROIの因数を分解します。量的指標、質的指標、価値指標をベンチマーキングし、計測可能な数値を基にマーケティングROIの算出、マーケティング施策の評価を可能にします。

価値あるデータの獲得

DDMで価値のあるデータとは、コストの大きい広告のパフォーマンスに大きな振れ幅を生むものです。広告反応やその後の行動に大きな差がなければ、改善をすることはできません。直接ターゲティングに活用できるアドレサブル・データである、または連携可能であることもその価値を大きく左右します。

先ずはファーストパーティーDMPを導入し、手元にあるデータの分析から始めるという考えもありますが、私はこれは間違っていると思います。一般的な企業が保有する生活者のデータは量も項目数も少なく、十分なパフォーマンスの振れ幅やスケールを生み出すことができません。面白いインサイトが得られたとしても、リソースに対するリターンを得ることができなければ、マイナスを生み、手段の目的化に陥ります。数千万人規模の詳細なサードパーティーデータが活用できるにも関わらず、自社データの有効活用や、データの保有条件などにこだわることはナンセンスではないでしょうか。DDMを始める際は、豊富なデータを保有するパートナーの選定を行うべきです。

データの視覚化と共有

せっかくのデータもマーケティングROIの改善に役立てられなければ無駄に終わります。マーケティング組織全体が様々な判断にデータを活用するためには、ビジュアライゼーション(視覚化)と共有が欠かせません。データを組織の共通言語とするために、データの分析や活用を出来る限り簡単にすることを心がけましょう。

Marketing is the science and art of exploring, creating, and delivering value to satisfy the needs of a target market at a profit.
– Phillip Kotler

コトラーはマーケティングを「営利を目的とした価値創造の科学であり、芸術である」と表現しています。DDMは、「データを活用した営利目的の価値創造の科学」であると言えるでしょう。押し付けがましい広告ではなく、生活者にとって価値あるブランド体験の実現にデータを役立てることこそがDDMであると言えます。そのためにはPVなどの量的指標や、CPAなどの価値指標だけでなく、ブランド好意度、顧客満足度、購入意向度、NPSなどの質的指標を重視する必要があります。私たちはデータを通じて、生活者の心を理解することで、科学的に再現性のあるブランドの創り方を習得しなければならないのです。

SXSW2016に見るストーリーテリングへの回帰

※本記事はDIGIDAYに寄稿したコラムを転載しています。

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テキサス州オースティンで毎年開催されるアイデア・セントリック・カンファレンス、SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)。ここでは様々な業界リーダーや著名人がインタラクティブ、フィルム、ミュージックの分野でプレゼンテーションやディスカッションを主催し、新しい、革新的なアイディアに発表の場を与えています。インタラクティブ部門は、最先端技術やデジタル・クリエイティブを育む場となっており、明日のテクノロジーに関する大局的な分析や、実験的な実施に今日触れることができます。オースティンで受けたインスピレーションを基に、世界各地の専門家が新しいことにチャレンジすることで、SXSWは業界全体の発展に貢献しているのです。

今年発表された数々のマーケティング関連のトピックからは、ある共通点を見ることができます。それは、ブランドがインターネットに溢れる情報の喧騒を打破(Break through the clutter)し、消費者との繋がりを生むためにはストーリーテリングが欠かせないというものです。今回は先月のSXSWで発表された内容を、以下の4つのトレンドにまとめます。

1. 消費者とのつながりを生むブランドストーリー
2. 感情トリガーの重要性
3. ブランドストーリーを代弁するインフルエンサー
4. コンテンツコントリビューターの台頭

1. 消費者とのつながりを生むブランドストーリー

テクノロジーで消費者体験を拡張することはできます。しかし、オーディエンスとの密な関係を創るためには、依然として人間的な要素を含むブランドストーリーが欠かせません。どんなプラットフォームにおいても、人がコンテンツに期待するのは、何かを売ることだけではありません。人を楽しませたり、役に立ったりするストーリーがなければ、それは一方的な宣伝に過ぎないのです。

質の高いストーリーテリングはもはやオーディエンスに驚きを与えるものではなく、当り前に求められるものです。優れたストーリーは、広告や店頭、PRやソーシャルメディアなど様々なブランドとのタッチポイントで活用できます。テクノロジーによってブランドはこのストーリーを広く、簡単に消費者に届けることができるようになりました。しかし、ストーリーの開発にかける時間やクリエイティブなプロセスを省略することはできません。テクノロジーは所詮ストーリーの伝達方法に過ぎず、ターゲットに共感されるブランドストーリーがなければただ需要を刈り取るだけの宣伝になってしまうのです。

1.1. ノートンのドキュメンタリー:インターネット上で最も危険な街を求めて

デジタルセキュリティのカテゴリーをリードするノートンは、「In Search of the Most Dangerous Town on the Internet(インターネットで最も危険な街を求めて)」というドキュメンタリーシリーズで、サイバー犯罪の暗く、かつ魅力的な世界を明らかにしました。ルーマニア中部の人里離れたリムニク・ヴィルチャの街は、世界中で最もサイバー犯罪が多い都市の1つです。映像は都市部を中心としていますが、その内容からは、共産主義の崩壊、コンピューターアクセス、高い水準の教育を受けている人口、そして国内のビジネスチャンスの少なさなどの複合的な理由から、ルーマニアの国全体がハッキングの温床となっていることがわかります。

1.2. ペルーの貧しい子供たちに空の旅を

ペルーの航空会社LANは、企業のCSRプログラムとして、僻地の経済的に恵まれない子供たちに、首都のリマへの無料旅行を提供するプログラムを実施しています。5年間にわたり、「Kids That Dream, Kids That Fly(夢みる子供、空飛ぶ子供)」と題されたこのキャンペーンで、国内でもとくに貧しい子供たち350人に飛行機旅行の初体験をプレゼントしてきました。

1.3. ウェンディーズがレタスの旅で食材の新鮮さをアピール

ウェンディーズは「Wendy’s Romaine Lettuce Journey(ウェンディーズのロメインレタスの旅)」というオンライン動画で食材の新鮮さをアピールしました。レタスに装着されたヘッドマウントカメラの主観的な映像で、農場からレストランまでのレタスの旅を追いかけています。

「今も昔も、ストーリーテリングには時間と労力がかかります。テクノロジーにそのギャップを埋めることはできないのです。」 – J.J. エイブラムス
セッション:「The Eyes of Robots and Murderers(ロボットと殺人者の目)」2016.3.14

2. 感情トリガーの重要性

消費者の購買行動は論理的であるとは限りません。多くの場合、それは漠然とした感覚に基づいており、何らかの感情トリガー(引き金)が存在します。データに基づき、相手が強く共感するトピックを見つけ出し、ブランドが提供するベネフィットを合致させることができれば、商品を広告やコンテンツの全面に出す必要は無いのです。

2.1. 飼い主とペットが互いを救い合う動物愛護協会のキャンペーン

II型糖尿病を患い、社会的隠遁状態のエリックさんは、シェルターから犬のピーティくんを迎え入れます。この動画では、ペットとの生活が飼い主自身が病を克服させ、健康的で幸せな生活をもたらすという実体験が、実写と線画アニメーションを組み合わせて美しく描かれています。

2.2. 家族愛を刺激するドイツの食料品チェーンのクリスマス広告

年老いた男性が娘から今年のクリスマスは彼女たち家族は帰れないというメッセージを受け取ります。来年には必ず帰れるようにするから、と。そして彼の孫娘が電話口で「メリークリスマス」と叫びます。後に家族は彼が亡くなったことを知り、全員が家に集まると、一緒にクリスマスを過ごすために父が自身の死を演じていたことを知ります。

2.3. バドワイザーが飲酒運転に対する意識向上を求める

バドワイザーは「Simply Put(端的に言えば)」という60秒間のスーパーボウル広告で、飲酒運転の問題に言及しました。イギリス人らしいシニカルさと容赦ない口調で、女優のヘレン・ミレンがアメリカ人をその意識の低さを厳しく叱責し、視聴者に気づきを与えるという内容です。

「共感と人のつながりは、より多くの視聴者にリーチするための超能力です。」 — フランク・クーパー、BuzzFeed
セッション:「The Future Of Media Companies(メディア企業の未来)」2016.3.12

3. ブランドストーリーを代弁するインフルエンサー

ブランドストーリーの代弁者であるインフルエンサーは、オーディエンスの行動に大きな影響を与えます。彼らはメッセージを広めるだけでなく、周りのコミュニティとブランドとの対話を生み、ロイヤルティーなどのブランディング指標の向上に貢献します。
インフルエンサーを起用する際は表現力があり、誠実で、ブランドとオーディエンス、そしてメディアの性質を十分に理解している人物を選びましょう。更に無償で、自主的にブランドストーリーを広めてくれるインフルエンサーを獲得することもブランドの成功にとってはとても重要です。

3.1. HPのインフルエンサーによる商品紹介

ミレニアル世代のエンゲージメントを獲得する取り組みとして、HPはソーシャルメディア上のインフルエンサーがノートPCの特徴を解説する動画シリーズを公開しました。動画の1つでは、体操選手でオリンピックメダリストのサマンサ・ペスゼックが、HPのノートPCを使用して運動ルーチンの微調整を行っている様子が紹介されています。

3.2. アディダスのインフルエンサー主演のイメージビデオ

Adidas Originalsのイメージビデオには4人のインフルエンサーが主演しています。ライフスタイル・ブロガーでモデルのアレリー・メイ、クリーブランド・キャバリアーズのイマン・シャンパート、歌手でDJのキュー・スティード、そしてアーティストのデザイン・バトラーです。それぞれがディストピア的な空間を歩き抜け、トンネルの向こうにある明るい未来へとたどり着く内容になっています。

「あなたがオンラインで会話を起こさなくても、必ず他の誰かが起こします。」 — ダンテ・バスコ、俳優
セッション:「The Social Celebrity Secret Sauce(ソーシャルセレブリティーの秘訣)」2016.3.14

4. コンテンツコントリビューターの台頭

ブランドのクリエイティブチームの一部とも言えるコンテンツコントリビューターは、ブランドが運営するメディアに高品質なコンテンツを提供し続けてくれます。専門知識を持つエキスパートに、コンテンツ掲載の場やツールを提供することで、ストーリーテリングのファシリテーションを行いましょう。コントリビューターとインフルエンサーを組み合わせることでストーリーテリングの幅を大きく広げることができます。

4.1. メイド・イン・テネシー

Tennessee TripTales
https://www.tnvacation.com/triptales/

テネシー州観光開発省が食、音楽、ショッピング、アウトドア、ファミリー向けレジャーなど、カテゴリーごとの専門家による、テネシー州の魅力を伝えるコンテンツを公開しています。

4.2. GAP styld.by

styld by
http://www.styld-by.com/en-us

ファッションブロガーによるGAP商品のスタイリング提案を公開しているサイト。アイテム毎のソーシャルメディアへのシェアや、ECサイトでの購入が可能。

4.3. Googleローカルガイド

Google local guides
https://www.google.com/local/guides/

Googleアカウントがあれば誰でが参加できるGoogleのローカルガイド。地域の情報を投稿することでポイントを集め、Googleの様々なサービス特典を得ることができます。

「ブランドのミッションを信じ、権限を与えられれば、人はそのメッセージを広めてくれるでしょう。」 — エリン・ラバリー、平和部隊
セッション:「How to Cultivate Online Brand Ambassadors(ブランド・アンバサダーの育成方法)」2016.3.13

消費者は指先のスマートフォンからいくらでも驚きや楽しさを感じるコンテンツにアクセスすることができます。広告が商品を売るためだけのものであれば、ブランドに対する好意や愛着は生まれず、顕在化した需要を刈り取るだけになってしまいます。つながりを創るためには、インフルエンサーやキュレーターなどヒトや、プラットフォームやメディアなどモノを用い、感情を刺激するブランドストーリー(コト)を届けなければなりません。テクノロジーはいつの時代もコミュニケーションのあり方を変化させるものですが、本質的なストーリーテリングの需要が無くなることはありません。

デジタル施策の成功を左右するROI測定モデル

※本記事はDIGIDAYに寄稿したコラムを転載しています。

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デジタルマーケティングの成功を左右するのは広告クリエイティブや、Webサイトの質ではありません。施策の目的に対する理解と、定量的な測定モデルの存在です。購買がオフラインで発生する場合、測定モデル無しには、広告の効果や、ROI(投資対利益)を測定することはできません。しかし、効果的な測定モデルを提供できるエージェンシーは少なく、多くの広告主は、計測しやすい、表面的な数字ばかりを追い続けています。

デジタルマーケティングKPIの全貌

デジタルマーケティングの指標には、UUなどの量的指標、CVRなどの質的指標、そしてCPAなどの価値指標があります。これらの数字は単独では施策の部分最適にしか使えず、他の幾つかの数字と掛け合わせることで、はじめて意味を持ちます。いくらの予算で、いくらの商品を、何人に、どれぐらいの割合で購入してもらいたいのか?このような数字を明確にすることができなければ、設定された数値目標やベンチマークは何の意味も持ちません。

先ずは事前に目的をしっかりと定義します。このマーケティング施策は一体なぜ存在するのか?直接的な購買を生むことが目的でなければ、一体誰に、何をしてもらい、どのような結果を得たいのか?その結果はどのように計測することができるのか?目的が認知度の向上であったとしても、予算を正当化するためにはどれくらい認知度を上げなければならないのか、それがデジタルメディアにとって現実的な数字なのか、などを十分に検討する必要があります。このようなことを定量的な根拠を基にチームで十分に話し合い、上司や決裁者の同意を得ることができなければプロジェクト開始することはできません。目的の定義にはSMARTなどのフレームワーク(https://en.wikipedia.org/wiki/SMART_criteria)を使い、プロジェクトに関わる全員が目的とその数値目標を完全に理解・共有できるようにしましょう。目的を議論する際のポイントは、一度予定されている施策の内容を忘れ、本当に何を達成したいのかという点だけに集中して議論することです。

目標を正しく設定する上では、ROIに関する議論も欠かせません。マーケティング予算に対して、一体いくらのリターンを得たいのか?回収するだけで良いのか?または、かけた額の何割かの利益を得る必要があるのか?このROIの目標値により、KPI (中期指標)の数字が大きく変化するのです。

次に、購買を軸としたカスタマージャーニーのステージと、ステージごとの量的指標、質的指標、価値指標を記した、KPIのマトリクスを作ります。商品の平均購入単価、粗利益率、キャンペーン期間中の平均継続購入回数などから顧客一人当たりの期間中のLTV(ライフタイムバリュー)を算出し、購入ステージの価値指標となる顧客獲得単価を求めます。また、マーケティング予算とROI目標から、獲得すべき新規顧客の数を算出し、既存の購入率から既存顧客との重複を踏まえた、量的指標となる総顧客獲得数の目標を算出します。マーケティング予算をこの数字で割れば、価値指標となるCAC(顧客獲得単価)を算出することができます。

認知率や、購入意向率など、他のステージの質的指標の既存値と購入率の差異から、ステージ毎の量的、質的、価値指標の数字を算出することができます。これらの数字はROIに対する係数であり、違いを補完し合いながら変動しますが、おおよその目標値を事前に算出することはできます。これにより、過去の事例に基づくベンチマークなどではなく、マーケティング予算を回収するために必要数値を算出し、メディアや施策事の良し悪しを正しく判断することが出来るようになるのです。

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本質的なROIの追求を阻むストリートライト・エフェクト

多くの広告主はこのようなデジタルマーケティングROIの測定モデルを持っていません。しかし、表面的な数字を追い続けても、メディアや施策の良し悪しを判断することはできません。例えば、YouTubeの動画が120万再生を記録した、というように、一つの数字をピックアップした話は、プロジェクトをレビューする際によく聞きます。しかし、実際それにいくらのコストがかかり、結果どれほどの認知度や購入意向の向上があったのかがわからなければ、施策本当に成功したかを知る事はできないのです。

デジタルマーケティングの本質は、従来のマーケティングでは不可能だった速度、粒度、そして規模で測定ができることです。しかし、この測定は決して簡単なものではないため、多くの人は本質的な答えではなく、見つけやすいものだけを求めてしまいます。この観察者バイアスは、以下のストーリーから「ストリートライト・エフェクト」と呼ばれており、デジタルマーケティングの推進を大きく阻むものです。デジタルの仕事に携わる私たちは、見つけやすい数字ではなく、常にROIと言う本質的な答えを、追求し続けなければならないのだと思います。

街灯の下で何かを探す男に、一体何を失くしたのかと警官が尋ねました。男は少し酔った様子で鍵を失くしたと言い、警官は彼と一緒に街灯の下を探します。数分後、一向に見つからないことに疑問を感じた警官は、本当にここで失くしたのかと確認します。しかし男は、ここではなく公園で失くしたと言い、それでも街灯の下で探している理由を聞かれると、ここの方がが明るいから、と答えたのです。

マーケターの思考停止を引き起こすデジタルGRP

デジタルの指標はマーケターにとってわかりにくいだけでなく、第三者機関による測定や、統一された計測基準などが普及していません。このため、アメリカでは数年前からデジタル広告の効果測定に対するアカウンタビリティーの向上が広く求められてきました。しかし、最近になって広告の業界団体が出した答えは、視聴可能な広告の量を示すGRPをデジタルにも採用するというものでした。そして昨年の10月にはニールセンが、オウンド、ペイド、アーンドの全てのデジタルメディアにGRPを当てはめるTotal Audience Measurementを発表しています。

GRPは測定し易いだけでなく、マーケターにとってとても理解し易い指標です。しかし、それはユーザーの反応や行動を測定できるデジタルの特性を含んでおらず、マーケティング効果を示すものではありません。この量的指標がデジタルメディアの売買だけでなく、評価にも用いられるようになれば、高精度なターゲティングというデジタルメディアの優位性は無視され、リーチによってその価値が決まってしまうのです。結果、デジタルメディアの投資は減り、市場の活性化と成長は失速してしまいます。

デジタルの仕事に携わる私たちには、この若い市場を成長させ、次世代の広告の受け皿を創る義務があります。いずれアメリカでニールセン・カタリナ・マーケティングやTRAが行っているように、オフラインの直接的な購買行動を測定できるクローズドループマーケティングが日本でも実現されるでしょう。そのためにはブランドも、エージェンシーも、ストリートライト・エフェクトに惑わされず、ROIという本質的な広告効果の測定を追求し続ける必要があります。単に広告が売り易い、またはその効果が報告し易いからといって、決して表面的な数字だけでデジタル施策を評価してはならないのです。衰退するマスメディアから、デジタルメディアへのシフトを成功させるために、より洗練された効果測定の能力を身に付けましょう。

ソーシャルリスニングを活用したマーケティングに役立つ分析方法

アメリカでは早くからマーケティングに「ソーシャルリスニング」という手法を用いていますが、日本でも近年この方法が注目を集めており、消費者の声を有効活用しようという動きがあります。しかし、日本ではこれまで現場担当者の「経験」をもとにマーケティングが行われてきたこともあり、データの具体的な利用方法がわからず、宝の眠るデータの山を持て余す光景もよく見られます。ソーシャルメディアが日本でも浸透するなかで、これらのデータを使用しないことは、競合ブランドに対して遅れをとる可能性があります。

1. ソーシャルリスニングの活用法

ソーシャルメディアで人々が発信しているテキストや画像情報を大量に集め、それを基に分析していくことを「ソーシャルリスニング」といいます。

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情報収集を行うソーシャルメディアには、TwitterやFacebook、Instagramのほか、以下のような”消費者が口コミを書ける媒体”はすべて対象と考えられます。

  • ソーシャルメディア : Twitter、Facebook、Instagram等
  • Q&Aサイト : Yahoo知恵袋、教えてgoo等
  • レビューサイト : 価格com、@cosme等
  • ブログサービス : アメーバブログ、ライブドアブログ等
  • ECサイトのレビュー : Amazon、楽天等

マーケティングにおけるソーシャルリスニングの活用法として、これまで弊社では戦略立案時に行う消費者インサイトの発見や、ターゲットユーザーとなるペルソナ構築といった定性的なリサーチに活用する手法をご紹介してきました。今回は大量のデータを機械的に分析し、ブランドイメージ調査やマーケティング施策の効果測定に利用する手法をご紹介します。

2. ブランドイメージ調査&施策の効果測定

ブランドイメージ調査やマーケティング施策の効果測定ではアンケート調査を行うことが一般的ですが、ソーシャルリスニングを利用することで、比較的安価に継続的な調査を行うことができます。また、ソーシャルメディアではユーザーの生の声を取得することで、アンケート調査と比較してユーザーの本音を知ることができる強みもあります。

ソーシャルリスニングは定量・定性の両面から分析を行うことが理想であり、元となるデータ量が多いほど正確な結果を導くことが可能になります。そこでまずは多くのデータを集め、それを「定量分析」するところから始めましょう。
しかし、人の手で収集できる情報量には限りがありますので、より多くのデータを自動的に取得する有料の「ソーシャルリスニングツール」の導入をお勧めします。最近では様々なツールが公開され、各サービスによってTwitterのデータが100%取得できるものや、過去のデータから投稿を取得できるもの、テキストマイニングツールが付属されているものや、デモグラフィック属性が分析できるものなど、様々な違いがあります。

ツールの選定は、下記の分析方法を参考とし、分析の目的を明確にした上で、各ツールの特性を導入前にしっかりと見極め、欲しいデータが抽出できるサービスを選択してください。

2.1. 分析方法 基本編 : 数値分析

では、実際の分析方法を見てみましょう。今回の分析では最も多くのデータを取得しやすいTwitterのみを使用して分析を行っていきます。

以下の項目を、日別や月別にグラフ化し、前月・前年といった時系列での比較、競合ブランドや商品カテゴリとの比較をしていきます。データ全体を見て大きく数字が変化している部分に注目し、原因を特定することで今後の施策に活用できる情報を得ることができます。

①2.1.1. 投稿数

まずは対象ブランドのキーワードを含んだ投稿を取得します。この膨大なデータを単純に、投稿の数から追ってみましょう。

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青色が対象ブランド、緑色が競合ブランドのキーワードを含んだ日別投稿数

こちらは対象ブランドと競合ブランドの投稿数を日別に記録したものです。大きく数字が動いた日を見てみると、新規のCM放送開始日だったことが判明。CM効果の高さがうかがえました。

2.1.2. リーチ数(投稿したユーザーの合計フォロワー数)

続いて投稿したユーザーの合計フォロワー数であるリーチ数を算出し、こちらも時系列で並べ替えてみましょう。リーチ数が突出している部分を見つけて投稿を確認することで、どんな話題がどれほど多くの人にリーチ(目に触れている)しているかを知ることができます。投稿数では多くの人が話題にしている要因を、リーチ数では多くに人の目に触れている要因を突き止めることができます。

2.1.3. ポジティブ・ネガティブ割合

多くのソーシャルリスニングツールでは収集した投稿データを分析し、「ポジティブ」な投稿か「ネガティブ」な投稿か判断することができます。このポジネガの割合をトラッキングすることで、ブランド好意度を知ることができます。

2.2. 分析方法 発展編 : 投稿&アカウント分析

「基礎編」でまとめたデータに以下の項目を掛け合わせて見ることで、より詳細な分析ができます。

2.2.1. 頻出キーワードを洗い出す

投稿数が多いTwitterは、1投稿の文字量が限定されているため分析しやすいことが特徴です。ソーシャルリスニングツールによっては形態素解析などを利用し、頻出キーワードを見ることができます。この頻出キーワードを自社ブランドに関連する投稿のキーワードだけではなく、ポジティブ投稿の頻出キーワード、月別の頻出キーワードを出し、期間・競合・カテゴリで比較すると興味深いデータが浮かび上がります。

例えばポジティブな投稿に「限定」というキーワードが多く出てきた場合、「限定」で行ったプレゼントキャンペーン等が、消費者のプラスの感情を引き起こしたことがわかります。キャンペーンの効果測定を、「感覚」ではなく「数字」で裏付けられ、消費者に愛されている点、または改善が求められている点を浮き彫りにすることができます。

2.2.2. インフルエンサー・リツイートをランキング化する

基礎編で出したポジティブ投稿の中から、インフルエンサー(フォロワー数の多いユーザー)やリツイートされた投稿をランキング形式などで出してみます。
インフルエンサーのプロフィールを目視で確認したり、リツイートされた投稿の傾向を見ることで、インターネット上でバズを生み出しやすい傾向を見つけることができます。

2.3. 分析方法 応用編 : セグメント分析

基本編・発展編で得たデータを、以下の2つの切り口でさらに細かく分類していきます。

  • カスタマージャーニー
  • タッチポイント

2.3.1. カスタマージャーニーの各段階別にデータを分類する

弊社では以下の図の通り、「関心・興味・購入・リピート・推奨」というカスタマージャーニーに基づいて分析しており、集めたデータをカスタマージャーニーの各段階に分類することで、単なるポジティブ・ネガティブ分析だけではわからなかった事象が見えてきます。
商品名に加えて「買った」といったキーワードが含まれていれば購入段階、「おすすめ」といったキーワードが含まれていれば推奨段階に分類することができます。

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マーケティング施策の立案時には認知を増やすことや、購買に結びつけることなど、カスタマージャーニーをベースに目的を設定することが多いと思います。これらの目的に実施したマーケティング施策が寄与しているかを検証するために、カスタマージャーニーの各段階別で頻出キーワードをチェックしてみましょう。

購入を目的としたキャンペーンを実施した場合、キャンペーン名など特徴的なキーワードを確認します。購入段階に振り分けられた投稿から先ほどのキーワードが多く発見することができれば、施策は成功していると言えますが、関心段階で多くキーワードが発見されてしまった場合は、当初の目的からは失敗していることになります。

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投稿を各カスタマージャーニー別、さらにポジネガ別に振り分けてグラフ化

また、各段階別の投稿数を毎月トラッキングし、競合ブランドと比較することで、自社ブランドのユーザーがどの段階に多く存在するのか知ることができます。

2.3.2. タッチポイント別にデータを分類してみる

近年のマーケティング施策では様々な媒体を利用し、複数のキャンペーンなどが同時に進行することも多く、これらの効果測定をすることは非常に困難となってきています。こちらもカスタマージャーニーと同様に予めタッチポイント毎のキーワードを設定し、投稿を分類することで、ある程度可視化することが可能です。

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タッチポイント別の切り口でみることにより、消費者はどの媒体に接触して、どれだけ反応しているかがわかります。これをさらに月別・日別・時間別で分析することで、広告出稿の際の目安とすることもできます。

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赤色がテレビ、青色がラジオ、緑色が雑誌の時間別投稿数

例えばテレビCMを時系列で分析し、CM出稿の時間帯と相関性を見ることで、効果を見ることができます。また、特定のタッチポイントから始まった話題が、他のタッチポイントに拡大していく様子などを見ることもできます。

3. まとめ

ソーシャルリスニングを利用したモニタリングは継続的に実施することが重要です。対象ブランドの過去データや競合ブランドのデータなどと比較することで、対象ブランドの優位性や改善点、顧客心理をより深く知ることができ、自社の優位性をいかすマーケティングを行うことができます。

定量分析では、「何かが起こっているという事実」を見つける事が目的です。分析したデータから突出した部分を発見し、実際の投稿を目視で確認して原因を突き止めることで、今後のマーケティング施策に活かせる情報を発見できます。最終的には人の目で定性分析を行うことになりますが、理論の裏付けをして相手を納得させるためにも、「数値化されていること」が重要です。

ソーシャルリスニングでは膨大なデータを取り扱いますが、あまり難しく考えず、知りたい情報に必要なデータだけを利用してレポーティングすることで、マーケティング部門だけではなく、営業部門など、社内全体で利用することができる有効な情報を得ることができると考えています。
まずは簡単な基礎編からソーシャルリスニングを始めてみてはいかがでしょうか。

ブランドのデジタルシフトを起こす動画メディア

※本記事はDIGIDAYに寄稿したコラムを転載しています。

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デジタルでブランディングは可能か?

