刈り取り広告と併用して利益を最大化するデジタル広告への取り組み方

通販や保険、金融や教育といった業界で取り組まれることが多いダイレクトマーケティングは、デジタルの普及によって手法が大きく変わったマーケティングの1つです。特にリスティング広告やリターゲティング広告などのダイレクトレスポンス広告が登場して以降、これらの手法は刈り取り広告として多用されてきました。

リスティング広告やリターゲティング広告は多くの企業が取り入れていますが、ノウハウの成熟によって最適化が進み、CPA(顧客獲得単価)の下げ止まりや顧客獲得数の増加が頭打ちになっているケースも見受けられます。刈り取り広告だけではビジネス成長が鈍化しつつあるデジタル広告で今後どのようなアプローチが必要になるのでしょうか。

1. 刈り取り広告の課題と解決方法

リスティング広告やリターゲティング広告などの刈り取り広告は「顕在化した需要に対して接触できる広告」であり、売上に直結しやすいことから多用されています。一方でリスティング広告にはキーワードの月間検索数、リターゲティング広告にはサイト訪問数など、接触できるユーザーに限りがあります。刈り取り広告は「顕在化した需要内での最適化」となることから、需要を刈り取りつくしてしまうとCPAの上昇や獲得数の減少が起こります。

刈り取り広告の課題に対するシンプルな解決方法は「需要を顕在化させて新規見込み顧客を獲得する」ことです。需要が顕在化することで、刈り取り広告で接触できる新規の見込み顧客が増加し、CPAを下げることや顧客獲得数の増加が見込めます。

下記図のように新規見込み顧客の獲得は態度変容ファネルの上部にあたります。一方で刈り取り広告による顧客獲得はファネルの下部になります。ファネル毎の役割を明確化し、上部から下部までファネル全体を最適化することが重要であり、弊社では「フルファネル・マーケティング」と呼んでいます。

フルファネル・マーケティングの概念を理解し、各ファネルのユーザーに対して、適切なデジタル広告で接触することが刈り取り広告の課題を解決するための糸口になります。

2. 需要を顕在化させるファネル上部へのデジタル広告

それではファネル上部へ接触するためには、どのような広告を活用するべきなのでしょうか。

これまでファネル上部へのアプローチとして多くの企業がテレビCM等のマス広告を利用してきました。マス広告の影響力は未だに絶大であり、多くのユーザーに接触する目的として適しています。

しかし、マス広告はデジタル広告と比較すると大きな予算が必要であり、性別や年齢等の条件でターゲティングすることも難しいです。そのため、ダイレクトマーケティングを活用し、ターゲットが絞られているブランドには投資対効果の面から最適とはいえません。

一方、デジタル広告でもオーディエンスターゲティングができるディスプレイ広告でファネル上部へアプローチする試みが行われていますが、ターゲティング精度の問題でターゲットユーザーに接触できる確率が低く、こちらも投資対効果の面から最適とはいえない状況でした。

そんな状況で登場したのがFacebook広告です。Facebookはユーザー自身が登録した情報や行動データなど、様々なデータを使用してターゲティングするため、非常に精度が高いメディアです。

Facebookのようなメディアを活用すれば、正確にターゲットに対して接触することが可能であり、投資対効果の面からもファネル上部への有効的なアプローチ手法といえるでしょう。

3. デジタル広告を中心としたフルファネル・マーケティング

デジタル広告を中心としたフルファネル・マーケティングの具体例を簡単に紹介します。まずはブランドに適したファネルを定義していきます。ダイレクトマーケティングの場合はファネルが複雑になる傾向がありますが、今回はわかりやすく認知→興味&契約意向→契約の3ステップで考えてきます。

3.1. 認知

まずは需要を顕在化させることを目的とした認知の獲得です。ここでは顧客となる可能性の高いターゲット層にブランドを認知してもらうことが重要になります。

例えば現在の顧客情報等のデータを活用し、複数のターゲットセグメントを設定します。同様にブランドの強みなどからコミュニケーションする訴求軸も複数設定していきます。このターゲットセグメントと訴求軸を掛け合わせてFacebook広告を配信します。配信中は効果測定を行いながら、効果の高いターゲットセグメントと訴求軸に合わせて配信を最適化していきます。