「デジタルでブランディングは可能か?」この質問は何度か耳にしたことがありますが、明快な答えを聞いたことはありません。「ブランディング」だけでは少し曖昧なので、先ずはデイビッド・アーカー氏の言葉を借りて定義しましょう。ブランディングは、以下の指標を向上させることを意味します。

①アウェアネス:ブランドの認知度
②アソシエーション:特定の属性からブランドが連想される度合い(例:高級車→ベンツ)
③ロイヤルティ:ブランドに対する愛着度

これらの指標を定量化し、あらかじめ計測をしておけば、数値の上昇から施策毎、メディア毎のブランディング効果を測ることができます。

過去の調査から、デジタル広告のブランディング効果は、そのフォーマットに左右されることがわかっています。バナー広告などの静止画像には、伝達速度の速さなど、限定的な優位性も見られますが、ブランディング効果はほとんどありません。しかし、同じデジタル広告でも、動画フォーマットの広告からは、十分な数値の上昇を確認することができています。購買を引き起こす態度変容には、動画のようなリッチな広告体験が必要であると言えるでしょう。

幸い、日本はオンライン動画大国です。YouTubeはほぼ全ての年齢層で6割以上の利用率があり、他の動画サービスを含めれば、インターネットユーザーの8割が日常的にオンライン動画を視聴しています。1ユーザー辺りのオンライン動画の視聴時間は、アメリカの倍以上もあり、より長尺のコンテンツが見られることがわかります。このオンライン動画の広い普及と共に、今まで「顕在化された需要の刈り取り」という限定的な役割を担っていたデジタル広告が、ブランディングの領域へと進出し始めています。デジタル広告の特性を活かし、今後はブランディング目的の広告も、データに基づく継続的なパフォーマンスの改善が可能になります。それまでに広告主にとって魅力的な動画メディアがあれば、テレビに充てられていた広告予算を、本格的にデジタルにシフトさせることができるのです。

アメリカのオンライン動画市場は、昨年だけも40%も成長し、広告主の約7割が今後も投資額の増加を見込んでいます。オンライン動画が、今後デジタル広告業界全体の成長を牽引することは間違いないでしょう。しかし、市場全体の活性化と成長を実現するためには、幾つかの障害を乗り越える必要があります。アメリカでは広告主の46%が提供する動画コンテンツの品質に不満を抱え、41%が予算の不足を感じています。更に、36%が投資対効果の証明や、投資の正当化ができていません。

動画でも、読み物コンテンツでも、配信するコンテンツの量と質を両立することができなければ、コンテンツマーケティングは成立しません。これには出版社や、テレビ局などのコンテンツパブリッシャーの力が必要であり、ブランドからの情報発信を請け負う広告代理店には、その能力やリソースがないのです。レッドブルのように、ブランドがトップクラスのパブリッシャーを作るという珍しいケースもありますが、殆どのブランドは、採算の合わない額で動画制作を発注し続けるか、クラウドソーシングなどのサービスを活用し、コストを抑える代わりにコンテンツの質に妥協するという選択肢しかありません。広告主がどれだけ動画マーケティングを推進したくても、現実的な手法が存在していませんでした。

動画メディアへのシフト

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HUFFINGTON POST, Vox.com, The Verge

アメリカで、この広告主のジレンマに応えたのがHUFFINGTON POSTや、VOX MEDIAなどのWEBメディアです。マスメディア以上のオーディエンスと影響力を持ち始めた彼らは、資本家や、親会社などの巨額の資金を活用し、本格的に動画制作の体制増強に踏み切ります。そして、読み物中心であったWEBメディアは次々と、動画メディアへとシフトしていくのです。

もちろん、メディアもコンテンツの質と量の問題を避けて通ることはできません。しかし、彼らは動画制作のコストや質に妥協はせず、広告の配信単価を上げることで、業務自体をサステナブルなものに変えてしまいました。広告フォーマットのリッチ化、ターゲティング精度の向上、PMP(プライベートマーケットプレイス)の導入、ブランドを最大限に活用したネイティブアドの提供など、様々な施策が功を奏し、動画メディアの運営は少しずつビジネスの採算が合うようになっています。

WEBメディアの進化に追従するように、ニューヨーク・タイムズ、USA TODAY、ワシントン・ポストなどの一流誌もまた、動画メディアへとシフトし始めます。中でも、Amazon創設者のジェフ・ベゾスの買収によって注目を浴びたワシントン・ポストは、驚くべき変貌を遂げています。彼らは動画の情報鮮度を徹底的に追求することで、ブレイキングニュースの発生時に、今や他のメディア関係者も真っ先にアクセスするトップクラスの動画メディアになっているのです。

アメリカの広告主は、高額で、キャパシティの小さいエージェンシーと、品質に一貫性の無いクラウドソーシングに加え、高品質な動画コンテンツを作り続ける動画メディアのパブリッシャーというリソースを手にしました。しかし、このようなメディアの大半が、未だ収益面での大きな課題を抱えており、有利なビジネスになるための具体策は未だ見えていません。しかし、次世代のメディアを成立させ、市場全体を活性化させるというパブリッシャーたちの揺るぎない信念と努力によって、アメリカでは動画メディアが有効な広告媒体として成立しつつあるのです。

プリロールというジレンマ

WEBメディアの動画へのシフトに伴い、ユーザーが動画広告に接する機会が増えました。特に、コンテンツの前に広告が差し込まれるプリロールが多く、パブリッシャーの重要な収入源となっています。しかし、目的のコンテンツとは無関係な映像と音声を一方的に流してくるプリロールは、ユーザーからの反感も強く、94%のユーザーが視聴を回避をしています。最近の急激なアドブロッカーの普及も、プリロールが大きな原因の一つであると言われており、間接的にパブリッシャーに損失を与えている可能性があります。また、広告の効果測定調査などからも、プリロールの頻度、尺、内容によって、ブランド好意度が低下するという結果が出ています。動画メディアにとって、プリロールは大切な収入源であると同時に、広告主やメディアのブランド毀損を引き起こすものなのかもしれません。

広告のスキップを可能にし、無関係な内容や、必要以上のフリーケンシーを減らすなど、メディアもエージェンシーも、可能な限りプリロールの不快感を減らす努力を重ねています。しかし、視聴したい動画コンテンツの前に、無関係な動画が表示されること自体に、不快感を感じるユーザーが多いため、根本的な解決法はまだ見えていないのです。

プリロールのジレンマを解決するためには、私たちの広告とコンテンツに対する考え方を変える必要がありそうです。広告もコンテンツも、どちらもユーザーが消費する情報であり、明確な境界線は存在しません。コンテンツを広告にすることも、広告をコンテンツにすることも可能です。前者には、メディア独自のコンテキスト(文脈)とパーソナリティ(人格)に沿って伝えられる「ネイティブアド」と、広告主の声をそのまま掲載する「アドバトリアル」という2つの形式があります。もちろん、メディアの視聴体験を踏まえたネイティブアドの方が遥かに態度変容に効果的であると言えますが、全ての広告をその都度メディア独自の文脈に置き換え、コンテンツとして作り直すことは現実的ではありません。コンテンツの広告化は、メディアや広告の価値を高める理想的なソリューションですが、包括的な解解決には、「広告のコンテンツ化」も同時に検討しなければいけません。

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QUARTZ

QUARTZは動画コンテンツを掲載するまでに、3年の準備期間を設けた、後発の動画メディアです。彼らは、いち早く動画コンテンツへのシフトに取り組んだメディアの様々な失敗と、その要因を長期的に分析し、「5つのやらないこと」をガイドラインとして設けました。

①配信数のノルマを設けない
②トーキング・ヘッド(人物が喋るだけ)動画を作らない
③サイト独自プレイヤーを作らない
④動画セクションを設けない
⑤プリロールを使わない

彼らはプリロールよりパフォーマンスの高い広告フォーマットを見つけ出すために、このガイドラインに基づき、様々な動画広告の表示方法を検証しました。結果、動画広告のサムネイルをコンテンツの右下に設置し、マウスオーバーやタップなどのユーザーの意図的なアクションで広告を表示するという方法を採用しました。結果、プリロールの6%を上回る、25%の自主的な広告視聴を獲得しています。QUARTZは、ユーザーに広告視聴の自由を与えることで、「広告を見たい」という気持ちを刺激し、広告のコンテンツ化に成功したのです。

広告業界を育てるメディアという土壌

広告を仕事とする私たちは、つい広告主や消費者の視点だけから物事を考えてしまいます。しかし、そもそも消費者が接触するのはメディアであり、その力を借りなければ、広告を届けることはできないのです。メディアの質が下がれば、広告の価値が下がり、メディアだけでなく、消費者を含む市場全体は損失を被ります。 これから先、高品質なデジタルメディアを育てることが出来なければ、若年層への影響力を失いつつあるマスメディアの衰退とともに、広告の出稿先が失われてしまうのです。今こそ、メディアとパブリッシャーだけでなく、広告主や広告代理店もが協力し合い、動画メディアという次世代の広告の土壌を築かなければならないのです。

デジタルマーケティング戦略とは

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戦略とは「やらないことを決めること」

「戦略とは何か?」と聞かれたら、あなたはどのように答えるでしょうか。ビジネスにおいて戦略はとても重要なことでありながら、その意味を端的に説明できる人は多くありません。「目的を達成する計画」と答える人もいますが、それではどのような方法も目的さえ達成すれば戦略であると言えてしまいます。戦略が何であるかを定義できないのであれば、戦略が不要な状況を考えてみましょう。戦略が無くても勝てる状況とは、相手に対して圧倒的なアドバンテージがある状態です。結論を言うと、戦略とは「目的を達成するための最適な資源の分配方法」であり、資金や人材などの有限な“資源”をどこに集中させるか、ということになります。

日本では地上波テレビの影響力が強く、デジタルの分野で十分な競争環境が育まれませんでした。そのため、大半の企業が戦略的なデジタルマーケティングを重要視せず、消極的なスタンスを取り続けています。しかし、消費者はソーシャルメディアやモバイルなどのデジタルシフトを受け入れているため、企業とのギャップが広がっています。デジタルメディアの接触時間が長いユーザー層に対するテレビCMの効果に、限界を感じているマーケターも多いはずです。

欧米に比べ、日本ではグローバルとローカルの様々なプラットフォームが混在し、消費者とのタッチポイントが広く分散しています。特性の異なるいくつものデジタルメディアを組み合わせ、投資対利益を得るためには、マスメディアよりもはるかに戦略的な投資が求められます。

トレンドが次々と入れ替わるデジタルの分野では、新しいものに効果があるかも考えずに飛びついてしまう「Shiny Object Syndrome」(シャイニー・オブジェクト・シンドローム)に陥っているマーケターや経営者も少なくありません。例えば、私たちの調査によるとInstagramは25~29才の女性の場合30%以上の利用率がありますが、他の世代では10%台や一桁しかありません。40代以上の主婦層をターゲットとするブランドにとっては投資を回収するだけのリーチが期待できず、戦略的な投資先であるとは言えないでしょう。

日本では多くの企業がいまだに売上目標などのビジネスゴールに対するデジタルマーケティングの効果を測定できていません。本来は「誰に、どこで、どれくらい広告を配信すれば、いくらのリターンが得られるか」を計算し、なすべきことの優先順位をつける必要があります。

冒頭で説明したとおり、目標を達成するために限られた資源を無駄なく効果的に投資することが戦略なのです。目的が定まっていなければ、戦略を導き出すことはできません。

STPを意識すればデジタルマーケティング戦略が見えてくる

STPとはセグメンテーション(分割)・ターゲティング(選定)・ポジショニング(訴求軸)の略であり、消費者を多様な軸で分類することで、最も採算の合うユーザー層と訴求すべきポイントを導き出す手法です。

市場全体から考えて、理想とする顧客は何人ぐらい存在し、どのような特性を持ち、どんな生活を送っているのかなどを調査します。どんな人々を対象にマーケティング活動を行うべきかがわかれば、戦略が立てやすくなることは明らかです。

市場をいくつかの軸で分類していくと、セグメント毎にさまざまな特性が見えてきます。この段階でしっかりと分析を行うことで、後に無駄な投資を回避できるのです。

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数値目標を達成するために、どのメディアが適正であるかを定量的に分析する必要があります。これを考えないまま、過去のベンチマークや、感覚的に設定した目標のまま走り出してしまうと、結果的に貴重な資源を無駄にすることになってしまうのです。

「定量的な分析に基づく論理的なデジタル戦略」の詳細は以下の記事を参考にしてください。
https://www.ficc.jp/blog/digital-strategies-based-on-quantitative-analysis/

予算配分を熟考する

テレビCMと比較し、デジタルマーケティングはピンポイントでリーチしていかなければ効果が出しづらいという特徴があります。ターゲティングをした上で広告を出稿できることがデジタルマーケティングの利点として挙げられますが、そもそも十分な人数にリーチすることができなければ、投資対利益を得ることができません。

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デジタルメディア利用率の調査からは、YouTubeが比較的すべての年代に効率よくリーチできるメディアであることがわかります。動画というメディアの形式も、ユーザーにリッチな体験を与え、購入意向の獲得に向いています。Facebookでの動画広告配信はYouTubeに比べて少し高額であり、利用率も低いのですが、プロフィールデータに基づく高精度なターゲティングが可能です。達成すべき量的指標(人数)と価値指標(獲得単価)がわかっていれば、金額や規模だけでなく、メディアの特性に応じた適切な投資判断ができるようになります。

目標を達成するために、何人の購入意向を獲得しなければならいのか? 購入意向率を何パーセント向上させれば良いのか? 一人当たりの獲得単価は幾らなのか? 目標達成に向けてメディアを選定するためには、これらのKPI(中期指標)を正しく算出し、設定する必要があります。

「予算と目標に基づいたWebキャンペーンのKPI設定方法」の詳細は以下の記事を参考にしてください。
https://www.ficc.jp/blog/web-campaign-kpi-based-on-budget-and-goal/

ブランドリフト調査で施策途中でも軌道修正を行う

デジタルマーケティングでは、ビュー数や訪問数など、比較的簡単に取得できる指標が重要視されます。しかし、これらの数値をどれだけ高めても、購入に至らなければ意味はありません。本当に重要なのは、広告が視聴された回数などではなく、起こした態度変容の度合いです。

YouTubeやFacebookなどでは、動画広告の視聴者から簡単なアンケートを取ることが可能です。このように広告視聴とアンケートのデータを簡単に紐付けることができるのも、デジタルマーケティングの大きな特徴の一つです。

認知度、好意度、購入意向度などをアンケートで測定するブランドリフト調査を行うことで、広告を改善するための指針を確実に得ることができます。ユーザーの反応からターゲティング、メディア、クリエイティブを施策期間中に修正することができるため、長期的なキャンペーンにおける投資リスクを最小化することができます。

「デジタル投資を可能にするブランドリフト調査」の詳細は以下の記事を参考にしてください。
https://www.ficc.jp/blog/increase-digital-investment-with-brand-lift-surveys/

広告費の半分は無駄使いに終わる

デジタルマーケティングには無数の手法や選択肢が存在します。限られた資源を有効に活用するためには戦略が不可欠であり、「やらないこと」を見極める力が必要です。

ジョン・ワナメイカーの「広告費の半分が金の無駄使いに終わっていることは分かっている。分からないのは、どっちの半分が無駄なのかだ」という名言は、従来の広告のターゲティング精度や、効果測定の方法に限界があることを示しています。高精度なターゲティングや、厳密かつリアルタイムな計測が可能なデジタルマーケティングに、戦略的に取り組めば、広告費の大半を無駄使いするようなことはなくなるでしょう。

デジタルがブランドマネジメントにもたらす影響

先日、コムエクスポジアム・ジャパンが主催するad:tech tokyo 2015で、WPPグループCDOのスコット・スピリット氏と、資生堂ジャパンCMOの音部大輔氏を交えて、デジタルがブランドマネジメントにもたらす影響についてディスカッションを行いました。今回はその内容を紹介します。

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左から弊社代表荻野英希、資生堂ジャパンCMOの音部大輔氏、WPPグループCDOのスコット・スピリット氏

データやテクノロジーはマーケティングの大きなアドバンテージになります。欧米ではもはやマーケティングにデジタルテクノロジーは欠かせないものとなり、世界最大の広告複合企業であるWPPでは、収益の4割をデジタルメディアが占めています。積極的な投資を怠れば、どんなブランドも競合の脅威に晒されることは明らかです。アメリカでは様々な業種にディスラプター(破壊的なイノベーションを起こす企業)が現れ、多くの企業が真剣なデジタルへの取り組みを余儀なくされました。結果、デジタルメディアへの支出は大きく成長し、2014年には広告費全体の28%を占め、2018年にはテレビを超えると言われています。

デジタルメディアは日本でも二桁成長をしているものの、その割合は未だ17%に留まり、多くのブランドが重要性を理解していながらも、今一歩踏み出せずにいます。音部氏はこの背景に競争環境の乏しさを指摘します。業界全体がデジタルに消極的であれば、競合の脅威を感じることはなく、イノベーションも求められません。このような環境下では日本企業が世界に対する競争力を失ってしまうことになるでしょう。

日本人のメディア接触時間の44%はデジタルです。これはアメリカの47%に並ぶ高水準であり、広告費と大きなギャップがあることは明らかです。さらに、大半の企業が未だデジタル活用に消極的であり、デジタルに成熟した企業にとって大きな機会のある市場と言えるでしょう。では企業がデジタルに対する成熟度を高めるためにはどうすればよいのでしょうか?

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スコット氏は海外に目を向けろと言います。特に、イギリスのブランドやエージェンシーのスキル向上はeコマースに起因しているそうです。確かにeコマースの場合、直接的に効果が測定できるため、高頻度な仮説の検証が可能になります。広告の巨人と呼ばれたデイビッド・オグルヴィも「すべてのコピーライターはダイレクトマーケティングを学ぶべき」と著書に記しています。マーケティング実務者が自らの手でシミュレーションや効果測定を行うことでマーケティング活動の定量的理解が深まるのです。

音部氏はさらに、目的を問い正すことの重要性を指摘します。データやテクノロジーに対する技術的な知識だけではなく、目的を明確にし、その達成に向けて限られた資源を有効に割り当てる戦略的思考が必要であると言います。従来の仕事のやり方を変えてしまうデジタルに、苦手意識を持つマーケターは少なくありません。「デジタルでも何かやらなければならない」という消極的なスタンスでは、必ず手段が目的化してします。この施策の本当の目的は何か?ということをしっかりと理解できなければデータやテクノロジーを使いこなすことはできないのです。

これからのマーケターには前提として、テクノロジーへの知識と、定量的に物事を捉える力が必要になります。また、戦略的思考を持ち、海外の情報を得るための語学力も必要になるでしょう。このような特殊な人材を育成することは決して容易ではありません。スコット氏はさらに、特定の専門分野に深い知識を持つ、スペシャリスト・エージェンシーの重要性を強調します。マーケターは本質的な戦略にフォーカスし、手法は専門家に任せるのです。従来の総合的な広告代理店では、デジタルの様々な分野に関する深い知識を提供することができません。マーケターはデジタルの知識と戦略的思考に加え、無数のエージェンシーを管理する能力を必要としているのかもしれません。

デジタル投資を可能にするブランドリフト調査

日本では消費者のデジタルメディアの接触時間と、企業の広告支出にいまだ大きなギャップが存在します。主にオフラインで販売を行う企業が、積極的なデジタルマーケティングへの投資に踏み切れない理由の一つに、効果測定の難しさがあります。PVやimp、いいね!数などの数値を報告されても、オフラインの購買に与える影響を説明することはできません。ブランドマネージャーなどのマーケティング実務者にとって重要な指標はブランドの認知率や、購入意向率などです。これらの数値は、売上などの財務指標に変換し、投資対利益を証明できるため、マーケティング活動のKPIとして採用されています。

デジタルマーケティングの投資を正当化するためにも、このような「意味のある指標」を活用する必要があります。売上目標から認知率、購入意向率、ユーザー数、1ユーザーあたりの獲得単価などのKPIを算出するために、多くのデータは必要ありません。さらに、そのKPIに対する効果を測定することも、決して難しいことではないのです。

オンライン広告のオフライン行動に対する影響を計測する試みは、アメリカで選挙運動の分析のために90年代後半に始まりました。1999年にはWeb上の行動データとアンケート調査データを連携させた広告効果測定を専門とするDynamic Logic社(現Millward Brown Digital社)が設立されています。広告接触者と非接触者にアンケート調査を行い、認知率や購入意向率の上昇を計測するブランドリフト調査の基本的な考え方は今も変わっていません。現在、米GoogleではAdwordsの標準機能としてブランドリフト調査を提供しており、誰でもリアルタイムに認知率、広告想起率、興味率を計測できるようになっています。

ブランドリフト調査を行えば、複数のバリエーションをテストし、効果的なクリエイティブを選定できます。さらに、複数の消費者セグメントの中から、広告反応率の高いターゲットを発見することもできます。しかし、最も重要なことは、予算と目標に基づくKPIさえあれば、間接的ながらもオフライン購買の効果を測定できるということです。
消費者のデジタルメディア利用は、広告主企業よりも速いスピードで進んでいます。デジタル施策がどれだけ購買に影響しているかを知ることができれば、積極的な投資が可能になり、デジタルマーケティングを推進できるでしょう。

定量的な分析に基づく論理的なデジタル戦略

ブランドマーケティングのデジタル戦略はトレンドの影響を大きく受けます。社内評価のために先進性や面白さが重視され、クリエイティブコンペのようなものが用いられることも珍しくありません。エージェンシーも失注を避けるために、クライアント満足を優先した提案をしてしまうでしょう。結果、数値的な根拠の無いプランができあがり、マーケティング目的の達成はおろか、効果の検証すら満足にできなくなってしまうのです。

デジタル施策は運良く成功できるものではありません。ユーザーのセグメントやタッチポイントは細かく分断され、一人辺りにリーチするコストもテレビなどに比べ遥かに高額です。より高い精度のターゲティングが可能なため、必然的にマスの認知ではなく見込み顧客の購入意向を取りにいくことになります。これは、綿密なプランニングが必要であることと、少しでも戦略を見誤れば投資の回収ができなくなることを意味しています。デジタル施策からリターンを得るためには先進的なテクノロジーや、面白いアイディアではなく、定量的な分析に基づく論理的な戦略が必要となるのです。

今やデジタル戦略に必要なデータは比較的簡単に入手できます。以前はリサーチ会社に高額な調査を依頼する必要がありましたが、今ではセルフ型のインターネット調査サービスなどの普及により、低価格かつ迅速なデータ収集が可能になり、分析に時間と資金を使えるようになりました。もはやテレビに比べて予算の低いデジタル施策のプランニングにも、定量的な調査を省略する理由はありません。

セグメンテーション

データを収集する前に、まずはマーケットを分類する軸を定義します。最も基本的な分類方法は年齢や性別などのデモグラフィックです。他にも商品特性に対するプレファレンスや、購買行動などのビヘイビアが有効なセグメンテーション方法として考えられます。

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例えば、年齢や性別などによって商品の消費行動に差があるのであれば、デモグラフィックの分類によってその傾向を見ることができます。
また、国勢調査などの人口推計データ(http://www.stat.go.jp/data/jinsui/index.htm)や、他の属性データを掛け合わせることで、セグメント毎の人口も算出できます。

商品カテゴリーの中には様々な特性を持ったブランドが存在します。ユーザーが求める(または求めない)特性を軸とすることで、商品特性とプレファレンスがマッチするセグメントを特定できます。また、商品カテゴリーやブランドへの購買行動を軸とすれば、購買見込の高いセグメントを特定できます。

セグメント毎の代表的なプロフィールを作成するために、以下の属性を調べます。特にカテゴリー消費に関しては対象の商品だけでなく、併売商品や競合となりうる他カテゴリーについても調べましょう。

  • デモグラフィック(性別、年齢、居住地域、収入、職業、学歴、……)
  • カテゴリー消費(購入経験・頻度、購入ブランド、購入場所、購入方法、重視する特性、……)
  • 他カテゴリー消費(購入経験・頻度、購入ブランド、購入場所、購入方法、重視する特性、……)

次に、タッチポイントのプランニングを行うために、ユーザーが日常的にどのような状況で、どのようなデジタルメディアと接触しているかを調べます。ユーザーの日常生活が詳しくイメージできるよう、詳しく調べましょう。また、デジタルデバイスやデジタルメディアの利用については、そこからメディアプランが立てられるよう、具体的なサイトやサービス名を挙げ、いつ、どれくらい接触しているのかを調べます。さらに、Eコマースでの購入カテゴリーや、有料アプリ、コンテンツのサブスクリプションサービスなど、オンラインでどのような消費行動を行っているかを調べます。

  • ライフスタイル(起床、食事、通勤・通学、就業・就学、家事、食料品・日用品の購入、自由時間、就寝、……)
  • デジタルデバイス(利用、利用目的、利用時間・時間帯、……)
  • デジタルメディア(利用、利用目的、利用時間・時間帯、……)
  • オンライン消費(EC、アプリ、ゲーム、コンテンツ、……)

最後に、数値目標を立てるために購買ファネルの段階毎のユーザーの出現率を調べます。少なくとも認知、購入意向、購入経験のデータはとりましょう。細かく見るのであれば以下のような段階も考えられます。また、購入意向~推奨の段階でネガティブな回答を得た場合、その理由をフリーアンサーで収集します。これらの理由を鵜呑みにする必要はありませんが、カテゴリー消費の重視する特性などと比較することで何か発見があるかもしれません。また、自社のブランドだけでなく、競合ブランドに関するデータを取得することで、より詳細な戦略が見えてきます。

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プロフィール

デモグラフィック、プレファレンス、ビヘイビアの各セグメントごとのデータを集計し、代表的な人物像のプロフィールを作成します。プロフィール毎のデモグラフィック、カテゴリー消費、日常生活、デジタルデバイス、デジタルメディアの利用状況に加え、セグメントの人口を推計します。

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KPI

ターゲットとなるセグメントの人口、マーケティング予算、商品の粗利益や月刊購入数などから、達成すべき量的指標、価値指標などのKPIを算出します。必要となるデータや計算方法については前回の記事(https://www.ficc.jp/blog/web-campaign-kpi-based-on-budget-and-goal/)を参照してください。この計算からは、マーケティング投資からリターンを得るために十分なセグメントの規模があるか、一人辺りの購入意向を獲得するために掛けられる費用はいくらかということがわかります。

ターゲティング

セグメント毎の収益性の見込みや、ブランドとのフィット、目標の実現性などを評価し、新たにターゲットとなるセグメントを定義します。年齢や性別などのデモグラフィックだけであれば問題はありませんが、その他の属性をセグメントの軸とする場合は、広告のターゲティング手法をあらかじめ考慮しておきましょう。ターゲットとして設定したセグメントのデータの集計と分析を再度行い、新しくプロフィールを作成します。

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ポジショニング

これまでの分析から、ターゲットの消費行動や商品カテゴリーに求める特性、その優先順位などがわかります。ターゲットの購入意向を獲得するために効果的と思われる複数リストアップし、コミュニケーションの開発を行います。

タッチポイント

ターゲットとの接触が見込めるデジタルメディアも割り出せています。さらに、出現率から量的指標の達成見込み、メディアの特性から価値指標の達成見込みを考慮し、選定を行います。より低コストで、より多くのターゲットの購入意向を獲得できる順にメディアを選定していきます。

この分析を通じて、マーケティング目的を達成するためのKPI、収益見込みの高いターゲット、効果的なコミュニケーションの訴求軸、効率的に接触できるタッチポイントを割り出すことができます。そこに自社の強みや、独自性の高い資源などを掛け合わせれば論理的なデジタル戦略ができあがります。実際にデジタル施策を実施した際にも、希望通りの効果があったかを計測することができるため、仮説の細かい検証や軌道修正などが可能になります。トレンドやアイディアではなく、定量的な分析を起点とすることで、デジタル戦略から確実なリターンを得られるようになるでしょう。

予算と目標に基づいたWebキャンペーンのKPI設定方法

Webキャンペーンなどのデジタル施策はあらゆる側面からの計測が可能です。PVなどの量的指標,CVRなどの質的指標,CPCなどの価値指標と,たくさんの指標が存在します。しかしどんなに測りやすくても,売上や利益などの財務指標に変換することができなければ,KPI(重要業績評価指標)とは言えません。決裁者の承認を得て,マーケティング目的に貢献するためには,予算と目標に基づいてKPIを設定する必要があります。

  • 量的指標:目標を達成するために獲得すべきユーザー数、ターゲット人口に対する比率。
  • 価値指標:予算内で目標を達成するためのユーザー獲得単価上限。
  • 質的指標:量的指標、価値指標を達成するために必要なインタラクションの質。

Webキャンペーンへの投資を正当化するためには,目標や予算に変換できる量的指標と価値指標が必要になります。目標を達成するために,「認知」「購入意向」「購入」「リピート」「推奨」など,ファネル段階でそれぞれ何人の新規ユーザーを獲得する必要があるのか? また,予算内で目標を達成するためのユーザー獲得単価の上限はいくらなのか?を算出します。

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購買がオフラインで発生する場合,直接的なデータを基にこれらの指標を算出することは現実的ではありません。そのためWebキャンペーンのKPIは,いまだ過去の実績などから感覚的に設定されることがあります。しかし,これでは施策から幾らのリターンを得られるかがわからず,決裁者の承認を得ることや,実施後の効果測定を行うことも困難になります。

手元にあるデータが限られていても,調査データなどを組み合わせ,モデリングを行うことで,目標と予算に基づいた適切なKPIを設定できます。上記の量的指標,価値指標を設定するためには,次のデータが必要になります。

  • キャンペーン予算
  • ROMI目標
  • 平均継続月数
  • キャンペーン期間
  • 平均購入価格
  • 粗利益率
  • 月間平均購入数
  • ターゲット人口
  • 認知率
  • 購入意向率
  • 購入率
  • リピート率
  • 推奨率

なお,ROMIとはマーケティング投資回収率を意味します。計算方法は「(収益-費用) / 費用」で,マーケティング施策の期間中に得られる直接的な粗利益と費用の比率を表します(以降の各項目の算出式は,Excelの構文を使って表現しています)。値がマイナスな場合は損失,プラスの場合は利益が見込めます。値がゼロの場合は直接的な利益はありませんが、対象期間を超えるCLTV(顧客生涯価値)による間接的な利益が見込めるため,必ずしもROI(投資対利益)が無いということはありません。

マーケティング実務者が基本的な分析を行っていれば,これらのデータは決して入手困難なものではありません。ターゲット層の認知率~推奨率も比較的低価格な調査から得ることができます。これらのデータから,KPIを設定するためには,上記項目にたどり着くまで各指標を分解し,算出に必要な計算式を組み上げます。まずは全体の軸となる購入段階の量的指標,「購入数」「購入率目標」の計算式を割り出します。

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購入段階の量的指標・価値指標の計算式は次のとおりです。

顧客獲得数

=(キャンペーン予算*ROMI目標+キャンペーン予算)/月間平均購入数/平均購入価格/(IF(平均継続月数>キャンペーン期間,(キャンペーン期間*月間平均購入数+1)/2,(平均継続月数*月間平均購入数+1)/2))/(1-購入率)

購入率目標

=(ターゲット人口*購入率+(キャンペーン予算*ROMI目標+キャンペーン予算)/購入率/平均購入価格/(IF(平均継続月数>キャンペーン期間,(キャンペーン期間*月間平均購入数+1)/2,(平均継続月数*月間平均購入数+1)/2)))/ターゲット人口

顧客獲得単価

=キャンペーン予算/((キャンペーン予算*ROMI目標+キャンペーン予算)/購入率/平均購入価格/(IF(平均継続月数>キャンペーン期間,(キャンペーン期間*月間平均購入数+1)/2,(平均継続月数*月間平均購入数+1)/2))/(1-購入率))

購入段階の数値を基に,他の4段階の指標を推計します。「認知」「購入意向」「リピート」「推奨」それぞれ同じ方法での算出が可能です。例として,認知段階の量的指標,価値指標の計算式を割り出します。

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認知段階の量的指標・価値指標の計算式は次のとおりです。

クリック数、ビュー数

=((ターゲット人口*認知率*(ターゲット人口*購入率+(キャンペーン予算*ROMI目標+キャンペーン予算)/購入率/平均購入価格/(IF(平均継続月数>キャンペーン期間,(キャンペーン期間*月間平均購入数+1)/2,(平均継続月数*月間平均購入数+1)/2)))/(ターゲット人口*購入率))-ターゲット人口*認知率)/(1-認知率)

認知率目標

=認知率*(ターゲット人口*購入率+(キャンペーン予算*ROMI目標+キャンペーン予算)/購入率/平均購入価格/(IF(平均継続月数>キャンペーン期間,(キャンペーン期間*月間平均購入数+1)/2,(平均継続月数*月間平均購入数+1)/2)))/(ターゲット人口*購入率)

クリック、ビュー単価

プロジェクト予算/(((ターゲット人口*認知率*(ターゲット人口*購入率+(キャンペーン予算*ROMI目標+キャンペーン予算)/購入率/平均購入価格/(IF(平均継続月数>キャンペーン期間,(キャンペーン期間*月間平均購入数+1)/2,(平均継続月数*月間平均購入数+1)/2)))/(ターゲット人口*購入率))-ターゲット人口*認知率)/(1-認知率))

最後に,上記計算式の「認知率」を置き換え,段階ごとの量的指標,価値指標の算出を完了します。

手元にあるデータに少しの調査データを加え,モデリングを行うことで,Webキャンペーンの指標を財務指標に変換することができます。これにより,マーケティング目標を達成する施策のプランニング,決裁者との合意形成,本当の意味でのパフォーマンスの改善など,様々なことが可能になります。

今回紹介した,これまでの計算式を含めたエクセルファイルを次に用意しました。今後のWebキャンペーンのKPI設定に活用してみてください。


データ分析に基づくマーケティングプラン

今ではどんな企業も詳細な消費者のデータを簡単に入手できます。しかし,データが利用可能であるにもかかわらず,多くのマーケターはいまだ主観的にマーケティング施策のプランニングを行っています。手元のデータや少しの調査で得られるデータを分析し,客観的なプランニングに役立てることができれば,大きくマーケティング効果を向上させ,ワークロードを軽減できるのではないでしょうか。

マーケティングプランを作るためには「誰に」「何を」「何時」「何処で」伝えるために,「いくら」投資すべきかという質問に答えなければなりません。これらの問いに合わせて,適切なデータを正しい順で取得していくことができれば,客観的なプランニングが可能になります。

セグメンテーションとターゲティング

マーケターにとって最も不確実性が高く,施策の成功を左右する要素は「顧客」です。そのため,顧客の徹底的な理解こそがプランニングにおける最も重要なポイントであると言えます。主観的に,年齢や性別などのデモグラ属性でターゲットを定義するのではなく,まずは顧客全体のセグメンテーション(分類)を行い,ターゲティング(選定)すべき顧客層を見つけ出します。例えば,該当する製品カテゴリーやブランドの購買行動を軸にセグメンテーションを行った場合,セグメント毎に目的とする行動変容を分けることができます。

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  • 右上(高カテゴリー×高ブランド):知人に勧めてもらう
  • 左上(低カテゴリー×高ブランド):カテゴリー消費量を高めてもらう
  • 右下(高カテゴリー×低ブランド):ブランドスイッチをしてもらう、購入頻度を高めてもらう
  • 左下(低カテゴリー×低ブランド):トライアル購入をしてもらう

これらのセグメントに含まれるユーザーを様々な視点から分析し,商業的な魅力,広告反応への見込み,十分な規模のあるセグメントをターゲットとします。そのセグメントに含まれるユーザーの代表的な特性をピックアップし,ペルソナ (架空の人物象)にまとめあげます。ターゲットが既に購入している競合ブランドは,ビジネスソース(収益源)となる可能性が高いため,同様の分析を行うべきでしょう。

ポジショニング

顧客の理解の次に大切なのは商品の訴求軸です。マーケティング施策を成功させるためには,顧客と商品のマッチングを行います。これには市場のニーズを(独自性の強い)商品特性に合わせる方法と,商品の訴求軸を市場のニーズに合わせる方法があります。後者の場合は,複数の訴求軸をテストすることで,特定のセグメントに効果的な訴求を見つけ出すことができます。デジタルでは個人レベルで広告の配信を分け,その反応を測定できるため,実環境でのテストが重視されがちです。しかし,この考え方には次の2つの問題があります。

  • 実際に広告を配信するコストがかかる
  • 反応しないユーザーを分析することができない

テストの目的は複数の選択肢の中から効果的でないものを棄却することだけでなく,できるだけ多くの改善に役立つ仮説を導き出すことです。そのため,少数 (0.1%)が購買に至った理由だけでなく,大半(99.9%)が購買に至らなかった理由を分析する必要があります。仮説を基に複数の訴求軸とメッセージを作成し,ターゲットがターン・オフ(興味をなくす,嫌気を指す)と感じるポイントを洗い出すことで,ターゲットに最大限効く訴求軸を見つけることができます。

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タッチポイント

デジタルには様々なタッチポイントが存在し,無闇に選定をしてもターゲットとの接触は見込めません。効果的なマーケティングを実現するためには,ターゲットが日常的に利用するアプリ,SNS,Webサイト,利用時間と時間帯,購買行動に対する影響力を知る必要があります。正確な把握は決して簡単ではありませんが,実利用データやアンケート調査など,様々なデータソースを組み合わせることでターゲットの日常を割り出すことができます。

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KPI

マーケティング施策では通常投資額を上回る回収が求められます。E-コマースやダイレクトレスポンスの効果測定は比較的簡単ですが,消費財など,主にオフラインで購買される商材の場合は直接的な影響を完全には計測できません。投資額の算出や効果測定を行うためには途中経過の達成度を測るKPI(中期指標)が必要になります。まずは購買行動を計測可能な段階(認知・興味・購入・再購入・推奨)に分解し,ユーザーの分布を確認します。購買行動の段階毎のユーザー数の減衰率,購買人口におけるターゲットの割合,ビジネス目標の達成に必要となる成長率,そして平均顧客生涯価値。これらの数値を算出し,掛け合わせること で,KPIと適切な投資額を算出することができます。

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上記のデータ分析を行うことで,マーケティングプランのベースを作ることができます。これらのデータは決して入手困難なものではなく,すでに手元にあるものかもしれません。もはや勘や経験だけを頼りに,主観的なプランニングを行う理由は何一つありません。利用可能なデータを分析し客観的にマーケティングプランを組み立てましょう。

コンシューマーブランドのコンテンツマーケティング戦略

低関与な製品を扱うブランドほど,価値のあるコンテンツを提供することが難しくなります。いわゆる「有用コンテンツ」を大量に作っても,日常生活に関する読み物はつまらなく,一般的な情報になってしまいます。このようなコンテンツでは,ブランドと消費者のつながりを創ることはできません。コンシューマーブランドはそろそろ「大量な読み物コンテンツでオウンドメディアへ集客する」という戦略を見直すべきではないでしょうか。

コンテンツマーケティングからリターンを得るためには考えるべきポイントが3つあります。関心の高いトピック,有機的なコンテンツ環境,そしてアクティベーションです。

関心の高いトピック

世界的にコンテンツマーケティングの成功を収めているブランドはどれも消費者が高い関心を示すトピックにフォーカスをしています。レッドブルはエクストリームスポーツ,オレオは時事ネタ,ダヴは女性の美容意識。商品自体は低関与であっても,コンテンツのトピックが関心の高いものであれば多くの人に触れ,会話の中に入ることができるはずです。

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関心の高いトピックでは,ブランドが独自の視点や主張を表現することで,コンテンツにパーソナリティーを持たせることができます。強いパーソナリティーは消費者の共感を生み,ブランドの強化につながります。ブランドのコンテンツマーケティングにはトピックに対する関心の度合いが最も重要なポイントであると言えるでしょう。

有機的なコンテンツ環境

読み物コンテンツを使ってオウンドメディアに集客をするという発想はとてもメディア中心的な考え方です。それでは有象無象のデジタルメディアや個人ブログとなんら変わりはありません。コンテンツを使ってどのようにリーチをするかではなく,メディア毎にどのようなコンテンツが適しているかを考える必要があります。

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良質なコンテンツは人の会話に入り込み,たくさんの二次的なコンテンツを生み出します。ユーザーにコンテンツを生成してもらうために「受け入れられる話題」を提供することも,ブランドが実施すべきコンテンツマーケティングであると言えるでしょう。ブランドは消費者のコンテンツ消費傾向やメディア毎の特性を理解し,消費者の周りに有機的なコンテンツ環境を設計することで,その影響力を最大化できます。

収益につながるアクティベーション

コンテンツは何らかの方法でブランドの収益につながる必要があります。どれだけ消費者にとって有益性が高くても,投資に対するリターンを得ることができなければ良質なコンテンツであるとは言えません。ブランドや商品に対する興味・愛着を感じてもらい,アクティベーション(トライアルやリピート購入)につなげることで初めて,コンテンツに対するコストを正当化できます。

コンシューマーブランドの場合,直接的な購買効果を計ることはできません。そのためリーチやシェア数などの量的指標ばかりが重視され,近視的な戦略に陥りやすくなります。アクティベーションにつながるコンテンツを考える際はどのような中期指標が収益成長につながるかを量的,質的,価値側面から分析しなければいけません。また,良質なコンテンツを見極めるために「コンテンツ自体に広告費をかける価値があるか」という問いを目安とすることができます。

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コンシューマーブランドは関心の高いトピック,有機的なコンテンツ環境,そして収益につながるアクティベーションを意識することで,コンテンツマーケティングを大きく改善できるはずです。大量な読み物コンテンツでオウンドメディアに集客をしても,売りにつながらないと不満を感じている場合は,すぐに戦略の見直しを行いましょう。

コンテンツマーケティングのペルソナの作り方

企業が配信するコンテンツの多くは、ブランドや商品の特性を伝えるだけで、消費者に価値を提供していません。反対に、消費者に有益であっても、ブランドの強化につながらないものも多く存在します。消費者とブランドの相互利益を実現できなければ、コンテンツマーケティングとは言えません。双方の情報を整理し、理解を深めることで、価値あるコンテンツを見つけ出しましょう。

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まずはブランド側の情報を整理します。コンテンツマーケティングの取り組みを検討する時点で既に十分考慮されているはずですが、今一度整理をすることで、消費者とのつながりが見えやすくなります。

  • コンテンツマーケティングが解決すべきブランドの課題は何か?
  • コンテンツマーケティングが強化すべきブランドの特性は何か?
  • コンテンツはどのようにその特性を強化することができるのか?
  • コンテンツを通じて、ブランドが主張すべきことは何か? 消費者が共感し、情緒的なつながりを感じるポイントは何か?

次に、ターゲットのペルソナを作成します。どのような人物が、どのような情報を求めているのか。どのような情報が、購買行動にどのような影響を与えているのか。ターゲットのニーズや欲求を正しく理解し、効果的なコミュニケーションを実現するためには、最初に相手の情報を集めなければいけません。

  • ターゲットとなる人物は誰か?
  • ターゲットはどのようなコンテンツを好むのか?
  • ターゲットはどのようにコンテンツを発見、消費し、周りに共有しているのか?
  • ターゲットはどのようなキーワードで検索をしているのか?
  • ターゲットはどのようなコンテンツをシェアしているのか?
  • ターゲットはどのような課題を抱えており、どのような苦痛を感じているのか?
  • ターゲットは商品カテゴリーに対し、どのような不満を抱えているのか? どのような期待を持っているのか?
  • ターゲットに行って欲しい行動は何か? どのような情報が目的の行動を喚起するのか?

マーケティングチームやコールセンターなど、ターゲットの一次的な情報を持つ人に積極的にヒアリングをしましょう。過去の調査結果やデータなどは、組織の様々な場所に点在しています。オンラインからもターゲットに関する情報を徹底的に収集しましょう。アクセス解析からは、ターゲットがWebサイト上で閲覧しているコンテンツ。Google Adwords キーワードプランナーKeywordtool.ioGoogleトレンドなどからは、ターゲットが検索しているキーワード。Topsyはてなブックマークの検索などからは、ターゲットがシェアしているコンテンツ。Yahoo!リアルタイム検索や各種ソーシャルリスニングツールからは特定のトピックに関する話題を知ることができます。

また、FacebookやTwitterでターゲットとなる(ブランドや商品に強く反応している)ユーザーの過去の投稿内容を調べることで、その人物の様々な特徴を知ることができます。抱える課題、価値観、ブランドや商品に対する意識、求めるコンテンツなど、異なる属性毎にユーザーを3~6程度のグループに分類し、ペルソナを書き始めます。グルーピングにより、ある程度の規模に対する代表制と、十分な差別化を両立することが重要です。

ペルソナは、架空の人物像を文章で表したものです。ターゲットの本質的なニーズや欲求を明確にし、ステークホルダー間でターゲットに対するコンセンサスを実現します。効果的な戦略につながる詳細なペルソナを作るために、次の要素を含めましょう。

  • 人物:デモグラフィックやライフスタイルについて
  • 人格:独自の価値観や物事に対する姿勢、好み、性格について
  • 環境:家庭環境や人間関係、教育レベル、職業など、判断や行動を左右する外的要因について
  • 情報:積極的に収集している情報、検索しているキーワード、日常的に接触している情報の種類について
  • 技術:テクノロジーの理解、モバイルデバイスやソーシャルメディアの活用、情報の接触や配信について
  • 不満:商品カテゴリーに対する不満について
  • 苦痛:日常生活の課題による苦痛について

最後に、双方にとって価値のあるコンテンツを洗い出し、掛けあわせます。購買行動の段階ごとに最適なコンテンツを見つけることで、コンテンツマーケティングのシナリオを作ることができます。

ブランド

  • 商品やサービスの価値を理解するために必要なコンテンツは何か?
  • 商品やサービスの価値(解決できる問題)に共感するために必要なコンテンツは何か?
  • 商品やサービスの品質を信頼するために必要なコンテンツは何か?
  • 商品やサービスの優位性を理解するために必要なコンテンツは何か?
  • 商品やサービスの購入を判断するために、ターゲットが必要とする情報は何か?

消費者

  • ターゲットが検索しているコンテンツは何か?
  • ターゲットが日常的に接触しているコンテンツは何か?
  • メディアは何か?ターゲットが有益性を感じるコンテンツは何か?
  • ターゲットが喜びや楽しさを感じるコンテンツは何か?
  • ターゲットの行動に大きなインパクトを与えるコンテンツは何か?
  • メディアは何か?ターゲットに大きな利益をもたらすコンテンツは何か?

コンテンツが価値を生むためには、ブランドと消費者の相互利益を作り出さなければいけません。一方的に商品の特性を伝えたり、消費者を喜ばせるだけでは、そもそもの目的が達成できません。消費者とブランドの双方に価値のあるコンテンツマーケティングを実現するためには、正確で、詳細なペルソナを作る必要があります。

デジタルの価値創造フレームワーク

仕事で本来の目的を見失ってしまうことは,決して珍しいことではありません。ブランドマーケティングでも,売上や認知度の向上ばかりが求められれば,消費者への価値提供という本来の目的は簡単に忘れられてしまいます。価値提供と収益成長は常に相互関係にあり,より多くの商品を販売することは,より多くの人にブランドの価値を届けるための手段でもあります。ビジネスを成長させるためには商品を買わせる方法ではなく,消費者が求める価値と,それを提供する方法について考えなければいけません。

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デジタルマーケティングの分野でも,リーチや効率などが頻繁に目的化してしまいます。本来は,如何に広告を届けるかではなく,どのような体験を提供するかということを真剣に議論しなければ意味がありません。現代の消費者は,日々新しいテクノロジーやイノベーションを通じて,たくさんの喜びや感動を体験しています。身近なブランドのマーケティング施策も,デジタルを正しく活用すれば,消費者にたくさんの新しい価値を提供できるのではないでしょうか。

デジタルの価値創造フレームワーク

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ブランドがデジタルを通じて新しい価値を提供し,多くの消費者に選ばれるためには,次の3つのポイントを整理する必要があります。

  • 消費者が抱える問題と苦痛
  • 価値を提供するテクノロジーやリソース
  • 消費者が抱いているブランドイメージ

これらのポイントの交点を見つけることで,ブランドの強化につながる,新しい価値を創り上げることができます。

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消費者が抱える問題・苦痛

人は基本的に2つの目的から商品やサービスを購入します。何らかの苦痛を解消するためか,欲求を満たすためです。苦痛が深刻であるほど,相手にとって魅力的な解決法を提供することが可能になります。消費者にブランドを選んでもらい,大きな価値を提供するためには,まず相手が抱える問題と苦痛を正確に理解する必要があります。商品やサービスに関連するものだけでなく,消費者が日常的に抱える様々な問題を広く検証しましょう。

消費者が抱いているブランドイメージ

次に,消費者が抱える問題と,ブランドイメージとの合致を検証します。ブランドが何らかの情緒的な価値を提供している場合,消費者にはこちらの意図しない形で受け取られている可能性もあります。マーケティング施策をブランド価値の向上につなげるためには,ブランドが一方的に抱えるミッションではなく,実際に消費者が抱いているブランドイメージとの合致が必要です。

価値を提供するテクノロジーやリソース

ブランドイメージと合致する消費者の問題が見つかれば,最後にその解決法について考えます。活用できるテクノロジーやリソース(資源)を洗い出し,それらを通じて提供できる価値を絞り込んでいきます。新しい製品技術や特定の店舗環境などの戦略上重要な資源と,様々なテクノロジーを組み合わせることで,ブランドが提供すべき価値を見つけ出すことができます。

これは非常に単純化されたフレームワークですが,デジタルなマーケティング施策考え始める際の指針になります。消費者,ブランド,テクノロジーを理解し,その交点にあるものが見つかれば,本質的な目的を達成するデジタル体験を創り上げられるはずです。

マーケティング組織のデジタルトランスフォーメーション

日本企業の大半は、依然としてデジタルマーケティングに対応できるチームを持っていません。アドビの調査によれば、デジタルマーケティングのROIを理解していない日本の経営者は63%までに上り、アジア太平洋地域の中で最低水準の理解度であることがわかります。消費者のデジタルなメディア接触は4割を超えているにも関わらず、日本のインターネット広告費は未だ10%台を推移しています。このまま、企業がデジタルへの投資を怠っていては、消費者に対する後れを取り戻せなくなってしまいます。

市場の変化に柔軟に対応し、デジタルなタッチポイントを使いこなすためには、常に最新の専門知識が必要になります。既存のチームや、エージェンシーの体制だけでは不十分です。将来的にブランドの競争力を維持するためには、理想の顧客体験に基づく組織構造、マネジメント層の理解とサポート、そしてリターンを得るために十分な予算を確保し、マーケティング組織自体のデジタルな改革(トランスフォーメーション)を推進しなければいけません。

理想の顧客体験に基づく組織構造

本来、マーケティング組織は理想の顧客体験像(カスタマージャーニー)に基づいて構成されるべきです。しかし、ほとんどの場合は逆に、不完全なマーケティング組織によって顧客体験が定義されしまいます。これでは、理想の顧客体験を実現することは不可能です。企業はデジタルマーケティングチームの機能や構造を考える前に、消費者の購買行動を徹底的に理解する必要があります。購買行動に確実な影響を及ぼすポイントを理解し、態度変容を実現するために必要なテクノロジーや、人的リソースを割り出します。既存の組織構造からではなく、顧客中心的に投資先を見極めることで、リターンの見込めないWebサイトや、ソーシャルメディアなど、不要なデジタル施策への支出を抑え、効果的な組織構造を作ることができます。

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経営者の理解とサポート

デジタルマーケティングの推進を掲げる経営者の大半は、求められるコミットメントを十分に理解していません。技術的な知識が無いことを理由に、あらゆる判断を実務者やエージェンシーに任せてしまうのです。経営者がリーダーシップを示し、組織全体のサポートを実現しなければ、デジタル施策は断片的なものになり、多額の予算を注ぎ込んでもビジネスインパクトを生むことはありません。マーケティング組織のデジタル改革を推進し、効果的なデジタルマーケティングを実現するためには、経営者自身が現状を正しく理解し、改革のビジョンを描く必要があります。

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上記の表は、カーネギーメロン大学のCMMI(能力成熟度モデル統合)を基に、デジタルマーケティングの成熟度を5段階で表したものです。組織の現状をこの表と照らし合わせることで、経営者はデジタルマーケティング能力の獲得・開発に向けて、現場に何を求め、どのようにサポートすべきかを理解できます。

十分な予算の確保

アメリカのデジタルマーケティング支出は2016年に766億ドルまでに成長し、広告費の35%以上を占める見込みです。多くの企業は専任のデジタルマーケティングチームを抱え、既にマーケティングの中心的役割を担っていることも珍しくありません。しかし日本では、専任のチームどころか、担当者すらいない企業も少なくありません。いくらデジタルマーケティングの推進を掲げても、十分な予算が与えることができなければ、組織の改革は一向に進みません。

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デジタル投資には、①人件費、②設備投資、③運用コスト、④アウトソーシング費、⑤メディア費の5つが含まれます。理想の顧客体験を実現するために必要な①~④の投資額から、コストのカバーに必要な収益成長の目標を設定します。顧客ごとの平均利益金額と、顧客獲得単価がわかれば、損益分岐点に達するために必要なメディア費を計算することが可能になります。

デジタルで消費者を追いかけるカタチとなった日本の企業は、いち早く戦略的な投資を実現し、後れを取り戻す必要があります。最小限のリソースで、実験的なデジタル施策を重ねていても、ビジネスの成長にはつながりません。更なるテクノロジーの普及により、マーケティングの中心的役割がデジタルへとシフトしたとき、デジタルトランスフォーメーションを遂げたマーケティング組織こそが企業の競争力となるはずです。

FMCGブランドに求められる動画コンテンツマーケティング

デジタルマーケティングの予算は、確実にコンテンツへとシフトしています。Contentlyのレポートによれば、アメリカでは既に57%のブランドがコンテンツマーケティングの専任者を設けています。Econsultancyのレポートでは、コンテンツへの平均的な支出は15%に上り、Web制作の14%を上回っています。FMCGの場合は27%とさらに高く、特に動画に対する積極的な投資が見られます。このため、現在アメリカでは、オンライン動画市場の19%をFMCGが占めている状況です。

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Enterprise Priorities in Digital Marketing
CPG Brands See Better Engagement, Reach with Digital Video

消費者の動画コンテンツに対する需要は、このようなブランドの対応を上回っています。reachEngineのレポートによると、動画コンテンツをデジタルマーケティングの最優先事項としているブランドは25%程度ですが、サイト訪問時に動画コンテンツを視聴するユーザーは59%に上ります。動画を好む傾向は特に若年層に強く、同じコンテンツが画像や文章で提供されていても、51%は積極的に動画を選択しています。さらに45%は、ブランドが提供する動画をソーシャルメディア上で知人へと共有しています。

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Brands Not Meeting Consumer Desire for Video

動画コンテンツは消費者に選ばれやすいだけではありません。臨場感により、より強い印象を与え、情報の理解度を高めます。解説ビデオを専門とするSimpleShowと、ドイツの教育機関による共同研究では、独自フォーマットで作成した3分の動画が、テキストベースの資料に比べ、情報の理解度を1.5倍まで伸ばすことに成功したと報告しています。

動画コンテンツのマーケティング活用には、高い効果が期待できます。しかし、国内で積極的な取り組みを行っているブランドは決して多くはありません。FMCGメーカーや、ブランドのYouTubeチャンネルを見ても、CMばかりが掲載されており、消費者が求めるコンテンツと大きく乖離しています。

国内のブランドが動画コンテンツマーケティングに遅れをとる理由は複数考えられます。先ずはコストです。CM製作に慣れたマーケティング担当者は、動画製作がとても高額であるという印象を持っています。オンライン向けの動画であっても、同じ代理店に発注し、同じプロセスで進行すれば、同様のコストがかかるのは当たり前です。今ではMobercialやViibarなど、オンライン動画専門のサービスも数多く存在します。比較的低予算で、十分な品質の動画コンテンツの制作が可能であるため、同様の予算で、大量の動画コンテンツを作成することができるのです。

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Viibar

今ではYouTuberと呼ばれるオンライン動画クリエーターが、自ら撮影・編集した動画で、100万回以上の再生を獲得することも珍しくありません。しかし、ブランドのYouTubeチャンネルに掲載されたCM動画の再生回数は数万回が良いところでしょう。CMだけを配信することで、大きな機会損失を招いてはいないでしょうか。動画コンテンツのマーケティング活用に必要となるのは、決して大きな製作予算ではありません。YouTuberのように、低コストな動画コンテンツの製作・配信を積み重ね、オーディエンスを築き、知見を貯めていくことが求められます。

次に、どのような動画を作れば良いか、という問題があります。オンライン動画の多くは、尺や内容に制限が無く、広告主や代理店が持つ制作プロセスが通用しません。消費者が求めるコンテンツと、物を売る広告は全く別物です。先ほどのreachEngineのレポートによれば、67%のユーザーがハウツーやチュートリアルの動画を求めています。動画コンテンツは必ずしもエンターテインメント目的のバイラル動画である必要はありません。消費者にとって有益な動画コンテンツには様々なカタチがあるはずです。

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Brands Not Meeting Consumer Desire for Video

JMPHのレポートでは、FMCGの中でも、求められるコンテンツの種類はカテゴリー毎に異なるとされています。食品や飲料では、エンターテイメントが求められる傾向がありますが、機能性食品や、パーソナルケアなどの分野では、製品紹介や消費者・KOLのテスティモニアルなどが求められています。さらに、コンテンツの「顔」には、消費者や第三者のエキスパートを起用し、ブランドサイトをこのようなコンテンツの集合体にすべきであるとしています。

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What’s In It For Me?