配信後は結果から、どのターゲットセグメントにどの訴求軸が響いていたのかを分析することで、今後のコミュニケーションの参考にすることができます。

3.2. 興味&契約意向

続いては新規見込み顧客の獲得を目的とした興味&契約意向の獲得です。ブランドを認知したユーザーに対して興味&契約意向を促すためのコンテンツへ誘導していきます。認知段階で配信したFacebook広告の遷移先を興味&契約意向獲得コンテンツとして、コンテンツ内で興味&契約意向を促す内容を訴求することなどが考えられます。

また最近ではデジタル動画広告を活用し、動画を最後まで視聴してもらうことで、認知から興味&契約意向まで一気に訴求しているケースもあります。

3.3. 契約

最後は顧客獲得を目的とした契約の獲得です。ブランドに興味&契約意向を持ったユーザーに対して契約を促すランディングページ等に誘導します。

ここで刈り取り広告を活用することができます。興味&契約意向段階で離脱してしまったユーザーにはリターゲティング広告が有効です。また、すぐに契約に結びつかない商材の場合、検討期間終了後にブランド名や関連するキーワード名で検索される可能性があるため、リスティング広告を活用することで機会損失を防ぎます。

4. CPAの最適化ではなく利益の最大化を

上記のようなフルファネル・マーケティングを実施する際に注意しなければいけないことがKPIの設定です。

KPIをCPAだけとしてしまうと顧客獲得に直結しないファネル上部へ費用を投資するため、初期段階ではCPAが上昇する可能性が高く、失敗とみなされてしまう場合があります。フルファネル・マーケティングに取り組む背景は「刈り取り広告のみによる顧客獲得数の頭打ち」であり、目的は「利益の最大化」です。この場合のKPIは新規顧客獲得数とCPAであり、KGIは利益となります。

数値は仮となりますが「刈り取り広告のみ」と「フルファネル・マーケティング」で比較してみましょう。

一見すると刈り取り広告のみの方がCPAが安価でROIも高く、良い施策に思えます。しかし、刈り取り広告のみはCPAの最適化で運用をしており、顕在需要から考えた場合、費用の400万円は限界投資額です。仮に400万円以上の予算があったとしても、同じCPAで新規顧客は獲得できず、CPAの上昇を理解した上で投資を行う必要があります。

一方のフルファネル・マーケティングは需要の顕在化を同時に行っているため、投資を行うことで、新規顧客獲得数は大幅に増加し、最終的な利益も刈り取り広告より大きくなります。また、施策を継続していくことで需要の顕在化による新規見込み顧客も増加するため、CPAを下げ、更に大きな利益を獲得することも期待できます。

5. 継続したビジネス成長を描くために

短期的な数値だけでデジタル広告への投資を判断する場合は投資対効果の高い刈り取り広告が選ばれることが多いと思います。しかし、最初に述べたように刈り取り広告は「顕在化した需要内での最適化」です。

継続的に顧客を獲得し、ビジネス成長を続けるためには需要の顕在化から、顧客の獲得までワンストップで行うフルファネル・マーケティングの考え方に基づき、ファネル上部に対するデジタル広告施策も同時に実施していく必要があるのではないでしょうか。

ソーシャルリスニングを活用したマーケティングに役立つ分析方法

アメリカでは早くからマーケティングに「ソーシャルリスニング」という手法を用いていますが、日本でも近年この方法が注目を集めており、消費者の声を有効活用しようという動きがあります。しかし、日本ではこれまで現場担当者の「経験」をもとにマーケティングが行われてきたこともあり、データの具体的な利用方法がわからず、宝の眠るデータの山を持て余す光景もよく見られます。ソーシャルメディアが日本でも浸透するなかで、これらのデータを使用しないことは、競合ブランドに対して遅れをとる可能性があります。

1. ソーシャルリスニングの活用法

ソーシャルメディアで人々が発信しているテキストや画像情報を大量に集め、それを基に分析していくことを「ソーシャルリスニング」といいます。

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情報収集を行うソーシャルメディアには、TwitterやFacebook、Instagramのほか、以下のような”消費者が口コミを書ける媒体”はすべて対象と考えられます。

  • ソーシャルメディア : Twitter、Facebook、Instagram等
  • Q&Aサイト : Yahoo知恵袋、教えてgoo等
  • レビューサイト : 価格com、@cosme等
  • ブログサービス : アメーバブログ、ライブドアブログ等
  • ECサイトのレビュー : Amazon、楽天等