最後に、動画コンテンツの効果測定方法の問題があります。視聴単価は数円であるにも関わらず、「◯◯◯万再生達成!」というような記事をいまだに見かけることがあります。大手の広告予算を考えると、決して大きな数字ではありません。オンラインで動画を配信することのメリットは決してリーチではなく、詳細なターゲティングとデータの取得が可能なことです。ターゲットの視聴を獲得した効率と、視聴による態度変容こそが指標であるべきです。

動画コンテンツの効果測定方法はアメリカでも課題となっています。特にFMCGの場合はリテール環境での購買データを視聴データと掛け合わせない限り、直接的な費用対効果を計測することはできません。現状では、パネルアンケートを通じて、視聴ユーザーのブランドリフトを計測することが最も現実的でしょう。

動画コンテンツは若い消費者とのエンゲージメントには欠かせないチャネルになりつつあります。多くのブランドはこの重要性と機会を認識しながらも、十分な対応を行っていません。FMCGのマーケティング担当者は、ブランドや、カテゴリーに適したコンテンツを理解し、積極的に動画コンテンツの制作・配信・効果測定に取り組み、知見を貯めるべきです。ブランドの影響力を高め、マーケティングの費用対効果を大きく高めるためには、消費者に共感・共有される動画コンテンツの配信が不可欠となるでしょう。

デジタルプロモーションの9ステップ

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消費財ブランドのビジネスには,新商品のローンチが不可欠です。ブランドが生き残るためには,新商品を求める消費者や,リテーラーを満足させ続け,厳しい市場での競争力を維持しなければなりません。毎年,開発やマーケティングに多額の予算を費やし,何万もの新商品が棚に並びます。しかし,長期的に成功するのは,その中のほんの一握りでしかありません。

新商品ローンチの多くは,競合ブランドと同時期に,限られたリードタイムで実行されます。実験的な試みや,テストなどを繰り返す余裕はなく,成功のチャンスは一度しかありません。さらに,競合商品に溢れた市場では,参入コストの増加や,成功率のさらなる低下が,ブランドにとって大きなリスクとなります。新商品を成長の原動力とする消費財ブランドには,その成功を運に任せる余裕はなく,実証された,確かな手法が必要とされているのです。

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多くの商品ローンチの経験をもとに,その成功率を高めるデジタルプロモーションの手法を9ステップにまとめました。効果的なコミュニケーションを発見し,認知から購入,クチコミまでの流れを作ることで,確実に初動の売上を獲得します。

インサイト調査

競合商品や,商品カテゴリーのインサイトをソーシャルメディアの投稿から調査します。消費者の購買動機と,非購買動機をカテゴリー毎に分類し,その傾向を分析します。数日間のリードタイムで,複数の効果的なコミュニケーションの仮説を立てることができます。

ペルソナ設定

ソーシャルメディアの分析から,理想のターゲット像を定義します。複数ユーザーの投稿を過去にさかのぼって分析し,商品カテゴリーに対する意識や,日常生活を詳細に描写します。文章を一人称で作成することで,ニーズだけでなく,細かいニュアンスなども伝わり,ターゲット像に対するコンセンサスを形成します。

クリエイティブテスト

複数の仮説をテストし,最も効果的なクリエイティブを見つけ出します。バナーなど,制作コストの低い広告のバリエーションを配信し,閲覧者の行動データを分析します。広告視聴と購買行動を結びつけることにより,確実に購買に役立つクリエイティブを短期間で絞り込みます。

ソーシャル広告

特定のデモグラフィックやインタレストに合わせて,面積の大きい画像広告を配信します。ソーシャルメディア上のプロフィール情報などからユーザーを正確にターゲティングし,効率よくリーチします。従来のバナー広告よりも面積の大きい画像を表示することで,高いインパクトを与え,新商品のアウェアネスを向上させます。

動画広告

特定のデモグラフィックやインタレストに合わせて,YouTubeなどのサービスを通じて動画広告を配信します。視聴履歴などからユーザーを正確にターゲティングし,効率よくリーチします。TVに比べ,比較的低コストで,積極的な閲覧を獲得し,新商品のアウェアネスを向上させます。

ブランデッドコンテンツ

商品の特性やバリュー・プロポジション,購入方法などを伝えるページを作成します。コピーだけでなく,ビジュアルでのコミュニケーションを重視し,新商品への興味を喚起します。オンラインでの購入や店舗の検索,ソーシャルメディアでのシェアなどへユーザーを誘導し,店頭での売上や認知度を向上させます。

サンプリング

ユーザーを広告からサンプリングのキャンペーンサイトへと誘導し,動画視聴,シェア,友人の紹介,アンケートの記入などと共に応募を獲得します。サンプリング後に購入率を調査し,新規トライアルの獲得単価を算出します。ターゲティングしたユーザーにサンプリングを行うことで,サンプリング後の購入率を高めます。

レビュー

購入者やサンプリング済みのユーザーから,ソーシャルメディアやレビューサイトなどのレビューを獲得します。キャンペーンや製品パッケージなどからユーザーのメールアドレスを獲得し,レビューを促すメールを送信します。インセンティブなどは提供せず,事前にアンケートを通じて推奨度の高いユーザーを分類することで,レビューの品質を向上させることができます。

アンケート

施策の効果や,将来的な企画に向けたベンチマークなどを調査します。購入者やサンプリング済みのユーザーから,購入経験や購入意向,ネットプロモータースコア(NPS),NPSの採点理由を取得します。NPSと採点理由を取得することで,コミュニケーションの改善方法を知ることができます。

新商品のデジタルプロモーションを成功させるためには,個別の施策の相乗効果を理解し,全体を「プロセス」として機能させる必要があります。そのためには,ユーザーの理解に始まり,認知からトライアル,クチコミへの流れを作り,ステップごとの効果検証が欠かせません。感覚的にプランニングを行うのではなく,プロセスに沿って繰り返しプロモーションを実施することで,KPIのベンチマークやノウハウが蓄積され,新商品ローンチの成功率を高めることができるのです。

Facebook広告のブランディング効果

今年、Facebookページのオーガニックリーチは激減しました。3月にSocial@Ogilvyが2%台への減少と、年内にはゼロになる可能性をも報告しています。6月にはFacebookも公式に認め、主な原因がユーザーのフォロー数や、投稿数の増加であることと、ページ運用者は有料の広告出稿を検討すべきであると告知しています。

このオーガニックリーチの低下が自然現象か、Facebookによる戦略的なアルゴリズムの改変によるものかは別として、私たちはソーシャルネットワークから広告媒体へとシフトするFacebookの特性を理解しておくべきです。

デモグラフィックデータの入力がユーザーの参加条件であるFacebookは、詳細かつ正確なターゲティングが可能であり、広告主にとって有益な媒体です。アクティブユーザー数は2013年に2,100万人を超え、ターゲティング次第では十分なボリュームも提供することができます。ユーザーの大半はモバイルからアクセスしており、様々なシーンでのリーチが可能です。

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Facebook広告の大きな特性として、その面積があります。数十ピクセルの高さが平均のモバイルバナーに比べ、Facebookのタイムラインではモバイル画面のほぼ全体に画像を表示することができます。USではインプレッションにフォーカスしたキャンペーンの7割が3倍以上のROIを記録したとされています。さらに、Facebook広告を見て、商品を購入したユーザーの99%は広告のリンクやいいね!をクリックしておらず、「インプレッションによるブランディング効果」に起因しているとのことです。

CPCやCPAが重視されるデジタルメディアにとって、「インプレッション効果」を謳うことは一見無責任な印象を与えてしまいます。実際、Facebookが2012~2013年にこれらのデータを発表した際には「空想のモバイル広告戦略」などという批判的な記事も見られました。しかし、最も効果的とされるテレビをはじめ、デジタル以外の広告はすべてインプレッション効果に頼っています。さらに、このインプレッション効果がどのようにユーザーの態度変容に寄与したかを測定することも可能です。コンバージョンピクセルを活用すればFacebook広告の閲覧者が商品に興味を持ち、サイトを訪問したかがわかります。調査に十分なボリュームが出るかは別として、リスティング広告などと組み合わせれば、どのようなキーワードで訪問をしたかを計測することも可能です。

Twitterも同じように、インプレッションを重視する広告の提案をはじめています。Twitter Cardsはつぶやきに面積の大きい写真や映像を表示することができる機能です。これにより、TwitterのプロモツイートもFacebook広告同様、大きなビジュアルインパクトを与えることが可能になっています。

消費者のメディア接触がテレビからモバイルへと大きくシフトするなか、モバイル画面上のインプレッション効果は広告主にとって重要なトピックです。今後、テレビ広告の成果指標とされてきた、認知度、ブランド好意度、購入意向率などがFacebook広告にも求められてくるでしょう。今後この効果を証明することが、Facebookにとって、広告主への最も重要なアピールになってくるのはないでしょうか。

ブランドのビジネスを成長させるNPS

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組織が事業目標を達成するためには、部署や従業員のレベルで様々な指標を設定し、管理する必要があります。デジタルマーケティングでは測定可能な項目が多く、指標は無数に存在しますが、その多くは売上や利益に直接結びつくものではありません。PVやいいね!数の増加がどのように収益の成長に貢献しているのか? そのような疑問を抱くマーケティング担当者は決して少なくはないでしょう。また、マーケティング担当者が短期的な収益を直接の指標とした場合、一時的な売上増や利益確保を重視した施策が多く実行されてしまいます。このような施策は、長期的な利益を生む戦略や投資の妨げとなり、結果的に継続的なビジネスの成長を難しくしてしまうのです。

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ブランドロイヤルティのビジネス貢献

多くのビジネスにとって、最も重要な成長の指標はブランドに対するロイヤルティです。ロイヤルティの高い顧客は新規顧客を紹介し、自らの継続的な購入を通じて、ブランドの収益を成長させます。さらに、推奨を通じて、ブランドの資産価値を向上させ、プロモーションや値引き、カスタマーサポートの不要性から、様々なコストを削減し、利益率の改善にも貢献します。ブランドがビジネスを成長させるためには、ロイヤルティの高い顧客を増やし、低い顧客を減らすことが最も効果的であると言えるでしょう。

ブランドロイヤルティと購買行動の関係は40年以上も前から注目され、数値的な計測が求められて来ました。2002~2003年には米コンサルティングファームのベイン・アンド・カンパニーとサトメトリックス・システムズが、顧客ロイヤルティ調査に用いていた『Loyalty Acid Test』の質問項目と、対象企業のビジネス成長の相関性を分析し、ネットプロモータースコア(NPS)という測定方法を考案しました。以来、NPSは世界中の企業から注目され、ブランドロイヤルティの指標として活用されています。

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ブランドのNPSを測定するためには「X社を友人にや同僚に勧める可能性はどれくらいありますか? 0~10点で評価してください」という一つの質問から、ユーザーを「批判者(0~6)」「中立者(7~8)」「推奨者(9~10)」の3グループに分類し、推奨者と批判者の比率の差異を計算します。この数値を競合ブランドや業界平均などと比較することで、ブランドの競争力を知ることができます。しかし、ただ数値を知るだけではロイヤルティ向上に向けたアクションを実施できません。NPSを測定する際には、必ず「評価の主な理由は何ですか?」というフォローアップの質問を加えるようにします。その回答内容からは、ブランドが推奨者を増やし、批判者を減らすためにどのようなアクションを行うべきかが見えてくるのです。

X社を友人や同僚に勧める可能性はどれくらいありますか?0~10点で評価してください。

評価の主な理由は何ですか?

NPSをマーケティングの主な指標とし、その改善に向けたアクションを徹底することで、顧客のブランドに対するロイヤルティは間違いなく向上するでしょう。ブランドの健康状態や、ビジネスインパクトの高い施策をリアルタイムに理解し、すべてのマーケティング活動を1つの指標で管理することが可能になります。しかし、NPSを指標とする最大のメリットは消費者に向けた施策の改善ではなく、組織にもたらす意識の改革であると言えます。ロイヤルティの向上を目的に戦略を考えることで、「顧客を喜ばせること」がチーム共通のゴールとなり、組織全体が「顧客中心主義」へとシフトすることができるのです。

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Source: Bain & Company

NPSとビジネス成長には相関関係があるだけであり、因果関係は証明されていません。しかし、NPSを採用しているブランドの成長や、顧客ロイヤルティとビジネス成長の密接な関係を否定することはできません。NPSの採用からは、ロイヤルティの向上に向けた仮説が明確になるだけではありません。既存ユーザーを3グループに分類すれば、ユーザー行動の比較からインサイトを得たり、推奨者にクチコミを促したりすることも可能になります。NPSの測定は決して多くのリソースや、コストがかかるものではありません。たった2つの質問を行うことで、ブランドは確実なビジネス成長へのヒントを得ることができるのです。

デジタルマーケティングのビジネス目的と投資対効果

objective-and-roiデジタルマーケティングの投資対効果は未だ多くの企業にとってわかりにくいものです。ユーザーの行動を正確に測定することはできても、それぞれの数値がビジネスに与えるインパクトを直接見ることはできません。ビジネスとの関連性を理解せず、闇雲にPVやいいね!数などのKPIを追い続けても、成果が出ることはありません。デジタルマーケティングの投資対効果を高めるためには、それぞれの施策のビジネス目的を正しく理解する必要があります。

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デジタル施策のビジネス目的は大きく3つ存在します。まずは「資産価値の向上」、次に「収益の成長」、そして「利益率の改善」です。例えば、競合ブランドとの差別化要因を明確にすることや、ビジュアルアイデンティティを統一することなどは、ブランドという資産価値の向上につながります。既存ユーザーに向けたクロスセルのプロモーションや、競合ユーザーに向けたサンプリング施策などは収益の成長につながります。CMSの導入を通じた運用費の削減や、DSPを活用した広告費の最適化は利益率の改善につながります。

ビジネスへの影響は施策毎に異なるため、複数の施策の投資対効果をひとくくりにして考えることはできません。目的の定義や、効果の測定は施策毎に行う必要があります。また、目的に合わせて、適切な予算を割り当てる必要もあります。利益率の改善を目的にテクノロジーを導入しても、広告宣伝費から支出をしてしまえば、結果的に短期間での収益成長を求められてしまうのです。

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デジタルエージェンシーの仕事は多岐にわたり、クライアントのビジネスに様々なインパクトを与えます。ブランドの顔であるWebサイトやソーシャルメディアを管理し、顧客を獲得するプロモーションを行い、様々なツールやテクノロジーを導入します。しかし、それらの施策の投資対効果を証明することができなければ、クライアントは全ての支出をコストとして認識してしまいます。その結果、デジタル施策に対する適切な投資ができなくなってしまうのです。今やデジタルエージェンシーには施策の実行を行う技術的なスキルだけでなく、試作毎の投資対効果を明確にし、クライアントのビジネスに必要な投資を正当化する能力が求められています。

ブランドはどのようにデジタルに投資すべきか

高いマーケティングROIを受け、いくつかのブランドがデジタルマーケティングに積極的な投資を続ける中、他の多くは遅れを取り、マスメディアからマーケティング予算のシフトを躊躇し続けています。長期的なビジョンと、積極的な投資がなければ、デジタルに精通したブランドとのギャップは更に広がり、デジタルマーケティングを軌道に乗せることは難しくなるでしょう。

ブランドが積極的なデジタル投資に踏み切れない理由はいくつかあります。デジタルに精通した人材や、エージェンシーの能力不足は一般的な問題ですが、最も深刻な問題は適切な予算の配分にあります。デジタルからのリターンを期待する前に、ブランドはどのように投資を行うべきかを理解する必要があります。

信頼できるインフラ、モバイルデバイスへの対応、データマネジメント、データ分析、ソーシャルリスニング、ウェブサイトのメンテナンス、ソーシャルメディアマネジメント……投資を必要とするデジタルの課題はとても多く、数え上げればきりがありません。マーケティング担当者が投資を行う場合、広告宣伝費の中での対応か、新たな設備投資予算の獲得という選択を迫られます。前者は既存のマーケティング予算のROIや、自身の評価に影響を与えてしまいます。後者は社内稟議に多くのリソースを消耗するだけでなく、企業の利益を圧迫してしまいます。結果、多くのブランドは長期的な視点でのデジタル投資を避け、不完全なツールやプラットフォームの環境により、効果的なデジタルマーケティングを実行できずにいるのです。

今こそ、デジタルに対する投資を組織全体で見直すべきタイミングです。広告宣伝費の枠を超え、投資の長期的な効果・効率性を精査するためには、マネジメント層の参加も欠かせません。消費者の情報環境が大きくデジタルへとシフトした今、もはや実験的なマーケティングを行っている場合ではありません。ブランドはデジタル上のユーザー体験を正しく理解し、最適化をするために、速やかに積極的な投資を実現する必要があります。

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多くのウェブサイトでは既に半分以上のトラフィックがモバイルデバイスを経由しています。そして、モバイルに最適化されていないウェブサイトからは76%のユーザーが離脱すると言われています。1ユーザーのライフタイムバリューを考えれば、これがどんなブランドにとっても重大な機会損失となることがわかります。消費者は、今やどんな情報も瞬時に入手することができ、低いユーザビリティを容認することはありません。消費者にリーチするウェブサイトは必ずモバイルデバイスに最適化されている必要があります。

分析とレポーティング

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今では大きなコストを掛けずに、膨大な消費者の情報をデジタル施策から得ることができます。Google Analytics(またはUniversal Analytics)を適切に設定すれば、ユーザーの行動やデモグラフィックを細かいセグメントと掛け合わせ、コミュニケーションやタッチポイントの改善に役立つデータを簡単に得ることができます。ダッシュボードや自動レポートを活用すれば業務不可を軽減できるだけでなく、価値あるデータを広く組織に浸透させることができます。マーケティングの意思決定に影響を与えるビジネス指標を明確にし、データが自動的に収集・報告されるよう分析ツールを設定すべきです。

様々なデジタルチャネルから、データの収集を可能にするためにはそれぞれに適切な集計タグが付与されていなければいけません。また、マーケティング活動の横断的な分析を可能にするだけでなく、効果的なリマーケティングやCRMを可能にするために、ユーザーのデータは1つのプラットフォームに集約し、管理する必要があります。

Eコマース最適化

多くのブランドにとってEコマースは最も成長率の高いセールスチャネルです。Amazonなどの大手Eリテーラーが収益の10%以上を占めることもあり、強いブランドプレゼンスの確立はどのブランドにとっても重要課題です。そのため、売上を左右するEコマース用のコンテンツには、広告クリエイティブ同様の注意が必要です。ファインダビリティの最大化のために、商品タイトルにブランドやカテゴリー名を記載します。モバイルでの閲覧を優先し、テキストを簡略化し、ユーザーが商品を様々な視点から見れるよう複数の画像を掲載します。サイズやフレーバーのようなバリエーションは1つのアイテムにまとめ、セールスボリュームやレビューを集中させます。Eコマースは店頭同様、購入までの唯一のタッチポイントである可能性があるため、単に製品スペックを伝えるだけでなく、商品のベネフィットや、ブランドの特徴などを多くの画像や、映像を含めて紹介しましょう。Eコマースでのブランドプレゼンスの最適化は、新規ユーザーの獲得を目的としたメディア施策などよりも大幅に優先されるべきです。

人材

組織は何よりも先に、人材に投資をする必要があります。特にデジタルマーケティングのプロジェクトでは、メディア費などよりも、コンテンツ制作やテスト、分析など、多くの人的な工数がかかります。マネジメント層は長期的なROIの向上のために、デジタルマーケティングをパートタイムな責任やポジションとせず、フルタイムのチームの採用にコミットする必要があることを理解しなければいけません。デジタルメディアへの支出などは、適切なチームやインフラが確立されるまで最小化し、優秀な人材の獲得へとまわすべきです。

デジタルマーケティングに遅れを取っているブランドは、最新のトレンドやデジタルメディアへのは闇雲な投資を控えるべきです。代わりに長期的なビジョンを開発し、現在の環境の再評価を行い、適切なデジタルマーケティングの基板に投資を行う必要があります。効果的なデジタルマーケティングを行うために、先ずは環境とチームの整備を最重要課題としましょう。

デジタルマーケティングのKPI設計 & ROI分析

定期的にパフォーマンスレポーティングを行っているブランドのデジタルマーケティング担当者も、正しいレポーティングが行われているのか、また、セールスへの貢献をトラッキングできているのかが分からない…という方も多くいるのではないでしょうか。

  • 『昨月比での増減の推移をトラッキングし、アクセス数は増加、CVRは減少したと推移を見ているが、どこまで達成したら良いのか、何が上手くいっているのかが分からないまま数字だけ見ている…』
  • 『とりあえず、全ての数字を追いかけているが、何が重要であるかが分からない。全てを向上させようとするので、施策がフォーカスできず、労力もかかってしまう…』
  • 『デジタルの数値結果がどのように実セールスと相関しているのかが分からないため、費用対効果が不明瞭なままデジタル施策への投資を行なっている…』

セールスへの貢献を感覚的に判断するのではなく、ビジネスの目的を明確にし、目的に貢献する中間指標(KPI)を立て、測定し、実セールスデータとのパフォーマンスレビュー(ROI分析)を行うことで、何が本当に貢献したのかを明確にすることができます。

KPI設計、ROI分析が不明瞭になる理由

それは「目的が適切に定義されてない」、また「目的を達成するための中間指標の計測が可能となる、タッチポイント設計がなされていない」ことが要因です。ビジネス成長に貢献するデジタルマーケティングであっても、目的が単に「セールスを向上させる」という内容では、何を見るべきであるのかが明確ではないままプロジェクトが進んでしまいます。

ビジネスにおいて目的となるゴール指標は “KGI” と呼ばれ、KGIに繋がる中間指標が “KPI” です。セールスを構成する「新規顧客による間口獲得」を目的とするのか、または「リピーターの育成による奥行獲得」を目的にするのかというだけでも、ターゲットやタッチポイントが大きく変わります。KGIが不明確であると、KGIに繋がる中間指標、KPIを割り出すことはできません。

まずは、適切な目的を設定し、そして目的を達成するためのタッチポイント設計(どのターゲットに、どのタッチポイントで、何を伝え、何をさせるのか)を行なえば、どのタッチポイントで、どの数字をトラッキングすべきかを明確にすることができます。目的を達成するためのタッチポイント設計を行なうことこそが、KPI & ROI分析のための基盤となる重要なポイントです。

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KPI設計におけるテクニック

具体的なKPI値を決定するためには、目的を踏まえ、売上げ目標やセールス成長率などから、デジタル施策が担うべき数値を明確にします。まずは、ビジネスの目標数値をデジタルにおけるKPI値に換算することから始めます。例えば、新規顧客による間口獲得を目的とし、目標セールス成長率を10%とします。初めてデジタルプロモーションを実施する場合には、成長分をデジタル施策が担う範囲と設定し、成長分のセールスを達成するために必要な新規顧客数をデジタルが担うKPI値と設定することができます。例えば、サイトへの訪問や動画視聴完了がセールスと相関関係が認められるユーザアクションである場合には、サイト訪問と動画視聴完了の両方で、新規顧客数のリーチを獲得することをKPIとすることができます。

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ROI分析におけるテクニック

販路がオフラインである場合、デジタルマーケティングにおけるROI分析が不明瞭になる理由として、最終的に施策によって売上げが上がった下がったという結果だけに注目してしまい、具体的にどのタッチポイントのどのアクションがセールスに影響を及ぼしていたのかという分析とレビューを行っていないことが考えられます。タッチポイント設計とKPI設計を行なうことはもちろんですが、セールスデータとユーザアクションの相関分析を行い、仮説の検証を行うことが、効果的で明瞭なROI分析を実現します。何がワークし、何がワークしなかったのかを明確にし、ネクストステップを明確にすることも重要です。

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仮説が実証され、目的に寄与するアクションであることが明確になれば、次からは仮説としてではなく、実際に寄与するアクションの実績として、目的を達成するためのタッチポイント設計に組み込むことができるのです。施策毎に価値のあるレビューを行い、ブランド内でデジタルマーケティング資産を構築していくことこそが、費用対効果の高いデジタルマーケティングの実現のために、私たちが掲げるべき最も重要な目標設定なのではないでしょうか。

広告ではなく、パッケージから始まるデジタルマーケティング

消費財ブランドのデジタルマーケティング担当者の多くは、共通して以下の3つの悩みを抱えています。先ずはメディア費が増え続けていること。マーケティング予算がマスからデジタルへとシフトするなか、デジタル施策にはスケールが求められ、アドへの投資が増え続けています。次にKPIがビジネスに直結していないこと。PVや、いいね!数などのデジタル施策の指標では、売上との相関関係が見えず、ビジネスに対する貢献を計測することはできません。最後にROIが不明であること。ビジネスへの貢献が不明であり、確実な投資効果を実感することが出来なければ、増え続けるデジタルマーケティング予算をこれ以上正当化することは出来なくなります。

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これらの問題を解決するために、デジタルマーケティング担当者はは2つの点を見直す必要があります。1つめは「リーチする方法」。何もブランドとの接点の無い消費者に広告でリーチする以外にもっと効果的な方法はあるはずです。2つめは「計測する方法」。例え一部でも、リテールでの購入をブランド側で計測できる方法があるはずです。

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消費財ブランドには、消費者へのリーチと、購買行動の計測に活用できる強力なアセットがあります。これは多くのデジタルマーケティング施策で見落とされている「商品パッケージ」です。当たり前ですが、パッケージは100%の購入者にリーチします。私たちの実績からは、LINEスタンプのダウンロードや、キャッシュバックなどのデジタルキャンペーンを掲載すれば、最大50%のユーザーから反応を得る事ができ、1人の購入者からは平均で2人の新規顧客の紹介が得られることがわかっています。もちろん、流通しているパッケージ数に比例して、多くの購入者のメールアドレスやCookieデータを獲得することができ、長期的なメディア費の削減にも役立ちます。

例えば、パッケージからマストバイキャンペーンへと誘導し、参加者の知人への紹介を通じてサンプリングを行うことも可能です。こうすれば、メディア費を一切かけずに多くの新規ユーザーにリーチし、商品の興味喚起や試用を実現する事ができます。このように、消費者との様々なタッチポイントをデジタル施策のデータ収集ポイントとして考えることができれば、デジタルマーケティングのROIを大きく改善することが出来るはずです。

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更に、パッケージからキャンペーンサイトへの訪問データは、購買データとして活用することができます。このデータをオウンドメディアの閲覧履歴と掛け合わせれば、購買行動との相関関係を知ることができます。Google Analyticsなどのツールだけでも、購買促進に効果的なコンテンツやコミュニケーションを見つける事が可能になります。コンテンツは、PVなどではなく、購買に対する影響で評価されるようになります。

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消費財ブランドにとって、商品パッケージこそが最強のデジタルメディアです。消費者にリーチし、その購買行動を計測し、マーケティングROIを最大化するためには、広告ではなく、パッケージからデジタルマーケティングを始めてみましょう。

FMCGのデジタルマーケティングを推進させる購買データ

FMCGの分野では、多くの企業がデジタルマーケティングへの対応に遅れを感じています。その背景には費用対効果が評価できないために、積極的な投資に踏み切れないという理由があります。オウンドやアーンドメディアに投資をしても、スーパーやドラッグストアの買い物のために消費者が積極的に情報収集をしてくれる訳ではありません。ペイドメディアでリーチをしても、店頭の売上を左右するほどのアウェアネスは期待できません。効率的にターゲットへリーチし、確実に店頭での購買へと誘導できたとしても、直接的な影響を計ることが難しいため、大きな投資を正当化することも困難です。更に、大きなリターンが期待できなくても、デジタルマーケティングには膨大なワークロードが求められます。様々なタッチポイントを連携させ、セグメントごとのコミュニケーションを最適化し、細かい検証と軌道修正を繰り返しながら、新たなテクノロジーやトレンドを学び続ける必要があります。このような状況では、FMCGのマーケターがデジタルマーケティングに対して消極的になってしまうのも無理はありません。

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FMCGのデジタルマーケティングを推進させるためには、その特性を活かし、デジタルの枠を超えて、マーケティング全体の最適化に貢献しなければいけません。デジタルマーケティングの特性の中でも、店頭とテレビが中心であるFMCGのマーケティングに影響するものは3つ考えられます。1つはダイレクトマーケティングのように、ユーザー毎にコミュニケーションを分け、それぞれの効果が測定できること。次に、動画など、様々なメディア形式でのコミュニケーションが可能であること。そして、認知からクチコミまで、購買行動全体をカバーできることです。これらの特性をまとめると、FMCGにおけるデジタルマーケティングの目的は「Webなど、デジタルなチャネルで広い情報発信を可能にすること」ではなく、「購買行動全体の計測から、様々なマーケティング施策の改善を可能にすること」であると考えられます。

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デジタルマーケティングの可能性を引き出す鍵は間違いなく購買データです。通販などダイレクトレスポンスの分野では、購買など、最終的なコンバージョンのデータから施策を改善することは当たり前です。例えば、動画広告の視聴データと購買データを結びつければ、動画が売上へ与えた効果を直接的に測定できます。複数のクリエイティブを同時に配信すれば、最も効果的なものを見つけることができますし、ユーザーセグメント毎に広告を配信すれば、反応率の高いターゲットや、特定のターゲットに最適なクリエイティブを見つけることも可能です。他にも、WEBサイト上の行動データなどを組み合わせれば、一人ひとりのユーザーがどのような情報を接触した結果、購入に至ったのかを調べることができます。無数の可能性の中から購買を軸にコミュニケーションの「正解」を逆引きすることができれば、FMCGのマーケティングはトライアルアンドエラーという手法から脱却し、正確かつ迅速に、システマチックな改善を行うことが可能になるはずです。

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購買行動全体を計測可能にするためには、既存の様々なタッチポイントを活用する必要があります。購買データのソースはポイントカートやECサイトの購入履歴など、サードパーティのものには限られません。クローズド懸賞の応募者や、パッケージのみで告知したデジタルキャンペーンの訪問者は、ほぼ全員が購入者であると言えるでしょう。他にも、Webサイトから、Amazonの商品ページへのリンクをクリックしたユーザーには購買意欲があると言えます。デジタルマーケティングの担当者にとって、タッチポイントはデータの収集ポイントでもあります。先ずは購買行動全体の計測を可能にするために、既存のマーケティング施策を駆使し、様々なタッチポイントからデータを収集することにフォーカスすべきでしょう。

多くのFMCGのマーケターにとって、デジタルは未だスケールが不十分で、大きな効果が期待できないものかもしれません。しかし、デジタルマーケティングがデジタルなチャネルに限らず、マーケティング全体の改善を可能にし、その投資対効果を大きく向上させるものだとすれば、もはやそれを代理店に委任することはできなくなります。戦略的なデータの収集と、データに基づいた様々なマーケティング施策の改善が求められ、業務の主軸は代理店から広告主側へと移るでしょう。FMCGのマーケターがデジタルマーケティングの重要性に気づき、専門家と共にそのスキルやノウハウを社内に蓄積し始めた時こそ、競合他社に対する持続的な競争優位性を確立することができるのではないでしょうか。

コミュニケーション設計に役立つインサイトリサーチの3ステップ

デジタルマーケティング施策で、ユーザーの行動を変化させるためのコミュニケーション設計をするためにはインサイトを理解しておく必要があります。しかし、インサイトを調査する方法がわからず、悩んでいる方も多いのではないでしょうか。正確なインサイトをつかむには時間と労力がかかりますが、コミュニケーションを設計する上でヒントとなる程度のインサイトであれば、ソーシャルメディアやレビューを利用し、比較的簡単に調査することができます。

例えば、Twitterなどのソーシャルメディアやレビューではユーザーが利害に関係なく商品に対する率直な意見を投稿しています。「新しく発売されたアイス買ってみたけど思ってたより美味しかったー!」「前から気になってたアイス見つけたんだけどちょっと値段高いよね…。」このような投稿からはユーザーの本音を垣間見ることができるため、インサイトの傾向をつかむことができます。