マーケティングにおけるソーシャルリスニングの活用法として、これまで弊社では戦略立案時に行う消費者インサイトの発見や、ターゲットユーザーとなるペルソナ構築といった定性的なリサーチに活用する手法をご紹介してきました。今回は大量のデータを機械的に分析し、ブランドイメージ調査やマーケティング施策の効果測定に利用する手法をご紹介します。

2. ブランドイメージ調査&施策の効果測定

ブランドイメージ調査やマーケティング施策の効果測定ではアンケート調査を行うことが一般的ですが、ソーシャルリスニングを利用することで、比較的安価に継続的な調査を行うことができます。また、ソーシャルメディアではユーザーの生の声を取得することで、アンケート調査と比較してユーザーの本音を知ることができる強みもあります。

ソーシャルリスニングは定量・定性の両面から分析を行うことが理想であり、元となるデータ量が多いほど正確な結果を導くことが可能になります。そこでまずは多くのデータを集め、それを「定量分析」するところから始めましょう。
しかし、人の手で収集できる情報量には限りがありますので、より多くのデータを自動的に取得する有料の「ソーシャルリスニングツール」の導入をお勧めします。最近では様々なツールが公開され、各サービスによってTwitterのデータが100%取得できるものや、過去のデータから投稿を取得できるもの、テキストマイニングツールが付属されているものや、デモグラフィック属性が分析できるものなど、様々な違いがあります。

ツールの選定は、下記の分析方法を参考とし、分析の目的を明確にした上で、各ツールの特性を導入前にしっかりと見極め、欲しいデータが抽出できるサービスを選択してください。

2.1. 分析方法 基本編 : 数値分析

では、実際の分析方法を見てみましょう。今回の分析では最も多くのデータを取得しやすいTwitterのみを使用して分析を行っていきます。

以下の項目を、日別や月別にグラフ化し、前月・前年といった時系列での比較、競合ブランドや商品カテゴリとの比較をしていきます。データ全体を見て大きく数字が変化している部分に注目し、原因を特定することで今後の施策に活用できる情報を得ることができます。

①2.1.1. 投稿数

まずは対象ブランドのキーワードを含んだ投稿を取得します。この膨大なデータを単純に、投稿の数から追ってみましょう。

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青色が対象ブランド、緑色が競合ブランドのキーワードを含んだ日別投稿数

こちらは対象ブランドと競合ブランドの投稿数を日別に記録したものです。大きく数字が動いた日を見てみると、新規のCM放送開始日だったことが判明。CM効果の高さがうかがえました。

2.1.2. リーチ数(投稿したユーザーの合計フォロワー数)

続いて投稿したユーザーの合計フォロワー数であるリーチ数を算出し、こちらも時系列で並べ替えてみましょう。リーチ数が突出している部分を見つけて投稿を確認することで、どんな話題がどれほど多くの人にリーチ(目に触れている)しているかを知ることができます。投稿数では多くの人が話題にしている要因を、リーチ数では多くに人の目に触れている要因を突き止めることができます。

2.1.3. ポジティブ・ネガティブ割合

多くのソーシャルリスニングツールでは収集した投稿データを分析し、「ポジティブ」な投稿か「ネガティブ」な投稿か判断することができます。このポジネガの割合をトラッキングすることで、ブランド好意度を知ることができます。

2.2. 分析方法 発展編 : 投稿&アカウント分析

「基礎編」でまとめたデータに以下の項目を掛け合わせて見ることで、より詳細な分析ができます。

2.2.1. 頻出キーワードを洗い出す

投稿数が多いTwitterは、1投稿の文字量が限定されているため分析しやすいことが特徴です。ソーシャルリスニングツールによっては形態素解析などを利用し、頻出キーワードを見ることができます。この頻出キーワードを自社ブランドに関連する投稿のキーワードだけではなく、ポジティブ投稿の頻出キーワード、月別の頻出キーワードを出し、期間・競合・カテゴリで比較すると興味深いデータが浮かび上がります。

例えばポジティブな投稿に「限定」というキーワードが多く出てきた場合、「限定」で行ったプレゼントキャンペーン等が、消費者のプラスの感情を引き起こしたことがわかります。キャンペーンの効果測定を、「感覚」ではなく「数字」で裏付けられ、消費者に愛されている点、または改善が求められている点を浮き彫りにすることができます。

2.2.2. インフルエンサー・リツイートをランキング化する

基礎編で出したポジティブ投稿の中から、インフルエンサー(フォロワー数の多いユーザー)やリツイートされた投稿をランキング形式などで出してみます。
インフルエンサーのプロフィールを目視で確認したり、リツイートされた投稿の傾向を見ることで、インターネット上でバズを生み出しやすい傾向を見つけることができます。

2.3. 分析方法 応用編 : セグメント分析

基本編・発展編で得たデータを、以下の2つの切り口でさらに細かく分類していきます。

  • カスタマージャーニー
  • タッチポイント

2.3.1. カスタマージャーニーの各段階別にデータを分類する

弊社では以下の図の通り、「関心・興味・購入・リピート・推奨」というカスタマージャーニーに基づいて分析しており、集めたデータをカスタマージャーニーの各段階に分類することで、単なるポジティブ・ネガティブ分析だけではわからなかった事象が見えてきます。
商品名に加えて「買った」といったキーワードが含まれていれば購入段階、「おすすめ」といったキーワードが含まれていれば推奨段階に分類することができます。

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マーケティング施策の立案時には認知を増やすことや、購買に結びつけることなど、カスタマージャーニーをベースに目的を設定することが多いと思います。これらの目的に実施したマーケティング施策が寄与しているかを検証するために、カスタマージャーニーの各段階別で頻出キーワードをチェックしてみましょう。

購入を目的としたキャンペーンを実施した場合、キャンペーン名など特徴的なキーワードを確認します。購入段階に振り分けられた投稿から先ほどのキーワードが多く発見することができれば、施策は成功していると言えますが、関心段階で多くキーワードが発見されてしまった場合は、当初の目的からは失敗していることになります。

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投稿を各カスタマージャーニー別、さらにポジネガ別に振り分けてグラフ化

また、各段階別の投稿数を毎月トラッキングし、競合ブランドと比較することで、自社ブランドのユーザーがどの段階に多く存在するのか知ることができます。

2.3.2. タッチポイント別にデータを分類してみる

近年のマーケティング施策では様々な媒体を利用し、複数のキャンペーンなどが同時に進行することも多く、これらの効果測定をすることは非常に困難となってきています。こちらもカスタマージャーニーと同様に予めタッチポイント毎のキーワードを設定し、投稿を分類することで、ある程度可視化することが可能です。

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タッチポイント別の切り口でみることにより、消費者はどの媒体に接触して、どれだけ反応しているかがわかります。これをさらに月別・日別・時間別で分析することで、広告出稿の際の目安とすることもできます。

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赤色がテレビ、青色がラジオ、緑色が雑誌の時間別投稿数

例えばテレビCMを時系列で分析し、CM出稿の時間帯と相関性を見ることで、効果を見ることができます。また、特定のタッチポイントから始まった話題が、他のタッチポイントに拡大していく様子などを見ることもできます。

3. まとめ

ソーシャルリスニングを利用したモニタリングは継続的に実施することが重要です。対象ブランドの過去データや競合ブランドのデータなどと比較することで、対象ブランドの優位性や改善点、顧客心理をより深く知ることができ、自社の優位性をいかすマーケティングを行うことができます。

定量分析では、「何かが起こっているという事実」を見つける事が目的です。分析したデータから突出した部分を発見し、実際の投稿を目視で確認して原因を突き止めることで、今後のマーケティング施策に活かせる情報を発見できます。最終的には人の目で定性分析を行うことになりますが、理論の裏付けをして相手を納得させるためにも、「数値化されていること」が重要です。

ソーシャルリスニングでは膨大なデータを取り扱いますが、あまり難しく考えず、知りたい情報に必要なデータだけを利用してレポーティングすることで、マーケティング部門だけではなく、営業部門など、社内全体で利用することができる有効な情報を得ることができると考えています。
まずは簡単な基礎編からソーシャルリスニングを始めてみてはいかがでしょうか。

コミュニケーション設計に役立つインサイトリサーチの3ステップ

デジタルマーケティング施策で、ユーザーの行動を変化させるためのコミュニケーション設計をするためにはインサイトを理解しておく必要があります。しかし、インサイトを調査する方法がわからず、悩んでいる方も多いのではないでしょうか。正確なインサイトをつかむには時間と労力がかかりますが、コミュニケーションを設計する上でヒントとなる程度のインサイトであれば、ソーシャルメディアやレビューを利用し、比較的簡単に調査することができます。

例えば、Twitterなどのソーシャルメディアやレビューではユーザーが利害に関係なく商品に対する率直な意見を投稿しています。「新しく発売されたアイス買ってみたけど思ってたより美味しかったー!」「前から気になってたアイス見つけたんだけどちょっと値段高いよね…。」このような投稿からはユーザーの本音を垣間見ることができるため、インサイトの傾向をつかむことができます。