もちろん上記のような投稿から100%正しいインサイトをつかめるわけではありません。グループインタビューやアンケートなどを併用する必要が発生する場合もあります。しかしコミュニケーション設計を行う上では、十分利用することができるインサイトを発見することが可能です。

インサイトリサーチの3ステップ

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まずリサーチを行う前にインサイトの意味を正確に把握しておきましょう。インサイトとはターゲットの「思考」と「購買行動」の因果関係と定義することができます。それではインサイトリサーチの具体的なプロセスをみていきます。インサイトリサーチは購買動機を左右するポイントを洗い出す検索、インサイトの発見、競合商品やカテゴリーとの比較の3ステップに分けることができます。

具体的な流れを見ていくため、今回は実際のブランドで簡単なインサイトリサーチを行ってみます。私はアイスが好きなので2012年、日本に再参入したアイスクリームブランドのBen & Jerry’sをクライアントに、全国のコンビニでカップアイスを販売すると仮定し、競合になると思われるハーゲンダッツのユーザーからブランドスイッチしてもらえるコミュニケーション設計を目指してインサイトを構築していこうと思います。

ステップ1 : ネット上から購買動機に関する口コミを洗い出す

インサイトを発見するため最初に行うステップは、ネット上から競合商品と商品カテゴリ、クライアント商品の購買動機に関する口コミを洗い出すことです。口コミを探す先はソーシャルメディアやECサイト、CGMサイト、ブログなどです。洗い出した口コミには簡単なタグを付け、Excelなどで分類していきます。

口コミは購買を軸に、ポジティブなものとネガティブなものに分けて洗い出します。根気のいる作業ですが、100程度の口コミを集めるのが理想です。以下のような口コミに注意して見ていきましょう。

  • Ben & Jerry’sのアイス美味しいから食べたくなっちゃうんだよねー
  • 今日仕事頑張ったからご褒美にハーゲンダッツ買ってきちゃった!
  • ハーゲンダッツ大好きなんだけどちょっと高いから今日は我慢しよう。

このような口コミからは「美味しくてBen & Jerry’sを買う」「自分へのご褒美にハーゲンダッツを買う」「ハーゲンダッツの値段が高いから買わない」といったことが判断できます。

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実際にハーゲンダッツのリサーチを行ったところ上記のようになりました。ポジティブな口コミが圧倒的に多く、その中ではプレゼントや自分へのご褒美で購入している人が多いことがわかりました。また、期間限定のフレーバーを試して、美味しいと投稿している人も目立ちました。

数少ないネガティブな口コミの中で目立ったのは値段が高いということでした。プレミアムアイスということで仕方のない部分もありますが、高いと感じてしまう人もいるようです。今回は省略しますが、同様に商品カテゴリとBen & Jerry’sの購買動機もリサーチします。

ステップ2 : ステップ1で洗い出した口コミを基にインサイトを発見する

ステップ2ではステップ1で洗い出した購買動機を基に競合商品、商品カテゴリ、クライアント商品のインサイトを探していきます。ステップ1の内容によっては商品と一緒に購入する併売商品(今回の場合はアイスと一緒に購入する飲み物など)のインサイトも発見できる可能性があります。

  • 〇〇だと思っているから〇〇を買っている
  • 〇〇したいから〇〇を買っている
  • 〇〇になりたいから〇〇を買っている

インサイトは上記のような文章を参考にすると発見しやすいです。

ステップ3 : より正確なインサイトにするため、競合や商品カテゴリとインサイトを比較する

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ステップ2で発見したインサイトをより正確にするため、上記のフレームワークに当てはめ、競合商品や商品カテゴリ、併売商品とクライアント商品で比較します。比較する上で最も重要になる点は競合商品や商品カテゴリを買っている人の評価属性を変えることができるインサイトをつかむことです。少し言葉で表現するのは難しいので実際の例を見ていきましょう。

今回はハーゲンダッツのインサイトからBen & Jerry’sのインサイトへ評価属性を変えることができる点に着目して比較していきます。

ハーゲンダッツのインサイト 「いつも買っていて失敗したことはないし、美味しいのはわかっているからハーゲンダッツを買っている」

Ben & Jerry’sのインサイト 「みんなが美味しいと言っているからBen & Jerry’sを買ってみる」

ハーゲンダッツのユーザーは何度もリピート購入していることが多いです。それは「過去の自分の経験でアイスを選ぶ」からで、失敗することがない美味しいアイスだとわかっているからです。他のアイスを手に取る事が少ない人に「過去の自分の経験でアイスを選ぶ」から「他の人の経験でアイスを選ぶ」という評価属性を与えてあげることができれば、Ben & Jerry’sのアイスを手に取ってもらうことができます。

ハーゲンダッツのインサイト 「より質が高いと思うからハーゲンダッツを買っている」

Ben & Jerry’sのインサイト 「フェアトレードで質にこだわっているからBen & Jerry’sを買っている」

コンビニで並んでいるプレミアムアイスの中でもユーザーはハーゲンダッツが他のものより質が高いと感じています。ユーザーは「アイスクリームは質で選ぶ」からハーゲンダッツを選択しています。そこでBen & Jerry’sの特徴であるフェアトレード認証された材料を使い、質にこだわっていることを具体的に伝えることができれば選んでもらえることができます。

ハーゲンダッツのインサイト 「期間限定で新しいし、パッケージのデザインから美味しい味が想像できるからハーゲンダッツを買っている」

Ben & Jerry’sのインサイト 「フレーバーが美味しそうで誰もが安心できる原料を使っているからBen & Jerry’sを買っている」

ハーゲンダッツのパッケージは見るだけで味が想像できる素晴らしいデザインです。期間限定の新しいフレーバーで、食べたことがなくてもパッケージから味が伝わってきます。ユーザーは「アイスクリームはイメージで選ぶ」のでハーゲンダッツを選択しています。Ben & Jerry’sはフレーバーが美味しそうで、誰もが安心できる原料を使っている事を伝えることができれば、イメージでBen & Jerry’sを選んでもらうことができます。

ハーゲンダッツのインサイト 「知人や家族が好きで喜ぶことを知っているからハーゲンダッツを買っている」

Ben & Jerry’sのインサイト 「あの人が選ぶフレーバーが必ずあるからBen & Jerry’sを買っている」

ハーゲンダッツを知人や家族にプレゼントとすると喜ばれます。「アイスクリームは人の好みで選ぶ」からです。ハーゲンダッツブランドをプレゼントするのではなく、知人や家族が選ぶ味のフレーバーがあることを伝えることで、家族にもっと喜んでもらえることを知ってもらえれば、Ben & Jerry’sを選んでもらうことができます。

ステップ2の段階でもある程度インサイトの傾向は見えています。そこに評価属性という視点を持ち、競合商品や商品カテゴリとクライアント商品でインサイトを比較することで、より正確なものにすることができます。

インサイトを正確にする上で重要になる評価属性ですが、注意点もあります。今回のインサイトでも2番目や3番目は評価属性を変えているものの、類似点があります。このように競合と似ているインサイトでコミュニケーションを取る場合、認知度が高いブランドには勝つことができない可能性があります。インサイトをつかむ上では、競合にはない優位性や独自性の部分をいかに多く見つけることができるかが重要になります。

ここまでがインサイトを発見するための3ステップになります。今回のインサイトリサーチはブログ用として短時間で行ったものですが、コミュニケーション設計を行う上でのヒントとなるインサイトはつかむことができたと思います。

各ステップで更に時間をかけることや、ステップ3で比較対象を増やすことによって正確度は増していきます。インサイトリサーチを利用してインサイトを発見するためには経験も必要になってきますが、繰り返し行うことで誰でもインサイトを発見することが可能だと私は思っています。

インサイトからターゲット像を明確にする

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ここまでインサイトリサーチのプロセスをご紹介しましたが、リサーチで得られたインサイトを基に、もうワンステップ進ませてターゲット像を明確にさせることができます。明確にさせることによってプロジェクトに関わるチーム内で同じターゲット像を描くことに繋がり、コミュニケーション設計を行う上では重要な要素となります。

ターゲット像を描くためにはI am statementという方法を使用します。I am Statementとは一人称の視点からターゲットの心理を描いた文章のことです。このI am statementはステップ3で得られた複数のインサイトや、リサーチをする過程で見つかったユーザーの特徴などから作ることができます。今回はハーゲンダッツのユーザーがターゲットということで、インサイトリサーチの結果から簡単なI am Statementを作成してみました。

私はスイーツとか甘いものが好き。コンビニとかスーパーで甘いものを見たらすぐ食べたくなっちゃいます。最近、会社では責任のある重要な仕事を任されることも多くなってちょっと疲れ気味。癒しが欲しい時とか仕事を頑張った時は帰りにコンビニでハーゲンダッツを買ってます。

プレミアムアイスが売ってるコーナーにいくと色々なアイスがあるけど私はいつもハーゲンダッツかな。ハーゲンダッツはどんな味を買っても美味しいし、他のアイスよりも質がいいと思ってるから。わざわざ他のアイスに挑戦して失敗するのも嫌だし…。

今日は期間限定で新しいフレーバーが出てたから、思わず買っちゃった。だってパッケージに書かれてるアイスのイメージがすごい美味しそうだったんだもん。今日はなんだか機嫌がいいし、家族の分も買っちゃおうかな。ハーゲンダッツを買っていくとみんな喜ぶんだよね。

いかがでしょうか。これまでに出てきた複数のインサイトに加えて、ユーザーの特徴などを少し組み合わせてあげることで、このようなI am Statementを作成することができました。さらに詳細なターゲット像を導き出したい場合はペルソナリサーチという方法もあります。インサイトに加えて上記のようなターゲット像を明確にすることで、よりコミュニケーション設計に役立てることができるようになります。

インサイトはコミュニケーション設計を行う上で欠かすことのできないものです。インサイトリサーチの過程はインサイトを発見するだけではなく、I am Statementのようなターゲット像の作成、他にもコミュニケーション設計を行う様々な場面の土台となります。ある程度の時間と経験は必要となりますが、誰でもネットに繋がる環境さえあれば、どこでもリサーチすることが可能です。リサーチの過程は財産となることばかりですので、インサイト調査する際はぜひ一度試してみてください。

データを活用できないブランドに勝ち目はない

デジタルマーケティングとは単に「デジタルなチャネルでマーケティングを行うこと」でしょうか?今ではDSP(デマンドサイドプラットフォーム)などのテクノロジーを通じて、個別のユーザー(クッキーID)単位に広告を配信し、その反応をデータとして収集することができます。収集されたデータは、共通する項目(主にクッキーID)を軸に、他のデータと統合され、その相関関係から、誰が、どの広告に反応した結果、購買至ったかなど、ユーザー一人ひとりの「属性」や「行動」を詳しく知ることができるようになりました。「データを通じて、マーケティング全体を最適化する」ことが可能になった今、デジタルマーケティングの定義が変わりつつあると思います。

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そんな「データを通じたマーケティング全体の改善」を可能にする「DMP」(データ・マネジメント・プラットフォーム)や「ビッグデータ」は間違いなくゲームチェンジャーです。大規模な消費者のデータを正しく組み合わせることができれば、実際の広告効果をリアルタイムに測定し、そのパフォーマンスを確実に、短期間で改善することができます。これは多くの企業にとって機会であると同時に、大きな脅威でもあります。今後、マーケティングを行う企業の優位性は、データに対するリテラシーと、データを基に業務を実行できる体制によって定義されるでしょう。

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特に消費財などのカテゴリーでは、データを基にユーザーを知ることが重要です。自己関与が低い場合、顕在化したユーザーのニーズを検索などから刈り取るような手法は通用しません。購買行動は合理的な判断ではなく、多くの場合衝動できです。そのため、実際に購買が発生した状態から逆引きし、どのような条件によって衝動が発生したかを調べることが有効となります。 例えば競合が、コンビニなどで使えるポイントカードの購買データと、複数の動画広告の試聴データを掛けあわせたとします。そこから、ブランドスイッチに最も効果的なクリエイティブを見つけ、こちら側のコアターゲットのデモグラフィックに向けて配信をし始めます。時間の経過と共に、そのターゲティングはより詳細なセグメントに分類され、最適なクリエイティブが、適切なフリーケンシーで配信されます。中でも戦略上最も重要と判断されたセグメントに対し、効果が証明されたクリエイティブは、デジタルの域を超え、TVCM、屋外、店頭でのコミュニケーションにも起用されていきます。

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これは未来の話ではなく、現在行われていることです。競合は戦略的なデータマネジメントを徹底し、確実な答えを、リアルタイムに導き出し、感覚的なマーケティングでは太刀打ちできない正確性とスピードというアドバンテージを得ています。もはや「データマネジメントに取り組まない」という選択肢はありません。どの企業も、直ちに効果的なデータの活用方法を理解し、マーケティングROIの改善に取り組むべきです。

もちろん、「ビッグデータのマーケティング活用」をスローガンとして掲げている企業は既に多く存在します。しかし、その具体的な戦略や、活用方法は明確でしょうか?どうすればデータを活用し、競合優位性を確立することができるのでしょうか?DMPはデータの収集と分析という中心的な役割を担います。正しい活用方法を知るためには、先ずはデータを収集する目的と、正しく管理する方法を理解することから始めましょう。

データマネジメントの目的

DMPは様々なデータを格納し、その相関関係を調べることができるツールです。Webサイトの閲覧データ、デジタル広告の配信データ、メール会員のデータベース、ソーシャルメディアのデータなどだけでなく、マス広告のデータ、店頭のPOSデータなど、様々なデータを格納・統合し、分析することができ、マーケティングの様々な側面での活用が期待されます。しかし、企業は先ずDMPをマーケティング予算の大半を占める「広告」の最適化に活用すべきでしょう。広告の視点からデータマネジメントを考えると、その目的は大きく2つに集約されます。先ずはターゲティングの最適化、次にクリエイティブの最適化です。

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広告のターゲティングやクリエイティブの改善のためには、主に広告配信やWebサイト訪問時のクッキーを軸に、広告の反応データ、デモグラフィックなどの「属性」(セグメント)データ、そして広告の視聴や購買などの「行動」(ビヘイビア)データを掛けあわせていきます。その結果、どのような人物が、どの広告を見て、どのような行動を行ったかを知ることができるのです。

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データには主に自社のマーケティング活動から得られるファーストパーティ・データと、第三者のデータソースから提供されるサードパーティ・データがあります。例えば、DSPが保有するデモグラフィックデータと、自社で持っているバナー広告からのサイト訪問データを組み合わせれば、広告反応率の高いデモグラフィックを見つけることができます。他にも様々な属性と行動のデータを組み合わせることで、たくさんの貴重な情報を得ることができます。

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ターゲティングの最適化

ターゲティングの最適化を目的とする場合、先ずは全セグメントへの広告配信を行います。ユーザーの年齢、性別、居住地、家族構成などのデモグラフィックに加え、Webページの閲覧履歴などから得られたインタレストから、広告に反応するユーザーがどのような人物であるかを知ることができます。想定外の反応や、ラーニングを見落とさないためにも、感覚的に対象を絞りこまないようにしましょう。データを通じて、広告への反応が期待できるユーザーだけをターゲティングできるということは、広告主にとって大変重要なポイントです。ターゲットが数百万人規模の場合、マス広告ではどうしても非効率な部分が多く発生してしまい、予算の無駄が発生するだけでなく、クリエイティブに対する誤った判断をも生み出しかねません。多くのブランドが、明確なターゲットがわからず、万人受けするタレントばかり起用してしまうのもそのようなことが原因なのかもしれません。

データマネジメントを通じたターゲティングの最適化は、単なるリターゲティングとは異なります。確かにリターゲティングだけでも、ユーザーのWebページの閲覧行動などから個別のコミュニケーションを行い、細かいターゲティングを行うことは可能です。しかし、これではどのターゲティングが効果的であったかを知ることはできず、更に、重複するセグメントに対応することができません。

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このように、「属性」の条件が複数になると単なるリターゲティングでは対応できません。また、その後の「行動」との相関関係も簡単には分析することができません。DMPを活用すれば、特定の項目に興味があるか、否か、ということだけでなく、ユーザー単位で複数の興味対象や、属性条件の関連性、行動との相関関係を分析することができます。ユーザーの特定の「行動」も、もちろんターゲティングに活かせる重要な「属性」情報になります。特定のページの閲覧履歴だけでなく、広告接触のフリーケンシーやリーセンシーも重要なデータです。ユーザーの様々な「行動」を基に「属性」データを蓄積し続ければ、ターゲティングは徐々に最適化されて行きます。そして、コミュニケーションも狭いターゲットのインサイトを突いた、鋭いものとなるでしょう。ターゲットが決まれば、次は目的の行動を起こすために最適なクリエイティブを見つけることができます。

クリエイティブの最適化

データさえあれば、もはやクリエイティブに悩む必要はありません。ユーザーの行動と、クリエイティブ毎の視聴データを掛けあわせれば、その相関関係から最も効果的なクリエイティブを見つけることができます。ポイントカードやECサイトの購買データは、ユーザーの購買行動の測定を可能にするため、大変価値のあるデータです。更に、ユーザーの属性を掛けあわせれば、特定の属性に効果的なクリエイティブを見つけることが出来ます。

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ターゲットと同様、クリエイティブも感覚的に選んではいけません。その効果が直接的に、リアルタイムに検証できるため、重要なのは量とスピードです。貴重な時間を1つのクリエイティブの作りこみに使うのではなく、より早く、より多くのテストを行うために使いましょう。例えば、バナーであれば低コストで多くのバリエーションを作ることができます。考えられる全てのコピーやイメージをセグメントごとに配信し、ECサイトの購入や訪問データと掛けあわせれば。すぐにコミュニケーションの方向性を決めることができます。クリエイティブは全てをテストし、最適なものを見つけてから作りこめばよいのです。

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プライベートDMPによるデータの一元管理

プライベートDMPは広告主が自社とサードパーティの様々なデータを格納・統合し、分析を行うものであり、単体で何らかの成果を出すことはできません。重要なのはDSPなどの外部の広告配信システムなどと連携し、広告のパフォーマンスを向上させることです。そのため、多くのシステム的な連携やアップデートが必要となり、自社で開発を行うことは現実的ではありません。目的を達成するために必要なデータソースだけでなく、広告配信システムとも連携ができるプロダクトを選びましょう。データの連携はシステム間の互換性だけでなく、データの構造にも左右されます。特定のメディアや企業だけに依存しないよう、十分に目的と、その達成を可能にするテクノロジーを理解した上で、自社でデータを一元管理できる環境を構築しましょう。

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データを管理するための環境を構築するためには、どのようなデータを、何の目的で収集するかを定義します。ブランドの方向性を見つけるフェーズと、細かいクリエイティブの軌道修正を行うフェーズでは、活用すべきデータが異なります。しっかりとマーケティングの目的を理解し、それぞれのテクノロジーが何を可能にしてくれるのかを理解する必要があります。多くの組織ではマーケティングが目的を定義するため、マーケティング実務者が活用可能なテクノロジーを理解することは必須です。データマネジメントは代理店などの第三者に丸投げをせず、社内に確実なナレッジやノウハウを貯めていきましょう。

データの活用

データマネジメントでは、先ずはその目的を定義し、必要なデータの収集方法を計画します。「データ収集方法の計画」は従来のマーケティング活動の「タッチポイント設計」にあたります。重要なのはコミュニケーションを行いつつ、データを収集するということです。例えばFacebookページに特定のURLを記載すれば、Facebookファンの属性データを得ることができます。製品パッケージだけにキャンペーン情報を掲載し、ユーザーをサイトへと誘導すれば、購買したという行動データ、又は購入者であるという属性データを得ることができます。マーケティングを行う上での消費者との様々なタッチポイントを駆使して、必要なデータを集めましょう。

もちろんDMPには様々なデータを格納し、統合、分析することができますが、目的に適していないデータを収集すると、すぐにその量は膨大になり、分析に要する貴重な資源を圧迫します。先ずは小規模で、目的に適した(価値密度の高い)データを集め、活用するための分析力と、社内のプロセスやワークフローを整備していくことが重要です。

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データの収集・統合、分析・レポーティングはエージェンシーに任せて良いでしょう。デジタルマーケティング担当者にとって、最も重要なステップはデータの活用です。データはリアルタイムに正確な答えを教えてくれますが、具体的なアクションを現場に落とし込むスピードが遅ければ、その価値は激減します。プロジェクトの目的さえ正確に定義すれば、データの収集や分析は代理店に任せても良いでしょう。担当者に求められるのは、データを得た後に、その意味を正しく理解し、何よりスピーディーに対応すること。プロジェクトの期間中に柔軟に仮説を変え、軌道修正に向けて迅速な社内調整を行うスキルが求められます。

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データをマーケティングに活用するためには、先ず広告やプロモーションから始めるべきでしょう。データによる業務へのリアルタイムなフィードバックは、多くの軌道修正や、変更を発生させます。社内調整や、協力会社との連携にも様々な「摩擦」が発生し、サイクルを重ねる毎に、より良いワークフローや、連携方法、役割と責任の所在などが見えてきます。データを活用する力をつけるためには、マーケティング活動の中でも最もサイクルの短い、広告のPDCAを通じて、成功・失敗要因のレビューとプロセス化を徹底することが最も効果的だと言えます。データ自体は購入することができますし、これからも様々なデータプロバイダや、データを管理するマーケティング・ソリューションが現れます。本当に企業の競争優位性を生み出すのは、経験に裏打ちされた、データ活用のワークフローやプロセスです。新しいテクノロジーを導入したからといって、いきなり大規模なデータの分析と活用が可能になるわけではありません。もし、現在デジタル施策のデータを積極的にマーケティングに活用していないのであれば、キャンペーンなどの、小さなプロジェクトから始めることをお勧めします。

デジタルマーケティングのタッチポイント設計

デジタルマーケティングにおけるタッチポイントはターゲットに「リーチする」だけでなく、「データを収集する」役割を持ちます。ユーザーの行動からは、広告のターゲティングやクリエイティブの効果をリアルタイムで知ることができ、短期間でのパフォーマンスの改善が可能となります。これが「データは新しい石油」と言われ、多くの広告主が「ビッグデータ」という言葉に注目する理由です。しかし、価値あるデータを得るためには、戦略的にユーザーとの接点を作り、その行動を促すタッチポイントの設計が不可欠です。

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タッチポイントは単なるユーザーとの接点ではなく、貴重なデータの収集源です。得られるデータはそれぞれのタッチポイントでのユーザーの行動によって異なります。購入意向のあるユーザーのデータ、購入者のデータ、クチコミをしてくれる人のデータなど、様々なマーケティング活動に役立つデータはどのタッチポイントから、どのようなユーザーの行動から得ることができるのでしょうか?

Webサイトなどのオウンドメディアからは、アクセス解析などに使われる統計的なデータだけでなく、特定のユーザーへピンポイントなコミュニケーションを可能にするクッキーのデータを得ることができます。例えば、商品のスペックや、価格、購入場所など、購入意向を示すコンテンツの閲覧からは、高い確率でプロモーションに反応するユーザーを抽出することができます。今ではページ遷移だけでなく、クリック、マウスオーバー、スクロール深度など、より細かい行動からもユーザーを抽出することが可能ですが、未だ多くのリマーケティング施策は単に「サイトを訪問した」というデータを基に行われているのが現状です。Webサイトは、戦略的にユーザーの行動を喚起し、ターゲットユーザーを抽出するために活用されるべきです。

行動を喚起することさえできれば、Webページ、メールマガジン、 Facebookやアンケートなど、様々なタッチポイントからターゲットユーザーを抽出することができます。コールトゥアクションとなるボタン、件名、投稿文、質問などを工夫することで、購入意向の高いユーザーだけでなく、特定のニーズを持ったユーザーや、ロイヤルティの高いユーザーなど、マーケティング目的に適したターゲットを抽出することができます。また、抽出されたターゲットのセグメント毎にコミュニケーションを行い、その反応を測定することで、特定のターゲットに効果的なコミュニケーションを割り出すことができます。

貴重なデータの収集源はオンラインだけではありません。製品パッケージが接触するユーザーは全て購入者であり、再購入の見込があると考えられます。簡単に参加でき、インセンティブが魅力的なキャンペーンの情報を製品パッケージに掲載することができれば、多くの購入者のデータの獲得と、リピート購入を促すマーケティングが可能になります。

デジタルマーケティングのタッチポイント設計には大きく3つのステップがあります。まずは、できるだけ多くのユーザーと接触するために、複数のタッチポイントからトラフィックを獲得します。次に、各タッチポイントにコールトゥアクションを設置し、ターゲットユーザーを抽出します。最後に、ターゲットユーザーに再度接触し、購入、リピート購入、又はクチコミへと誘導します。

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1. 複数タッチポイントからのトラフィック獲得

デジタルマーケティングの効果を最大化するためには、コミュニケーションの継続的なテストが不可欠です。そのため、直接的なコストがかからないオウンドメディアや、アーンドメディアからのトラフィックは戦略上とても重要となります。Webサイトのオーガニック検索、メールマガジンの登録者、Facebookページのファン、製品パッケージや店頭など、広告に頼らずユーザーに接触できるタッチポイントを優先し、トラフィック獲得のプランニングを行いましょう。

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2. ターゲットユーザーを抽出するコールトゥアクション

タッチポイントで接触するユーザーの全てがターゲットであるとは限りません。特に大規模なキャンペーンを実施している場合は、様々なユーザーの流入によって、トラフィックの質が低下します。そのため、それぞれのタッチポイントでは、特定のユーザーのみの行動を喚起し、ターゲットの抽出を可能にするコールトゥアクションが必要となります。抽出されたターゲットユーザーのセグメントには、オンラインの購入など、再度何らかの行動を喚起し、購入意向の高さなどからその質を計測しましょう。データベースのボリュームだけが重視されないように、KPIを設定し、得られたデータからコールトゥアクションの改善を行います。

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3. 購入、リピート購入、クチコミへの誘導

最後にタッチポイントの設計で最も重要なポイントが、実際の売り場への誘導と、購買行動の刺激です。オンラインの購入であれば、リアルタイムなデータから継続的な改善を行うことができますが、オフラインの場合はユーザーの物理的な訪問が必要となり、効果の測定も難しくなります。施策と効果の因果関係が特定できるよう、可能な限り短い間隔で売上データを取得し、施策が重複しないよう調整しましょう。

ユーザーが日常的に訪問するスーパー、コンビニや、ドラッグストアなどの場合はクーポンなどで積極的に店舗へと誘導する必要はありませんが、レシピ、ハウツー、商品購入後に参加できるキャンペーンの情報など、購入意思を左右することができる情報を適切なタイミングで配信する必要があります。日常的な訪問が期待できないその他の店舗や外食店などの場合は、クーポンや、特定サービスのオンラインサインアップなどを通じて来店を促し、店頭で購入率を高めるためのプロモーションを用意しましょう。

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購入者のデータはユーザーから得られるデータの中で最も価値があります。新規顧客に比べ、購入者からは比較的簡単にリピート購入を獲得できるだけでなく、ビジネスの成長には欠かせないポジティブなクチコミを獲得することができます。パッケージや店頭など、購入者への再接触を可能にするタッチポイントの活用は、新規顧客を重視する戦略では軽視され、シリアル番号の印刷や売り場の交渉など、生産や流通との複雑な調整を求められることから敬遠されます。しかし、特定のユーザーにリーチし続けられるデジタルマーケティングにおいては費用対効果を最も大きく改善するポイントでもあります。タッチポイントの設計には必ず、購入者との接点を含めましょう。

タッチポイント設計の目的は、購入意向やロイヤルティの高いユーザーとの接点を作り、ターゲティングやクリエイティブを最適化するためのデータを得ることです。得られたデータはデジタルだけでなく、店頭やマスメディアでのコミュニケーションの改善にも役立ちます。様々なターゲットに向けて、無数のクリエイティブを短い期間でテストすることができるデジタルマーケティングにおいて、広告主が重視すべきポイントは従来のマーケティングとは大きく異なります。データを得るための戦略的なタッチポイント設計こそが、今最も広告主が注目すべきノウハウではないでしょうか。

消費財メーカーがデジタルマーケティングでフォーカスすべき4つのポイント

消費者のメディア接触は確実にテレビからデジタルへとシフトしており、多くの広告主は従来のテレビと店頭中心のマーケティングに効果の陰りを感じています。さらに、エージェンシーのスキル不足に対する危機感から、今までブランド毎に分散していたノウハウやアセットを1つの部署に集約し、総合代理店を介さずにスペシャリストエージェンシーを直接採用するなど、クライアント企業が自らの手でデジタルマーケティングの課題を解決しようとする動きが本格化しています。

このような努力は数年以内に確実な競合優位性を生み出すでしょう。しかし、ただデジタルマーケティングの部署を立ち上げ、闇雲に試行錯誤を重ねるだけでは大きな成果を出すことはできません。競合も同様に、積極的にデジタルマーケティングに取り組んでいるとすれば、フォーカスするポイントが勝敗を分けることになります。

消費財メーカーがデジタルマーケティングでフォーカスすべきポイントは4つ。リーチ、フリーケンシー、クチコミ、そしてパッケージです。従来のマーケティングと大きくは変わりませんが、それぞれ少し考え方が異なります。

リーチ

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このスプライトの動画は2013年にYouTubeで最も人気の高かった動画広告に選ばれました。2013年は他にも多くの動画広告が配信され、100万回以上の再生回数も珍しいものではなくなりました。再生回数や、増え続ける広告の数を見るだけでも、その効果は高く、比較的多額の広告費が投下され始めたことがわかります。私たちもいくつかのプロジェクトで測定をした結果、YouTubeでの動画広告の費用対効果はTVCMよりも高く、商品やブランドの認知度を確実に向上させていました。