もちろん上記のような投稿から100%正しいインサイトをつかめるわけではありません。グループインタビューやアンケートなどを併用する必要が発生する場合もあります。しかしコミュニケーション設計を行う上では、十分利用することができるインサイトを発見することが可能です。

インサイトリサーチの3ステップ

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まずリサーチを行う前にインサイトの意味を正確に把握しておきましょう。インサイトとはターゲットの「思考」と「購買行動」の因果関係と定義することができます。それではインサイトリサーチの具体的なプロセスをみていきます。インサイトリサーチは購買動機を左右するポイントを洗い出す検索、インサイトの発見、競合商品やカテゴリーとの比較の3ステップに分けることができます。

具体的な流れを見ていくため、今回は実際のブランドで簡単なインサイトリサーチを行ってみます。私はアイスが好きなので2012年、日本に再参入したアイスクリームブランドのBen & Jerry’sをクライアントに、全国のコンビニでカップアイスを販売すると仮定し、競合になると思われるハーゲンダッツのユーザーからブランドスイッチしてもらえるコミュニケーション設計を目指してインサイトを構築していこうと思います。

ステップ1 : ネット上から購買動機に関する口コミを洗い出す

インサイトを発見するため最初に行うステップは、ネット上から競合商品と商品カテゴリ、クライアント商品の購買動機に関する口コミを洗い出すことです。口コミを探す先はソーシャルメディアやECサイト、CGMサイト、ブログなどです。洗い出した口コミには簡単なタグを付け、Excelなどで分類していきます。

口コミは購買を軸に、ポジティブなものとネガティブなものに分けて洗い出します。根気のいる作業ですが、100程度の口コミを集めるのが理想です。以下のような口コミに注意して見ていきましょう。

  • Ben & Jerry’sのアイス美味しいから食べたくなっちゃうんだよねー
  • 今日仕事頑張ったからご褒美にハーゲンダッツ買ってきちゃった!
  • ハーゲンダッツ大好きなんだけどちょっと高いから今日は我慢しよう。

このような口コミからは「美味しくてBen & Jerry’sを買う」「自分へのご褒美にハーゲンダッツを買う」「ハーゲンダッツの値段が高いから買わない」といったことが判断できます。

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実際にハーゲンダッツのリサーチを行ったところ上記のようになりました。ポジティブな口コミが圧倒的に多く、その中ではプレゼントや自分へのご褒美で購入している人が多いことがわかりました。また、期間限定のフレーバーを試して、美味しいと投稿している人も目立ちました。

数少ないネガティブな口コミの中で目立ったのは値段が高いということでした。プレミアムアイスということで仕方のない部分もありますが、高いと感じてしまう人もいるようです。今回は省略しますが、同様に商品カテゴリとBen & Jerry’sの購買動機もリサーチします。

ステップ2 : ステップ1で洗い出した口コミを基にインサイトを発見する

ステップ2ではステップ1で洗い出した購買動機を基に競合商品、商品カテゴリ、クライアント商品のインサイトを探していきます。ステップ1の内容によっては商品と一緒に購入する併売商品(今回の場合はアイスと一緒に購入する飲み物など)のインサイトも発見できる可能性があります。

  • 〇〇だと思っているから〇〇を買っている
  • 〇〇したいから〇〇を買っている
  • 〇〇になりたいから〇〇を買っている

インサイトは上記のような文章を参考にすると発見しやすいです。

ステップ3 : より正確なインサイトにするため、競合や商品カテゴリとインサイトを比較する

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ステップ2で発見したインサイトをより正確にするため、上記のフレームワークに当てはめ、競合商品や商品カテゴリ、併売商品とクライアント商品で比較します。比較する上で最も重要になる点は競合商品や商品カテゴリを買っている人の評価属性を変えることができるインサイトをつかむことです。少し言葉で表現するのは難しいので実際の例を見ていきましょう。

今回はハーゲンダッツのインサイトからBen & Jerry’sのインサイトへ評価属性を変えることができる点に着目して比較していきます。

ハーゲンダッツのインサイト 「いつも買っていて失敗したことはないし、美味しいのはわかっているからハーゲンダッツを買っている」

Ben & Jerry’sのインサイト 「みんなが美味しいと言っているからBen & Jerry’sを買ってみる」

ハーゲンダッツのユーザーは何度もリピート購入していることが多いです。それは「過去の自分の経験でアイスを選ぶ」からで、失敗することがない美味しいアイスだとわかっているからです。他のアイスを手に取る事が少ない人に「過去の自分の経験でアイスを選ぶ」から「他の人の経験でアイスを選ぶ」という評価属性を与えてあげることができれば、Ben & Jerry’sのアイスを手に取ってもらうことができます。

ハーゲンダッツのインサイト 「より質が高いと思うからハーゲンダッツを買っている」

Ben & Jerry’sのインサイト 「フェアトレードで質にこだわっているからBen & Jerry’sを買っている」

コンビニで並んでいるプレミアムアイスの中でもユーザーはハーゲンダッツが他のものより質が高いと感じています。ユーザーは「アイスクリームは質で選ぶ」からハーゲンダッツを選択しています。そこでBen & Jerry’sの特徴であるフェアトレード認証された材料を使い、質にこだわっていることを具体的に伝えることができれば選んでもらえることができます。

ハーゲンダッツのインサイト 「期間限定で新しいし、パッケージのデザインから美味しい味が想像できるからハーゲンダッツを買っている」

Ben & Jerry’sのインサイト 「フレーバーが美味しそうで誰もが安心できる原料を使っているからBen & Jerry’sを買っている」

ハーゲンダッツのパッケージは見るだけで味が想像できる素晴らしいデザインです。期間限定の新しいフレーバーで、食べたことがなくてもパッケージから味が伝わってきます。ユーザーは「アイスクリームはイメージで選ぶ」のでハーゲンダッツを選択しています。Ben & Jerry’sはフレーバーが美味しそうで、誰もが安心できる原料を使っている事を伝えることができれば、イメージでBen & Jerry’sを選んでもらうことができます。

ハーゲンダッツのインサイト 「知人や家族が好きで喜ぶことを知っているからハーゲンダッツを買っている」

Ben & Jerry’sのインサイト 「あの人が選ぶフレーバーが必ずあるからBen & Jerry’sを買っている」

ハーゲンダッツを知人や家族にプレゼントとすると喜ばれます。「アイスクリームは人の好みで選ぶ」からです。ハーゲンダッツブランドをプレゼントするのではなく、知人や家族が選ぶ味のフレーバーがあることを伝えることで、家族にもっと喜んでもらえることを知ってもらえれば、Ben & Jerry’sを選んでもらうことができます。

ステップ2の段階でもある程度インサイトの傾向は見えています。そこに評価属性という視点を持ち、競合商品や商品カテゴリとクライアント商品でインサイトを比較することで、より正確なものにすることができます。

インサイトを正確にする上で重要になる評価属性ですが、注意点もあります。今回のインサイトでも2番目や3番目は評価属性を変えているものの、類似点があります。このように競合と似ているインサイトでコミュニケーションを取る場合、認知度が高いブランドには勝つことができない可能性があります。インサイトをつかむ上では、競合にはない優位性や独自性の部分をいかに多く見つけることができるかが重要になります。

ここまでがインサイトを発見するための3ステップになります。今回のインサイトリサーチはブログ用として短時間で行ったものですが、コミュニケーション設計を行う上でのヒントとなるインサイトはつかむことができたと思います。

各ステップで更に時間をかけることや、ステップ3で比較対象を増やすことによって正確度は増していきます。インサイトリサーチを利用してインサイトを発見するためには経験も必要になってきますが、繰り返し行うことで誰でもインサイトを発見することが可能だと私は思っています。

インサイトからターゲット像を明確にする

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ここまでインサイトリサーチのプロセスをご紹介しましたが、リサーチで得られたインサイトを基に、もうワンステップ進ませてターゲット像を明確にさせることができます。明確にさせることによってプロジェクトに関わるチーム内で同じターゲット像を描くことに繋がり、コミュニケーション設計を行う上では重要な要素となります。

ターゲット像を描くためにはI am statementという方法を使用します。I am Statementとは一人称の視点からターゲットの心理を描いた文章のことです。このI am statementはステップ3で得られた複数のインサイトや、リサーチをする過程で見つかったユーザーの特徴などから作ることができます。今回はハーゲンダッツのユーザーがターゲットということで、インサイトリサーチの結果から簡単なI am Statementを作成してみました。