YouTubeの動画広告がTVCMを代替する訳ではありませんが、十分にその効果を補完し、高い費用対効果で認知度を高めてくれるメディアであることがわかります。比較的少ないコストで確実にリーチを稼ぐことでできるため、今年は多くのブランドがメディア費の一部をYouTubeへとシフトすることが予想されます。

動画広告はTVCMとは違い、強制的に見せるべきではありません。YouTubeでもスキップできない広告が一部存在しますが、ユーザーにとってネガティブな体験になるだけでなく、デジタル本来の強みである詳細なターゲティングや、行動データの獲得ができなくなります。

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動画広告はユーザーに自らの意志で閲覧してもらうため、広告としての情報と、エンターテイメント性を兼ね備えたコンテンツであるべきです。先ほどのスプライトの事例はコンテンツとしてのエンターテイメント性があり、ブランドが持つ爽快感のイメージを広告として上手く伝えています。このようなコンテンツとしての動画広告は、TVCMをそのまま流すケースに比べ、ユーザーが積極的に閲覧し、知人へと共有します。結果、視聴単価を下げ、費用対効果を大きく高めることができます。

さらに、エンターテイメント性の高い動画広告はブログメディアやまとめサイトなどを経由し、ソーシャルメディアへと広がります。優れたコンテンツの拡散経路には必ずインフルエンスの高い媒体が含まれており、継続的なテストを通じた費用対効果の改善が必要となります。

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動画広告だけでなく、バナー広告でも十分な認知度の向上が見込めます。バナー以外の広告を配信しなかったプロジェクトでは、測定した結果、インプレッション数と店頭での売上に相関関係が見られました。クリックされず、コンバージョンに至らないインプレッションも確実にビジネス成果に寄与していることがわかります。

フリーケンシー

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消費者は一日何回スマートフォンを起動しているでしょうか? ソーシャルメディアやゲーム、メール、ブラウザのアプリを数十回ずつ、一日100回以上もスマートフォンのアプリを起動している人は決して珍しくはありません。PCを含めれば、インターネットのメディア接触時間はテレビを大きく超え、若い世代にとっては最も重要なメディアとなっています。

デジタルメディアの場合、TVCMのように瞬間的に広くリーチをすることはできませんが、特定のユーザーだけに広告を配信することができます。全員ではなく、購入意向のあるユーザーだけにフリーケンシーを高めることができるのです。

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例えば、年齢や性別などのデモグラフィック、地域、インタレストのデータに加え、「製品情報ページを訪問した」などという行動履歴をベースにターゲティングをすることができます。Webサイトの製品情報ページを閲覧した人、サンプリングキャンペーンを閲覧・応募した人、Amazonで購入するリンクをクリックした人、またはYouTubeの動画広告を最後まで閲覧した人は製品に興味があると言えるでしょう。商品やブランドに興味や購入意向を持つユーザーをこのような行動をもとに割り出し、ターゲットとすることで、フリーケンシーの最適化が可能になります。

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ターゲティングの手法は日々多様化し、新たなマーケティング機会を生み出します。例えば今では、楽天で同じカテゴリーを購入したユーザーや、Gmailで競合のメールマガジンを受信しているユーザーをターゲティングすることも可能です。

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後の広告配信に役立てるため、様々なタッチポイントから有効なターゲットのデータを集め、分類することをデータマネジメントといいます。デジタルマーケティングの成功には、接触したユーザーの中から、ブランドや商品に興味や購買意向のあるユーザーを分類するためのタッチポイント設計が重要になります。 ユーザーのセグメントを分け、様々なクリエイティブを配信し、その効果を測定すれば、ターゲット毎に効果的なクリエイティブを割り出すこともできます。十分な人数を獲得することができれば、世代別に効果的なクリエイティブ、トライアルやリピート購入に効果的なクリエイティブ、または競合ブランドからのスイッチに効果的なクリエイティブを簡単に見つけられるでしょう。

クチコミ

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広告やPR施策を行っていないにも関わらず、稀に商品の売上が大きく伸びることがあります。マーケティング担当者を悩ませる好調な売上の背景には、大抵短期間で数万~十数万のクチコミが存在します。大量のクチコミが自然発生する仕組みは事例毎に異なり、再現することは困難ですが、個々のユーザーが「期待以上に満足し、ポジティブなコメントを投稿した」という点は共通します。 では、購入者の中から、「期待以上に満足した人」を抽出し、ソーシャルメディアへの投稿を促せば、ポジティブなクチコミを発生させることができ、十分なボリュームを得ることができれば大きなマーケティング効果が期待できます。NPSというロイヤルティ指標のアンケートから、ポイントの高いユーザーだけを抽出し、ECサイトのレビューやソーシャルメディアへと誘導すれば確実に良質なクチコミを発生させることができます。

更に、クチコミの投稿を応募条件としたソーシャルキャンペーンを実施すれば、短期間で万単位のクチコミを発生させることが可能です。ロイヤルティの高いユーザーのデータを十分に獲得することができれば、簡単に、大量のポジティブなクチコミを発生させることができるでしょう。

パッケージ

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製品パッケージは、購入意向のあるユーザーや、ロイヤルティの高いユーザーを最も効果的に囲い込むことができるメディアです。私たちの事例では購入者の7~10%のオプトインを獲得した実績があり、数百万人が購入する商品の場合、数千万円の広告費に換算することができます。

パッケージを起点とし、ロイヤルティの高いユーザーにクチコミを発生させることで、メディア費を掛けずに新規顧客を獲得する循環型のマーケティングを実現することができます。

製品パッケージは潜在顧客の購買判断の最終的な決め手となるメディアでもあります。ここで購入の後押しに効果的なコミュニケーションが「他者からの推薦」となるクレデンシャルです。投票キャンペーンや、コンテストなどを通じて特定のSKUにクレデンシャルを与え、パッケージに表記することで、購買判断に十分な影響を与えることが可能です。さらに、購買を後押しするクレデンシャルや、消費者を巻き込んだ商品の推薦などは流通のウケも良く、カスタマーマーケティングにも役立ちます。

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リーチ、フリーケンシー、クチコミ、パッケージの4つのポイントにフォーカスし、タッチポイントを設計すれば、アウェアネスやフリーケンシーを高め、クチコミ、トライアル、リピート購入を獲得するワーキングモデルができあがるはずです。そのモデルを継続的に改善し、長期的に運用することで、消費財の効果的なデジタルマーケティングを実現できます。

デジタルマーケティングが失敗する3つの原因

デジタルマーケティングへの投資が年々増加し続けるなか、多くのマーケターは未だその成果を実感できていません。アメリカでのアドビ社の調査でも60%のマーケターが「デジタルマーケティングへの投資を増やす」と答えましたが、「自社のデジタルマーケティングが機能している」と答えたのはわすか9%にすぎません。多くの効果的なテクノロジーが存在し、企業が積極的な投資をしているにも関わらず、具体的な成果が出ないということは、エージェンシー側に問題があるのではないでしょうか。デジタルマーケティングを成功させるためには、私たちエージェンシー側のデジタルマーケティングへの取り組み方を根本から見直す必要があるかもしれません。

デジタルマーケティングの問題の多くは、エージェンシーが持つ従来のマーケティングプロセスやフレームワークで解決することができません。よって、いかに優秀なエージェンシーでも、その多くは未だデジタルマーケティングの効果的なソリューションを提供できずにいます。デジタルマーケティングが失敗に終わる3つの主な原因は、タッチポイントの正しい設計、クリエイティブのテスト、そして公開後の改善施策できていないことだと言えます。

タッチポイントの正しい設計

デジタルマーケティングを成功させるためには、複数の施策を複合的に実施する360°(スリーシックスティー)のような考え方ではなく、ディスプレイ広告、YouTube、キャンペーンサイト、Amazon、Facebookなど、様々なタッチポイントを連携させ、一人ひとりのユーザーを確実に購買へと誘導する必要があります。ブラウザのクッキーや、メールアドレスを活用し、同じユーザーに異なるタッチポイントで継続的に接触することができなければ、デジタルマーケティングは機能しません。リターゲティングメールマーケティングなどの最低限のテクノロジーを活用し、正しくタッチポイントを設計する必要があります。

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FICCでは、特定のYouTube動画を閲覧したユーザーにリターゲティングバナーを配信し、効率的にターゲットをキャンペーンサイトへと誘導した事例があります。更に応募者にはメールで送付したamazonクーポンで購入を促し、購入者にはレビューの投稿やソーシャルメディア上のクチコミを促すメールを送信しました。また、商品のパッケージに貼ったシールなどから、クローズド懸賞へと誘導し、リピート購入やクチコミを獲得する施策なども実施しています。このようにタッチポイントが正しく連携するよう設計をすれば、確実に売上やクチコミを増加させ、マス広告を超える費用対効果を実現することができるのです。

クリエイティブのテスト

デジタルマーケティングではクリエイティブの数に制限はありません。バナー、映像、そしてWebサイトなどのクリエイティブは幾つでも、同時にテストすることが可能です。バナーや、Webサイトのクリエイティブをテストするソリューションは多く存在し、低コストで導入が可能です。消費者の反応を見ずに、クリエイティブの効果を正しく予測することはできません。複数のクリエイティブをテストしなければ、マーケティング施策の成功を運に任せてしまうことになります。

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バナーなど、低コストで作れるものは、有効であると考えられるバリエーションを全てテストします。ある事例ではイメージ、コピー、ボタンなどを組み合わせ、200パターンのバナーをターゲットの年齢セグメント毎に配信をしました。多くのクリエイティブをテストし、効果の高いものだけを採用すればキャンペーンのパフォーマンスを大幅に向上させるだけでなく、店頭やCMなどで活用できるコミュニケーションを見つけ出すこともできます。

公開後の改善施策

デジタルマーケティングではリアルタイムな測定と改善が可能です。無料のGoogle Analyticsからでも改善に必要な情報は十分に得ることができます。マーケティング施策に改善の余地が無いということはありえません。そのため、公開後の改善施策を怠ることは、費用対効果の低下を招きます。一度開始したキャンペーンでも、途中で迅速かつ柔軟にその内容を変更できるようにしましょう。

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改善施策はキャンペーンなどの公開後、十分なデータが集まり次第、速やかに開始します。広告やWebサイトのクリエイティブだけでなく、広告費の配分も見直しましょう。公開後、高頻度な改善施策を繰り返し実施し、短期間でパフォーマンスを向上させた後に、広告費を集中的に投下することで、キャンペーンの効果に大きな山を作ることができます。

タッチポイントを正しく設計し、より多くのクリエイティブをテストし、公開後に高頻度の改善施策を行えば、デジタルマーケティングは成功します。多少のワークロードの増加はありますが、提供できる成果には変えられません。エージェンシーはこのようなデジタルマーケティングへの取り組み方を受け入れ、プロセスを徹底することで、クライアントにデジタルマーケティングの成果を実感してもらうことができるでしょう。

ブランドのオンラインコラボレーション

マーケティング予算には常にROIの改善が求められるものです。しかし、大きく改善できる方法はそう簡単に見つかるものではありません。デジタルマーケティングにもそれなりの媒体費がかかり、キャンペーン毎の制作・開発・インフラ費もバカになりません。少ない予算でマーケティング施策の規模を縮小せずに、成果を倍増するにはどうすれば良いのでしょうか?

多くのブランドはマーケティング予算以外に活用できるアセットを持っています。それは、メール・ソーシャルメディア・Webサイトで媒体費をかけずにリーチできるユーザーです。一回の配信で数万人~数十万人にリーチできるブランドは多く、ターゲットの親和性が高い異業種ブランドにとっては、新規顧客の獲得が大いに期待できる立派なメディアだと言えます。そんなアセットを異業種のブランド間で共有することができれば、お互いのマーケティング施策に大きな相乗効果を与えることができるはずです。

キャンペーン・プロモーションへの相互集客

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もちろん異業種だからといって、顧客データベースをそのまま共有することはできません。しかし、お互いのキャンペーンやプロモーションをメールやソーシャルメディアで告知することはできるでしょう。マネジメントがそのようなコラボレーションに消極的だとしても、削減できる広告費に換算すれば説得もできるはずです。コラボレーション相手のデータベースの規模や質にもよりますが、キャンペーンやプロモーションの相互集客が成功すればユーザーの10~20%をオプトインでき、大きな広告費の削減につながるでしょう。

インセンティブとしての商品提供

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こちら側がコラボレーションを希望する相手に十分なリーチを提供できない場合、商品の無償提供も有効なコラボレーション方法です。相手がターゲットへの商品の発送や大量当選のキャンペーンなどを実施していれば、送料やキャンペーン運営費などの大幅な削減ができる効果的なサンプリング施策になります。また、インセンティブとして魅力的であれば、相手側のキャンペーンやプロモーションのコンバージョン率を高めることもできます。

共同キャンペーンの実施

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共同キャンペーンの実施には社内外との様々な調整が必要となりますが、実施には多くのメリットが存在します。先ずはマーケティング予算を含むお互いのアセットを共有することで、コストを半減・施策の規模を倍増することができます。更に、本来は関係の無いブランド同士がコラボレーションをするという意外な展開から、ユーザーの興味を強く引くストーリーを構築し、PRやソーシャルメディアでの波及効果が期待できます。

メールやソーシャルメディアのアカウント情報に限らず、ユーザーの行動データをベースとしたターゲティング情報なども将来的にはブランド間のコラボレーションでの共有対象となるでしょう。マーケティング予算は、このような様々なアセットを活用できるデジタルマーケティングへとシフトし続け、更に高いROIが求められるようになります。デジタルアセットの有効活用を通じたROIの改善に、異業種ブランドとのコラボレーションはとても効果的です。コラボレーション可能な異業種ブランドとの関係構築は、テクノロジーのマーケティング活用と同様にその重要性を増すでしょう。

競合ブランドのデジタルストラテジー分析

競合ブランドはどのようなタッチポイントを使ってターゲットにリーチし、購買へと誘導しているのでしょうか?また、自社とのパフォーマンスの差はどれくらいあるのでしょうか?競合の動向は、マーケティング施策への投資に対する有効な判断材料になります。インターネット上で競合が発信する情報や、消費者の反応から相手の戦略を見出すことができれば、優位性の確立に役立つはずです。

競合ブランドのデジタルストラテジーを知る上で役立つ手法や無料ツールを一例として紹介します。他にも様々なツールが存在するので、カテゴリーによって適したものを選びましょう。

ブランドの検索ボリュームを調べる

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Google Adwordsのキーワードプランナーにブランド名を入力すれば、おおよその月間検索ボリュームを表示してくれます。どれだけの消費者が積極的にブランドの情報を求めているかを比較することが可能です。Googleトレンドにブランド名を入力すれば、検索ボリュームの変動を時系列で比較することもできます。

トラフィックや広告について調べる

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SimilarWebに競合サイトのドメインを入力すれば週別のおおよその訪問数や、リスティング・ディスプレイ広告の有無、ソーシャルメディアからのトラフィックについて知ることができます。トラフィックの流れから、競合の戦略上重要とするタッチポイントを知ることができます。SimilarWebは検索からのサイト訪問の主要キーワードも表示してくれます。これらを先ほどのキーワードプランナーと組み合わせれば、サイトがどれほどトラフィックを捉えることに成功しているかがわかります。また、GRCという検索順位チェックツールを活用すれば、各キーワードに対してサイトの検索順位を知ることもできます。

競合サイトを確認する

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競合のWebサイトで確認したいポイントは「訪問者に取らせようとしている行動は何か」ということです。多くのブランドは消費者をWebサイトへと誘導した後に、何らかの方法で継続的な接点を確立しようとします。メールアドレスの獲得、ソーシャルメディアアカウントのフォロー、クッキー情報の獲得などが考えられます。ブラウザにGhosteryなどのアドオンを入れていれば、訪問時にどのような目的でクッキーを取得しているかを知ることもできます。

サイトから直接購入へ誘導しているケースも考えられます。E-コマースへのリンクやオフラインで使用できるクーポンの有無など、誘導先でのプロモーションの内容も含めて確認しましょう。競合サイトは全体を確認し、消費者にどのような行動を喚起しているかをしっかりと確認しましょう。

公式アカウントを確認する

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Facebook、Twitter、LINE、Youtubeなどのソーシャルメディアの公式アカウントは、その影響力やユーザーの反応がオープンになっているため、その有効性を簡単に確認することができます。ブランドの公式アカウントはWebサイト同様ユーザーに何らかの行動を喚起しているはずです。FanpageKarmaのような解析ツールを使えば投稿毎の反応数を知ることができ、競合がどのようにソーシャルメディアを活用しているかを知ることができます。

商品を購入してみる

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妥当な金額であれば商品の購入も競合の戦略を知る上で効果的です。チャネルによっては購入後のCRMを受けることもできるため、可能なかぎりブランド独自の、又はブランドが勧める販売チャネルを選びましょう。また、商品パッケージなどからオンラインへと誘導する施策の有無も確認するようにしましょう。

話題性を調べる

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Yahooリアルタイムに競合サイトのドメインを入力すれば、サイトへのリンクを含むFacebook・Twitterへの投稿を表示することができます。更に特定のURLをTOPSYに入力すれば、リンクを含んだ投稿の数を知ることもできます。Webサイトやキャンペーンからソーシャルメディアへの投稿を促す場合、定型文に特定のURLやハッシュタグなどを含めることが多いため、消費者の投稿を読むことでどのような施策が行われているかを推測することができます。

Path to Purchase(購買行動プロセス)に当てはめてみる

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消費者の購買行動プロセスに競合の施策を当てはめてみれば、デジタルマーケティングの戦略を俯瞰してみることができます。競合がどのように集客をし、消費者との継続的な接点を作り、購買へ誘導し、話題を起こしているのか。主な競合のデジタルストラテジーの全体像を知ることができれば、優位性を確立するためにどこに投資をすれば良いかが明確になるでしょう。

ブランドによるデータのマーケティング活用

今、多くのブランドがマーケティングにおけるデータの重要性を認識しはじめています。ビッグデータやデータドリブンマーケティングは以前から大きな話題となっていますが、主に広告のターゲティングが話題の中心となっていました。今ではマーケティング担当者のデータに対する理解も進み、広告配信だけでなく、関心からクチコミまでの購買行動を横断するデータの活用が広まりはじめています。

チャネルではなくデータ

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マーケティング担当者はデジタルなチャネルそのものではなく、データに注目しなければなりません。闇雲に最新トレンドを採用するのではなく、まずはどのチャネルから、どのようなデータを得る事ができるのかを考えるべきです。例えば、Facebookにユーザーがプロフィールを入力すれば、デモグラフィックデータを得ることができます。YouTubeのTrueView広告をユーザーがスキップすれば、どのようなユーザーが何秒で離脱したかがわかります。また、WebサイトのAmazonへのリンクをユーザーがクリックすれば、購入意向があることがわかります。

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メディアなどの第三者機関が持つデータ、ユーザーの行動データ、そしてWeb上のオープンなデータを収集・活用することでブランド体験を個別のユーザーに最適化することができます。様々なチャネルから得られたデータを活用し、効果的かつ効率的に関心を興味へ、興味を購入へ、購入をリピート購入やクチコミへと変化させていくことこそがデジタルマーケティングだと言えるでしょう。

データを得るための設計

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得られるデータによってチャネルを分類することで、デジタルマーケティングにおける役割を定義することができます。 例えば、GDNなどの広告ネットワークやFacebook Adなどのソーシャル広告、リスティングなどからはユーザーの詳細な「デモグラフィック・インタレスト・ニーズ」を知ることができるため、ブランドや製品に「関心を示しやすい」人物をターゲティングすることができます。商品のサンプリングキャンペーンや製品情報など特定ページの閲覧、ブランドの公式アカウントのフォローなどからは「製品・ブランドへの興味」を知ることができ、「興味を持った」人物を購買へと誘導することができます。

ECサイトでのプロモーションへのリンク、O2Oクーポンのダウンロード、パッケージからのアクセスやマストバイキャンペーンへの参加からは「購入・購入意向」を知ることができ、その後同様の施策を通じてリピート購入へと誘導することができます。更にはアンケートやレビュー投稿へのリンク、ソーシャルメディアのシェアボタンのクリックなどからは「クチコミ・クチコミ意向」を知ることができ、「ブランドを知人に勧めてくれるファン」に働きかけることが可能になります。

これらのユーザーの行動データをデータベース化し、一人ひとりに対してメール、リターゲティングバナー、Webサイトのダイナミックコンテンツなどを通じて「適切な人物」に「適切なタイミング」で、「適切なメッセージ」を届けることができます。単なる広告のターゲティングだけでなく、このような横断的なマーケティング活動のインテグレーションこそが今後重視されていくのではないでしょうか。

データマネジメントのリーディングカンパニーであるBlueKaiの『BlueKai Data Impact Report – Trends and Impact of Data Driven Marketing – July, 2013』によるとアメリカでデータドリブンなマーケティング施策に予算の1/5以上を費やしている企業は36%。2011年に比べ227%の伸び率だそうです。日本ではまだそれより大幅に低いとは思いますが、テクノロジーの進歩とともに同様に急速に伸びていくでしょう。

ソーシャルメディアからターゲット像を導き出すリサーチ方法

あなたは、デジタルキャンペーンやWebサイト制作をする際のターゲット像はどのように設定していますか?「20代女性」や「F1、M1層」といったデモグラフィックだけでは不十分と感じながらも、詳細なペルソナを設定するには時間と労力がかかるため、大まかなターゲット像で妥協する場合も多いと思います。

しかし、マーケティング施策を成功させるためには詳細なターゲット像が不可欠です。実は、この詳細なターゲット像はソーシャルメディアから簡単に導き出すことができます。なぜならば、ソーシャルメディアでは多くの人が消費活動以外の個性を感じさせる情報を発信しているからです。これらの情報を分析することで商品のマーケティングに最適なターゲット像を割り出すことが可能です。

そこで、私が時間をかけずターゲットの人物像を導き出す時に使っている、ソーシャルメディアからデモグラフィックやサイコグラフィックといったターゲットの詳細な人物像を描くリサーチ方法(私はペルソナリサーチと呼んでいます)をご紹介します。

デモグラフィックとサイコグラフィックから見えるインサイト

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今回紹介するペルソナリサーチのゴールは、キャンペーンの対象となるユーザーのデモグラフィックとサイコグラフィックを作成することです。デモグラフィックとは年齢や性別、職業や学歴、年収といった人口統計学的属性。サイコグラフィックは趣味や価値観、購入動機といった心理的な属性のことをいいます。

このような細かいターゲットの情報を得ることができれば、コミュニケーションに活かせる「インサイト」を導き出すことが可能になり、ターゲットユーザーに響くキャンペーンを企画することができます。弊社でのインサイトの定義は「思考」と「購買行動」の因果関係です。

ペルソナリサーチのプロセス

では、具体的なペルソナリサーチのプロセスを紹介していきます。今回は例としてスポーツドリンクブランドをクライアントとし、競合のスポーツドリンクブランドからユーザーをブランドスイッチさせるデジタルキャンペーンを依頼されたとしましょう。 この場合、必要なのは競合であるスポーツドリンクを愛用しているユーザーの人物像です。

ペルソナリサーチではFacebookやTwitterといったソーシャルメディアを利用するので、まずはTwitter検索やYahooリアルタイム検索などの無料ツールを使用して競合ブランドの製品名を検索します。

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ここで注目したいのは次のような書き込みです。

  • 「疲れたから今日も〇〇を買っちゃったよー!」
  • 「俺はスポーツドリンクの中では〇〇が一番好き」
  • 「〇〇がない生活なんて考えられない!」

このような書き込みをしているユーザーは、競合のスポーツドリンクが好きなユーザーであると考えることができます。

続いて、このような書き込みをしているユーザーを抽出し、それぞれのユーザーのプロフィールをチェックしましょう。Facebookであれば学歴や友達の人数、「いいね!」をしているFacebookページなどから興味・関心なども公開されている範囲で確認することができます。また、Twitterなどのタイムラインを追うことで、趣味や価値観、不安に感じていることなど、ある程度の人物像を描くことが可能となります。

こうしてユーザーを抽出し、それぞれの情報を並べていくと、ユーザーの共通点が見えてきます。経験的に、30人ほど抽出するとユーザー像がはっきりとしてきます。例えばこのような感じです。

  • 15歳から22歳の学生
  • 部活やサークルでサッカーをしている人が多い
  • 2リットルのペットボトルでスポーツドリンクをまとめ買いしている
  • 日本のロックバンドが好きでライブにも行く

より細かくユーザーを見ていくことで、ある程度の収入や毎日の行動での共通点も見えてきます。さらに競合ブランドだけではなく、クライアントのブランドも同じようにリサーチすることで、それぞれのユーザーで違いを見ることもできます。

よりターゲット像を明確にする「I am Statement」

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これらの箇条書きにしたデモグラフィックとサイコグラフィックからでも、かなりターゲット像に近づくことができますが、もうワンランクアップしたターゲット像を描きたいときは一人称の視点からターゲットの心理を描いた文章を作る「I am Statement」が効果的です。

先ほどの情報から簡単なI am Statementを作成してみました。

私は大学でサッカーサークルに入っている。サッカーは小学生の頃からやっていて、高校では都大会でベスト8にも入ることができた。サッカーをする時に欠かせないのが◯◯のスポーツドリンクだ。何度飲んでも飽きない味と、疲れた体の水分補給には〇〇が一番だと思っている。

学生でお金は節約したいので、スポーツドリンクはドラックストアで安売りしている時に2リットルのペットボトルをまとめ買い。練習には水筒に入れて持って行く。冷たいほうが美味しいので水筒は必需品だ。

サッカーと同じくらい好きなのが日本のロックバンド。夏フェスには毎年参加しているくらい大好きだ。汗を大量にかくライブでも◯◯のスポーツドリンクは欠かせない。私の人生でスポーツドリンクの〇〇は無くてはならないものだと思う。

このように簡単なI am Statementでも、「何度飲んでも飽きない味だから競合のスポーツドリンクを選ぶ」「節約のために2リットルのスポーツドリンクを買う」「スポーツの時だけではなく、ライブでもスポーツドリンクを飲む」といったターゲットの心理・行動を読み取ることができます。I am Statementを作る際にもソーシャルメディアのタイムラインから読み取った情報が活きていきます。

ここから見えるインサイトは「飽きない味で十分だと思っているからスポーツドリンクを買う(より美味しいものにブランドスイッチしようとは思わない)」です。 よって美味しさをアピールするキャンペーンではなく、値段をアピールするキャンペーンのようなアプローチが必要になります。

ユーザーを抽出 → それぞれのユーザーの情報を書き出し → 共通点からデモグラフィックとサイコグラフィックを作成 → I am Statementを作成…の4ステップだけでも、かなり細かいターゲット像に辿り着くことができました。

ペルソナリサーチはターゲットの立場から考えるリサーチ方法

ここまでペルソナリサーチのプロセスをご紹介しましたが、手法自体はとてもシンプルではないでしょうか。時間をかけず、簡単にターゲット像を導き出すことができるのがペルソナリサーチの最も大きなメリットです。

また、ペルソナリサーチは実際の個人の投稿からリサーチをすすめるため、客観的なリサーチをすることができ、自分の思っていたイメージよりも正確なターゲット像を描くことができます。私自身、何度かこのペルソナリサーチを使ってきましたが、自分やクライアントの想像していたターゲット像と違う特徴をもった人物像になったことがあり、驚いた経験があります。

一方で、この方法はソーシャルメディア上の投稿からターゲット像を導き出すため、話題にされることの少ない製品には適していないというデメリットがあります。ですので、消費財や食品飲料のようなユーザーからの投稿が多く見込まれる製品には適していると言えるでしょう。

ペルソナリサーチに加えてアンケート調査やヒアリング調査を行うことができれば更に正確性の高い人物像を導き出すことができますが、ペルソナリサーチのみでもデジタルキャンペーンやWebサイト制作をする際の参考にすることが十分可能です。

リサーチとしては社内のリソースを圧迫することも少なく、簡単に行うことができるので、ぜひ一度試してみてください。

ブランドコミュニケーションを変えるテクノロジー

多くのクリエイターにとって,これは受け入れがたい事実かもしれない。広告を自分のクリエイティビティのはけ口と期待して業界に入った彼らは,他人の優れたアイディアや既存のプラットフォームを上手く活用することが重要であり,成功の可能性を高めるためにはより多くの場所からクリエイティブを集めることが効果的であるということに気づき始めている。

RazorfishのCEOであるBob Lord氏は,著書の『Converge』で「次世代のストーリーテリングはテクノロジーを通じたブランドの表現になる」と述べています。新たなテクノロジーが次々と消費者や広告主に採用されるなかで,クリエイターにも様々なテクノロジーへの理解が求められています。

なかでもクリエイティブの数を増やし,その効果を測定するテクノロジーはクリエイターの仕事に大きなインパクトを与える可能性があります。「クラウドソーシング」という考え方はクリエイターの立場を揺るがすものとして数年前に大きな注目を浴びましたが,いまだその活用はロゴやグラフィック制作など小さな案件に限定され,クリエイティブエージェンシーに大きな影響を及ぼすまでには至っていません。しかし,テクノロジーの進歩と共にテクノロジーがクリエイティブに与える影響は確実に増えています。

正確なクリエイティブブリーフを短期間で作るeYeka

昨年アサツーディ・ケイと提携し日本に上陸したeYekaというプラットフォームは,現在154カ国から25万人を超えるクリエイターのデータベースを抱え,世界の多くのトップブランドにクリエイティブを提供し続けています。

このeYekaは一見映像コンテンツのクラウドソーシングサイトのようにも見えますが,クライアントが購入しているものはコンテンツではなく「クリエイティブアイディア」そのものです。クライアントの課題に対し,eYekaは2行のシンプルな指示を作成し,クリエイターから映像やコピーなどのクリエイティブを募ります。投稿されたクリエイティブはもう一度全員に配信され,閲覧・投票・コメント投稿・アンケートが実施されます。eYekaはその反応を基に,エージェンシーへのクリエイティブブリーフの基となるドキュメントを提供しているのです。

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本来であれば半年以上ものリソースを要するキャンペーンアイディアのクリエイティブプロセスを大幅に短縮し,より効果的なクリエイティブを導き出すことができるとCo-FounderのAlexander Olmedo氏は言います。私も最初は半信半疑でしたが,クライアントの意向で協業する機会があり,その効果を実感しました。実際に他のクリエイティブエージェンシーが制作した映像とeYekaの調査が元となった映像のパフォーマンスを比較したところ,数十%ものパフォーマンスの差が出たのです。

クリエイティブを自動的に最適化するiogous

Fringe81が提供するiogousはパーツごとに異なるバナーを大量に生成し,コンバージョン率の高いバナーを自動的に絞り込むことができるクリエイティブ最適化ツールです。

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実際の事例から,バナーのパフォーマンスは何倍にも改善され,広告費のROI向上に役立っていることが証明されています。さらに,ユーザーがバナーをクリックした後の行動を解析することにより,どのような態度変容が起きたかとうこともわかります。

このようなツールを使えば,クリエイターやマーケティング担当者が主観的にクリエイティブを選定する必要はありません。すべての仮説を検証し,最適なものを採用すれば良いということになります。今はバナーのクリエイティブに限られたテクノロジーですが,この結果がテレビや店頭でのコミュニケーションに活用されることも十分に考えられます。より多くのクリエイティブをテストし,ユーザーの行動データから最適なものを見つけ出すという手法はテクノロジーの進歩と共にいずれ多くのクリエイティブの分野に広がるでしょう。

今後ブランドコミュニケーションの有効性を左右するのは,クリエイティブの量とデータになるでしょう。より多くの仮説やアウトプットのバリエーション,さらにはデータを正しく得るための設計が求められます。近い将来「クリエイティブ」という仕事はアイディアやコンテンツの制作にとどまらず,効率的にコンテンツを集め,最も効果的なものを導き出す設計を行うことを意味するようになるのかもしれません。

エンゲージメントを高めるブランデッドコンテンツ

今やエンゲージメントはブランドにとって欠かせない評価指標となっています。しかし,多くのマーケターにとってエンゲージメントの向上は,従来のメディアや広告の指標とは異なり,難しく不確実な目標だと言えるでしょう。消費者の生活に一方的に割り込む広告から,消費者が自らの意志でブランドとつながるマーケティングへシフトしなければ成功することはできません。エンゲージメントを高めるマーケティングはどのように行うことができるのでしょうか? また,成功しているブランドからは何を学ぶことができるのでしょうか? 様々なグローバルブランドの事例からは「コンテンツマーケティングへのシフト」という大きな動きに加え,ブランドをストーリーの一部として表現し,「広告とエンターテインメントの絶妙なバランスを実現するブランデッドコンテンツ」,そして「消費者の反応を見て伝えるリアクティブストーリーテリング」というエンゲージメント向上のための2つのポイントが見えてきます。

コンテンツマーケティングへのシフト

2011年にコンテンツマーケティングの推進を宣言したコカ・コーラは,かつて1987年から10年間発行していた社内向けの雑誌に合わせ,コーポレートサイトを『Coca-Cola Journey』へとリニューアルしました。さらに,デジタルコミュニケーションとソーシャルメディアを担当していたマーケティングチームは,社内の様々なニュースを積極的に吸い上げる編集部として再編成されたと言います。

Coke Revamps Web Site to Tell Its Story

この大手によるコンテンツマーケティングへのシフトは,エナジードリンクブランドのレッドブルが牽引しているとも言えるでしょう。レッドブルが持つYouTubeチャンネルはブランドが持つチャンネルの中でダントツの登録者数を誇り,昨年の成層圏からのスカイダイビングのライブ配信は,それまでのYouTubeでの同時接続者数の記録を16倍の800万人で塗り替え,シリーズ累計で3.6億回も視聴されました。

しかし,すべてのブランドがレッドブルのようにな潤沢なコンテンツ制作費を持っている訳ではありません。レッドブルは他にもスノーボードの映画の制作に200万ドルを費やしたりもしています。このような巨額なコンテンツの制作費が無くても効果的なコンテンツを作ることはできるはずです。その秘訣は何でしょうか?

エンターテインメントと広告の絶妙なバランスを実現するブランデッドコンテンツ

髭剃りのサブスクリプションコマースで有名なDollar Shave Clubは4,500ドルの制作費で1,000万回以上の動画再生回数を獲得しました。映像はCEOのMikeがOld Spiceの広告を真似てサービスを紹介するというアメリカ人にとってエンターテインメント性の高いものに仕上がっています。ポイントは映像が単に面白く,拡散されやすいというだけでなく,自社製品の品質・低コストと簡便性のベネフィットに加え,競合製品の無駄な機能との比較を強調するうえに,さらに雇用を通じた社会貢献までも表現する広告に仕上がっていることです。Dollar Shave Clubは,このエンターテインメントと広告の絶妙なバランスを実現する映像を通じて1週間で25,000人の新規会員数と,180万ドルの売上を獲得したと言われています。

Dollar Shave Clubのコンテンツの成功は注目すべきものですが,それを再現することは容易ではありません。ブランデッドコンテンツにはエンターテインメント性が欠かせないため,その効果は純粋な広告よりも大きな不確実性を含みます。Dollar Shave Clubの2本目の動画も良い評判を得ていますが,1本目の効果を超えることはとても難しいでしょう。

クリエイティブの質が大きくエンゲージメントを左右するのであれば,マーケターは継続的な改善を通じてその効果を高めていく必要があります。コンテンツマーケティングとは言っても,制作費のほかにもそれなりのPRや広告費が想定されるため,ある程度の確実性が求められるのです。そのためには日頃から頻繁に,多くのコンテンツを配信し,効果が見えたものに積極的に投資をする──ユーザーの反応を見てコミュニケーションを最適化する,リアクティブストーリーテリングに取り組むべきです。

消費者の反応を見て伝えるリアクティブストーリーテリング

2011年に公開されたChipotleのアニメーション,『Back to The Start』はユーザーの反応に対して,ブランドがマーケティングを最適化した良い事例です。大規模な近代農業が抱える倫理的な問題に焦点をあてたこのアニメーションは,YouTubeでヒットした後にGrammy AwardsのCM枠で2分の尺のままで放映され,大きな脚光を浴びました。普段はTVへの投資を行わないChipotleが事前にプランニングしていたわけではなく,YouTubeの反応を見て直前で大きなメディア投資の判断を行ったのです。

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ユーザーの視聴行動を見るだけでなく,直接的な対話をすることも重要です。メルセデス・ベンツは2012年に,ある消費者が発信した「鳥の糞でSmartが大破」という内容のつぶやきに対し「実際にSmartのボディを破損させるためには450万以上の鳩の糞が必要」という内容のインフォグラフィックを返信しました。この返信はCNNなどのメディアにも取り上げられ,結果ブランドイメージの大きな改善につながりました。

消費者の反応に応じてメッセージやメディアプランを変え,コミュニケーションを最適化するリアクティブストーリーテリングの試みは多くのブランドによって行われています。例えば,先ほどのDollar Shave Clubの元ネタである2010年のOld Spiceの事例はまだ記憶に新しい方も多いでしょう。私がデジタルストラテジーディレクターを務めるVMLでも,消費者との対話から効果的な生まれたブランデッドコンテンツの事例があります。

Gatorade Everything to Prove

VMLはGatoradeのデジタルエージェンシーに任命された2010年に,ソーシャルメディアのリスニング,解析,レスポンスを一挙に行うMission Controlを設立。多くの消費者と直接的に対話し,コンテンツに対するフィードバックを集め,コミュニケーションの改善に役立てました。また,翌年にはそのユーザーの興味関心に対する知見を活用し,NFLのルーキー選手たちを追うドキュメンタリー番組を配信しました。その後,様々なブランデッドコンテンツの配信を通じて,消費者のエンゲージメントとGatoradeの話題性を10倍以上に伸ばすことに成功しています。

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消費者のエンゲージメントを高めるためには,マーケターは編集者となり,単なる広告ではなく,消費者が興味を示すコンテンツを提供しなければなりません。購買に向けた態度変容だけではなく,つながりを作ることを目的としたコミュニケーションが求められます。しかし,そのために必要なものは決して巨額なコンテンツの制作費ではなく,消費者と直接的に関わることではないでしょうか。まずは消費者の声に耳を傾け,積極的に対話し,様々なコンテンツに対する反応を見てみることこそがエンゲージメントを高める第一歩なのです。

ブランド・ロイヤルティが可能にするビジネス成長

既存顧客のリピート購入に比べ、新規顧客の獲得は一般的に5〜6倍の費用がかかると言われています。また、ロイヤルティが高く、ブランドを知人に勧める顧客は1人あたり3人の新規顧客の獲得につながるという調査結果も存在します。理論的にはロイヤルティの高い顧客のリピート購入率と、新規顧客の紹介率を高めることで、ビジネスは効率的に、かつ加速的に成長させることが可能なはずです。

しかし、現状では既存顧客と新規顧客は関わりのない全く別の存在として認識され、未だ多くのブランドのマーケティング予算は主にマスメディアを通じた新規顧客の獲得だけに充てられています。

デジタルマーケティングでは詳細なターゲティングや、顧客の囲い込み、ユーザーの特性に適した個別のコミュニケーションが可能であり、既存顧客のロイヤルティの向上に適していると言えるでしょう。ではブランドはロイヤルティ向上のために、テクノロジーをどのように活用すれば良いのでしょうか?

パッケージ×モバイル

ブランドはその商品やサービスを通じて、既に全ての顧客にリーチしています。製品パッケージはマーケティング施策の中でその重要性を見落とされがちですが、顧客全員に情報を伝えることができるおそらく最も効果的なメディアです。スマートフォン所有率が40%を超えている今、コンシューマー製品のパッケージ上のキャンペーン告知は他の手法に比べ非常に高い費用対効果で顧客の囲い込みを実現します。

購入履歴

ロイヤルティは期待を超えるブランド体験によって生まれます。しかし、全ての顧客を特別に扱うことはできません。eコマースやポイントプログラムなどから顧客の購買行動を知り、よりロイヤルティの高い顧客に優れたブランド体験を提供しましょう。

アンケート+ソーシャルメディアリスニング

顧客の声に耳を傾ければ、カスタマーエクスペリエンスを改善する貴重なインサイトの獲得や、エンゲージメントを通じた更なるロイヤルティの向上が期待できます。オンラインのアンケートは様々なデジタルのタッチポイントに簡単に設置でき、瞬時に何万もの回答の収集を可能にします。またソーシャルメディアを検索することで、消費者のブランドに対する意見を知ることができます。

eコマース/e-CRM

ロイヤルティの高い顧客との関係をビジネス成長に役立てるためには、できるだけリピート購入や新規顧客の紹介をしやすい環境を提供する必要があります。彼らは高い確率でブランドの要求に応えてくれるため、強く働きかけるのではなく、新しい商品を試す機会や、オンラインでの購入、知人へのクチコミを可能にするツールなどの提供を通じて、その自主的な行動を促します。ユーザーにとって最も便利なタイミングと手法でリーチし、簡単に購入・紹介できる場所へと誘導しましょう。

多くのブランドは様々なテクノロジーの活用方法を学び、ロイヤルティの高い顧客への効率的なマーケティングを習得することで飛躍的にビジネスを成長させることができるはずです。次にマーケティング戦略を見直す際は、今一度既存顧客の重要性に目を向けてみてください。

ブランドアドボケイトのマーケティング活用

前回の記事を読み、早速ブランドアドボケイトをマーケティングに活用したいと思った方も多いのではないでしょうか。しかし、ブランドを勧める見込みを0~10で回答させるNPSのアンケートからアドボケイトを特定できたとしても、彼らをどのように活性化し、売上へとつなげることができるのでしょうか?

今回はブランドアドボケイトの今すぐビジネスに役立てるため、その収集と4つのアクティベーション方法を紹介します。

ブランドアドボケイトの収集

アドボカシーはその数が重要です。Zuberanceの調査では「1人のアドボケイトは3人の新規顧客を連れてくる」としています。ユーザーとの全てのタッチポイントでNPSのアンケートを実施することで、ブランドはより多くのアドボケイトを収集し、マーケティングに役立てることができます。

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まずはメールマガジンやFacebookページなど、既存のデータベースに対してアンケートを実施しましょう。Webサイトにもアンケートを掲載し、全てのキャンペーンに追加します。また、最もブランドアドボケイトと効率よく接触できるのが製品自身です。パッケージなどからの動線も積極的に作るようにしましょう。

アンケートに答えたユーザーは3つのグループに分類します。0-6はデトラクター(非難者)とし、それ以上のエンゲージメントを控えます。7-8のニュートラル(中立者)には更なるユーザーの獲得のためにキャンペーンやプロモーションの共有を求めましょう。そして、9-10のブランドアドボケイトには以下の4つのアクティベーション方法を通じてブランドのビジネスへの貢献を求めます。

アクティベーション①:レビューの投稿

ブランドアドボケイトが大きくビジネスに貢献できる方法が外部サイトのレビューやレーティングの改善です。Amazon、カカクコム、@cosmeなどのサイト上の評価はブランドや商品の売上に大きな影響を与えますが、少数の批判者によって不正確なイメージが作り出せれてしまうことがあります。このような場合、ブランドアドボケイトに「無償で」「率直な意見を」「自主的に」書き込んでもらうことでレーティングやレビューの質は大幅に改善されます。

重要なポイントはNPSのアンケートで9や10の選択を通じて商品やブランドを「積極的に勧める」と答えた直後にレビューの投稿を求めることです。すぐに投稿を求められることにより、自身の行動の「一貫性を保ちたい」という心理が働き、レビューを投稿しやすくなります。更に、他のユーザーからのポジティブなレビューを表示すれば、書きやすさが増します。投稿後には各種レビューサイトや、ソーシャルメディアへのリンクを表示し、更なる投稿・共有を促します。

アクティベーション②:テスティモニアルの紹介

ブランドアドボケイトのテスティモニアル(体験談)は、コンテンツマーケティングに大きく役立ちます。商品の品質や機能性を評価するレビューとは異なり、テスティモニアルには企業やブランドの価値や、そのベネフィットをエモーショナルに伝える表現が含まれます。ブランドからではなく、第3者の声として信頼されるため、FacebookやWebサイトなどに掲載するコンテンツとして効果的です。

レビューのフロー同様、テスティモニアルもNPSのアンケートの直後に求めます。投稿された内容の掲載場所は事前に告知し、必要なパーミッションを得るようにしましょう。また、他のユーザーが見て楽しめるよう、画像や映像の投稿も受け付けるべきでしょう。投稿後にはソーシャルメディアへのリンクを表示し、共有を促します。

アクティベーション③:潜在顧客からの質問への返答

ブランドアドボケイトとのダイレクトなコミュニケーションは潜在顧客の購買意欲を大きく刺激する可能性があります。ユーザーフォーラムやオープンなQ&Aサイトを運営するブランドはブランドアドボケイトの積極的な参加を促すことで、より多くのユーザーの信頼を獲得することができるでしょう。Zuberanceの書籍『BRAND ADVOCATES』ではWebサイトから受け付けた質問をアドボケイトにメールで転送し、返答を求めている事例も紹介されています。潜在顧客とブランドアドボケイトのエンゲージメントは簡単ではありませんが、必ずやビジネスに大きく貢献するはずです。

アクティベーション④:プロモーションやコンテンツの共有

ソーシャルメディアを活用するブランドアドボケイトの大きな影響力の源は、その情報発信力です。彼らがブランドからのプロモーションやコンテンツを共有しやすくすることで、トラフィックや売上を大きく伸ばすことができます。ブランドアドボケイトから発信された情報はその信頼性から他の広告よりも高いコンバージョン率を実現します。

ポイントはどれだけ簡単に共有をさせることができるか。共有したいコンテンツのパーマリンク、ソーシャルメディアのボタンや、投稿テキストの定形フォーマットは必ず用意しましょう。また、ソーシャルメディアだけでなく、メールでも簡単に共有できるようにしましょう。特に、クーポンやプロモーションなどはメールで共有されることが多いようです。

ブランドアドボケイトは最もコスト効率が良く、影響力の強いメディアなのです。彼らが見返りを求めることはありませんが、継続的なエンゲージメントを怠っていはいけません。彼らのブランドに貢献したいという気持ちを育むために、フィードバックやアイディアを求め、エクスクルーシブな情報を提供し、イベントなどを通じてブランドに近づく特別な機会を提供しましょう。最善のケアを提供し続けることで、彼らは継続的にマーケティング資源としての価値を提供し続けてくれるはずです。

アクセス解析を行う上で知っておくべきただ1つのポイント

あなたがアクセス解析を行う上で、最も重要視していることは何でしょうか?もし、この質問に明確に答えることができなければ、アクセス解析に割いている多くの時間を無駄にしている可能性があります。そもそも、なぜアクセス解析を行うのでしょうか。端的に言えば、「Webサイトのパフォーマンスを向上させるために必要な改善施策を割り出すため」。そのためには、Webサイトのビジネスゴールに影響する要因(訪問数や閲覧経路など)を分解し、改善施策を割り出すためにはどのようなデータが必要かということを明確にした上で取得を行い、分析することが重要です。

では、改善施策を割り出すために必要なデータをどのようにして明確化するのか、弊社のWebサイトを例に考えてみましょう。 現在の弊社のWebサイトのビジネスゴールは、「見込み顧客の獲得」です。見込み顧客の獲得への影響要因は、どれだけ多くの潜在顧客を集め、そのうちどれだけの潜在顧客を見込み顧客化できているのかということになります。つまり、見込み顧客の獲得=訪問数×問い合わせ完了率となります。更にこの各指標に対し、直接的に影響を与える指標に分解していきましょう。

訪問数を分解して必要なデータを割り出す

まず、「訪問数」を分解してみましょう。

訪問数は、ユーザーがWebサイトに訪問するに至った経路を考えることで分解することができます。 訪問には大きく分けて、検索エンジンからの訪問、検索エンジン以外の他のWebサイトからのリンクである参照元からの訪問、参照元のない訪問の3種類があります。 検索エンジンからの訪問を分解すると、ユーザーが自発的に行った検索からの訪問が考えられます。さらに、Google AdWordsやYahoo!リスティングといった検索連動型広告を出稿しているのであれば、そこからの訪問に分解することができ、それぞれ検索キーワード別、GoogleやYahoo!などの検索エンジン別といった指標が存在します。

参照元からの訪問を分解すると、どのWebサイトからの訪問なのかを判別する参照元ドメイン別に分解することができます。ディスプレイ型広告などを出稿しているのであれば、広告クリエイティブのバリエーションに分解することも可能です。 参照元のない訪問に関しては、ブラウザのブックマークによる訪問やアドレス欄へのURLの直接入力が考えられますが、アクセス解析のデータの上では判別することが不可能なため分解することができません。そのため、取得できるのはランディングしたページのURLのみとなります。

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問い合わせ完了率からユーザーの動きを読み取る

次に「問い合わせ完了率」を分解してみましょう。 問い合わせ完了率は、ユーザーが訪問してからコンタクトフォームで問い合わせを完了するまでのフローの部分となります。Webサイトの構造やページ構成、サービスの内容、コミュニケーションの内容、デザイン、ユーザビリティ、閲覧環境など要素が複雑に関連するため、訪問数のように明確に分解することはできません。

しかし、問い合わせに至ったユーザーは必ずWebサイトへ訪問し→入力ページから必要事項を入力→入力内容を確認→問い合わせを完了するというルートを通っているはずです。このように考えれば、問い合わせ完了率に影響を与える指標が明確になり、必要なデータが見えてきます。

情報構造(Webサイトの構造やページ構成)

  • 訪れたページからどのように遷移しているのか、意図した通りに誘導できているのか
  • どこで離脱しているのか

コンテンツ(サービスの内容・コミュニケーションの内容)

  • どのくらいコンテンツを見てくれているのか
  • どのページに訪れているのか

フォーム(デザイン・ユーザビリティ)

  • コンタクトフォームの閲覧率(全体の訪問のうち、コンタクトフォームに訪問した訪問の割合)
  • フォーム完了プロセス(必要事項入力→入力情報確認→問い合わせ完了)の各段階での離脱率

閲覧環境

  • OS/ブラウザ
  • 画面サイズ
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これまでの内容をまとめると以下の図のような形になります。

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データの比較・分析の積み重ねから改善ポイントが見えてくる

ここまでで、改善施策を割り出すために必要となる基本的なデータが見えてきました。

これらを基に、全体のデータと問い合わせに結びついたユーザーにセグメントをかけた状態のデータを比較しながら分析を行うことで、ビジネスゴールである「見込み顧客の獲得」に対し、大きく影響を及ぼす要因をリストアップし、影響度合いの大きなものからプライオリティ付けを行い、改善施策を行うポイントを割り出していきます。

その際に、CRMを通じた顧客リレーションや、口コミ、ソーシャルメディア上のバイラルなど、アクセス解析以外のデータも総合的に分析を行うことも必要です。 改善施策を行うポイントを割り出した後は、実際に「月間○○回の問い合わせの獲得」などの数値目標を立て、改善施策のパフォーマンスを計測できるよう設定を行い、継続的にPDCAを実施していきましょう。

今回は弊社のWebサイトを例としているため、Webサイトのビジネスゴールによって違う指標が必要な場合も考えられます。しかし、ビジネスゴールに影響を与える要因を分解することで、改善施策を割り出すために必要なデータに落とし込むという基本的な考え方は、どのサイトにも当てはめることができます。まずは、あなたが担当しているWebサイトに当てはめ、あなたのビジネスに最も影響を与えるデータが何であるかを考えてみてください。

ブランドアドボケイトというデジタルマーケティング資源

1000万人にリーチするCMと、積極的に商品を知人に勧める1000人の既存顧客、どちらが売上に貢献するでしょうか。CMを視聴した1000万人の消費者の0.1%と、1000人の既存顧客1人あたり10人が購入したとすれば、その効果は同じです。しかし後者のほうが遥かに安く、そして持続的に活用することができます。ブランドの商品やサービスを熱心に勧める人々(ブランドアドボケイト)の大きな影響力を無視できるマーケティング担当者はいないはずです。更に、彼らを効率よく集客・活性化し、ビジネスに活用できているマーケティング担当者も決して多くはないはずです。

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ブランドアドボケイトとは?

ブランドアドボケイトは、謝礼と引き換えにブランドの宣伝を行うアンバサダーとは異なります。アドボケイトはブランドに対するロイヤルティが高く、積極的にエンゲージメントを求める顧客です。しかも決して小さなセグメントではなく、アメリカでは4人に1人の割合で存在しているとも言われています。そして、ブランドが持つ顧客データベースにアンケートを実施してみると、更に驚くような結果が出ます。自主的にブランドのFacebookページやメールマガジンに登録した消費者の半数ほどがブランドアドボケイトである可能性があるのです。

ブランドアドボケイトの強い影響力は消費者からの信頼に起因します。友人や知人からのレコメンデーションは広告の中でも最も信頼される分野であり、ニールセンの広告信頼度調査、Global Trust in Advertisingでも9割に共感され、常にトップに位置しています。また、彼らの9割も知人の購買行動に影響を及ぼしていると自覚しており、その影響力は他の広告手法の何倍もあることが明らかです。
(http://www.zuberance.com/resources/resourcesStats.php)

更に彼らの影響力はソーシャルメディアによって大きく増幅されます。一般的な消費者の発言は多くても平均150人ほどに向けて発信されると言われていますが、ブランドアドボケイトのネットワークは平均でその倍以上です。何千、何万ものブランドアドボケイトがソーシャルメディアを通じてあなたのブランドを知人に勧めれば、マスメディアよりも大きな効果を生み出すことができるはずです。

では低コストであるにも関わらず、このずば抜けた効果を発揮するブランドアドボケイトというマーケティング資源が活用されていない理由は何なのでしょうか?理由は2つ考えられます。1つはブランド側が彼らを特定することができないこと、もう1つは彼らを活性化することができないことです。

ブランドアドボケイトを特定するには?

ブランドアドボケイトはたった1つの質問で特定することができます。ネットプロモータースコア (NPS)という指標を使い、ブランドの商品やサービスを知人に勧める可能性を0~10の11段階で評価してもらうだけです。0~6をデトラクター(批判者)、7~8をパッシヴ(中立者)、9~10をアドボケイトとします。NPSについては日本語でもたくさんの情報がありますのでぜひ検索してみてください。

ブランドアドボケイトを活性化するには?