私はスイーツとか甘いものが好き。コンビニとかスーパーで甘いものを見たらすぐ食べたくなっちゃいます。最近、会社では責任のある重要な仕事を任されることも多くなってちょっと疲れ気味。癒しが欲しい時とか仕事を頑張った時は帰りにコンビニでハーゲンダッツを買ってます。

プレミアムアイスが売ってるコーナーにいくと色々なアイスがあるけど私はいつもハーゲンダッツかな。ハーゲンダッツはどんな味を買っても美味しいし、他のアイスよりも質がいいと思ってるから。わざわざ他のアイスに挑戦して失敗するのも嫌だし…。

今日は期間限定で新しいフレーバーが出てたから、思わず買っちゃった。だってパッケージに書かれてるアイスのイメージがすごい美味しそうだったんだもん。今日はなんだか機嫌がいいし、家族の分も買っちゃおうかな。ハーゲンダッツを買っていくとみんな喜ぶんだよね。

いかがでしょうか。これまでに出てきた複数のインサイトに加えて、ユーザーの特徴などを少し組み合わせてあげることで、このようなI am Statementを作成することができました。さらに詳細なターゲット像を導き出したい場合はペルソナリサーチという方法もあります。インサイトに加えて上記のようなターゲット像を明確にすることで、よりコミュニケーション設計に役立てることができるようになります。

インサイトはコミュニケーション設計を行う上で欠かすことのできないものです。インサイトリサーチの過程はインサイトを発見するだけではなく、I am Statementのようなターゲット像の作成、他にもコミュニケーション設計を行う様々な場面の土台となります。ある程度の時間と経験は必要となりますが、誰でもネットに繋がる環境さえあれば、どこでもリサーチすることが可能です。リサーチの過程は財産となることばかりですので、インサイト調査する際はぜひ一度試してみてください。

ソーシャルメディアからターゲット像を導き出すリサーチ方法

あなたは、デジタルキャンペーンやWebサイト制作をする際のターゲット像はどのように設定していますか?「20代女性」や「F1、M1層」といったデモグラフィックだけでは不十分と感じながらも、詳細なペルソナを設定するには時間と労力がかかるため、大まかなターゲット像で妥協する場合も多いと思います。

しかし、マーケティング施策を成功させるためには詳細なターゲット像が不可欠です。実は、この詳細なターゲット像はソーシャルメディアから簡単に導き出すことができます。なぜならば、ソーシャルメディアでは多くの人が消費活動以外の個性を感じさせる情報を発信しているからです。これらの情報を分析することで商品のマーケティングに最適なターゲット像を割り出すことが可能です。

そこで、私が時間をかけずターゲットの人物像を導き出す時に使っている、ソーシャルメディアからデモグラフィックやサイコグラフィックといったターゲットの詳細な人物像を描くリサーチ方法(私はペルソナリサーチと呼んでいます)をご紹介します。

デモグラフィックとサイコグラフィックから見えるインサイト

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今回紹介するペルソナリサーチのゴールは、キャンペーンの対象となるユーザーのデモグラフィックとサイコグラフィックを作成することです。デモグラフィックとは年齢や性別、職業や学歴、年収といった人口統計学的属性。サイコグラフィックは趣味や価値観、購入動機といった心理的な属性のことをいいます。

このような細かいターゲットの情報を得ることができれば、コミュニケーションに活かせる「インサイト」を導き出すことが可能になり、ターゲットユーザーに響くキャンペーンを企画することができます。弊社でのインサイトの定義は「思考」と「購買行動」の因果関係です。

ペルソナリサーチのプロセス

では、具体的なペルソナリサーチのプロセスを紹介していきます。今回は例としてスポーツドリンクブランドをクライアントとし、競合のスポーツドリンクブランドからユーザーをブランドスイッチさせるデジタルキャンペーンを依頼されたとしましょう。 この場合、必要なのは競合であるスポーツドリンクを愛用しているユーザーの人物像です。

ペルソナリサーチではFacebookやTwitterといったソーシャルメディアを利用するので、まずはTwitter検索やYahooリアルタイム検索などの無料ツールを使用して競合ブランドの製品名を検索します。

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ここで注目したいのは次のような書き込みです。

  • 「疲れたから今日も〇〇を買っちゃったよー!」
  • 「俺はスポーツドリンクの中では〇〇が一番好き」
  • 「〇〇がない生活なんて考えられない!」

このような書き込みをしているユーザーは、競合のスポーツドリンクが好きなユーザーであると考えることができます。

続いて、このような書き込みをしているユーザーを抽出し、それぞれのユーザーのプロフィールをチェックしましょう。Facebookであれば学歴や友達の人数、「いいね!」をしているFacebookページなどから興味・関心なども公開されている範囲で確認することができます。また、Twitterなどのタイムラインを追うことで、趣味や価値観、不安に感じていることなど、ある程度の人物像を描くことが可能となります。