彼らには様々な活用方法があります。商品やサービスを勧めるだけでなく、レビューやテスティモニアルを投稿したり、ブランドの代わりに潜在顧客の質問に答えたりしてもらうのです。ブランドからの情報やプロモーションをシェアし、トラフィックを生み、新製品のローンチなどをサポートします。また、クリエイティブなアイディアや既存製品のフィードバック、ブランドにとっての脅威や機会などを教えてくれたりもします。

アメリカのZuberanceという会社は非常に面白いマーケティングプラットフォームを提供しています。NPSのアンケートから特定したアドボケイトに対し、ただちにレビューやテスティモニアルを求め、更にソーシャルメディアやレビューサイトへの投稿を求めるというものです。

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ブランドアドボケイトにフォーカスしているため、投稿されるレビューのレーティングは平均で4.5以上。1回のキャンペーンで何千件ものポジティブなレビューが投稿・拡散されます。Zuberanceのサイト書籍にはこのブランドアドボケイトの活性化を通じたケーススタディが数多く紹介されており、どれも担当者が驚くほどのROIを実現しています。デジタルマーケティングで売上効果を上げたいと思う人はぜひ一度目を通してみてください。

次回は活性化の手法をより詳しく説明します。

サイトリニューアルの成功に必要なクライアントリレーション

サイトリニューアルの開始時にはクライアントもWeb製作者も同じ方向を向き、1つの目標を達成しようとしています。しかし、公開直前にもなれば様々な衝突や想定外の問題から、両者の足並みは崩れていることがあります。最後までクライアントリレーションを維持することが出来なければ、プロジェクトは成功しません。Webサイト全体のリニューアルでも、小さな改善施策でも、成功するためにはクライアントと共にプロジェクトを円滑に進めるスキルが必要です。クライアントリレーションは多くのWeb製作者を悩ませる問題ですが、対応ができなければダイレクトな仕事に取り組むことはできません。次のプロジェクトを開始する前に、想定される問題とその対処法について考えてみましょう。

プロジェクトスコープを守る

クライアントはWeb制作の専門家ではないため、設計プロセスを想定してプロジェクトを進めることはできません。制作過程の中で初めて課題や可能性に気づくため、提案に対するフィードバックを通じてプロジェクトの軌道修正を求めます。これはクライアントにとっては当たり前の事ですが、Web製作者にとってはプロジェクトのゴールを変え、達成を困難にするリスク要因となります。しかし、クライアントとの衝突を恐れ、多くのWeb製作者はこれらの要望を無条件に受け入れてしまいます。結果、制作リソースが圧迫され、仕事のクオリティが下がり、プロジェクト開始時に想定していた目標をも達成することができなくなります。

私たちは制作過程でプロジェクトのスコープを守らなければなりません。そのためにはプロジェクトをフェーズを切り、スコープを変えてるようなクライアントのアイディア(思いつき)を後に対応を検討する要件としてリストに記録します。この時点でアイディアの実施を判断する必要はありません。プロジェクト、又はフェーズ終了後にリストの内容をレビューし、その有効性と実現可能性によって実施を検討しましょう。

この対応プロセスをクライアントと事前に共有しておくことで、Webサイトに継続的な改善が必要であることを受け入れてもらいます。また、制作過程での検討を回避することで、無駄な議論を省き、労力を削減することができます。クライアントもプロジェクト途中での軌道修正はタイムリーな進行の妨げになることを理解し、新しいアイディアに執着しなくなります。結果、Webサイトを期日通りに納品することができ、お互いの時間を有効に活用することができるのです。

目的にフォーカスする

時にクライアントは無闇に新しいテクノロジーや特定の制作手法の採用を要求します。競合の動向やトレンドに目がくらみ、本来のビジネス目的ではなく「手法」を優先してしまうのです。もちろん、私たちWeb製作者もレスポンシブデザインなどの最新トレンドに流されることがあります。しかし、採用する目的が明確でなければ決してリソースをコミットしてはいけません。

新しいテクノロジーを検討すること自体は悪いことではありません。しかし、技術や手法のトレンドは直ぐに移り変わり、クライアント自身の興味も変わっていくことを知りましょう。トレンドの採用を目的としたWebサイトほどその寿命は短く、時間の経過に耐えられないものです。Web製作者にはプロジェクトの目的に対して、最適な技術や手法を選択する義務があります。クライアントの要望を鵜呑みにするのではなく、「何故?」と問い正すことは重要です。投資を正当化するビジネス上の理由、リターンの可能性、想定されるリスクなどを十分に意識してもらい、クライアントの論理的な判断をサポートしましょう。

投資対効果を意識する

クライアントにWeb制作の投資対効果を計算することはできません。多くの具体的な要望やリクエストがあったとしても、各施策の有効性と実現可能性については私たち専門家の知識を必要とます。ブリーフィングやRFPに記載された各要件のコストやリターンを計算し、実施に対するアドバイスを提供しましょう。私たちの仕事はクライアントの全てのリクエストに応えることではなく、ビジネスに有効なサービスを提供することです。そのためにはビジネス目標の達成に最適化されたWebサイトの構造を提供する必要があります。

Webサイトに過剰なコストや労力をかけないためにはリニューアルだけではなく、部分的な改善施策も検討すべきです。機能の拡張は無闇に行わず、設計時に十分想定をしましょう。技術や手法はトレンドで選ばず、目標に合わせて実績あるものを採用します。クライアントと共に投資対効果を意識することは、プロジェクトの成功だけでなく、長期的な信頼、そして更なる投資やビジネスの獲得にもつながります。

Webデザインへの客観的なフィードバックを行うことができるクライアントはなかなかいません。デザインを見ただけではその機能や体験を完全に理解することは私たちWeb製作者でも不可能です。多くのフィードバックはその瞬間で受けた印象に左右され、主観的なものとなります。しかし、専門家ではないクライアントの主観的なフィードバックを全て反映すればWebサイトの設計は破綻してしまいます。

本来、クライアントがその場で指摘する問題は存在すらしないかもしれません。更に新しくキレイなデザインを見て、重要な問題を見落としている可能性もあります。どちらにせよ、その場の印象による主観的なフィードバックはプロジェクト成功の妨げになります。デザインを見せる時にはその背景や提案理由を十分に説明し、すぐにフィードバックを求めず、判断に時間を掛けるべきであることを伝えましょう。また、デザイン変更に対して、最初に批判的な反応があることは珍しくないと伝え、クライアント自身が社内調整を行う際に同様の問題に陥らないようにしましょう。

クライアントから客観的なフィードバックを得るために、最も効果的な手法は密接なコラボレーションを重ねることです。ワイヤーフレームを確認しながら、制作プロセスを共に歩むことでクライアントは初めて客観的な判断に必要な情報を得ることができます。また、自身が関わったデザインであれば、そう簡単に否定することはできず、フィードバックに時間をかけてくれるはずです。デザイン提出の前にはクライアントと密接に関わるようにしましょう。

もちろん私たちWeb製作者もデザインを主観的に判断してはいけません。クライアントにフィードバックを求めるのであれば、デザインを客観的に説明する必要があります。「このデザインをどう思いますか?」「何か他にデザインへのご要望はありますか?」などという主観的な質問は絶対にしてはいけません。「このデザインは目的を達成するために十分最適化されていますか?」「このデザインはブランドイメージを正しく表現していますか?」などと聞きましょう。答えがノーであったとしても、クライアントに客観的な説明を求めることができるはずです。

長期に渡り、多くのリソースを消費するWebサイトのリニューアルには、Web制作のプロフェッショナルではないクライアントとの密接なやり取りが発生します。プロジェクトを通じて良好なクライアントリレーションを維持するためには多少の衝突を拒んではいけません。Webサイトリニューアルを成功させるためには、なにより私たちWeb製作者の、クライアントに対する積極的な姿勢が必要なのです。

デジタル広告による集客を成功させる5つのポイント

あなたは、「アクセス数の多いメディアに広告を出稿したのに想定の集客が得られなかった」「アクセス数は集まるがコンバージョンへの転換率が低い」など、デジタル広告による集客がうまくいかないとお悩みではありませんか?そのような悩みは、デジタル広告をTVCMや雑誌広告と同じように捉えていることが原因かもしれません。

デジタル広告とこれまでの広告との最大の違いは、リアルタイムでモニタリングできること。そのため、広告を運用しながら成果を確認しつつ最適化を行うことが可能です。 “集客結果が出るまで何もしないのは、目を瞑ってボウリングをするようなもの…” デジタル広告においては正しく活用・管理さえすれば、結果と想定が大きく変わってしまうギャンブルのようなことは絶対に起こりません。今回は、WebプロモーションやECで集客を成功させるためにチェックするべき5つのポイントを紹介します。

1. 集客施策のゴールを明確に設定しよう

正しい達成目標が決まらなければ、正しい手法を選択することはできません。 キャンペーン応募なのか、製品購入なのか、会員登録なのか、まずは達成したいゴールを明確にしましょう。コンバージョンはユニークコンバージョンなのか、何度もコンバージョンする延べコンバージョンかも合わせて定義する必要があります。達成目標は単なるコンバージョンの獲得数などの数値ではなく、施策が持つマーケティングの視点を踏まえて厳密に定義しましょう。 コンバージョンポイントがないブランドキャンペーンの場合も、特定ページの閲覧数やコンテンツのダウンロード数、SNSへの共有数など、モニタリングできるポイントを設けて計測します。さらに、アクションだけでなくターゲットユーザーも明確にしなければなりません。デモグラフィックス(*1)やジオグラフィックス(*2)、サイコグラフィックス(*3)などによっても実施すべき集客施策は大きく変わってきます。

*1 デモグラフィックス:年齢、性別、職業などの統計情報 *2 ジオグラフィックス:住居や勤務地などの属性情報 *3 サイコグラフィックス:ライフスタイルや価値観などの心理学的属性情報

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CONVERSION x DEMOGRAPHICS x GEOGRAPHICS x PSYCHOGRAPHICS

例: “競合製品を使用するユーザーに対して獲得単価を200円以下でサンプリングキャンペーンに応募させる”

2. 適切なデジタル広告手法を選ぼう

現在、デジタル広告には様々な手法や課金形態があります。コンバージョンで設定した目的とターゲットユーザーに合わせて、適した広告手法を選びましょう。

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広告手法一覧

ディスプレイ広告(純広告)

特定の媒体の広告枠を買い付ける手法です。運用主体は媒体社側となり、通常は媒体側が公開しているメディアシートのデモグラフィックス情報等を参考にメディア選定を行います。

アフィリエイト広告

成果報酬型のインターネット広告商品です。KPIを定量的には達成しやすい利点がありますが、質のマネジメントが難しいため、アフィリエイトプロバイダーに対して配信するメディアの条件や課金する成果についてディスカッションしながら決定するとよいと考えます。 スマートフォンアプリのダウンロード等は”リワード広告”という名称が一般的です。

検索連動型広告

検索エンジンに対して、自社の関連性の高いキーワードを登録し、そのキーワードが検索された際に広告を配信する手法です。Yahoo!リスティング スポンサードサーチ・Google AdWordsが一般的です。 ワードは検索ボリューム、競合性を考慮してポートフォリオを組み、効果に応じて入札管理、キーワード・クリエイティブ精査を行いチューニングする事が一般的です。既にニーズが顕在化しているユーザーに対して配信するため、全体のポートフォリオの中での予算配分に注意しましょう。

ソーシャルメディア広告

ソーシャルメディア広告は、FacebookのLikeアドに代表される様に、そのソーシャルメディア内のエンゲージメントを高めるための広告配信と、ソーシャルメディアを面としてペイドメディアとして利用するタイプに分けられます。 広告媒体としてはTwitter、Facebook、LinkedIn等があげられます。

アドネットワーク/DSP

エージェンシーや広告主側に管理画面が開放されているサービス事業者が増えてきています。フリークエンシー、入札条件、クリエイティブ差し替え、ターゲティング手法等、管理画面で運用チューニングを行う事配信後に効果改善を行う事が可能です。一方オペレーションコストの増大やブランドマネジメント等は管理画面を運用する側が行う必要があります。

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広告手法ごとのマッピング

広告手法にはターゲティングのさせ方にも複数の方法があります。複数のターゲティング方法を使い分けることにより、本当にリーチしたいターゲットユーザーだけに配信を行うことが可能です。例えば”Google Display Network”では5つのターゲティング手法があります。

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ターゲティング手法リスト

さらに、Ads Preferences Manager(https://www.google.com/settings/ads/onweb/?hl=ja)でGoogleがもつ個人の趣味嗜好情報やYoutubeで閲覧したコンテンツ内容などでもターゲティングすることが可能です。

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質と量を考慮した広告手法の組み合わせ

例: 競合製品を使用するユーザーを高い費用対効果で獲得するために、ターゲットの質と獲得量のバランスを考慮して複数の広告手法を組み合わせた。

3. 広告の配信内容を最適化しよう

集客を成功させるためには、運用しながら必ずPDCAを回し、成果に対して広告の配信内容をチューニングしていく必要があります。

特にアドネットワークにおけるディスプレイ広告の技術は進化しており、昔ながらの広告枠の買い付けから、ページ内のコンテンツや閲覧ユーザーの行動などにより複数の広告がリアルタイムに入札して掲載を行うようになりました。広告の買い付けが「枠」から「人」へ、スタティックからダイナミックへと変化したことに伴い、広告運用の負荷は増えましたが、そのぶん成果を達成するチャンスは大きく広がったのです。そのため、管理画面を見ながら広告ごとに配信状況やコンバージョン数を確認し、成果に応じて配信内容や予算を最適化することが集客施策において非常に重要な作業となるのです。

広告運用の流れとしては、配信開始時にはディスプレイ広告の入札金額を高めに設定したり、リスティング広告のキーワードバリエーションを広げたりとしっかりと広告を機能させた上で、成果が出ない広告は停止し、より成果の良い広告に予算をアロケーションして最適化を行います。

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広告予算のアロケーション

例: アフィリエイト広告を細かく最適化することで、十分な獲得件数と質を得られたため、獲得母数が伸び悩んでいたリスティング広告の出稿予算をアロケーションした。

4. クリエイティブを最適化しよう

Google Display Networkのディスプレイ広告はオークション形式ではありますが、単価が高いものが必ずしも表示されるという訳ではありません。広告のインプレッションはeCPMという単位で売買されており、その値はCTR x CPC x 1000で算出されます。そのため、よくクリックされる広告は、そうでない広告と比べて少ない費用で広告を配信することが可能になります。

広告の内容が配信費用に大きく関わってくるため、集客施策の成果にはクリエイティブやコピーが非常に重要となります。ABテストなどを繰り返し、配信内容と合わせてクリエイティブの最適化も目指しましょう。

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5. リマーケティング広告は正しく活用しよう

来訪して離脱したユーザーに対して、再度広告で訴求ができる”リマーケティング広告”は他の広告手法に比べて配信対象母数は少ないものの、離脱したページのコンテンツに応じて細かくコミュニケーション内容を変更することができるため高いCVRが期待できます。例えばキャンペーン応募ページを見て離脱したユーザーには、キャンペーン応募のメリットと期日が迫っていることを訴求する広告を展開するなど、CVRにつながりやすいコミュニケーションをとることができます。

その一方、コンバージョン時にリマーケティング除外設定を正しく設定できていないと、コンバージョンしたユーザーに何度も繰り返し広告を訴求してしまい、無駄な配信がユーザーの不快感を与え、ブランド価値の毀損を招く可能性もあるため注意しましょう。

昔は企業が直接顧客と接点を持つことができなかったため、メディアのインサイトデータのみが重要視されていましたが、デジタル広告の進化により自分たちで情報をストックできるようになりました。現在は手法に依存せず、自ら広告を管理しながら成果を最大化することが可能な時代ですので、活用して確実に成果を生み出す集客施策を実践していきましょう。

監修 : 松島 稔 - Fringe81株式会社

ブランドサイトの目的と役割

残念ながら現在Web上に存在するブランドサイトには明確な目的を持たないものが数多く存在します。ブランドサイトは単に広告の延長として詳細な製品情報を伝え、デザインやコンテンツを通じてブランドイメージを表現するだけでは具体的なブランドの課題に応えることは出来ず、明確な存在意義を示すことはできません。

ブランドサイトの目的は、ブランドからの購入に至るまでにユーザーが体験すべき行動(以下:ブランドアクション)を効率的に実現することです。しかし、ブランドにはそれぞれ個別のマーケティング課題が存在し、優先すべきブランドアクションも異なるため、全てのブランドに当てはまる成功法は存在しません。ブランドサイトはブランドが抱える個別の課題の解決に向けて綿密に設計されるべきであり、ブランドの課題が明確でなければ役割を持つことはできません。

ブランド担当者がブランドサイトのKPIに悩む理由はここにあります。多くのブランドサイトは設計時にその役割が明確に定義されておらず、具体的な目標を持っていないのです。ブランドサイトを設計する際はその成果の測定と改善を可能にするために、達成すべき(複数の)ブランドアクションと数値目標を定義する必要があります。

ブランドアクションに考えられるバリエーションをFICCの事例と共に紹介します。

ブランドアクション1:ブランドを認知する体験

ニーズがあり、特定のブランドに対する購買意欲がない(又は知らない)ユーザーは製品カテゴリーを検索する可能性があります。これらのユーザーとブランドサイトを接触させることで、ブランドを認知させることができます。ブランドの認知を高めたい場合、製品カテゴリーなど、ブランド名を含まないキーワードからの検索流入数などをKPIにする事ができます。

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アップリカのブランドサイトは「ベビーカー」「チャイルドシート」などの検索で1位に表示され、未だ特定のベビー用品ブランドへの意識が無いユーザーをブランドと接触させています。

ブランドアクション2:ブランドのベネフィットを理解する体験

ブランド名は認知していても、正しく理解していないユーザーにはブランドのベネフィットを伝える必要があります。ブランドに対する理解度を高めたい場合、ブランド名の検索や広告などの流入から発生した、ブランド理解を深めるコンテンツの閲覧数をKPIとすることができます。また、単に情報を見せる・読ませるよりも問いかけに答えさせる方が相手の理解を獲得しやすい場合が多くあります。この場合はアンケートや簡単なクイズを応募条件に含めたキャンペーンなどが効果的だと言えるでしょう。

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シックのブランドサイトはシックが肌にうるおいを与えるブランドであることをコンテンツとデザインで表現しています。

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ダノンのコーポレートブランドサイトではダノンが「食を通じて健康を届ける」企業であることを伝えています。

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SP EXTREMESのブランドサイトでは商品情報を閲覧する前に問いかけを行い、商品のベネフィットを強調しています。

ブランドアクション3:ブランドにレレバンス(適切性)を感じる体験

ブランドが提供するベネフィットを知っていても、適切性を感じないユーザーにはベネフィットを自分ごと化する必要があります。手法によってKPIは異なりますが、条件に応じて適切な商品を推薦する診断コンテンツは効果的であると言えます。

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メイベリン ニューヨークの口紅色診断コンテンツではユーザーの肌の悩みや色に合わせて適切な口紅を提案しています。

ブランドアクション4:ブランドを信頼する体験

ブランドが提供するベネフィットに適切性を感じていても、そのブランドを信頼していないユーザーには、安心でき、買わない理由を払拭する情報に接触させる必要があります。ブランド名の検索や製品情報ページからレビューなどのコンテンツ閲覧数をKPIとすることができます。

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グレコのブランドサイトでは商品購入者からレビューを集め、商品情報ページに掲載しています。

ブランドアクション5:ブランドの優位性を感じる体験

ブランドが提供しているベネフィットを信頼していても、他のブランドを選んでしまうユーザーにはブランドの優位性を感じさせる必要があります。第三者機関からの表彰や認定などの情報(エビデンス)を記載する方法が一般的ですが、ユーザー投票などからエビデンスを獲得し、ブランドサイトだけでなくパッケージなどに記載することで、より多くの消費者に優位性を感じさせることができます。

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ダノンビオのブランドサイトではフレーバーのユーザー投票を行い、1位を獲得したフレーバーのパッケージにクレデンシャルを表示しています。

ブランドアクション6:ブランドへのロイヤルティを向上させる体験

ブランドから購入をしたユーザーに対は、ベネフィットを実感・共有できる体験を提供し、ロイヤルティを向上させることができます。手法によってKPIは異なりますが、ベネフィットの体験をコメントや写真などで投稿させることが効果的であると言えます。

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LiptonのFacebookページでは、独自のベネフィットである「レンジで作れるロイヤルミルクティー」のレシピを投稿させるキャンペーンを実施しています。

ブランドが抱える課題を特定することで、ブランドサイトは測定可能な役割を得る事ができ、そのパフォーマンスを改善することができます。上記の事例の多くはブランドが抱える課題とマッチしていたため、実際の店頭での売上にも大きく貢献しました。ブランドサイトの正しい活用は効果的であるだけでなくコスト面でも効率的です。もしブランドサイトのリニューアルを検討しているのであれば、まずはブランドが抱えている課題を正しく理解するところから始めましょう。

WebサイトのROIを最大化する5つのポイント

公開後に改修が行われないWebサイト、レポーティングだけのためのアクセス解析、これらはどちらも時間と資金の無駄であり、クライアントにとっての損失です。Webサイトへの投資からリターンを得るためには継続的に改善施策を施す必要があります。分析作業から得られた情報に基づき、パフォーマンスの改善につながる改修を行い、確認し、これを繰り返します。この施策を繰り返すスピードを向上させることがWebサイトのROI最大化につながります。

ROIの改善に取り組むためには、事前に計算方法を定義し、パフォーマンスを測定・比較し、プロジェクト期間中に出来るだけ多くの改善施策を実行します。

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1. 事前にROIの計算式を定義する

Webサイトがどのように売上に貢献するかを事前に想定し、計算式を定義します。販売に直結しないサイトの場合は、間接的な売上効果を考慮しましょう。売上に影響する各ページ遷移やコンバージョンのポイントを定め、期待される成果を数値化します。事前の計算式の定義は企画段階で必要な動線やデザインの見直しを促し、数値化された成果指標は後のベンチマークになります。また、戦略の選定や投資の正当化にも事前の計算式の定義は必要です。

2. 測定箇所や方法を選定する

ROIの計算式に含まれる各ポイントに加え、改善施策によって売上の改善が期待出来る箇所を測定箇所に選定します。全ての項目を計測することは不可能であるため、測定箇所は予想できる改善施策の有効性に基づき、優先順位を設定します。更に、改善施策内容の判断に必要な情報を得るための測定も考慮します。事前に測定箇所(とその測定方法)を明確にすることで、改善に必要な情報を十分に得られるようにしましょう。

3. 比較を可能にする

パフォーマンスの改善を確実に実現するためには、施策を比較する必要があります。対照群とのスプリットテストなどを行い、可能な限り外的要因の影響を排除します。更に、多くの比較対象を持つことでROIの改善に必要な判断を速やかに行うことができます。

4. 複合的・長期的な影響を考慮する

ユーザーは様々なコミュニケーションの影響を異なる期間で受け続けるため、個別のマーケティング活動の成果を完全に分離して測定することは不可能です。測定結果を分析する際は、様々なコンテンツ、デザイン要素、タッチポイントの複合的な影響を考慮しましょう。また、単発の購入だけでなく、リピート購入や、購入頻度の増加など、長期的な影響も考慮しましょう。

5. 複数の仮説を同時に検証する

ROIを最大化するためにはその改善施策に費やす時間や労力も考慮します。改善のペースを加速させるためには複数の仮説を同時に検証することが効果的です。Webサイトの改善施策に多くのバリエーションを持たせれば、それだけコストもかかりますが、早い段階での投資は後の大きな利益につながります。

ROIの分析はゴールではなく、スタート地点に過ぎません。現在のROIがわかればそれを改善する方法を見つけ、実施しましょう。分析はプロジェクトの最後にその効果を証明するために行うのではなく、変更や修正が可能なうちに出来るだけ多くの手を打つために行いましょう。WebサイトのROIを最大化するためにはまず、継続的な改善に取り組む意識を持つことと、事前に必要な時間と予算にコミットすることが重要です。

ブランドロイヤルティを生むデジタルエクスペリエンス

ブランド論の第一人者、D.A.アーカー氏は著書の『BRAND RELEVANCE』で、新たなカテゴリーの創出につながらないマーケティングキャンペーンは無意味であると示唆しています。

ブランドがどれだけ大規模の予算にサポートされた優れたマーケティングを実施しても、新たな製品やサービスのカテゴリーを創造し、競合が無関係な状況を作り出すことができなければ市場に大きな影響を与えることはできない。

衝撃的な一文です。アーカー氏は日本のビール市場を例にブランドがイノベーションを通じて独自のカテゴリーとなり、競合を完全に排除することで初めてマーケットシェアを大きく伸ばすことができるとしています。

マッキンゼーの「コンシューマーデシジョンジャーニー」では購入後のブランド体験とリピート購入時の接触が競合の選択を排除し、継続的な購入へとつながる「ロイヤルティ・ループ」への入り口だとしています。購入後の体験にフォーカスしたモデルではありますが、競合を排除するという点ではアーカー氏の仮説に似ています。

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『BRAND RELEVANCE』の事例である「発泡酒」や「第三のビール」のような万人が新カテゴリーとして認識するものが作れなかったとしても、購入後の体験を通じて購入者だけにでも新たなカテゴリーを認識させることができるのではないでしょうか。デジタルエクスペリエンスを通じて製品機能以上の体験を提供すれば、競合を排除することができるのではないでしょうか?

デジタルエクスペリエンスがブランドに与える影響

最もわかりやすい事例はNike+とNike Fuelbandでしょう。実験的な取り組みとして始まったものの、今ではNikeブランド自体の方向性を再定義しつつあります。NikeのデジタルスポーツVP、ステファン・オランダー氏は今年のカンヌで「今まで、商品の購入は関係の終了を意味していた…今ではどんなNike製品の購入も消費者との関係構築の始まりでなければいけない」と述べました。Nikeはスニーカーの新カテゴリーを創出したわけではありませんが、デバイスによる測定やソーシャルメディアへの共有という購入後のデジタルエクスペリエンスを通じて「デジタルスポーツ」という全く新しいカテゴリーを築きました。

私の周りにはNike+やFuelbandの体験をアシックスのスニーカーで楽しむ人もいます。しかし、多くの体験者はこのデジタルエクスペリエンスを通じて、Nikeのスニーカーをその機能性だけで他ブランドと比較する事無く、継続的に購入し続けているのではないでしょうか。

今でこそ独自カテゴリーの面影はありませんが、TOKYO GIRLS COLLECTIONもデジタルエクスペリエンスを通じて新カテゴリーを築いたブランドです。来場者は単に芸能人が出演するファッションショーやアーティストのライブを見るだけでなく、携帯からその場でランウェイの洋服を購入することが出来ました。実際のセールスボリュームは決して大きなものではありませんでしたが、その革新的なブランド体験がファンの獲得に役立っていたことは間違いありません。残念ながら今ではこのデジタルエクスペリエンスは存在せず、TOKYO GIRLS COLLECTIONはTBSのTOKYO RUNWAYや吉本興業のSUPER G!RLS FESTAなど、多くの類似イベントに埋没してしまっています。

商品機能を補完するデジタルエクスペリエンス

最近の事例ではヘルシアの12週間チャレンジが注目を浴びました。12週間飲み続け、毎日体重と歩いた歩数をスペシャサイトやスマートフォンアプリで記録するという内容です。結果はTwitterアカウントにつぶやかれ、友だちから応援を得ることができました。単に「脂肪を消費しやすくる」という製品機能を「ダイエットが続けられ、痩せたことが実感できる」というブランド体験へと補完しています。これを実際に体験できた人は数万人かもしれませんが、その人達は間違いなくヘルシアを独自カテゴリーとして認識し、購入時にその機能を他のお茶と比較することはないでしょう。

多くのブランドにとってヘビーユーザーは売上の大半を占め、比較的アクセスしやすいセグメントです。全ての消費者に新カテゴリーを認識させることができなくても、ヘビーユーザーのロイヤルティを更に向上させることができればビジネスは改善します。そして、顧客自身がメディアである今、それこそが更なる新規顧客の獲得にもつながるのではないでしょうか。

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単なる製品の機能だけでは常に競合と比較され、ブランドスイッチのリスクが生じます。しかし、デジタルエクスペリエンスを通じて、機能の新しさなどに依らないより本質的なブランド体験を提供することができれば、他社の製品は検討されにくくなり、ブランドロイヤルティが生まれます。新たなカテゴリーを創出するためには、先ずは対象となる製品の機能をテクノロジーがどのように補完することができるのかを考えるべきなのかもしれません。

マーケティング実務者を救う25の無料Webサービス

より多くの人員や予算を持つ競合に、限られたリソースの中で最大のパフォーマンスを発揮し、打ち勝つためには何が必要なのでしょうか?常に難しい問題に立ち向かわなければならないマーケティング実務者にとって、積極的なテクノロジーの活用は急務のはず。ブランドを管理し、消費者や競合を知り、自らの生産性を向上させる25の無料Webサービスを用途ごとにまとめて紹介します。

自身が担当しているブランドに関して、マーケティング実務者は常に最新の情報を取得する必要があります。Google Alertを使えば特定のキーワードを含んだ最新のニュースやブログ記事などのコンテンツを1日、又は1週間に1度のメールで受信することができます。自身が担当するブランドだけでなく、競合ブランドのモニタリングも可能です。

顧客の声をリアルタイムで把握することもとても重要です。Twitter Searchで自身が担当するブランド名を検索するだけでもたくさんの声を拾うことができます。また、Topsy Advanced Searchを使えば、特定のURLに対するつぶやきを拾うこともできるでしょう。キャンペーンやコンテンツの話題のモニタリングが有効です。

消費者を知る

現代の消費者は、知りたいことや欲しいものはまず検索します。その検索内容を知ることで、消費者のニーズは手に取るようにわかるのです。Google Keyword Toolを使って、どのようなキーワードが毎月どれくらい検索されているかを知ることができます。自身の担当するブランド、ブランドの属するカテゴリー、そして関連するニーズについては把握しておくべきでしょう。

Google Insights for Searchでは、これらの検索の詳しい動向を知るためのツールです。また、Youtube Keyword Toolでは消費者がどんな映像を検索しているかを知ることができます。

既に国内ユーザー数が1,500万人を突破したFacebookからも消費者の貴重な情報を得られます。Facebookの広告作成画面ではデモグラフィックやサイコグラフィックからターゲットのユーザー数を知ることが可能です。その増減から、特定のデモグラフィックが持つインタレスト(興味・関心のある事柄)などを知ることもできます。

また、自由に更新できるWebサイトがあれば、GoogleAnalyticsのウェブテスト機能を用いて、効果的なバリュープロポジションのスプリットテストを行うことができます。

自社のWebサイトをモニタリングする

Webサイトの運営・管理を担当している場合はその稼動状態やリンク切れなどを把握しておきたいものですが、常にチェックするのは非現実的。UptimerRobotは、5分おきにWebサイトが稼働しているかをチェックし、稼働していない場合にはアラートを送ってくれる便利なツールです。Xenu’s Link Sleuthは、リンク切れを自動的に見つけてくれる無料ツールです。

競合のWebサイトを知る

競合ブランドについては上記のブランドモニタリングやキーワードツールなどから知ることができますが、競合のWebサイトを分析するツールも多く存在します。

Hubspot Marketing Graderを使えば、競合のWebサイトが集客やコンバージョンに用いている施策を調べ、解析することができます。Ferret SEO Checkを使って、キーワードに対するWebサイトの検索順位を調べましょう。先ほど紹介したGoogle Keyword Toolと併せて使用すれば、競合サイトのSEOに対する戦略がわかります。

また、Google Keyword Toolに競合サイトのアドレスを入力すれば、どのようなキーワードに対して表示されているのかがわかります。Website Explorer(Windows限定)を使えば、サイト内の全てのページを一覧することが可能です。

更にAlexaを使えばおおよそのトラフィックを比較することもできます。データは必ずしも正確とは言えませんが、複数の競合を比較し、ベンチマークを設定することには有効です。(9月時点で、より詳しい情報を提供していたGoogle Ad Plannerの情報表示はGoogleディスプレイ広告ネットワーク内サイトに制限されています。)

アンケートを実施する

相手のメールアドレスさえあれば無料でアンケートを実施することも可能です。Google Driveのフォーム機能やSurvey Monkeyを使えば、簡単にアンケートフォームを生成し、メールで送信することができます。

Facebookページがあればファンに対して投票形式のアンケートを簡単に行えます。ステータス投稿画面から「クエスチョン」を選択し、「回答の選択肢を追加」しましょう。

生産性を向上させる

マーケティング実務者にとって、自身やチームの生産性を向上させることが重要であることは言うまでもありません。

Basecamp(45日以降は有料)を使えばプロジェクト毎にタスクリストを作り、社内外を問わずチームメンバーにデッドラインを付けてアサインすることができます。必要な資料などもディスカッションとして一箇所にまとめられ、メールのアラートやリマインダーなどを通じたスムーズなプロジェクト進行が可能になります。自身のタスク管理だけであれば、remember the milkなどのツールが使いやすいでしょう。

Evernoteを使えば、スマートフォンなどで常にアイディアの管理ができるだけでなく、カメラを使って撮影した資料の画像を後にテキストで検索もできて便利です。

FreemindやMindomoを使えば、簡単にマインドマップを作ることができます。

FocalFilerを使えば、ソーシャルメディアやニュースサイトへのアクセスを一定時間制限し、業務に集中する事ができます。更にe.ggtimerを使えば、1タスクにかける時間を設定することもできます。

以上のように、マーケティング実務者は様々な無料のWebサービスを活用することで、必要な情報を得て、労力を軽減することができるのです。活用することにリスクやデメリットは存在しません。まずは上記のサービスの中から使えそうなものを実際に試してみてください。