こうしてユーザーを抽出し、それぞれの情報を並べていくと、ユーザーの共通点が見えてきます。経験的に、30人ほど抽出するとユーザー像がはっきりとしてきます。例えばこのような感じです。

  • 15歳から22歳の学生
  • 部活やサークルでサッカーをしている人が多い
  • 2リットルのペットボトルでスポーツドリンクをまとめ買いしている
  • 日本のロックバンドが好きでライブにも行く

より細かくユーザーを見ていくことで、ある程度の収入や毎日の行動での共通点も見えてきます。さらに競合ブランドだけではなく、クライアントのブランドも同じようにリサーチすることで、それぞれのユーザーで違いを見ることもできます。

よりターゲット像を明確にする「I am Statement」

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これらの箇条書きにしたデモグラフィックとサイコグラフィックからでも、かなりターゲット像に近づくことができますが、もうワンランクアップしたターゲット像を描きたいときは一人称の視点からターゲットの心理を描いた文章を作る「I am Statement」が効果的です。

先ほどの情報から簡単なI am Statementを作成してみました。

私は大学でサッカーサークルに入っている。サッカーは小学生の頃からやっていて、高校では都大会でベスト8にも入ることができた。サッカーをする時に欠かせないのが◯◯のスポーツドリンクだ。何度飲んでも飽きない味と、疲れた体の水分補給には〇〇が一番だと思っている。

学生でお金は節約したいので、スポーツドリンクはドラックストアで安売りしている時に2リットルのペットボトルをまとめ買い。練習には水筒に入れて持って行く。冷たいほうが美味しいので水筒は必需品だ。

サッカーと同じくらい好きなのが日本のロックバンド。夏フェスには毎年参加しているくらい大好きだ。汗を大量にかくライブでも◯◯のスポーツドリンクは欠かせない。私の人生でスポーツドリンクの〇〇は無くてはならないものだと思う。

このように簡単なI am Statementでも、「何度飲んでも飽きない味だから競合のスポーツドリンクを選ぶ」「節約のために2リットルのスポーツドリンクを買う」「スポーツの時だけではなく、ライブでもスポーツドリンクを飲む」といったターゲットの心理・行動を読み取ることができます。I am Statementを作る際にもソーシャルメディアのタイムラインから読み取った情報が活きていきます。

ここから見えるインサイトは「飽きない味で十分だと思っているからスポーツドリンクを買う(より美味しいものにブランドスイッチしようとは思わない)」です。 よって美味しさをアピールするキャンペーンではなく、値段をアピールするキャンペーンのようなアプローチが必要になります。

ユーザーを抽出 → それぞれのユーザーの情報を書き出し → 共通点からデモグラフィックとサイコグラフィックを作成 → I am Statementを作成…の4ステップだけでも、かなり細かいターゲット像に辿り着くことができました。

ペルソナリサーチはターゲットの立場から考えるリサーチ方法

ここまでペルソナリサーチのプロセスをご紹介しましたが、手法自体はとてもシンプルではないでしょうか。時間をかけず、簡単にターゲット像を導き出すことができるのがペルソナリサーチの最も大きなメリットです。

また、ペルソナリサーチは実際の個人の投稿からリサーチをすすめるため、客観的なリサーチをすることができ、自分の思っていたイメージよりも正確なターゲット像を描くことができます。私自身、何度かこのペルソナリサーチを使ってきましたが、自分やクライアントの想像していたターゲット像と違う特徴をもった人物像になったことがあり、驚いた経験があります。

一方で、この方法はソーシャルメディア上の投稿からターゲット像を導き出すため、話題にされることの少ない製品には適していないというデメリットがあります。ですので、消費財や食品飲料のようなユーザーからの投稿が多く見込まれる製品には適していると言えるでしょう。

ペルソナリサーチに加えてアンケート調査やヒアリング調査を行うことができれば更に正確性の高い人物像を導き出すことができますが、ペルソナリサーチのみでもデジタルキャンペーンやWebサイト制作をする際の参考にすることが十分可能です。

リサーチとしては社内のリソースを圧迫することも少なく、簡単に行うことができるので、ぜひ一度試してみてください。